第539堀:まだまだ続くよこの仕事は
まだまだ続くよこの仕事は
Side:ユキ
夕ご飯後の、のんびりする時間帯にセラリアから、今日、キャリー姫たち率いるハイデンメンバーとの謁見の話を聞いていた。
普通なら、朝の会議とか報告書を通してだが、流石に時間がないので、こうやって家族団らんの場で話している。
「……というわけよ」
「「もうしわけありません」」
その話のあと頭を下げているのは、エリスとキルエ。
この2人が怒気全開だったおかげで剣を抜いて物理的に脅すことになったそうな。
珍しい、と言えばそれまでだけど、我が家のメンバーでは1,2位を争う冷静さを保つ2人がそういう行動をとるとは思わなかった。
他の誰かがやるんじゃないかとは思ったけど。ほれ、目の前の戦闘狂の女王様とか。
「なんですって?」
「なにも言ってないから」
とは言え、普通家族を攫われたなら怒るのは当然の反応だし、別に破談したわけでも首を狩ったわけでもないから、特に責める理由もないだろう。
「ま、特に被害を出したわけでもないし、キャリー姫たちもこっちが召喚に関しては怒り心頭というのがよくわかったからいいだろうさ」
「かと言って、あの姫じゃ、私たちに対する外交札がないわよ? 必死に、空手形を切ってきたし、一応、カミシロ公爵領が最悪こちらに転がり込んでくるみたいな話をしてたわ」
「その場合は、カミシロ公爵領をハイデンから防衛するって仕事になるよなー」
「まあ、必死さに免じて、そこは突っ込まなかったけど」
「それを言ったら、最初のセラリアとエルジュも同じようなもんだろう」
「まあね」
「だから、そこは信じたんだろう? って同じ話を前もしなかったか?」
「した気もするわね。というか、そもそも私たちはこれ以上領土が拡大しても仕方ないのよね」
「そうそう。バイデだけならともかく、カミシロ公爵領はいらん」
そもそも、運営するための人数がたらんし、統治者が変わることで起こる反発が非常にめんどい。
中世ヨーロッパ程度の文明レベルじゃ、領土を譲渡するというのは、最上級にちかいお詫びの仕方だが、それが俺たちにとっていいことではない。
これ以上仕事が増えたら死ぬ。
「そうよねー。まあ、そこを勘違いさせることには成功したわね」
「だな。ハイボール戦法とは違ってこっちが要求したわけじゃないけど、勝手に向こうがこっちの要求を高くした」
「ええ。これで、姫の提案にハイデンがごねれば、それに応じて、各国への繋ぎとかを支援してもらえるわね。ごねなくても、こっちが譲渡された領土を管理できないから他の国との繋ぎをと言えばいいし」
「それでハイデンからの繋ぎで、ハイデンと仲のいい国の土地は調査できるわけだ」
「幸い、反ハイデン側のフィンダール帝国とも繋ぎができているし、これで大体は調査できるってわけね。というか、あの姫もそれを理解して話していたわよね?」
「ああ、俺から散々領地はいらないって言ってるからな。これは、俺たちにというより、身内の反発を抑えるためのハイボール戦法だろうよ」
「他国に領地を譲るなんて、頭の固い連中は認められることじゃない。だから、最初にその話をして、本命の私たちの希望を通すって所かしら?」
「まあ、その本命の内容が予想つかないから怖がっているだろうけどな。どのみち、まずは、目の前のことが片付かないとな。あと不確定要素としては、魔物を使うリラ王国の残党、ルナから聞いた、中級神の残党って言うのは引っかかる」
「それは聞いたわ。驚いたというより、やっぱりというか、厄介よね。ねえ、あなたとしては、リラ王国の残党とかいうのと、中級神の残党って繋がっていると思うかしら?」
「現状ではなにも判断材料がないから何ともいえない。だが、勘でいうなら、きっとつながっているだろうな……。この手合い相手に甘い考えは捨てた方がいいし」
「そうよねー」
他の嫁さんたちも、苦笑いしながら聞いている。
ルナの持ってくる話は共通認識で、厄介ごととみられているのは御覧の通りだ。
「そういえば、ユキさん。私たちがキャリー姫たちのお相手している間、バイデの準備の方はどうでしたか?」
エリスが思い出したように、本日の俺のお仕事を聞いてくる。
そう、キャリー姫をセラリアたちに任せたのは、俺が忙しかったから。
主にフィンダール帝国の使者を迎えるために。
あと、ジョージンの提案でキャリー姫たちハイデンメンバーも加わるからその為の増強ということで、昨日の夜から、今日の夜まで、キャサリンやシェーラ、ラビリスたちと一緒にせっせと変更に合わせた準備に追われて、更にそのあとフィンダール帝国メンバーもウィードに案内することになったから、ウィードでの準備もてんやわんや。
基本的な外交や、さらに大陸間交流で、ウィードに来た使者や国賓を迎える専用宿はいまやパンパン状態。
