第619堀:完全復活とローテーション
完全復活とローテーション
Side:ユキ
さて、色々今後の予定を決めはしたが、今行っていることはどうなるのか?という問題が残っている。
まずは、諸国会議の為の、ハイデン魔術学院逗留時の安全を証明する仕事。
次に、その学院逗留のついでに科学技術の学問を伝えることと、ハイデン魔術学院の魔術を学ぶ仕事だ。これは技術提供、吸収の意味もあり、ハイデンはもちろん、この学院に留学へ来ている各国の人々にウィードの事を知ってもらうという大事な目的もある。
と、大まかな目的はこんなものだが、決しておろそかにしていい話ではない。
予定では、諸国会議が学院で開催されるまでのんびりできるかと思っていたが、そうもいかないようだ。
オーノックの調査、捜査に、少ないウィードの人材をさらに割くことになるのだ。
「そこが問題だな」
「ですねー」
そういって、頭を悩ませているのは、タイゾウさんとタイキ君だ。
一応、彼ら2人もウィードの協力者ではあるが、片やヒフィー神聖国の宰相、片やランクス国の勇者王。
いつまでもいるというわけにはいかないのだ。
「ユキ君。とりあえず、私の事は気にしなくていい。今回のハイデン側、というか新大陸の安定は、ロガリ、イフ大陸の平和のために必要なことだ」
「こっちも同じですよ。ユキさん。ルースはこっちとの繋ぎは重要だって言ってますし。というか、ゲートのおかげで行き来は簡単ですからね。いざって時は戻りますよ」
「タイキ君の言う通りだ。私たちにこの学院交流や教鞭などは任せて、ユキ君たちは調査にいくのがいいだろう。私たちは長期遠征になりかねない調査の方には流石に手を貸せないからね」
確かに、それが適材適所ってやつか。
「元々私たちはこの学院の見学と交流が目的だからね。流石に、裏の事情で連れまわすのはよろしくない。なに、この学院の防衛ぐらいは何とかなるだろう。なあ、エージル君」
「うーん。私……、ああ、もう僕でいいか。もうユキたちに抱き込まれたようなものだしね。ま、正直、僕がユキ君たちについて行っても足手まといだし、この拠点を維持する方が性にあっているね」
エージルはオフでは僕っこなんだが、将軍職だけあって、公私の区別はきっちりしている。
特に、俺たちがロガリ大陸の一国の重鎮だったって知ったあとからは、一気に僕から私になったよな。
まあ、そこは笑い話として、エージルを叡智の集やハイレ教とぶつかる可能性があるところへは連れていけないので、エージルの申し出はこちらとしてはありがたい。
安全も図りやすいだろう。
「となると、同じイフ大陸出身のアマンダとエオイドは学院で待機か?」
「いや、私としては2人を連れて行ってほしい。まだまだ未熟だからね」
「え!? ちょ、ちょっと、待ってください。なんか背後は色々すごそうって話じゃないですか!?」
「そうですよ。僕たちはまだ作法もなにもしらないんですから、足手まとい確実ですよ!?」
「かといって、カグラ君やミコス君、ソロ君だけで調査するのは心配だろう?」
「それは……そうですけど」
「その前に、ユキさんはどう思いますか? 僕たちが付いていって……」
「うーん。正直に言って、カグラたち3人だけを今回の件で使うには心配があるのは事実だ」
だって、防御力は装飾品で補っているけど、他は普通だからな。
かといって、護衛に嫁さんたちをつけるのも厳しい。
今、ウィードの方は忙しさが半端ないからな。
セラリアを筆頭に文官、外交官の嫁さんたちは大陸間交流の関係で右に左に大忙しだ。
この学院にコンスタントで来ている嫁さんたちは、デリーユ、リーアぐらいのモノで、他のメンバーは仕事の関係上、いたりいなかったりだ。
クリーナは秋天の付き添う形できていたが、サマンサに仕事を一時的に預けて来ていたので、今は戻っている。秋天の世話で来ていたキルエもウィードの家の手入れや、子供たちの世話という大事な仕事がある。
やっかいだよな。俺の護衛の嫁さんしかいないのだ。
ラビリス、フィーリア、アスリンは戦力としては申し分ないが、調査や交渉などでは、知名度がないところではかえって足を引っ張る。まだ子供だからな。侮られるのだ。
まあ、子供だからこそいけるところもあるだろうから、必要に応じてきてはもらおうと思っている。
そして残るちびっこというか、もう少女のシェーラは、ガルツの繋ぎに加えて、バイデの管理をキャサリンと一緒にやっているので、かなり忙しい。ちなみに、3幼女たちもバイデの管理の手伝いをしているので、手が空いているというわけではない。
