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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第639堀:人は学び強くなる

人は学び強くなる



Side:カグラ



ぼふっ、ぽふっ、ぼむっ。


そんな3つ音が部屋に響く。

なんの音かと言うと……。


「もう、私このまま寝たい……」

「そうだねー。ベッドがフカフカ……」

「で、でも……、お風呂にはいらないと……」


そう、先ほどの音は、私たちがベッドに倒れ込んだ音なのだ。

私たちは、ハイレ教会総本山説得への参加を認められるために必要な訓練を行っているのだが、それが極めてハードだった。

というか、こんな経験をしているのは、私たちがいる大陸できっと私たちだけだと思う。

なにせ……。


「うっ。死臭がする」

「このままじゃ、ソロの言う通り寝れないね」

「……消臭剤かけて、お風呂行きましょう」


どこの世界に、ゾンビに追いまわされて、戦って、死体耐性をつけようとする訓練があるのか。

恐らく、このウィードぐらいのモノだと思う。

私たちはオーノックで狂気を見たと思っていたが、まだまだ序の口だったということだ。

世界は広い。ただの死体やゾンビなんて目じゃなかった。

私だけに見える幽霊、ゴーストとか、四つん這いで迫ってくる女の人とか、首がいきなり180度回転するとか、もうやってられないわ。

初日は、逃げ回った末に、止めのゴーストを見て失神、プラス失禁。

一緒にいた姫様とスタシア殿下ですら、最後は焦っていたぐらいだから、どれだけ酷かったかわかるはずだ。

と、そんなこと今はいいか。

さっさと、布団にファブ○ーズをして、窓を開けて換気しておかないと、ベッドでゆっくり寝られない。

というか、夢にまで見ることになる。

さっさと、お風呂にいって、死臭と記憶を洗い流すとしよう。

そういうことで、私たちは部屋の消臭を済ませたあとは、迷わずお風呂へと直行する。


「普通のスーパー銭湯とか行きたかったわ……」

「……気持ちはわかるけど、こんな臭いでいけるわけないじゃん」

「……でも、ユキ先生はちゃんと私たちの為にお風呂用意してくれましたし」


そう。ユキはちゃんと私たちの為に専用の浴場、お風呂を用意してくれた。

しかも、露天風呂に、屋内風呂のセットだ。

こちらはこちらで広々と入れてゆっくりできるのだが、私個人としては、こうみんなでワイワイ入っているウィードの公衆浴場が、いろいろな店舗が近くにある方が楽しめて嬉しい。

……ここにいると何というか、失礼なのだが、牢獄にいる感じだ。

でも、本物の軍隊はこんなに恵まれていないって、スタシア殿下も言っていたし、私もバイデ防衛戦の時に身をもって体験している。

お風呂なんて入ってる暇はなかったし、食事をしていたはずなのに、食べたという実感はなかったもの。

そんなことを考えながら、移動していると、すぐにお風呂へと到着する。


「はい。いらっしゃいませ」

「あ、どうも」

「いつもお疲れ様です。霧華さん」

「今日もお風呂使わせてもらいます」

「しっかり、体を洗って、ゆっくりしていってください」


このお風呂場の番台に座っているのは、このウィードのユキ直属の諜報部隊の隊長を務めている霧華さんだ。

私と同じ黒髪で、なんというか、私が子供に見えるほど、大人びている美人さんだ。

しかし、驚くことなかれ、この人は魔物だ。

首が取れる、デュラハン・アサシンというアンデッド系の魔物らしい。

何より、ユキが肝入りで作った部隊なので、ユキへの信頼も厚いし、逆にユキの信頼も厚い。

私たちの大陸では、アンデット系は体を維持することが困難であり来られないので、仕方なく、最近はウィードや各国の諜報を行っているとのこと。

で、なぜ今番台に座っているかというと、この私たちの訓練課程、日程を組んでいるのが、この霧華さんだからだ。

ユキが私たちの訓練日程を細かく決めるほど余裕があるわけがなく、アンデッドであり、人を良く知っている霧華さんに私たちの訓練を任せたというわけだ。

まあ、幽霊屋敷とかいう元ネタはユキが提供したとかなんとか……。

無論、霧華さんも超が付くほどの実力者で、姫様たちを含む5対1で戦闘訓練をしたが、あっという間に負けた。

防護の指輪ありで。

落とし穴に落とされて、そのまま生き埋めにされたのが3回。水に包まれたのが2回。縛り上げられて動けなくなったのも2回。

指輪の性能に頼りすぎるなと、身をもって教えられた。

直接物理攻撃が効かないなら、それ以外で攻めればいいというわけ。

しかし、霧華さん本人は気立ての良いお姉さんという感じなので、私たちは特に霧華さん自身に対して拒絶感や忌避感などはない。美味しい食事ができるお店とかも案内してくれるし、ウィードでの私たちの案内役でもある。

