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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第547堀:世界の全貌をほんの僅か知る

世界の全貌をほんの僅か知る




Side:ユキ




「なんでそんなこと言うのよ……」


なぜかセラリアが泣きそうな顔で悲しそうな声でそういっている。

いつも強気なセラリアがこういう顔をするのは、正直初めてだ。

恐らく、俺が召喚されたことによる、対策を練った結果なんだろが、

気持ちはわからんでもないが、だからと言って不可能が可能になるわけでもない。


「セラリアが俺を心配して言っているのはわかるが、それでも無理なものは無理だ」

「無理じゃないでしょう? さっきも言ったようにDPで必要な物や知識を仕入れれば……」

「そこの時点で駄目だからだ」

「どういうこと?」

「……だから駄目なんだ。セラリアの地球の基礎知識は日本の中学から高校ぐらいで、宇宙に関しては触りぐらいしかしらないだろう?」

「……まあ、そうだけど」

「軍空港に関してはOKだ。今後の国防とかを考えると、即応できる高機動部隊は欲しいからな。だが、宇宙はダメだ。不確定要素が多すぎる」

「不確定要素って、ドラゴンとか空中に存在するかもしれない未確認の魔物を刺激するって話? それこそ、航空戦力でどうにでもできるんじゃない?」

「何度も言うが、だから駄目なんだ」

「それだけが問題じゃないってこと?」


流石に俺が何度もセラリアの案を駄目出しすることは稀なので、セラリアも根本的になにか駄目なのかと思い始めたようだ。


「いいか、セラリア。まず問題点として、宇宙開発は領地経営や商売と同じで、やることが多岐にわたる。知識があるだけではだめなのはわかるな?」

「ええ。だからDPでその知識を……」

「日本語覚えるだけで頭痛を訴えていたセラリアたちが、本格的に膨大過ぎる地球に山積した宇宙の知識を頭にいれたらどうなるかわからん」

「……」


これが第一の問題。

知識ならDPで詰め込ばいいじゃない。

みたいな、パンがなければお菓子をおたべみたいなことはできない。

宇宙の知識と言っても千差万別、多種多様だ。

星の位置から、数学的な検証、地質学的な知識、もちろん航空力学は当然で、建設工学、など数多の知識が必要になる。


それをセラリアはザーギスとコメットに任せればいいのよ。と言っている。

これを無茶振りと言わず何という。

この2人の専攻は魔力、魔術関連だ。

確かに、他の人たちと比べて知識は膨大で発想力もあるが、土台無理な話だ。

できるならこいつらは今頃地球の知識を全部吸収している。


「これはわかるな?」

「……わかるわ。じゃあ、人数を揃えろっていうことかしら?」

「それだけじゃない。人数を揃えるのも一苦労だが、一番の問題点はここが地球ではないということだ。つまり、地球での知識が通用するとは限らない」

「え? でも飛行機とかは飛べるって結論をタイゾウやコメット、ザーギスも出しているじゃない。ねえ?」


そういって話を振られた2人は苦笑いしながら答える。


「まあ、こんな風に紙飛行機が普通に飛ぶからね……」


コメットは手元にあったA4の紙を折って紙飛行機にしてとばす。

こういう航空力学は地球と同等なのは紙飛行機が飛ぶことからもわかるが……。


「ですが、それはあくまでも、空と呼べる範囲までです」


ザーギスの言う通り、空と呼べる範囲までの事だ。


「どういうこと?」

「大気圏や大気圏外、あとは宇宙が地球と同じとは思っていないんだよ。下手すると地球産の宇宙船を空に飛ばしても宇宙に到達できないって可能性があると踏んでいる。というかその可能性がむしろ高いと考えている」

「なんでそう思うの? 飛行機は飛べるって話しているのに、宇宙船が駄目なの?」

「セラリアも知っていると思うが、今ウィードに来ているフィンダール帝国がある大陸と、こちらのロガリ大陸はおよそ8時間の時差があるのはわかっているな?」

「ええ。向こうで会議のあと夜になってこっちに来たけどまだこっちはお昼過ぎたくらいよね。というかその時差のせいで色々大変なのよね」

「そうだな。だが、ルナから見せてもらった衛星写真で知っていると思うが、ロガリ大陸から西の海上へそれなりに離れているイフ大陸とはほぼ時差が無いのは不思議に思わないか?」

「あれ? そういえばそうね。なんでかしら?」


そう前から不思議だったイフ大陸とロガリ大陸の時差がほぼない状態についてだが、ハイデンやフィンダール帝国が存在する大陸との時差でようやくおぼろげだが予想がついてきた。

