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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第629堀:カグラたちの今後と片手間の話

カグラたちの今後と片手間の話




Side:ルルア



旦那様に急遽呼び出されたときは、教会強襲作戦に失敗してけが人でも出たかと思ったのですが、幸い、酷い現場を見て具合を悪くした、カグラさん、ミコスさん、ソロさんがいただけでした。

腐敗した解体されたアレを見てしまえば、まだ少女な彼女たちがああなるのは無理もありません。

私ですら、あの現場写真と回収された遺体の確認をしたときは、顔をしかめました。人はどれだけ残酷になれるのかと。あの現場は間違いなく、マジック・ギアに魔力を注ぐために用意された拷問部屋であり、そして、壊れたモノを解体する場所でした。

幸い、腐敗した遺体からの病原体による感染症は認められませんでした。


「ふぅ。こんなところですね」


私は、3人の容態をカルテに記載し、印刷して旦那様の所に持っていけば、ここでのお仕事は終わりです。

本音を言えば、旦那様と一緒にこちらで活動していたいのですが、ウィードの方もロガリ・イフ大陸間交流の関係で大忙しです。

病原菌の持ち込みを防ぐための検疫体制の確立など、私もリテア聖国のフォローだけでなく、医学の方面でも大忙しなのです。

エルジュ様の方も、私と一緒に検疫体制、病院での医療活動で大忙しです。

医学の知識がまったく世界に浸透していないのが問題で、人材が育っておらず、人手がまったく足りないのが原因なのですが、だからと言って、大陸間交流を延期するわけにはいきませんし、これを機に医学という見地から病気を治すという認識を広げるという旦那様の狙いもありますので、ここに残るわけにはいかないのです。


「……非常に残念ではありますが、命には代えられません」


万が一、対策が遅れて危険度の高い病原菌が蔓延すれば、それこそ大陸間交流が大陸間戦争へと移行しかねません。

私たちの行動一つ一つが意味あるものなのです。それが、旦那様の助けになるのです。

もっと、イチャイチャしたいとかは、この騒動が終わればしばらくは落ち着くはずなので、それまで我慢。我慢です!!

そんなことを考えつつ、ハイデンでの拠点であるユキさんの執務室を訪れると、なぜか執務室にはユキさんの姿はなく、デリーユが代わりに机で書類仕事をしていました。


「あれ? デリーユ、旦那様は?」

「ん? おお、ルルアか。ユキなら、リーアと一緒に隣の部屋でカグラたちの看病じゃよ」

「看病?」


デリーユの発言に首を傾げる私。

旦那様がわざわざ?


「なにか、容体でも急変しましたか?」


何か見落としたのかと一瞬焦るが、デリーユは首を横に振って否定する。


「いや。これと言ってなにもないのう。ただ、ユキがな……」

「旦那様がなにか?」

「……うーん。こればっかりはな。まあ、会ってみるとよい」

「はあ? とりあえず、隣にいるんですね?」

「そうじゃ。とりあえず、妾は書類仕事じゃよ」


珍しくデリーユはそのまま書類仕事を再開する。

普通なら私と一緒に旦那様にべったりなはずなのに。

不思議に思いつつ、隣の部屋に入ると、旦那様が非常に思いつめた様子で、カグラさんたちの看病をしていました。


「だ、旦那様?」

「ん? ああ、ルルアか」

「はい。カルテができたので持ってきたんですけど」

「そうか。ありがとう。見せてもらうよ」


そういって旦那様はすぐに普通の顔に戻り、私からカルテを受け取って目を通しますが、すぐに険しい顔つきになっていきます。

なぜでしょう? 特に何も病気というわけではないのですが。


「あの、旦那様。なんで、そんなにつらそうなんですか? 何かあったんですか?」


誰かにいじめられたんですか?

その人は凄いことにしますから、言ってください。

そういうと、旦那様は驚いた顔をして、苦笑いを始める。


「いや、このカルテを見て何もないのを見て、安心して、不甲斐ないなーとか、ガキか俺はと思ったりしただけだよ」

「不甲斐ない? ですか? 旦那様が?」


意味が分からない。旦那様が不甲斐ないのなら、世の中全ての男は不甲斐ないです。

私はそんなことを思いながら旦那様を見ていると、旦那様はカグラさんたちに目を向けます。


「カグラたち、というか、カグラに無理をさせ過ぎた」

「え?」


無理? どういうことでしょうか?


