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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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724/2209

第605堀:トイレの調査

トイレの調査




Side:カグラ




「「「……」」」


皆が沈黙したまま、噂の東女子トイレに踏み込んでいる。

だが、怖がっているというわけではない。

なぜなら……。


「ちょっと、中止。一旦外に出よう」


リーアがそういって、私たちは素直にトイレから出て行く。

それもそのはず、現在の調査メンバーは、総勢13名。

トイレ数は5つと掃除道具入れが1つ。

つまり、多くても5人しか使用できない。そして、それに応じた大きさ、広さしかない。

そこへ、13人も入れば……狭い。

朝の寮棟の混雑トイレ並みである。

これでは幽霊が出る場所がないとは言わないが、こんな状況で出てくるとは思えない。


「流石に人数が多すぎだね。これじゃお化けが出てこようにも出てこれないよ。入口待機のチームと中に入って調べるチームで分けよう」


リーアも同じようなことを思ったらしく、そういうと、他のみんなもやっぱり窮屈だったのか、リーアの提案に素直にうなずく。


「13人は多いから、大体半分6人ぐらいかな。あとは、秋天とルルアは専門家だから、一緒になるともう一方のチームが専門家無しになるからダメとして、キルエとクリーナは秋天と一緒が当たり前だから……」


そんな必要な人を片方のチームに固まらないように考えた結果……。


「よーし、じゃ第一班。今からトイレに検証にいくよー」


リーアをリーダーとした、第一班。

リーア、クリーナ、キルエ、秋天、私、ドレッサだ。

残念ながらミコスは同じ学院生で2人しかいないので同じチーム入りはダメになった。

まあ、正直、最初は怖かったけど、これだけ人数がいるし、トイレで多すぎという事態になって恐怖心は引っ込んでいた。


「特に、不思議な点はないよね」

「ん。というか、使われていないのか埃が溜まっている」

「……掃除が行き届いていないのはどうかと思いますね。秋天様、大丈夫ですか?」

「だいじょうぶ。でも、やっぱり何もかんじない」

「秋天が何も感じないか。なら何もないんじゃないの? カグラ、何かこうすると出るとかないの?」

「うーん。トイレの中から悲しい泣き声は聞いたことあるけど……」


ドレッサに聞かれて何と答えていいのか悩む。

だって、幽霊が出る特定の行動なんか聞いたことないし……。


「ふーん。ならトイレの中ってのがなにか怪しいわね。リーア。とりあえずトイレの中を確認してみたらどう?」

「そうだねー。手洗い場には何もないし、鏡もないから何かが映りこむってネタも起こりようもないからね」


ドレッサの提案で、トイレのドアを1つずつ開けてみることになったのだが……。


「特に何もないわね」

「そうだね」


特に何もなかった。

普通に便器が並んでいるだけ。

掃除道具箱も特に何もなかった。

と、私たちは思ったのだけれど、キルエさんだけ違う反応をした。


「ん? これは……」

「キルエ、どうかした?」

「はい。このトイレですが、綺麗すぎます」

「「「え?」」」


その言葉に入り口から3番目のトイレにみんなが集まる。

そこには、確かに他のトイレと違って埃をかぶっていないトイレが存在していた。


「……つまり、ここにお化けが出るってこと?」


リーアがそういって、周りの温度が一気に下がった気がした。


「いえ、そういう事ではありません。ああ、その可能性も否定できませんが……。秋天様、何か感じますか?」

「ううん。何もかんじないよ?」

「そうですか。ならば……。皆様1度出ましょう。ユキ様たちに報告したいことが出来ました」

「「「へ?」」」」

「まだ、確定したことではないのではっきりと申し上げられませんが、この様子から誰かがこのトイレを使っているものと思われます」

「いや、キルエさん。それが幽霊ってことじゃ……」


私がそういうと、顔を横に振って私が言ったことを否定する。


「そうではないのです。秋天様が何も感じないということは、幽霊ではない。となると……」

「ああ、生きている人が使っているってことよね」


ドレッサがポンッと手を叩いて納得する。

それを聞いて、私も理解した。

幽霊ではないのなら、生きた人しかないという単純な話だ。


「ん。つまり、キルエは誰かがこのトイレを使用しているって言いたいの?」

「その通りでございます。クリーナ様。ですが、誰が何のためにというのはわかりません。私たちが下手に手を入れるとやめる可能性もありますので、すぐに立ち去った方がよいと思ったのです」