私がウィード経験者といってもちょっとだけだし、それじゃミコスやソロを案内できないから、そういうのも含めて、ユキは霧華さんを充ててくれたんだと思う。

そんなことを考えながら着替えていると、不意に霧華さんから声を掛けられる。


「あ、そういえば、先にキャリー姫様にスタシア殿下、アマンダさんに、ドレッサ、ヴィリア、ヒイロが入っていますよ。あとで一緒に晩御飯でも食べようって。それに私もお邪魔していいですか?」

「あ、はい」

「霧華さんなら歓迎ですよ」

「一緒に食事しましょう」

「ありがとうございます。と、そういえば、今日のこの浴場の利用者は3人で最後ですし、一緒に入りますか」


そう言って、霧華さんも脱衣所に入ってきて、すぐに着物を脱ぎ始める。

やばい。肌が白くてとても綺麗だ。

ぬぐぐぐ……。同じ女性として何か悔しい。

私たちの地域じゃ男尊女卑がつよいせいか、肌が日に焼けていると女が出しゃばって表で働いているという意味合いがあり、貴族の間では好まれていない。肌が白いというのが、令嬢の一種のステータスでもあった。


「いつ見ても、白い肌ですねー。羨ましー」

「ううっ。私は色黒ですよね……」

「あはは。まあ、私は見ての通りアンデッドですし、肌が白いというより、血の気がないので青いというのが正しいでしょうね。そして、私個人としては、ソロさんみたいに日の下で肌が焼けるというのがうらやましいですね。もうそういう変化はありませんから」

「気が利かなくてすいません」

「ごめんなさい」


2人はちょっと失礼なことを言ってしまったと、霧華さんに謝る。

私も反省。霧華さんだって、好きで死んだわけじゃないんだ。

あの白い肌は自分が死んでいるという証拠なのだろう。

羨ましがってどうする私。


「いえいえ、気にしないでください。褒めてくれたのはわかりますから。死体である私を嫌わないでくれてありがとうございます」

「いえっ!! 嫌いになんてなりませんよ!!」

「そうですよ。というか、こんなに話してくれるんだし、死んでるって定義が間違ってません?」

「私も、霧華さんは生きてるって思います」


こんなできた人を死体、魔物だからって軽蔑する奴がいたらボコボコにしてやる。


「なるほど。主様が作戦参加を認めるわけです。いえ、違いますね。ある意味同じ感性の人が集まってくるのでしょうね」

「「「?」」」

「いえ。こちらの話です。さあ、いつまでもこの場で裸でいても仕方ないですし、お風呂に行きましょう」


霧華さんに促されて、お風呂に入ると、姫様たちが、シャワー台から湯船へ移動していた。


「あら? 霧華様? ああ、カグラたちが来たのですね」

「ええ。キャリー姫様、スタシア殿下、湯加減はいかがですか?」

「今から入るところですよ。っと……。いいお湯だ」

「そうですね。一日の疲れが取れるようです」


そんな話をしながら、姫様たちはドレッサたちが入っている湯船に一緒にはいる。

ドレッサたちも私たちが来たのに気が付いていたようで、話しかけてくる。


「思ったよりも遅かったわね」

「脱出するのに時間がかかりましたか?」

「ふやぁー……」


ヒイロがぷかーっと浮かんでいるのは放っておいて、体を洗いながら質問に答える。


「仕方ないわよ。なんであそこずっと同じ部屋が続くのよ」

「玄関開けても外に出られないし……」

「変な声を上げて襲ってくる四つん這いの女の人がいましたし」


今日の訓練はもう本当に心に来た。心臓に良くない。

前日のゾンビ退治なら、もうハイになって魔術で薙ぎ払うってのができたんだけど、今回は魔術が使えないし、霧華さんから、相手の未練を絶つ方法、成仏できるよう方法を探してくださいね。と笑顔で言われて、楽な訓練かと思ったけど、全然違った。

最初はさっさと終わらせようとして、小さい一軒家を手分けして探したが、いきなりそのお化けが出てきて、気絶して玄関に戻されていた。

どうやら、個人でそのお化けをみると強制的に気絶するらしく、3人でいて、なおかつ視線を集めないとダメなようで、かなりきつかった。だって、どう考えても体の関節がおかしい女の人が迫ってくるんだから。それを凝視しろって言うのもね?

