第516堀:学友再会
学友再会
Side:エオイド ランサー魔術学府 学生
……なんか変な夢を見た気がする。
ディフェスさんたちに、いつものように、稽古をつけてもらっていると、急に学長からユキさんたちの手伝いをして来いと言われて、準備も何もないまま、なぜか、学府の地下に潜り込まされて、変な光る門を抜けたと思ったら、見たこともない街が広がっていて、そこでボーっとしていると、担がれ運ばれて、気が付けば、見たこともない街に到着していた。
「……ねえ、エオイド」
一緒に運ばれてきたアマンダも目が点になってはいるが、僕よりも余裕はあるようで口を動かしている。
「ここ、どこ?」
そんなのわかるわけない。
見たこともない街並みだし、通りを歩いている人の言葉はまったく理解できない。
というか、そろそろ……。
「あのー、ディフェスさん。そろそろおろしてもらえませんか?」
「重くないですか? 2人も抱えて?」
「まだ下すわけにはいかないし、重くないから気にしないでくれ。ここは異国だからな」
「「異国?」」
さっきまで学府にいて、まだ歩いて30分と経っていないはずだけど。
そんなことを考えていると、立派なお屋敷の前にたどり着く。
「何者か」
門番の人が槍を構えて誰何してくる。
そりゃ、そうだよね。
僕とアマンダを軽々と抱えている、ディフェスさんを怪しく思わないわけがない。
「ユキ殿の要請で来たディフェスと申します。こちらの2人はエオイドとアマンダ、至急取次ぎをお願いします」
「あ、ああ。話は伺っています。担がれているお2人は具合が悪いので? 部屋を用意するようお伝えしましょうか?」
「お心遣い感謝します。しかし、大丈夫です。2人はこの地に慣れてない故、ここまでこうして連れてきたのです」
「なるほど」
ディフェスさんが門番の人と話しているけど、何を言ってるのかさっぱりわからない。
とりあえず、警戒は解けたようで、門を開けてくれる。
そして、僕たちは担がれたまま、お屋敷の中へと入って行く。
廊下ですれ違う人たちの目が痛い。
人を担いでいるディフェスさんと、その担がれている僕たちを何事かとみる。
「えーっと、ディフェスさん降ろして、説明してくれませんか?」
「すまないが、その時間すら惜しい。降ろすのも、説明するのも、まずはユキ殿にあってからだ」
僕の懇願は即答で断られて、そのまま担がれて一室へと入ると、そこには、ユキさんとタイキさんがいた。
「よ。元気そうだな」
「なんで担がれてるんだ?」
「時間短縮の為です。いちいち足を止めて説明するのは時間の無駄ですから」
「「なるほど」」
なぜか納得する2人。
そしてようやく床に降ろされる僕たち。
とりあえず、ユキさんに呼ばれたんだから説明をと思ったんだけど、ディフェスさんが先に口を開いた。
「命令通り、2人を連れてきました。しかし、私たちを使えばいいのでは?」
「そういうわけにもいかん。というか、魔力減衰は大丈夫か? コアの異常はないか?」
「いえ。そういうのはありませんが」
「ふむー。コアからの流失は無しか。やっぱり魔物っていうのがミソか? っていうか、話は聞いていただろう。よく来れたな」
「誰かが通らねばならぬ道、私が出ることで後人の役に立つのならば、躊躇いなどありません」
「いや、もうちょっと躊躇いは持とうな。それが原因でコメットバッサリだったからな」
「はい。あのようなことは二度といたしません。今回はユキ殿がデータを欲していると知っていたからこそ。あなたならば、私の死を無駄にはしないと確信あるからこそです」
「……はぁ。まあ、データが取れるのはありがたいが、具合が悪ければすぐ言えよ。速攻ウィードに戻れ」
「はっ」
「まあ、その関係で連れて行けない。バイデから離れて後で途中離脱でもされたらなお困るからな」
「確かにその通りですね。では、2人をお願いします」
「ポープリによろしく言っといてくれ」
「はい。では失礼します」
そんなやり取りをして、ディフェスさんは部屋を出て行く。
正直、僕たちは置いてけぼりだ。
「さて、改めて、久しぶりだな。エオイド、アマンダ」
「2人とも元気そうで何より」
「あ、どうも、お久しぶりです。ユキさん、タイキさん」
「どうも。ユキさん、タイキさん。ってそんなことより、ここどこですか!?」
反射的に挨拶を交わしたが、アマンダが即座にツッコム。
「ポープリやディフェスからは詳しい説明はなしか?」
「ユキさんの手伝いとしか……」
「まあ、話しても混乱するだけだしな。明日の朝には出発するし、俺たちの方から説明をしよう」
ということで、ユキさんからようやく説明を聞けることになったのだが……。