あとは、ヴィリア、ドレッサ、ヒイロの3人は一応フリーではあるが、まだ日が浅く、経験が少ない。アマンダとエオイドよりちょっと上なぐらいだ。
できて、護衛ぐらいだが、流石にウィードの人が学院にいないのは問題なので、ウィード代表ということや、タイゾウさん、タイキ君の手伝いとして、ヴィリアとドレッサが。フィンダールのスタシア殿下の妹役としてヒイロが付きそうということで学院に残るので使えない。
だからこそ、タイキ君やアマンダ、エオイドを援軍に頼んだわけだが。
というわけで、オーノックの町を調査するときは、今の編成からすると、カグラ、ミコス、ソロを主軸に行うことになるのだ。
俺は総司令という感じで、現地に踏み込むのは、全てを把握して止めを刺す時に限られる。
……俺もな、この新大陸が優先事項とはいえ、ウィードでの仕事や、新大陸の拠点に使う物資の申請とかその他もろもろあるんだよ。
「でも、それだと、現地調査のカグラたちが危険すぎませんか? スティーブたちが後方から援護するといっても限界があるでしょう?」
「まあな……」
「流石に、ユキ殿の奥さんたちがいないのは心配だな……」
流石に、ポープリもウィード側からの護衛がないと心配のようだ。まあ、当然だよな。
方針を決めるべき、ウィードの人がいないんだから、何か問題でも起こしたら、責任を取れと言われかねないし、そうなったらアマンダ、エオイドにとっては痛い失態だ。
普段なら、嫁さんの1人でもつけてリーダーとして安全を確保するのだが、デリーユもリーアも必要最低限の護衛だから、俺から離れるのはご法度なんだよな。
……俺の護衛は最低2人と決まっているのだ。いままでトイレとかに行ったところを見計らって1人行動をしていたのが原因なんだが。
「「「うーん」」」
どうにも人数が足りない。
というか、この土地で使えない人材が多いんだよな。
魔物部隊が大っぴらに使えればいいが、それは騒ぎになるし、この土地じゃ魔法生物は消滅するしで、魔物部隊の大半が使えない始末だ。
霧華のデュラハン・アサシン部隊なんかは消滅の危機だからな。いつもの諜報部隊が使えないのが痛い。
まあ、魔力減衰現象の話は大陸間交流の時に発表するし、そこで組織した部隊を今後こういうことに割り当て……られないか。ここは魔力調査以前に戦争状態だから、わざわざ戦争を止めて調査するとなると、予算が膨大になる。というか、武装組織として危険視されるだろうな。
……はぁ、魔力調査の関連もしっかりした構想が必要になってきたな。
と、そんな未来の話はいい。今は、目の前の問題を解決するための人材がいないのを何とかしないと安全に動けない。
だれかいないか? そんなことを考えていると……。
「手伝いに来たよー。ユキさん」
「こら、ちゃんとノックしないとダメだって」
「……ん? なんかみんな悩んでる?」
元気よく、リエル、トーリ、カヤが入ってきた。
勿論、ケモミミは魔術で隠している。
「あ、リエルさんに、トーリさん、カヤさんまで、なつかしー!!」
「お久しぶりです」
「やっほー。久しぶりだね、アマンダにエオイド」
「お2人とも元気そうで何よりです」
「学府以来、仲良くやっているようでよかった」
リエルとアマンダはお互いに抱き合ってきゃっきゃっと再会を喜んで、トーリとエオイドは普通に挨拶。カヤは2人をみて安堵といった感じだ。
「で、リエルたちが手伝ってくれるのはいいけど。体は大丈夫か? 子供の世話は?」
そう、リエルたちは出産したばかりなのだ。
まあ、既に2週間ほどは経っているので、大丈夫だとは思うが、俺としては戦力より、子供のお世話という感じでいた。
「心配しすぎだよ。この前、モーブさんたちと、イフ大陸のほうでちゃんと動けたし」
「問題ないですよ。頑張れます。子供たちは前から当番制ですから」
「ユキは毎度心配しすぎ。私たちをもっと信じる」
「はぁ、やっぱり俺が過保護か。意地を張っても仕方ない。手伝ってくれ。実は……」
俺はオーノックの町の調査をしようとしているが、カグラ、ミコス、ソロ、アマンダ、エオイドの引率がいないという話をすると、リエルたちは胸を張って承諾してくれた。
「まっかせてー。というか、この話僕たち向きじゃない」
「そうですね。こういう調査は警察のお仕事です」
「どうせ、本職は産休中だし、問題ない」