「そっか。なら、キルエの言う通り出たほうがいいね。みんな、外にでよう」


キルエの説明に納得して、私たちはすぐにトイレの状態をなるべくもとに戻したあと、トイレから出て行った。


「おかえりなさい。何もありませんでしたか?」


外では待機していたルルアさんたちが出迎えてくれた。


「うん。大丈夫だよ。でも、一旦報告することができたから、ユキさんたちの所に戻ろう」

「何もなかったようですが、何か見つけたのですね。わかりました。監視とかはどうします?」

「それなら、私とミコスが残ります」

「ふえっ!?」


ミコスは事情を知らないために妙な声をだすが、ここはここの学院生である私たちの方が万が一見つかっても不審に思われないという理由もちゃんと話した。


「そうだね。カグラの言う通り、学生が見張った方が言い訳はしやすそうだから、お願い」

「うん。任せて」

「まあ、そういう理由なら。ミコスちゃんも構わないけど」

「とりあえず、ユキさんたちに話を伝えてくる間よろしくね。このまま継続して監視してもらうにしても、作戦変更になるにしても一度連絡しにもどるから」


そして、リーアたちがいなくなって、トイレの前にはポツンと私とミコスだけが残った。

元々、使われていない一角なので、一気にさみしくなる、


「とりあえず、斜め向かいの教室に入ろう」

「そうだね」


教室に入ると、机も何もなく、ただ床に埃だけが溜まっている状態だった。


「こんなに教室が余ってるのに、放置してるのはもったいないわね」

「かといって、この教室をつかうような人数がいないんだよね。寮が足りないし、クラスを増やすとなると、その分教員も雇わないといけないから、お金もかかるだろうし……」

「ミコスの言うことはわかるけど、ここまで作っておいてそういう所の予想ができてなかったのはどうかと思うわ」

「まあね。でも、実際やってみると、後から気が付くことって多いんだよ。気が付いたあとでなんでこんなことをってことが案外多いものだよ。カグラだって召喚が誘拐や国際問題になるっていうのは後で気が付いたでしょう?」

「……そうね。あの時は救世主とか、姫様の命令、そしてどうあの戦況を乗り切るかで頭が一杯だったわ」

「でしょ? だから、こういう場所が……」


そうミコスが言いかけるのを人差し指を口に立てて押さえる。


「……何か足音が聞こえる」

「え? リーアたちが戻ってきたんじゃ?」

「よく聞いて、聞こえてくる方向が、反対」

「んー? あ、本当だ」


ユキさんたちが待機しているのは、この東トイレがある奥の教室で、これ以上進めない。

足音が聞こえてくるのは、その反対で、私たちが東女子トイレに来るために歩いてきた廊下。

その足音は間違いなく徐々にこちらに近づいてきている。


「足音は1人だけね」

「うん。私もそう聞こえる」


だれかが1人だけでこの場所に来ているようだ。


「まさか、幽霊?」

「いやいや、幽霊が足音立ててくるわけないじゃん。とりあえず、こっそりのぞいてみようよ」

「え?」

「え? じゃないよ。見張るために残ったんでしょう」

「あ、そうか」


私たちはドアを少しだけ開けて、廊下をのぞき込んでみると、足音が近づいてきて、普通に1人の女子生徒が通りすぎて行って、トイレに入っていった。


「見たことある?」

「いや、同じ学年じゃないから、下の学年だと思う」

「普通に入って行ったわよね?」

「行ったね」

「使われてないって噂は?」

「いや、私に言われてもしょせん噂だし……。って、一か所以外は普通に使われていなかったから、使われていないってのは本当でしょう」

「あ、そっか。というか、偶然さっきの彼女がここを使っただけかもしれないしね」

「今はお昼休みだからね。他のトイレが一杯だったら来るかもねー」


偶然か。その線も捨てられないわね。

まあ、いきなり犯人ってわけでもないけど、真相がわかるわけないか。

初代様といきなり会えたことが出来すぎなんだから。

そんな感じで、恐怖心が緩んで、落ちついているとリーアさんが戻ってきた。


「こっちです」

「あ、そこにいたんだ」


リーアさんを教室に招き入れて、作戦本部で決まったことを聞く。


「とりあえず、カグラの意見を採って、このまま監視だって。長時間監視してると疲れるだろうし、学生がいなくなる放課後までで、そのあとはユキさんたちが引き継ぐってことになったから。大丈夫?」

