第657堀:溜まっているお仕事
溜まっているお仕事
Side:ユキ
色々あったが、これにて俺たちはハイデンなどの国が存在する新大陸における、第一次活動は終わりとなった。
神に連なる騒動の全部を片付けたというわけではないが、これ以上首を突っ込むとハイデンなどの国の面子に関わるし、地元の国々でどうにかなるだろうという判断でだ。
無論、何かあれば助けに入ることになってはいるが、俺たちが積極的に介入することは交易とか交流以外ではほぼないだろう。
「はぁ、俺たちが召喚されてから約5か月か、長かったのか早かったのかわからんな」
「普通に考えれば国家間規模の問題を5か月で解決とかありえないわよ」
そう言いながらやってくるのはセラリア。
「まあ、それはそうなんだが、俺としては年明けに誘拐されて、気が付けばもう夏だからな。個人的には長かった気がするんだよな」
季節が変わるまで住んでいる場所を離れていることなんか、現代日本人には長期の出張でもしていない限りありえないことだし。
いや、その出張をしている世の働く人たちは大勢いるけどな。
「それに、解決と言っても、俺たちにとってだからな。まだまだ問題は残っているし、そこはどうなるかわからん」
「上手くやるわよ。私を前にして宣言してたんだから。あのお姫様は肝が据わっているわよ。国が崩壊していても立て直すぐらいね」
「それは同意。あれはかなり根性はある。と、そこはいいとして、昨日は疲れてて会議の後は解散になってたけど、カグラたちの仕事の説明とかしてなかったよな。あっちの手配しないとな……」
俺たちの邪魔をするアクエノキは追放したが、それで終わりではないのは当然のこと。
これからはハイデンやフィンダール、ハイレ教と仲良くして、召喚されて色々滞った分を回収しなければいけない。
つまり、ハイデンの外交官であるカグラはかなり丁重に扱わないといけないのだ。
ちゃんとこれからウィードとハイデンの間を取り持つために。
キャリー姫とかカミシロ公爵と直接話し合うのも、今までは状況的にありだったが、これからはカグラを通さないと外交官の意味がないし、ハイデン側がウィードに不信を持ちかねない。
素直に仲がいいとは思われないのが面倒な世界だよな。政治って。
もう寝てたい。じゃなくて、カグラはどこ行った?
「ああ、カグラの方は大丈夫よ。トーリやリエルたちが対応しているから……」
「そうか。トーリやリエルが対応しているなら大丈夫か。仲良さそうだしな」
「ええ。でも様子は見ておきなさいよ? 今は話し合いの最中だし、夜か、明日にでもね」
「わかってる。カグラは無理をするからなー」
なんとなく、セラリアが最初何かおかしく感じたが、カグラの体調を気にしてだろう。
一先ず、カグラの対応はトーリたちがしているなら、今は俺の方も仕事をしないといけない。
で、セラリアが俺の執務室に来ているのも仕事の為だ。
ちなみに俺の現在の仕事は、召喚から始まる、中級神派の一連の事件報告書をまとめるという大仕事。
たかが報告書じゃねーか、というかもしれないが、消費した予算やら人員、物資の消費、時間経過とかもう色々まとめて書かないといけないわけだ。
これが大変じゃないといえないだろう。
いや、毎日こまめにまとめてはいたから……そこまでもと言いたいが、やっぱり大変だ。
駄目神に強奪されてハイレンの物になったコアとかどう予算に計上していいか難題だしな。
「で、セラリアが来たのは……」
「もちろん仕事の話よ」
「だよな」
念のために聞いてみたが、雑談をしに来たわけではないようで残念だ。
「分かっていると思うけど、ロガリ・イフ国際交流の方の話なんだけどね」
「初回会談から大体3か月か。えーと、あの時俺たちがハイデンで一体何をやってたときだったけ?」
「えーと、確か、ハイデン王都での掃除をした時ね。学院に行く前よ」
「ああ、そんな時か。ハイデン政府が混乱していたから空いていた時間に仲介役したんだっけな」
「都合よく記憶改変しないでよ。こっちから国際交流持ち掛けておいて、あなたが行方不明の上に見つけてみれば、新大陸の国同士の戦争に介入中で、ベータンでの国際交流が遅れてイフ大陸の連中はピリピリしていたでしょうに」
「あの時は、俺ばかり代表をしていたのは問題だと実感したよなー。ま、あれで、俺が忙しかったことも証明したし、向こうも向こうでイフ大陸連合の会議が色々始まっただろう?」
「ああ、あの時の亜人達の村への襲撃とか、アグウスト騎士の暴走の話での不穏分子の炙り出しね」
「そうそう」
イフ大陸の方はノーブルの方に任せているが、色々大変だという話は聞いている。
コメットもヒフィーの愚痴がうざいというのをよく聞いている。
「ま、それからの進展は詳しくは聞いていないでしょう?」
「聞いていないな」
だって、国際交流会談のあとはクソ忙しかったからな。
学院で先生やって、学院七不思議調べて、ハイレ教の騒動で中級神派の神を捕縛して処理が大体1か月半と考えれば高速展開だと言えるか?