「ルルアを呼んだのは、カグラが体調を崩したからってのは知ってるな?」

「ええ。嘔吐したと聞きました。ですが、あれだけ酷い状況を見たのです。当然でしょう」

「ああ。当然だ。当然なのに、気が付かずに、俺はカグラに事後処理とか色々含めて俺の所に報告にくるまで、フォローできなかった。気が付いたのはカグラが執務室で吐いてからだ。休めっていうけどさ、聞こえてないみたいで、そのまま片付け始めるんだよ。真っ青なまま素手でかき集めて、謝りながら、泣きながら……」

「……旦那様」


ああ、そういうことか。

私はようやく旦那様がこんな顔をしている理由に思い至った。

カグラさんに申し訳なく思っているのですね。


「……確かに。旦那様にしては、ちょっと気が回りませんでしたね」


いつもなら、女性や子供にこんな仕事を押し付けるようなことはしませんから。


「……だろ? どこかで、俺もカグラに対する恨みつらみってのがあったみたいだ。嫁さんたちには、そんなことするなって言っておいてこの始末だ。自分で今まで気が付かなかったのが最大の問題だな。カグラはそれに文句を言わず頑張ってきて、限界が来た」


……私としては、カグラさん、いや、ハイデンが起こした、召喚からの一連の事件のことは、本来、カグラさんの首を斬り落としてもすまないレベルの事件です。

国際問題、というか普通なら戦争勃発で数多の血が流れて当然の出来事でした。

旦那様の配慮は、カグラさんにとっては十分幸運に恵まれていると思いますが、旦那様にとってはそうでなかったようです。

今までのカグラさんの頑張りも知っていますし、カグラさんとも実際話したことがあるので、悪い人ではないというのは理解しています。だからこその罪悪感なのでしょう。

今回のことは、旦那様の日本人としての良心に突き刺さったのでしょうね。

しかし、だからこそ何といっていいのか悩みますね。

気にしなくていいと言って気にしないのであれば、旦那様は最初から気にしていません。

この場でカグラさんたちの看病をしているということが、何より心配しているという証拠でしょう。


「……恨みつらみ、人としてあって当然です。旦那様はこれまで我慢なさり過ぎでした」


不意に勝手に口が動く。

でも、迷いはない。

そう。今まで旦那様は頑張ってきたじゃないですか。

異世界に連れてこられて、私たちのことを含めて多くの厄介事を解決してきました。


「……どんな理由があったとしても、年下の少女にしていい仕打ちじゃない。というかほぼ八つ当たりだ」

「はい。八つ当たりかもしれません。ですが、それも人として当然の感情です。ある意味、私はカグラさんがうらやましいかもしれません。私は八つ当たりなどされたことはありませんでしたから。まあ、意地悪は多少ありましたが」


意地悪というより、正論による畳みかけですから、私が子供だったのですが。


「八つ当たりなんてされて嬉しいモノじゃないだろう?」

「いえ、案外好きな人に八つ当たりされるというのは、頼ってくれているという感じがして嬉しいものですよ? 子供っぽくていい感じです」

「……普通なら離婚を言い渡されそうなんだが」

「その程度で離婚するのならその程度の間柄だったのでしょう。しかし、私たちは八つ当たり程度で崩れる間柄ではありませんので」


今まで散々頑張ってきた旦那様が弱音を吐いて何がいけないのですか? その程度を受け止めなくて何が奥さんでしょうか?


「……話がずれたな。というわけで、カグラの進退について悩んでいる感じだな」

「進退ですか……。どうするおつもりで?」

「まあ、これ以上俺の八つ当たりは受けさせたくないからな。今までの詫びも込めてウィードでの外交官勤務に専念かな。ミコスとソロも一緒に。適当に美味しいモノ食べてゆっくり過ごしてほしいってところだ。どうせ、あとは教会の裏にいる連中を潰すだけだからな」

「ハイデンとの連絡はどうするおつもりですか?」

「学院で連絡が取れるだろうから、学院長やカンナに頼めばいいだろう。ウィードの外交とは別件だから、これをカグラに押し付ける理由もない。姫さんに今回の経緯を伝えれば納得するだろうさ。しなければ、写真を見せるだけだ」

「また過激ですね」


この一帯には魔力で体を維持するタイプの魔法生物がいないので、ゴーストやゾンビなども見かけることがないので、グロテスクなものは見慣れていません。

トーリたちがカグラさんたちと一緒の現場にいってぴんぴんしているのは、簡単にいえば慣れです。

ゾンビでグロテスクなのは見慣れていますからね。私も聖職者で、医者ですから、死体は見慣れています。まあ、それでも顔をしかめたくなるほどのバラバラでしたから、カグラさんたちが倒れるのも当然なのですが。