その宿の確保や、別の国同士の会談場所まで確保しないといけないので、もう右に左に大忙し。
今までで一番の忙しさだよ。
なにせ、対応できるのが、俺たち一家だけだからな。
ウィードのリソースはロガリ大陸の外交、及び、大陸間交流の調整で大部分を使っている。
召喚という誘拐事件のこともあるし、これがウィードだけでも広がれば、一気に戦争になりかねないとはラッツの談。
ウィードが戦争と叫べば、いま同盟を組んでいる連合はこぞって参戦するだろう。
だって、いろいろな意味でウィードは連合の生命線だし、そのウィードに恩を売れるのだ。
馬鹿でも参戦する。
そうなると、大陸間交流が停止しかねないし、イフ大陸にも俺たちの誘拐の件が伝われば、さらに参戦を望む国も出てくるだろう。
ジェシカはジルバ帝国、クリーナはアグウスト、サマンサはローデイ、と言った各国の代表であり俺の奥さんだ。
参戦しないわけがない。
さて、そうなると、事態収拾がとてつもなく大変になる。
だから、俺たちは必死にこの少人数である程度落ち着くまで頑張らなければいけない。
しかも、新大陸のほうは魔物が危険物認識なので、魔物部隊も使えないと来たもんだ。
じゃあ、人の兵士連れてくればいいじゃん。となるが、魔物部隊と違って指定保護などで縛っていないし、スキル付与もできないので、言葉も一から教えないといけないという、さらに忙しいことになる。
なので、俺たち一家と現地戦力でなんとかするしかないのだ。
ふふふ……、呪われてるぜ。
「あのー、ユキさん?」
「あ、すまん。エリスに言われて、今後のことを考えてしまって途方に暮れてた」
「やること多いですからね。一つ一つ終わらせていくしかありません。で、二度聞いてわるいですが、バイデの準備は終わりましたか?」
「ああ、終わったよ。明日明後日には到着するだろうし、なんとかセーフ。ウィードの見学、会談準備の方はエリスやラッツが手伝ってくれたから知ってるだろう」
「知ってますよー。しかし、こうも色々重なると準備が大変ですよねー。ああ、そういえば、もうすぐ大陸間交流の方も、ウィードにという話が出てますよ?」
「マジか?」
そんな話になっているのか?
そう思って、ジェシカ、クリーナ、サマンサを見る。
「そうですね。魔剣使いたち、私の所はマーリィ様ですが、そこからユキの所属がはっきりとしましたからね。ウィードの王族というのを伝えましたから、ゲート技術の関係はエクス王国のノーブル殿が伝えていますし、イフ大陸の国々は何としてもウィードとの繋ぎが欲しいはずです。私の方には、マーリィ様から是非とも陛下がウィードを見て見たいというお願いが来ています。魔剣使いの側近だった私でもこれですから、クリーナやサマンサは……」
そういって、ジェシカはクリーナとサマンサを見る。
「くそじじ……じゃなくて、ファイゲルお師匠は、私を出汁になんとかユキと交渉できないかと、手紙が来ている、使節団も私を頼りにしている。約束の反故ばかり、許さない」
クリーナはそういって、静かに怒っている。
ああ、そういえば、アグウストに訪問した時はヒフィーの関係で、アマンダを戦力に使うために、クリーナがアグウスト所属なのを出汁にされたんだっけ?
仕事を手伝えば、俺との結婚を認めるし、今後こういった政治的な問題に巻き込まない的なことをいってたような?
「まあまあ、クリーナも落ち着け。あっちのイニス姫だってある意味不可抗力だろう。上の王様からの圧力だから仕方ない。別に俺の命を狙うという話じゃないし、この流れに乗り遅れるのは国としては損失だからな。だから、あれだ。クリーナの娘を見せるチャンスだと思えばいい」
「なるほど。秋天と一緒にクソ爺を燃やす」
「クリーナかか様。ファイゲルって誰?」
「私の育ての親にして、クソ爺。燃やす」
「? 秋天、よくわからない」
「燃やすな。秋天、あれだセラリア母さんのお父さんと同じだ」
「……お爺ちゃん?」
「そうだ。だから優しくな。クリーナ母さんはあまりお父さんと素直に話せないだけだよ」
「納得、セラリアかか様と一緒。いつも剣で打ち合っている感じ?」
「そうそう」
「なんで例えが私とクソ親父なのよ」
「いや、そのままだろう。違うのはコミュニケーション手段が剣か魔術かぐらいだろう?」
「「うぐっ」」
ちなみに、秋天を俺たちの手で育てている事は、あのランクスでの大鬼退治の時に各国が知っている。
いや、違ったかノゴーシュ退治だった。
最後には童子切ぶっ壊されて、乗っ取られたんで、大鬼退治の方が有名になっているんだよな。
普通なら認められないだろうが、俺はすでにロガリ大陸の大国のトップには素性が割れている。
クソ駄女神から遣わされたパシリということで、その関係である程度無茶が通る。
