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第671堀:おでかけの服選び

おでかけの服選び



Side:エノラ・ハイレン ハイデン王都ハイレ教会司教代理 ウィードへ出張中 



「はいはーい。今日はどんなコーディネートがいいですか? 殲滅ですか? 消滅ですか? 広域型? 全域型? 弾幕? 一撃必殺の超火力?」


なんか、よく分からないことを言いながら、私の前を飛び回る精霊様がいる。いや、妖精族だったわね。

ウィードではそこまで数は多くはないけど、たまに見かける。

既に私たちの土地では絶滅したと思われている、私たちの精霊の戦士、巫女の祖先、始祖とも言われる種族だが、ウィードのある大陸では、普通にいるらしい。珍しい種族ではあるが、まあ、探せばいる感じらしい。

……自分たちの世界がいかに狭かったのかというのを実感した話だった。

と、今はそんな話じゃない。


「えーと、ドレッサ? なんで、このナールジアさんに武具を選んでもらっているの?」


私は、この場に私たちを連れてきたドレッサに話を聞いてみる。

なぜか、ユキ様のお手伝いで宿泊ありなので準備をと言われて、この場に連れてこられたのだ。

どう見ても、どこかに野生動物か盗賊狩りにでも行くような……。


「武具、ブグ、ぶぐねぇ……」


ドレッサは私の言葉に何か疑問があったのか、ナールジアさんを見つめる。


「武具でしょ?」


そういって私も再び、ナールジアさんの方を見ると……。


「このロングソードですが、リーアさんが持っているガンソードを簡易化したもので、こうすると……」


ドドド……ちゅどどどーん!!


「は?」


剣先から何かでて、遥か向こうにあった的にぶつかって大爆発をした。

しかも、1回ではなく、数度もだ。

威力はともかく、あの連射だと、ハイデン魔術学院でも上位の生徒ぐらいしかできないだろう。


「まあ、見ての通り3点バーストから、単射」


ドーン!!


「連射もあります」


ドドドドドド……ドドドドドドーーーーン!!


「で、このロングソードの場合は、流石に実弾を装填するのはあれなんで、魔力弾薬しか対応していません。ですが、代わりに、こうして……」


なにか剣の柄に取り付けられた宝石を取り出し、また同じような宝石を取り付けて……。


「こうして、魔物の核、魔石を加工したものを付け替えることで、再び撃てます」


ズドドドド……ドドドドーーーーン!!


「まあ、魔力を注ぎ込めばいいだけですから、私たちにみたいに魔力が膨大な場合は付け替える必要もないのですが、ミスリードや魔力消費を避けるために付け替えるという手段はありでしょう。唯一の欠点といえば、放出系魔術が無効なフィールドではただの剣ですね。ということで、どうでしょうか!!」


そういって、私にその剣を差し出す。


「え、えーと、ナールジア様。質問することをお許しください。よく分からないのですが、私たちは、このような伝説の武器が必要なところへと向かうのでしょうか? ユキ様からは、現場を見て回らないかといわれたのですが?」