「まあ、たかが2ヶ月もない期間で状況に何かが大きく変わることはないけど、ベータンを通じての交易でのロガリ大陸の品物の有用性を理解してもらって、交易計画自体は予定通り上向きね。食料品を主体に特にお菓子、甘味系が金持ち相手によく売れているそうよ」
「向こうは国境争いをまだ続けているからな。食料品をお金出して買えるならありがたい話だろうさ」
「まあ、あとは急激な連合結成によるトラブルがこっちの書類ね」
「あいあい」
「じゃ、ちゃんと把握しておいてね。今後の展開について相談したいってイフ大陸の連中が面談希望しているから」
「そっちかい」
「喜びなさいよ。小国である我がウィードに大国が頼るって状況よ。あ、晩御飯までには戻ってきてね。リーアたちもよろしく。私もさっさと仕事に戻るわ」
「「「はい」」」
セラリアはそう言ってさっさと自分の仕事に戻って行った。
はぁ、なんで俺の方に相談なんだよ……。
とりあえず、新大陸報告書の方は早急ではあるけど、今日明日の話ではないのでリーアたちに細かい計算を任せて、イフ大陸の現状を把握することにする。
・ジルバ帝国
他の大国との国境争いは落ち着いたけど、後方の小国群の文句がうるさいらしい。
まあ、ジルバのおっさんはTHE・王様って感じの人だったからな。
敵は倒すって方針だったのが、他の大国との講和し連合を組む方針になって従ってきた小国群が文句を言っているそうな。
かといって、小国群鎮圧、殲滅に動くと国際交流で出遅れることになるから、頭が痛いそうだ。
話があるならきっと、俺に悪知恵を借りたいとかそういうのだろう。
「で、ジェシカ。そっちの方からは何か細かい問題とかは聞いているか?」
「いえ、書類にあるように小国群が文句というか不満をあらわにしているようです」
「戦争が無くなって助かるという方向じゃないんだな」
「元々、陛下は勝って褒賞を与えるという条件で小国群をまとめていましたから」
「あー、ジルバの勢いに乗って勢力拡大したかった小国群は不満になるわな。だけど、文句だけなんだろう?」
「文句だけですね。戦争を吹っかけても負けるのは確実です。最悪はエクスやエナーリアの横槍介入で押さえられかねませんし」
「ああ、騒乱を鎮めるための介入な。国際交流の為っていう大義名分もあるし」
「まあ、陛下の事ですから特に問題なく収めるとは思いますが」
「あのおっさんならそうだろうな」
そして次の国へと視線を向ける。
・エナーリア聖国
こちらも他の大国との国境争いは落ち着いたものの、ウィードの突然の登場に、少なからずジルバと同じように小国群は多少混乱しているらしい。
問題点としては、聖剣を担ぎ出しておいて、なんで講和、連合なんだという連中がいるらしい。
まあ、お約束という出てきて当然の話ではある。
「で、エージル。お国からは?」
「特に、別に戦争におけるよくある問題だからね。ウィードというか、ロガリ大陸の交易、交流成果があれば黙るだろうと見ているよ。ジルバのように敵国を褒賞っていうことも言ってないからね」
「なるほどな」
さて、お次は……。
・ローデイ王国
ここはお隣のホワイトフォレストと公然の秘密で仲良くしているうえに、もう一つの隣のエナーリアはジルバと国境戦が激しかったため、こちらとも仲良くしており、イフ大陸連合には小国群も賛同していて落ち着いているそうだ。