いや、観測とかちゃんとすれば簡単にわかるんだろうが、それがわかったからと言って、なにかすぐできるわけでもないし、他にやるべきことがあったからな。


「完全に把握したわけじゃないが、新大陸とは時差があり、ロガリとイフは時差がほぼない。これから導き出される結論はロガリとイフの距離ぐらいは同じタイミングで日が当たる範囲だったということになる。つまり、アロウリトは地球よりも大きいという結論が導き出される」

「???」


セラリアは数多の?が多発している。

さて、どう説明をしたものか。

俺がそう悩んでいると、コメットが代わりに動き始める。


「えーっと、そうだね。ザーギス、そこの地球儀とってくれないかい。こっちは野球ボールでもだすから」

「ああ、なるほど。それがいいですね」


そういって、セラリアの前に地球儀と野球ボールを並べる。


「そうだね。セラリア、まずユキ君がいいたいことはだね。この二つの球体、地球儀と野球ボールに同じ距離で二つずつ印をつけるとしよう。えーと、10センチはアレだね、5センチぐらいでいいかな。これがロガリ大陸とイフ大陸だと思ってくれ」


コメットはマジックで黒い丸を二つ5センチ間隔で地球儀と野球ボールにつける。

そこにザーギスがライトを一方から当てる。


「さて、このライトが当たっている面が、日が照っている部分と思ってくれ。これを、同じ速度で回転させるとどうなるかな? どちらの方が早く黒い丸が影になるかな?」

「それは当然、小さい野球ボールの……ああ、そういうことね!! 地球では時差がでる距離でも、アロウリトではその距離は時差が明確にでるほどの距離になっていないということね。あれ? でもそうなると、一日が24時間ということにはならないんじゃないかしら?」

「いや、先ほどの条件は同じ速度でどちらが先に夜になるかという時差の説明をしただけで、おそらくは地球もアロウリトも一日、24時間で一周するのは間違いない。ただ、大きさが違いすぎるから、自転速度がアロウリトの方が速いんだろう。ロガリとイフの日の出、入り、には凡そ15分ぐらいしか差がないことがわかっている。時差が無いわけじゃないんだよ」

「ふむふむ」

「まあ、大きさと自転速度が地球よりも大きく速いのにそれでなんで重力が地球と同じ1Gなのかと言われるとわからんが、これが理由で大気圏離脱速度、第二宇宙速度が地球と同じだろうという甘い考えはないと思っている。この星には魔力とかいう不可思議なものがあるからな」

「その何とか速度はよくわからないけど、なるほどね。それが、宇宙船を飛ばしても失敗すると思っている理由ね」


これが二つ目の理由。

地球と環境が違いすぎるので地球産のモノを取り寄せても失敗するだろうと思っていること。

重力に関しては緩和するこの星自体を引き寄せる太陽が存在するから、その引力でこの大きなアロウリトの重力が緩和されて1Gになっているとも予想が立てられるが、そもそも俺の専門分野じゃないし詳しいことはわからん。


「そして、一番の理由だが……」

「なに?」

「予算がない。宇宙開発にはとてつもなく金がかかる。ウィードの年間予算を全部使っても無理。最低一兆DPからだな」

「はぁ!?」


セラリアが驚きで目を剝く。

俺だって気安くやれるならやっている。

だが、宇宙開発には金がかかった。

これはこちらでも変わらないみたいだ。


「今のところ、最低価格で地球産の宇宙船だけで10億DP。いいか、宇宙船一台だけで10億だ。それから燃料、物資、衛星本体、衛星システム管理の機材、そして宇宙へ飛ばすための発射台、それを管理するシステム及び基地、その他諸々だ」

「戦車や戦闘機どころじゃないわけね……」

「そういうことだ。しかも今までウィードに取り寄せていた型落ちの安物なんてのは使えない。最新鋭を取り入れないと宇宙へは手を出したくないのはわかるな?」

「わかるわ」

「しかも、それが成功するとは限らない。打ち上げて失敗して1兆の予算パーは避けたいし、万が一落下場所が悪ければ、同盟に傷ができかねない。どう考えても、宇宙開発は俺たち個人でやるような事業じゃない。周りを巻き込まないといかん」


まあ地球では研究が進んでいて、国際交流も進んでいるから、その他諸々もサポートできて予算的には一国でとばせるだろうが、それでも他国の有識者からの意見や計算などは必須であり、残念ながら、今の地球の技術を多少取り入れている程度のウィードで飛ばせる代物ではない。