そう、そうだ。

私は確かにそう聞いた。

つまり、外務省設立に関連することのはずだ。

この様な、伝説の武器を持って行くような話では……。


「ああ、なるほど。これを持って、外務省設立がどれだけ期待されているかを、周りに示せということですか」


よくある、威圧行為、権力誇示のようなことだ。

ハイレ教会が、大勢集まって国々を訪問するようなものだ。

これだけの力を動かせるんだぞ? という、わかりやすい示し方。

脅しと変わりないが、そのわかりやすい行為をすることで、トラブルが抑制できるのならやらない理由はない。

ただ圧倒的な力に酔いやすい者も多いが……。

そこは、ウィードなら大丈夫だろう。なにせ、ソウタ様やユキ様がいるのだし。

そう、勝手に納得していると……。


「え? 使ってくれないんですか?」


意外そうな顔になるナールジア様。


「え? 私たちは戦争にでも行くのでしょうか?」


この武器1つあれば、1部隊どころか、1000人ほどは蹴散らせそうなんだけど。

これを使うような状況というと、それぐらいしか思いつかない。

お互い、どうしたものかと固まっていると、ドレッサたちが間に入ってきた。


「はいはい。とりあえず、このロングソードはエノラの得意武器じゃないから。拳なのよ。彼女」

「そうです。そちらでお願いします。それに、向こうを刺激したいわけではないので、大人しい物を」

「そうそう。ジアお姉がすごいのはわかるけど、今回はそっちでお願い」

「なるほど。それじゃ仕方ないですね。えーと、ロングソードは、じゃあ、ミコスさんに、はい」

「ふぇっ!?」


納得したのか、物騒な剣をなぜかミコスへと渡す。


「あれ? 剣が得意でしたよね?」

「は、はい」

「まだ、指輪だけで、武器はミコスさんに渡してませんでしたよね?」

「そ、そうです」

「じゃあ、後で使い心地を教えてくださいね。私はちょっと武器庫に行ってきますから」

「……」


ミコスは渡された伝説の殺戮武器を持って顔を青ざめさせている。

そりゃそうだ。あの武器はどう考えても、ミコスの手に余る。

なぜ、あんな伝説の武器を軽々としかも他国の者に渡すんだろう?

とりあえず、色々混乱している。事情を知っていそうなカグラに聞いてみるか。


「ねえ。カグラ?」

「な、なに?」

「なんで、ナールジア様は私たちのような、他国の人にあんな伝説の武器を貸し出してくれるの? ユキ様がそれだけ信頼しているっていうことかしら?」

「……」

「総本山でみた、じゅう? とか言うのもすごいけど、あのじゅうと似た能力を備えた剣はもっと凄いわ。だって、爆発する火炎魔術を連射できるのよ? ああ、そうか、じゅうはあの剣をもとに作られたのね? でも、それならなおさら、何でミコスなんかにって言うのは失礼かもしれないけど、私たちにそうそう貸し出せるようなものじゃないはずよね?」

「……」


……だけど、カグラから何も反応がない。

なんでよ? 私を無視して遊んでいるの?

でも、そんな様子には見えないし……。

そんな話をしている間に、武器庫に行ったナールジアさんが戻ってきた。


「おまたせしましたー。エノラさんはデリーユさんと同じ格闘タイプなんですね」

「え、あ、はい」

「じゃあ、こちらをどうぞ」


そういって、差し出されたのは、綺麗に磨かれて鏡のように反射する籠手だ。

カグラに話を聞くのはまた後にして、とりあえず、差し出された籠手を受け取る。


「これは、良い籠手ですね。無駄な装飾もなく、良い鉄を使っているようです」


素直にそういう。

正直、使い慣れた籠手があるのに、新しい物を渡されてもとおもったが、そこは流石ウィード。

そして、そのウィードで要人の武具を作っているというナールジア様の腕前だ。


「とりあえず、つけてみてください。調整とか着け心地とかもありますし」

「はい。では失礼をして……」


私はその場で籠手を着けてみる。

なるほど。固定するのは紐だけでなく、その間に鉄の棒をかんぬきのように入れて強度を上げているのか。

これなら、紐がほどけても籠手が落ちることはない。二重の備えという感じかな?

そのあとは、手を閉じたり開いたり、少し型を試す。


「うん。内側のあて布もいい感じです。これならかなり力を入れても、拳にダメージが来ることはないと思います」


あて布が付いてないと、籠手からの衝撃が直に伝わって辛い。

まあ、鎧だけならそういうのでいいのだろうが、私はこの籠手や具足で戦うから、あて布がないと長時間使っていられないのだ。


「それはよかったです。じゃ、あとは、あちらの的に向かって、右腕を向け、左腕は右腕を支えながら、右籠手にあるそこのスイッチを魔力を込めながら押してみてください」


何か、ちょっとした細工でもあるのかと思って、何も考えずに素直に……。


「これでしょうか?」


ドン!! ズドーン!!


「は?」


え? 腕から、先ほどの伝説の剣と同じような魔術が飛んでいった?