問題点として……。
「ブレード陛下が勝手にベータンへ遊びに行くので、何とかしてくれと、お父様やロンリ宰相からお願いが……」
「知らん」
「ですわよね。はぁー」
フットワーク軽すぎのおっさんはほっとけばいいんだよ。
息子さんが頑張っているんだし、ってわけにもいかないんだろうなー。
ま、次々。
・ホワイトフォレスト王国
問題なし。コメットの属国。
略しすぎだな、他国との会談において亜人であることでのトラブルが多々あるのが問題。
ウィードやロガリ大陸の亜人、獣人、エルフ族などとの交流を進めていって、ホワイトフォレストの亜人悪感情の軟化協力をとコメットに連絡がいっているらしい。
じゃ、次はノーブルの国。
・エクス王国
ゲート技術の専有により、国内の経済はかなり活性化。もともとイフ大陸全域に喧嘩を売る予定だっただけで、動いてなかったので、魔術道具技術を使っての一般家庭の環境改善などで喝采を受けている。
問題点としては、ゲート技術の専有があるが、まあそれなりに自重しているのでトラブルにはなっていない。小国群の件もドレッサの国のようにちゃんと支援はしっかりしているので安定。
うん。ノーブルはまじめで偉いな。
裏でのイフ大陸管理という仕事を完全にこなしていると言っていいだろう。
まあ、あとでノーブルとは個人的に報告会だな。
さて、最後はクリーナの祖国である……。
・アグウスト王国
隣国のエクス、ホワイトフォレストとは仲良くやっており、小国群との争いも特に目立ったものはなし。
問題点はないように見えるが、前回のイフ会談にて騎士が暴走してウィードをこき下ろしたことで、他の5大国からにらまれており、この報告を聞いたロガリ大陸諸国も警戒態勢。
これが原因で俺の仲介なしにロガリ・イフ会談はまだ行われていない。
思ったよりも国内は反発が激しく、結構苦労しているようだ。
クリーナの呼び出しとかもあったからな。
「……クリーナ。アグウストの話は聞いているか?」
「……ん。結構酷いらしい。爺、お師匠から未だに顔を出すなと連絡が来ている。おそらくかなり危険とみるべき」
「内戦の兆しありか。ウィードの実力を見せなかったのが問題か?」
「それもあるけど、あの文句を言った騎士が思ったより国内の立場が強くて現政権に対して圧力をかけている。どのみち、ユキには勝てないことがわかっていないだけ。それをしっかり教えられなかったのが問題」
クリーナの言う通りではあるが、このままだとアグウストは国際交流の場では確実に仲間外れにされかねない。
そうなると国際交流の成果を示せないのでさらに現王家は非難されることになるという悪循環か。
どこかでテコ入れしないとなー。
「というか、内戦になってしまうと、他国が放っておくわけにはいかないから、俺たちとしても問題だよな。詳しい情報を集めるか。霧華」
「はっ」
「というわけだ。アグウストの調査に力を入れてくれ。増員で」
「了解しました」
はぁ、イフ大陸も荒れてきてるな。
大人しく話は進まないかー。
いや、戦争が勃発してないだけましなのか?
おさらいとして、イフ大陸の6大国の報告から。
みんな何か国覚えていたかな?




