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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第576堀:こっちも大変

こっちも大変




Side:カグラ・カミシロ ハイデン所属 ウィード外交官




「……これが、ここ一か月のウィードでの報告になります。報告書の方はこちらに」


私はそういって、姫様に報告書を渡すと、すぐに姫様は報告書を確認し始める。

あのバイデで防衛していた頃とは違い、さっさと書類を流し見ていく姿は、仕事のできる立派なお姫様だ。

あの時はあの時でやっかいだと思ったけど、ここまで仕事のできる姫様も私は苦手だ。

ちょっとした不備があればすぐに突っ込まれるから。

威厳に溢れているから、どうにも緊張するし、胃が痛い。

ルルアに胃薬追加してもらおう。


そんなことを考えている間に、分厚い報告書を確認したのか、姫様が頭を上げて、目をもんで、また最初から報告書に目を通していた。

そうよね。

二度見したくなる内容よね。

先ほど、私が言ったことが本当だと書いてあっても、理解したくない気持ちはよくわかる。

私だってあの話を聞いたときは卒倒したもの。

いや、それを考えると、卒倒しなかった姫様はやっぱりすごいのだろう。

私と違って、卒倒することもなく、私の報告に待ったをかけることなく話を聞いていたんだから。


ユキの婚姻関係やウィードの正しい立ち位置及び、我が大陸、ウィードがあるロガリ大陸以外のもう一つの大陸イフ大陸の存在の報告を聞いて、疑わずに信じる人がおかしいと思う。

私だったら、頭がおかしくなったと判断して、この報告をよこしてきた人を病院送りにするだろう。

あ、こっちには病院ないから自宅療養ね。

お陰で私の胃も毎日きりきり痛いわ。

ルルアにはクスリに頼りすぎるのはどうかと言われているのだけれど、やっぱり胃薬の追加をしてもらうしかないと思うのよ。

私そんなに神経太くないから。

あー、この報告が終わったら、アマンダとエオイドを連れて、ウィードのケーキバイキングに行こう。


ドンッ!!


ケーキバイキングに夢を馳せていた私はその音で、現実に引き戻される。

なにか失敗でもしたかと思い、体を竦めたが、ドン、トン、トン……と姫様が報告書で渡したA4用紙の束を揃えていただけだった。

揃え終わったのか、報告書を机に置き、姫様は胡乱な目でこちらを見る。


「……一応、確認を取ります。先ほどの報告。それに今渡した報告書に嘘偽りはありませんね?」

「はい。嘘偽りなどありません。全て真実です」


確認をとりたくなるわよね。

だが、姫様。残念ながら真実です。

嘘だったほうがよかったですけど、真実です。

しばしの間、私と姫様の間を静寂が支配するが、姫様が両手で頭を抱え、物凄いため息を吐いた。


「……はぁーーー。なんてこと。よくカグラは卒倒しなかったわね」

「いや、卒倒しました」

「……そんな報告も書いてありましたね。訂正しましょう。よく正直に話す気になりましたね。下手をすれば気がふれたとして、強制自宅療養ですよ?」

「姫様は理解してくれると思いました。というか、そうでなければ我が国は終わりです」

「……そうね。そうよね。国力差が圧倒的なウィードをないがしろにすれば、滅びるのは必然。だけど、だけど、それ以上があるとは思わなかったわ。イフ大陸という第三の大陸。ロガリ大陸が存在するというなら、他に大陸が存在していてもまったく不思議ではないわ。不思議ではないのだけれど……」


どうしたものかという、表情になる姫様。

私もどうしたらいいのかわからない。

まあ、姫様に丸投げするだけでいい私は楽なのかもしれない。


「……なぜこんな混乱した状況のハイデンに、さらに混乱に招くような極秘事項をカグラに伝えたのかしら?」

「さあ、私にはユキの考えはちょっと……」


ユキの考えが読めるなら、きっと私はこんな立場にいないだろう。

自由に人生を謳歌しているに違いない。


「ですわね。ユキ様の考えが読めるほど知略があれば、ハイデンが傾くこともなかったでしょう。しかし、この情報を貰っても私たちが混乱するだけなのは理解して……。そうですか。そういうことですか」