「ええ。大丈夫」

「じゃ、このまま待機かな。って、そういえば、女子トイレに入っていった人、まだ出てこないね」

「あ、そういえば」


もうかれこれ10分近くは経っている気がする。


「でも、まだこれぐらいは普通じゃない?」

「まあ、そうかなー」

「ん? この女子トイレに入っていった人がいたの?」

「あ、そうなの。リーアたちが報告に行っている間に、女子生徒が1人、トイレに入って行ってまだ出てきてないの。まあ、まだ10分ぐらいだし」

「誤差の範囲かなーって」

「なるほど。私もその女子生徒が出てくるまで一緒にいるよ。出くわしちゃいそうだし」


ということで、リーアも一緒に教室で女子トイレから女子生徒が出てくるまで待つことになったんだけど……。


「出てこないわね」

「出てこないね」

「もう、20分か。本当にみたの?」

「見たよ。ねぇ」

「うん。私も見たから見間違えってことは……」

「なら、トイレの中で何かあったのかも。ほら、幽霊とかの噂もあるし。トイレで急病ってこともないことはないし」


そういわれて、私とミコスはバッと立ち上がる。

そういう可能性を忘れていた。

ただトイレに来たのだろうということしか思っていなかった。


「早く確認しないと!?」

「そ、そうだよね!!」

「そうだね。流石に長すぎるね。私はユキさんたちを呼んでくるから、2人はとりあえず、トイレの確認お願い。まずそうと思ったら無理はしないでね」


リーアはそういって、ユキたちの所へと駆け出し、私とミコスは慌ててトイレの中に入る。

すると、トイレの奥から、妙な声が聞こえてくる。


「……はぁ、なんで1人、こんなところで御飯食べてるんだろう」


……?

何を言っているのかよくわからない。

トイレは御飯を食べるところではない。

ミコスと顔を合わせるが、同じように分からないようだ。

とりあえず、誰かがいることは間違いないようだから、トイレの個室に向かって声を掛けてみる。


「ねえ。中にだれかいるんでしょう?」

「うひゃ!?」


うひゃ?


「……またか。人の安らぎの場所にくるなっつーの。しくしくしく……」


ん?

なんかいきなり泣き始めた。


「ねえ。カグラ。具合が悪くなったんじゃないかな?」

「あ、そうか。だから出てこないのか。ちょっと待ってて。すぐに助けるから」

「へ!? 助けるって……」


答えを待たず私とミコスは力尽くで開けると……。


「うぎゃー!?」


中でなぜかパンを持ったままひっくり返った女子生徒がいた。

それを見て2人で首を傾げていると、リーアがユキたちを連れてきたみたいで……。


「何か大きな音と、叫び声が聞こえたけど大丈夫!?」


えーと、なんて説明したらいいんだろうか?

私はそんなことを考えていた。




皆様へ、理解ある読者の方々ばかりかと理解しております。

そっとしておいてあげてください。

誰だって経験があるとは言いませんが、この話を読んで理解できる方は沢山いると思います。

学校の怪談もあれば、学校という社会構造の話もありますという話です。

つまり、なんというか……察した諸兄の方々


「最後まで泣くんじゃない」


というやつです。

幽霊の正体見たり枯れ尾花というやつで……ううっ。


とまあ、そこいう過剰な反応はいいとして、誰だって一人でボッチ飯を食うことはあるよね?


「モノを食べる時はね誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ 独りで静かで豊かで……」


某有名人も言っていることですし、ボッチ飯は別に悪くないんですよ。


あ、あと、モンスターコミックスにて、10月27日に必勝ダンジョン1堀が掲載されました。

山猫スズメさんが作画をして頑張ってくれています。

気になる方がいればどうぞコミック化をご覧ください。

なお、色々言いたいことはあるでしょうが、そういうのは活動報告で。




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