衛星を飛ばしたい。

セラリアのいう衛星を飛ばす有用性はかなり理解できる。

それができれば、俺だって嬉しい万々歳だ。

だが、現実問題無理なのである。


「まずは地道に同盟を広げていくのが大事だ」

「……それはわかったけど。あなたがまた攫われたら……」

「まあ、幸い、新しい大陸を見つけた。しかも反対側に近い場所だ。そこで拠点を作ってレーダーでも置こう。無論こっちでもな」

「れーだー? ってコールじゃなくて電気的な?」

「そうそう。まあ魔力的なことも含めるけどな、俺たち要人にはこう一定の周波数の電波や魔力が出るものでも持たせて、それを空中高くに投げて起動する。そうすれば、三角測量のやり方で位置を把握できるはずだ」

「でも、それはレーダーが捉えられる範囲だけじゃないかしら?」

「まあそうだ。だが、別に通信をするわけでもないし、常時相応の量を発生させることもないからな。一瞬とてつもなく強い魔力波、電波をだせればその分遠くに届く。逆に届かない範囲にいるのなら、その場所は絞れるというわけだ。なにせ、すでに裏側に近い位置も確保しているからな。届かない範囲はたかが知れている。その場合は、航空戦力の高高度偵察機でもレーダー検知範囲外に飛ばせば感知できるだろう」

「なるほどね。その探索機を出す時間をあらかじめ教えて、その時にその電波や魔力波を出すものを投げればいいわけか」

「そういうこと。基本的に、召喚でしか俺たちを呼び寄せることはできないからな。固定した術式で莫大な魔力の後押しがなければ呼ぶことはできないのは実験したから、連絡が取れないというのはよほどだ」

「確かにね。ウィードの魔力やスキル封殺のダンジョン空間に干渉できるほどの魔力を送り込むのはそうそういないわ。今回の事件でその対策も立てたし、いいでしょう。宇宙開発は確かにリスクが高すぎるわね。……予算も捻出が厳しすぎるわ」


ほっ。

どうやらあきらめてくれたらしい。

このまま宇宙開発までやっていれば確実に首が回らなくなる。


「と、そういえばあなたはなんでここに? コメットやザーギスに話でもあったのかしら?」

「いやいや、セラリアに話があったんだよ」

「あら、そうなの?」

「フィンダール一行がウィードに無事到着して、おっかなびっくりだ」

「ま、当然ね」

「それで謁見の方はどうするよって話だ」

「そうねー。一応停戦の合意はバイデでしたんでしょう?」

「おう。連絡が来てるだろうが、間違いなく合意して書類も書いてもらった」

「なら、挨拶は必要ね。明日一番でやっておくべきかしら?」

「問題は、ハイデン一行との会談の前か後かって話だ」

「ああー、なるほど。……先にフィンダールの人たちと会うと、ハイデンとフィンダールの会談のあとまた顔を出さないといけないわね。二度手間になりそうね。忙しいし、先にハイデンとフィンダールの会談を済ませましょう」

「わかった。ならその予定でいく」

「ええ。お願いね」


そういって、俺はその場を去ろうとするが、忘れていたことがあるのを思い出して立ち止まる。


「そうそう忘れてた」

「まだ何かあるの?」

「クアルが切れてるぞ?」

「あっ!? ちょっと話をするだけのつもりだったのに、もうこんな時間!? やっばー!?」


セラリアはそういうなり、俺を追い抜いて、走って戻っていく。

それを見たコメットが苦笑いしながらつぶやく。


「セラリアも自分があれだけ忙しいのに、よく宇宙開発部門の設立とか考えたねー」

「まあ、それだけ今回のことは衝撃的だったんでしょう。私たちも乱れかけましたし」

「まあねー。だからと言って、スキル付与による知識詰め込めは勘弁だけどね」

「それは同意です。学んで自分の血肉にしてこそ、知識は意味がある。ふっふっふっ……」

「だよねー。くふふふ……」


……言っていることは尤もだが、変態の発言に聞こえるのはなんでだろうなー。

ま、まずはフィンダールとハイデンの会談の調整だな。






はい。

今回の内容は適当科学でやっているので突っ込まれると困ります。

そういうモノだと思ってください。

大きさ的には3倍から5倍近く表面積は違うんじゃないかなー、それでいて自転速度が速いから、は24時間で一周と。

自転速度が24時間で一周であることで、時差の経度が面積の分倍化するから。

これで、時差の説明がつく!! と適当に書いただけです。

そうなると重力ですが、まあ他の惑星や光星の引力で1Gになってると納得してください。

おれはそこまで賢くない!!




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