私の言葉に同意したはずの姫様はなにか納得したように、頷き始めた。


「あの、姫様? なにがそういうことなのですか?」

「この情報を使ってハイデン内部を混乱させよということです」

「はい? 申し訳ありません。どういうことでしょうか? ちょっと、私には理解が……」

「ああ、すみません。こういうやり方はまだ勉強中でしたね。畳みかけるということです」

「畳みかけるですか?」

「ええ。ユキ様は、私たちがいる大陸を説明することで、イフ大陸の方々を脅したのはわかりますね?」

「はい。私たちがいる大陸があるので、無理にイフ大陸と交流する必要はないと脅して、イフ大陸の方々に即断即決を迫ったんですよね?」

「そうです。無理にウィードと長々と話して、イフ大陸に有利な交渉をまとめようとするならば、私たちの大陸の方に力を入れるといったのです。ですが、これは私たちにも言えることなのです」

「私たちにも?」

「よく考えてください。ユキ様たちウィードは、手間がかからないところと先に大陸間交流を始めると言っているのはわかりますね?」

「それはわかります。政治的なやり取りは時間がかかります。国益が絡みますから。それらが手早く済むのであれば、当然次の段階である大陸間交流に動くのは当然かと……。あ、そうか!?」


私はようやく姫様が言っていた意味が分かった。

この話をユキが私に聞かせたのは……。


「分かりましたか? ユキ様がカグラにそんな極秘事項を伝えたのは、私たちの大陸も長々と交渉するようであれば、イフ大陸の方と先に交渉するということを意味しています」

「……競う相手がいることを知らせて、急いで話をまとめるようにと言っているのですね?」

「はい。ですが、それはこの話の一面にすぎません」

「というと?」

「イフ大陸の方々が揉めていたのが、ウィードと交渉するために一つにまとまったという報告をカグラも書いているのだからわかるでしょう」

「ああ!! このイフ大陸のことを利用して、ハイデン内部の反発者を抑えろということですか!!」


そうか、未だに姫様たちに主導権を握られたことに文句をいう連中はいる。

そして、今後公表しようと思っているユキたちの件は下手をすれば、その反姫様連中にとっては格好の攻撃場所だ。

迂闊に召喚をして、他国の介入を招いたというのは事実だし、バイデも接収されているという事実があるので、そこをどう収めようかと姫様たちは頭を悩ませていたはずだ。

現在は伝説の英雄を呼び出したという方向で収めようとしているのだけど、やっぱり文句は当然でるだろうと話していた。


「声が大きいですよ」

「すみません。ですが、流石に別大陸という話を説明して、信じてくれるのでしょうか?」

「無論。根回しはします。ウィードからロガリ大陸やイフ大陸の品々を買い受けて、繋がりが有用だと示すのです。そのうえで、国益を損なうような立ち回りを面と向かってできる者がいるでしょうか?」

「それは……いないと思います」

「私もそう思います。明らかに、技術力が圧倒的に上な国と友好的な関係が持てることを非難するような馬鹿が内部にいれば、それを理由にクビを斬れます」


姫様はそうにっこり笑いながらいう。

絶対、仕事じゃなくて、物理的に胴からおちる方よね……。


「ということで、私の方から、この件はありがたく利用させていただきますと伝えてください」

「わかりました」

「あと、先ほどの話を親書にしたためますので、ロガリ大陸やイフ大陸の品々を買い入れる件はカグラに一任します」

「はい!? 私がですか!?」


なんで私!?

そんな大事な説得材料である品々を学生兼おかざり外交官である私になんで任せるの!?