「問題ないようですね。はい。これがカートリッジですね。かんぬきのように見えるように偽装してますけど、剣の柄と同じようなものです。上手く使ってくださいね。デリーユさんはどうも籠手にこういう小細工はダメなんですよね。あの人は自力のパワーで籠手の小細工が死にますからね。武器職人、エンチャント職人としては、甚だ悲しいですが……。ま、あとは防具でしたっけ? 武骨な鎧はきらいなんですよねー。フィーリアちゃんと一緒に発明した繊維で作った服でも持ってきますか……」


なんか、そんなことを言ってナールジアさんは再びどこかへと飛んでいく。

だが、私は反応できずに、腕につけられている伝説の武器その2に意識を奪われていた。


「……なんで? なんで、こんな伝説の武器を、私たちにこうも簡単に……」


そんな風に動揺していると、不意に肩に手がかけられて振り返ると、遠い目をしたカグラが佇んでいた。


「……いい、エノラ? ユキたちにとって、この武具は実験の産物。ただのおもちゃとは言わないけど、本人たちからすれば、使えない二流三流武器なの」

「は?」


これが、二流三流武器?


「ユキたちにとっては、ちょっとした護身用の武器を渡しているつもりなのよ。この指輪もね」


カグラがそういって見せる指輪は国宝級のエンチャントを秘めた指輪だ。

そういえば国宝級なのに、カグラはともかく、ミコスやソロも持ってたわね……。


「いい? ユキたちが凄いのは、凄い魔術を使う事でも、ダンジョンマスターとしての力でも、ウィードとしての力でもないの。その全てを組み合わせて更なる、新たなる力に変えることが凄いの。エノラが見て聞いたものはまだまだ、ユキたちが持つ力の一端でしかない。きっと、私も知らない何かがあるわよ」


これがただの力の一端?

まだまだ知らない何かがある?

カグラから、驚愕の事実を聞かされて、唖然としていると、別の方向から声がかかる。


「おーい。カグラ、ミコス、ソロ、エノラ、いい装備はあったかー?」


ユキ様がどうやら様子を見に来たようで……。

私はとっさに近づいて、質問をした。


「あ、あの、このような武器を持って私たちは戦場にでも連れて行かれるのでしょうか!?」


そう、ユキ様たちにとっては、二流三流の武器だとしても、これが私たちにとっては強力な武器だということには変わりない。

だから、これを渡すという事は、それ相応の場所に連れて行かれるという事。

私たちはあくまでも外務省設立を手伝うための他国からの人員で、戦争を行うことが仕事ではない。


「ん? ああ、戦場っていうほどでもないけどな。まあ、イフ大陸でのあいさつだから、それ相応のモノを持っておかないといけないしな」

「……なるほど。確かに、これほどの武器を持っているのであれば、イフ大陸の人々が私たちを軽んじるわけはありませんね」


そういう理由か。

今まで訪問したことのなかったイフ大陸へ赴くからか。

私たちの身の安全や今後の立場を最大限考慮して、こういう装備になったのか。


「そうそう。軽んじるような連中はばったばったと倒す予定だから、遠慮しなくていいから」

「は?」

「どういうことよ、ユキ!?」

「んー。まあ、今から行くのはアグウストでな。色々問題があるんだ。大人しく終わるならそれでよし、だけど、何かあるなら遠慮はするなって話だよ」

「ああ、そういうことですか」


つまり、安全に安全を重ねるということだ。

交渉事の席ではよくある。

カッとなって動く側が悪いのだが、大人しく暴力を振るわれて怪我をするのは馬鹿らしいからこその装備ということだ。

で、私は納得したのだが、カグラは納得してないようで、胡乱な感じでユキ様に聞き返す。


「……本当に?」

「本当だよ」


そういって笑う姿は……、どことなく胡散臭かった。 




おでかけの服選びで何も間違いではない。 ね?

おでかけには最適の装備をね。


ナールジアにとっては試作機なだけで、ちょっとおでかけついでに性能を見てもらえればOK。

あ、もちろん自爆装備はユキたちが止めておりますとも。


それで、本日の投稿日の日付は4月1日 エイプリルフールということで、ネタを一発


「祝い!! アニメ化決定!!」


という、嘘をついてみました。

無理だからね? 嘘だからね? こんな会話というか説明文があるからこそ楽しい物語をアニメでやるのは難しいからね。

そんな話は微塵も上がってないからね? いいね、嘘だよ? ほんとだよ。


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