そういえば、そうだった。
この3人はウィードの治安を守る警察官たちなのだ。
カヤは農業の方もあったのだが、警察の仕事をしていないわけでもない。
さらに好都合なのは、この3人はウィードでの後任が頑張っているので、そこまで本職に力を入れる必要はないのだ。
「ふむ。それを言うなら妾もじゃがな」
「いや、デリーユは突入班だったじゃん。調査は部下まかせでしょ」
「ぬぐっ」
ああ、そういえばデリーユは警察の特務だったな。
どんな仕事をしているかと思えば、突入班かよ。軍隊の特殊部隊みたいなもんか。
ピッタリ過ぎだな。
「デリーユは見栄をはらないで、私と一緒に大人しくユキさんの護衛をしておこう」
「リーアは悔しくないのか?」
「んー、私の仕事は元々ユキさんの護衛だしね。デリーユみたいに色々な方面を手伝っていたわけじゃないから。悔しいとかそういうのはないよ。専門家に任せるのが一番。ユキさんといつも一緒は楽しいよ?」
「ああ、そういう考えもあるか。よし、頑張れ!! リエル、トーリ、カヤ」
「むきー!? なんかすごく負けた気がするぅ!?」
「不公平です!! ユキさん、私たちがここにいる間は護衛はローテーションにするべきです!!」
「デリーユやリーアもちゃんとした調査の仕方をこの機会に学ぶべき。ね、ユキ?」
……まあ、このトラブルは煽ったデリーユが悪いので、今後ローテーションを組むことになった。
「デリーユのばかー。私のお仕事がなくなるじゃない」
「すまん。まさかこんなことになるとは」
「えー? リーアと一緒にお仕事とか初めてだし、私は楽しみなんだけど」
「あ、それは私もです」
「分からなければちゃんと教える。リーアも護衛の仕事教えて」
「あ、そっかー。私もリエルたちと一緒に仕事するんだ。警察官とか何するのー?」
「ぬおっ。思ったよりも簡単に機嫌が直ったな」
リーアが機嫌を損ねたままかと危惧もしたが、案外いい機会だったのかもしれない。
確かに、ずーっと護衛で他の事には手を出していないからな。
リーアもやりたい仕事が見つかるかもしれない。
そう思っていると、大人しく話を聞いていた、ヴィリアやドレッサが話に入ってきた。
「な、なら私も、お兄様の護衛や警察官の仕事を学びたく思います!!」
「わ、私も!! 元々、私たちはユキの護衛なんだし!!」
やばい。なんか収集つかなくなってきたな。
今度は誰が学院に残るかって話になる。
「落ち着け。何も言っていないヒイロは何か意見あるか?」
「んー? ヒイロは特に。ヒイロはスタお姉と一緒にいる。それがお仕事ってわかっている。ヴィリお姉やドレお姉みたいに焦ってないしー」
「焦る? ああ、一人前には慌ててなるものじゃないんだけどな。まあ、そこは言っても仕方ないか」
「「「……」」」
なぜか一瞬みんなが沈黙して、こっちを見た気がした。
「コホン。まあ、どちらの話もちゃんと筋の通っている話だ。なら、私たちのサポートも含めてローテーションにすればいいのではないか?」
「タイゾウさん。いいんですか? ヴィリアやドレッサの方が学校の授業を受けているし、今までサポートした実績もあるから、やりやすいんじゃ? タイキ君もそう思うよな?」
そう話を振ったタイキ君は、勢いよく首を振って……。
「いやいや、ちゃんと授業前に打ち合わせはするし、そう難しいモノじゃないですよ。それに、今後こっちで活動するっていうなら、学院で顔見せも兼ねて、リエルさんたちには出てもらった方がよくないですか?」
むう。そういわれるとそうだな。
そういうことで、オーノックの町調査隊は、ローテーションを組んで動くこととなった。
まあ、調査をしているってばれないためにも、メンバーがいつも違うっていうのは大事だよな。
・オーノック調査隊
リーダー役:リエル、トーリ、カヤ
サポート役:デリーユ、リーア、ヴィリア、ドレッサ、アマンダ、エオイド
案内役:カグラ、ミコス、ソロ
後方支援:スティーブ隊
以上の12名から選出されて調査を開始することになった。
さて、リエルたちの警官としての腕前はどんなものかね。
今思えば、リエルたちの働きをこうやって直に見るのは初めてで、いい機会だったのかもな。
前に一度、警察署に行ったときは、書類仕事とか訓練風景だったから、楽しみだ。
久々の登場!!
そして、今後の調査では主役!!
ケモミミーズがあばれるぜ!!
と、その前にカグラにとっての試練があるけどね。