「落ち着きなさい。買い入れる品々の大体の方向性はこちらで決めますから、あとはやり過ぎないレベルのものを選別してくれればいいです」

「やり過ぎとは?」

「……それを本気でいっていますか? いえ、カグラがウィードに馴染んでいるいい証拠ですね。まあ、ですが今一度、ハイデンの常識を思い出してもらいましょう」


そういって、姫様は右手を差し出す。

そこにはシンプルな指輪がはめられているだけ。

でも、それはウィード作の超性能指輪で並大抵の攻撃は効かないし、解毒もしてくれる優れもの。……あっ、そういうことか。


「分かりましたね? この指輪一つでも、この大陸では国宝級の品です。国が戦争をしてでも欲しがる貴重品です。こんなものをポンポン輸出するようなことはないと思いますが、輸出されよう物なら、この大陸は混乱の渦に落ちるでしょう。その前に、こんな品を作れるウィードを過剰に警戒するものも出るでしょう。ですから、適度な品がいいのです」

「……わかりました。ちゃんとハイデンに合ったものを選別いたします」


ナールジア様とか、ノリで物凄い性能の武器を渡してくるのよね。

私がもらった小杖だって、意味不明な能力が付いているし。


「くれぐれも武具系は慎重に選んでください。無論、私たちでも選別はいたしますが、やりすぎな品は不味いということを覚えておいてください」

「はい」


私はしっかりと覚悟をこめて返事をする。

ウィードの人たちのノリで変な武器でも渡されたら、国が混乱することは必至だ。

振るうだけで、目の前の軍勢が吹き飛びかねない物を絶対に作る。いや、既に作っているだろう。

そんな争いの種を持ち込むわけにはいかない。

責任は重大だ。

私の返事に満足したのか、姫様は頷く。


「よろしい。今後もウィード外交官を頑張ってください」

「はい」

「さて、大きい問題は話しましたが、あとは細かいことを話していきましょう」

「細かいことですか?」

「ええ。ウィードで過ごしてどう思いましたか? 民の生活ぶりや、経済、色々見るべきものはあったでしょう。それに友人などはユキ様たち以外にできましたか? こちらの報告書にちゃんと書いてあるのはわかりますが、カグラの声でもちゃんと聴いてみたいのです。まあ、雑談と思ってください」

「なるほど……」


確かに、報告書と生の声を聞くのは別物だ。

姫様もウィードに滞在していたことはあったが、そこまで長くもなく、知ったといっても私が知っていることに比べたら、ちょっとに過ぎないだろう。


「色々聞きたいことはあるのですが、そうですね。私がウィードに行ったとき、夜なのに、昼間のように明るい店舗がいくつも並んでいましたが、あれらはあの時だけ整えられたものではないのですよね?」


ああ、電気で光源を得るという発想がないから、あの時は姫様のように私もなにか特殊な催しとか、私たちのために整えられたと思っていたけど……。


「はい。あれがウィードでは普通です。店舗は大体20時から21時ごろに閉店するので、それまでの光源は必要不可欠なのです」

「まあ、21時までお店があんなに開いているのですか? あの明かりはデンキという科学技術と伺いましたが、維持費はどれぐらいかかるものなのでしょうか?」

「申し訳ありません。把握していなかったので、今度はそこを詳しく調べておきます」

「ええ。お願いします。今後ウィードと交流がはじまれば真っ先に、あの光の技術はこちらに取り入れたいものです。夜の仕事が快適にできますからね」


姫様はそういいながら、横に置いてある燭台をつんとつつく。

燭台の明かりと、電気の明かりは比べるべくもないわよね……。

と、でも弊害もあるんだった。


「姫様の言う通りですが、ユキ曰く、夜でも仕事ができるようになるので、寝る時間が激減するから、一概に便利とは言いがたいと言っていました」

「……むう。なるほど。確かに、常時夜遅くまで仕事をするのが当たり前となるのは、問題ですね。仕事はちゃんと勤務時間を遵守しておかなければいけませんね。私のような書類仕事が多い内勤の方々は明かりがあればずっと仕事ができますからね。明かりがあるからと毎日遅くまで頑張って倒れてしまっては本末転倒です」