しかし、カグラさんの気持ちを知っている私としては、その決断はおそらく、カグラさんを更なる絶望に突き落としそうな気がするんですが、どうしたものか。

トーリやリエル、カヤにも相談されているんですよね。

……旦那様は色々なしがらみのために、人を巻き込むのは良しとしません。

婚姻関係で安全を図るというのは、国や、貴族の為であって、当人たちの幸せを守るモノではないというのがユキさんの基本思考ですから。

そのため、私やセラリアは特にその関係で拒絶されていましたからね。

ですけど、事実でもあるので、強くも言えません。

というか、本当に好き合った相手がいるという人も珍しいのですが。

私みたいに、色々恥ずかしいところを見られて始まる愛もありますし。


と、個人的な意見をいっても旦那様は納得しないでしょう。

今まで散々そんな理由で奥さんが増えてきましたからね。

カグラさんを泣かせてしまった今、強引に話を進めても旦那様が嫌がるでしょう。

そして、それを見て聞いたカグラさんが首を吊りそうなので、強硬は危険ですね。

その前にカグラさんには越えてもらうべき相手がいますし……。

ああ、そっちをウィードにいる間に乗り越えろという方向性に持っていきましょうか。

それができれば幸せになれるとカグラさんには言っておいて、旦那様はその間に仕事に専念できる。


完璧じゃないですか。

今すぐ解決できる問題じゃないですし、これが一番いいでしょう。


「そうですね。カグラさんは頑張ったと言って、下がらせた方がいいという意見は賛成です。無理をして前線についてきても怪我をしそうですから」

「だよな。カグラたちは頑張った。あとは大人がやるべきことだ。ちゃんと謝って、あとはゆっくりしてもらう」


私と話したことで、すっきりしたのか、旦那様はそういうと、顔を両手でパチンと叩いて立ち上がる。


「デリーユに書類を任せっきりだから戻る。ルルア、ありがとう」

「いいえ。旦那様のサポートはして当然です。妻ですし、お医者さんでもありますからね」

「そうか」

「そうですとも」


そういうと、旦那様は微笑んで執務室へと戻っていき、代わりにデリーユが入ってきた。


「上手くやったようじゃな。妾はどうにもユキに何と言っていいかわからなくてのう。仕事を頼まれたこともあってほったらかしにしてしまったわ」

「いいえ。カグラさんたちの看病をして、落ち着いたということもあるでしょう。素直に謝って、カグラさんたちはウィードでの外交官勤務に専念させることになりました」

「……ふむ。まあ、妥当な話じゃが。カグラは耐えられるのか? 失態で飛ばされたと思うんじゃないかのう?」

「そこは……ごにょごにょ」


先ほど考えた作戦を伝える。


「ほほう。なるほど、それはありじゃな。勝手に進めると、激怒しそうなのも何人かおるしな。そこを越えるのが仕事というわけじゃな」

「ええ。このまま旦那様に無理を推すと罪悪感からということになりかねませんし、それはあまりよろしくないですから」

「そうじゃな。カグラが妾たちを味方につけてというなら、さほど気にすまい。まあ、ユキは別の意味で嫌がるじゃろうが」

「そこはカグラさんの頑張り具合というところですね」

「うむ。しかし、妾たちはハイレ教会の方の心配はせんのじゃな?」

「旦那様が独自に動くといったからでしょう」

「ああ、そうか」


ハイレ教会の方は既に結末は見えている。と私たちは思っています。

なにせ、既にスティーブたちが動いていますから。

そんなことより、旦那様の方が大事に決まっています。


……あ、別にスティーブたちがどうなってもいいとか言う話ではなく、信頼しているからこその判断です。



Side:スティーブ



「へっくしょい」

「風邪ですか?」

「どうっすかね。まあ、山の上だし仕方ないっすね」

「雪、積もってますからね」

「はぁ、なんで総本山は山の御上にあるんっすかね」

「あれでしょ。天に近いところがいいってやつ。神様に近づくためとかよくありますよね」

「はっ。この世界のトップと思わしき女神様は地下にあるダンジョンのアパートの一室で、ジャージで漫画とドラマ見てるっすけどね」

「逆ですよねー」



Side:ノノア 魔術神 魔術国女王



「ぶえっくしょい!!」


突然の聞きなれない声に私は慌ててリビングに顔をだす。


「大丈夫ですか、ルナ様!?」

「ういー。ああ、いや、誰か噂でもしたかもね。ま、女神だし、よくあることよ」

「……はぁ。そういうものですか」

「それより、ごはんまだ?」

「あ、はい。もうすぐできますから待ってくださいね」


私はすぐに調理に戻るのであった。



流石にユキ、反省。

そして、医者ルルア活躍。

カグラは後方勤務というか本来の仕事へ。

だが、諸君らの望んでいるのはハイレ教とかではなく、カグラの恋の行方であろう。


スティーブよ。君は信頼されているのだ。

なあ? 諸兄の方々。



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