まあ、こんな小さな秋天を斬れという奴もいない。
被害はノゴーシュぐらいだし。
逆に、家の嫁さんたちと同じく秋天を可愛がっている。
まあ、こっちからすればロガリ大陸の神をも超える力の持ち主だからな。
仲良くしておいて損はないだろう。
と、クリーナの方はわかった。
あとは、サマンサの方だが……。
「私の方も、お父様や陛下から、ユキ様との話し合いの場を設けたいと手紙が来ております。私の場合は、クリーナさんのように、誰かと約束したわけでもないので……。公爵家の娘としての立場もございますし、ウィードとローデイの繁栄を願えば、断り辛く……」
「あー、サマンサ、気にしなくていいぞ。それが普通だから。アグウストの方は安易に俺たちを使いたいがために、クリーナと約束してしまったのが問題だ。まあ、アグウストには約束の件でなにかと揺さぶれるだろうさ」
「ん。それぐらいしないと駄目。約束を破るとか国として信用無し」
アグウストの方は後でもめそうだなー。
イニス姫が勝手に約束したようなもんだし、王ともめないといいけど。
「で、ノーブルの所のエクスと、ポープリのランサー魔術学府、そしてホワイトフォレストのレフェストたちは身内みたいなものだからいいとして、あとはエナーリアか、あっちには誰も繋ぎがいないよな」
「ああ、エナーリア聖国の方からは、私の方に手紙が来ています」
「ルルアに?」
「正確にはあの時の騒動で治療をした皆にですけど、ミリーさんはいま妊娠中ですし、ラッツさん、エリスさんはこっちで忙しいですからね」
「ああ、で、手紙の内容は?」
「同じようなものですね。聖女さまのお力で旦那様との繋ぎをと来ています。まあ、各国に比べると、強くは言い出せないようですね」
「そりゃー、もともとルルアたちは俺の嫁さんだしな。エナーリアから嫁いできたわけじゃないからな」
「ええ、ですから、ジェシカさんたちと同じように、エナーリアから誰を嫁がせればいいでしょうか? とお伺いが来ています」
「はぁ? って言ってもいられないか、受け入れる気はほとんどないが、エナーリアからすれば、他の国々は嫁さん送ってるのに、何もしてないからなー。遅れてるって焦ってるんだろうな」
そんなことを話していると、一緒に飯を食って話を聞いていたコメットが口を出してくる。
「じゃ、あそこのエージルをもらおう!! あの子はまだまだ伸びるよ。ウィードの技術を教えたらどうなるか楽しみだよ。ヒフィーとしても、エージルを推薦して受け入れられたってことで、神聖国の名も上がるだろうさ」
「いや、エージルってエナーリアの魔剣使いだろう? 将軍であり、そして技術開発の一角を担う重鎮じゃねーか、無理だろ?」
「なはは、魔剣使いは次を選定をすればいいだけだしね。ウィードの技術を取り入れるための派遣技術将校がウィードの王族であるユキ君の奥さんになるってのは美味しいだろうさ。下手に王族を送り込むと、ウィードの乗っ取りとか抜け駆けとか言われて、イフ大陸の各国はもめるだろうしねー。ユキ君もエージルのことは気に入ってなかったかい?」
「そりゃ、技術面でだよ。嫁さんはこれ以上増えてもなー」
俺の体がもたんし、いい加減コミュニケーションをとるのも限界の人数だろう。
「ユキ君はそこらへん優しいよね。一発やってそのまま放置でいいだろうに。国と国との婚姻に愛だのなんのを考えるとかないよ?」
「ダメよ。コメット、夫はそういうことはできないんだから」
「セラリアも苦労するねー」
「まあ、愛がなければ、ウィードが乱れる原因だし、これがウィードと夫の在り方よ」
「正直、エージルを迎えても、ユキ君ならここの皆と変わらずにイチャイチャすると思うんだけどなー。と、忘れてたヒフィーとポープリ、レフェスト、ノーブルからの伝言で、六か国の誰かが抜け駆けしても問題だから、一か月後に、代表をベータンに向かわせて、ウィード案内を頼みたいだってさ」
「マジかよ……」
「あと一か月か、半月ってキャリー姫には脅していったけど、思ったより時間がないわね。どう? あと一か月で問題は落ち着きそう?」
「いや、無理だろう」
どう考えても、ハイデンの問題と、帝国の問題が一か月で片付くわけがない。
はぁー、まだまだ仕事はふえるのかよ。
……とりあえず、飯食ったし、風呂入って寝よう。
明日も、バイデで忙しいし……。
はい。
先日新作といって、すでに発表しております「雪だるま弐式」の別ペンネームですが、雪だるのページからもご覧いただけると思います。
そして、必勝ダンジョンの投稿が遅れるご心配がありましたが、あくまであっちは気分転換に書いてる作品で、こっちは優先です。
なので、こっちの投稿が遅れるとこはありませんのでご安心を。
向こうが週一ぐらいのペースになるかと思われます。