で、脱出方法が、家の中に散らばっているバラバラにされた彼女の体を集めるというものだった。

なんか気絶する瞬間に「からだ……どこ?」とか囁いてたり、日記に体を隠されたとかあったからそこから推測できた。

最後の頭部を回収するとか、もう……怖いのを通り越してたわよ。


「あー、加代さんか」

「加代さんですね」

「……加代おばちゃん」


どうやら、この3人は加代さんを知っているようだ。


「あれなら仕方ないか」

「ですね。あれは、慣れるまで時間がかかります」

「……別にヒイロは平気だった」

「まあ、ぱっと見れば、ただの殺人現場ですからね。そして、人の潜在的な恐怖を煽る形ですから、初めてはきつくて当然です。ですが、3人ともそれを乗り越えて、たくましくなってますよ」


そりゃー、あんな経験をすれば、オーノック教会の地下で見たあれは気持ち悪いぐらいで、あそこまでではない。

たとえゾンビになって動き出したとしても、魔術が使えるだろうし、恐怖の度合いは低いと思う。


「そういえば、姫様たちも同じ訓練のはずでは? 先に行きましたよね?」

「ええ。行きましたよ。私たちも加代様にお会いしました」

「そういえば、気絶はしなかったな? なぜかわかるか、霧華殿?」

「加代さんは相手の恐怖心を増幅して、利用するので、キャリー姫様やスタシア殿下は当初の目的である、相手の未練を絶つ方法を恐怖を振り払って探していたからでしょう。驚きはしても、恐怖はなかったのでは?」

「ああ、そういえば。そうだったかもしれません」

「というか、彼女をバラバラにして殺した男が許せないという気持ちが強かったな。女性を何だと思っている。しかも妻だけでは飽き足らず、子供まで手にかけて。屑だな」


そうそう。最後はそんな事実を知って真面目に手足とかを大半集めてからは、気絶しなくなったわね。

心を強くもてって話ね。


「あのー。そうやって憤ってくれるのはありがたいのですが、あれ、設定なんで……」

「「「へ?」」」


なんか唐突に、お風呂場の出入り口から、声がしたのでそちらを向くと、加代さんが子供を連れてたっていた。


「「「うきゃぁぁぁーーー!?」」」


私たちは思わず叫び声をあげてしまった。

だって、だって、血まみれのままこの場にいたんだから。

あれ、訓練でダンジョン内だけじゃ……。これって襲われる!?


「落ち着きなさい。カグラ、ミコス、ソロ。加代様やご息女に殺気はありません」

「キャリーの言う通りだ。むやみやたらに怖がるのは軍人としてだめだ。で、加代さん。どうしてここに?」

「あ、いえ。仕事が終わりましたので、霧華さんにお風呂に入っていけといわれていたので足をのばしたんですが。なんか怖がらせちゃってすいません」

「ごめんなさい」


そういって、加代さんと娘さんが頭を下げる。


「あ、いえ。おどろいちゃってすいません」

「いえいえ。こちらこそ、仕事とは言え、こわがらせちゃったみたいで……」


私たちはそう言って、お互いに頭を下げる。

別に先ほどのお化け屋敷のような鬼気迫る表情はない。

まあ、血が渇いて張り付いているので、何も知らなければ叫ぶと思うが。


「いえいえ。私が呼んだのに話していなくてすいませんでした。どうぞ、加代さん、希望ちゃん」


霧華さんに促されて、シャワー台に座り、普通に体を……。


「では、失礼します。ほら、希望」

「はーい」


そういって、その親子は首を取って、前面に持ってきて髪を洗い始めた。


「あ、私もそうすればよかった」


同じように霧華さんも首を取って、髪を丁寧に洗う。

確かに、ああやれば、髪の手入れは完璧だろう。

しかし、しかしだ。


「……なんか、違和感があるような」

「……ですね」

「なれるわよ」

「そうです。慣れです」


ミコスとソロの言葉に、ドレッサとヴィリアがそう返すが、これになれていいのだろうか? と思ってしまう私だった。



ちなみに、加代さんたちは、明日アマンダとエオイド相手の訓練らしい。

恐らく、あの2人は気絶すると思う。




カグラ>どこの世界で、ゾンビに追いまわされて、戦って、死体耐性をつけようとする訓練があるのか。

雪だるま>カプ○ンのバイオハ○ード ヘリは落ちる 地球のバイ○ファンは常に訓練を楽しんでいる

カグラ>……。


とまあ、読者諸兄の大半はバイ○ファンではないだろうか?

よく、ゾンビを撃つことあるだろう?

というか、昨今、ゾンビゲーとか別に珍しくないよな。

実体験するのは御免という人は多いだろうが、脳内シュミレーションをした人は多いだろう。

そして、それは考えもしなかった。という事態よりはマシなのだ。

ゲームも力になる。

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