と、そんな感じで、姫様が親書の準備をしている間、私は姫様の雑談相手をしていると、不意に、友人の話になった。


「カグラ。伝え忘れていましたが、この一ヶ月の間に、バイデで勾留されていた、学徒隊が魔術学園に戻されました」

「あ、そうなんですか。ですが、よかったのですか? 彼らはウィードの事を……」

「だからこそです。ウィードの事をしっかり伝えてもらうために戻しました」


ああ、そういうことか。


「しっかりと躾もされていたようで、ウィードに喧嘩を売るような真似はしないでしょう。まあ、シェーラ様、アスリン殿、フィーリア殿、ラビリス殿にボコボコにされては文句も言えないでしょうが」

「……見た目は子供ですからね」

「人を容姿で侮るなという、いい教訓になったことでしょう。そして、魔術を覚えるだけでは意味がないと理解したはずです。散々カグラに頼ったのですから身に染みたでしょう」


一応、あのバイデの戦いは姫様と私の指揮で撃退したというのが、ハイデンでの評価だ。

まあ、ユキたちを呼んだのは間違いなく姫様と私だし、あの時の姫様は無能を装っていたし、面目上、私を立てた形だ。外交官という立場を推すためでもあるんだろうけど。


「あ、友人で思い出しましたが。道中、一緒だったアマンダとエオイドという2人を覚えていますか?」

「ああ、あの若い夫婦の方ですね。見ていて微笑ましいですわ」

「はい。あの2人、デリーユ殿に指導されていたので、てっきりウィードの人かと思ったのですが、どうやら、イフ大陸からの派遣人員だったそうです」


私がそういうと、姫様はクワッと目を見開いて叫ぶ。


「それは本当ですか!!」

「あ、は、はい。ユキもそういっていました」

「……ぬぐぐぐ、本当にあの方は油断なりませんね。いえ、当然といえば当然ですか。既に私たちはイフ大陸の方々にも評価されていたということですか」

「……そうなります」

「その二人との仲はどうですか?」

「え? ここ最近は一緒にウィード見学などをして友好を深めています」

「……なるほど。イフ大陸の方々もカグラと同じような立場と思うべきですか。では、カグラ。追加で新しい任務を与えます」

「はっ。なんでしょうか?」

「イフ大陸の方々、アマンダ殿とエオイド殿との友好を今以上に深めなさい。私たちがイフ大陸との交流をもつための足がかかりとなるはずです。おそらくは、ユキ様はこれも狙っていたのでしょう」

「はあ? そういうものでしょうか?」

「ええ。これでカグラの立場はゆるぎなきものとなるでしょう。ウィードだけではなく、各国の王とも面識があり、イフ大陸の人ともつながりがある。今、このハイデンにおいて、カグラは下手をすると、私よりも重要な人物になっていますよ」

「まさか」

「まさかではありません。未だにこの大陸の人々がほとんど知らない、優れた技術をもつ別大陸の人々と縁があるあなたは、ハイデンにとっても、この大陸にとっても重要な立場となるでしょう。それを自覚して、行動にはよくよく気をつけてください」


……やっぱり、私の胃薬増加がさけられないようね。





本日は更新が遅れまして誠に申し訳ございません。

実家に戻って、倉庫の掃除を手伝っていまして、気が付けばこの時間でした。

予定外のことをやってるとスポ抜けるわ。

携帯のアラームも掃除してるとき邪魔だったので置いてたのも原因。


そして、いよいよ動き出すか、新大陸!!

キャリー姫主導にハイデンは動きカグラも胃の痛い日々へ!!


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