「……別の大陸ってどういうことよ。意味わからないんだけど」
「僕もわからないよ」
説明の後、用意された部屋でアマンダと僕は混乱していた。
ユキさんからの説明を簡潔にいうなれば、ハイデンという国を立て直すために支援することになった。そのための護衛が足らないから手伝って。とのこと。
そんな国、聞いたこともないといえば、別の大陸にあると返ってくる。
この大陸では男尊女卑が強く、男のメンバーが少しでもほしいとのことで、僕が呼ばれたそうだ。
アマンダはオマケ。
まあ、それはそうか。
ユキさんの奥さんたちの方が何倍も強いから。
「でも、事実よね。ユキさんがそんなウソいう理由もないし」
「学長の意向も、もっと経験積んで来いって話だったし、ユキさんもいるしそこまで危険はないんじゃないかな」
「そうね。言葉もわかるようになったし、大丈夫よね」
説明中に、指定保護って魔術をかけられて、言語理解というのを掛けてもらったら、先までわからなかった言葉がわかるようになっていた。
こんな魔術もあるんだなーって驚いた。
なにせ、見たこともない字に目を通すと内容が頭に入ってくるから、不思議だった。
「でも、僕たちでそのハイデンのお姫様と公爵令嬢の護衛なんてできるのかな?」
「私たちは護衛の水増しでしょう? そういう面倒な相手はユキさんたちがやってくれるわよ」
「いえ、こう、粗相とかあって打ち首だーとか……」
「そんなことユキさんたちが許すわけないでしょう。というか、お姫様に公爵令嬢、アグウストの先輩に、サマンサみたいなもんでしょう。そこまで気にする必要はないわよ」
「……その2人は例外だと思うんだけどなー」
「というか、ここまで来たら不安がってもしょうがないわよ。もう寝ましょう。明朝出発で、それに遅れる方が問題だわ」
「それもそうだね。今日はもう休もうか」
「そうそう。早くこっちに来て」
アマンダはベッドに乗って、手をバンバンしている。
「一緒には寝るけど、今日はしないよ」
「も、もちろんにょ!! そ、そんなことするわけないわ。人の家なんだから」
……にょって、やる気満々だったね。
「ゆ、ゆっくり寝るために、夫の抱擁が必要なの!! 早くきてよ!!」
「はいはい」
そんなやり取りをして、ベッドに潜り込もうとしていると、部屋のドアが急に開かれる。
「夜分に失礼いたしますわ。エオイドさん、アマンダさんお久しぶりです。サマンサで、す、わ……」
「……ん。久しぶ、り……」
そこにはサマンサさんとクリーナがいた。
ああ、そりゃそうか、2人ともユキさんと結婚してるんだから、ここにいても不思議じゃないか。
なんて、普通にそんなことを考えていると、2人が見たこともないにやけた顔でこちらを見てくる。
「あらあら、どうやら私たちはお邪魔でしたようですわね」
「……ん。熱い夜にお邪魔してごめんなさい。アマンダは積極的」
「ですわね。獲物を狙う目でしたわ」
すすーっと、部屋を出て行き、ドアが閉められる。
「って、ち、違うわよ!! 2人とも待って!! 待ちなさい!!」
「そんな恥ずかしがることではありませんわ。私もユキ様と一緒のベッドならそうなりますもの」
「ん。サマンサの言う通り、胸を張ればいい。夫婦の夜の営みは当然」
「仲がよろしくて、2人の友人として嬉しい限りですわ」
「ん。2人の仲がいいと私たちも嬉しい。大丈夫、部屋には誰にも近づかないように言っておく」
「あ、ありがとう。……じゃなくて!! なんで、そんなに恥ずかしげもなく言っちゃうわけ!? っていうか、誤解だって言ってるでしょう!! 話に来たんでしょう、部屋に入りなさいよ!!」
「はぁ。これじゃ、エオイドさんも苦労しますわね」
「ん。アマンダ。もうちょっと素直になるといい。エオイドは受け入れてくれる」
「だーかーらー、違うってばーーー!!」
そんなこと言いながらも、3人は嬉しそうに話をしている。
明日起きれるかなー。
「こらー!! エオイド、何度言ったらわかるのよ!! 朝にあんなこと!!」
「誤解だ!! そっちが寝ぼけて脱いだんだって!!」
「そんなことするわけないじゃない!! エ、エオイド、朝からしたいならちゃんと言えばしてあげるって言ってるのに!! ね、寝ている私に……、その異常性癖なおしなさいよ!!」
「だからちがっ……がふっ!?」
朝っぱらからモップが飛んできて、顔面に当たる。
「なんというか、久々に私、懐かしいものを見ましたわ」
「ん。学府に戻ったかのよう」
「……というか、まだやってたのか」
「……いやー。定番とはいえ、追われている本人は理不尽でしょうね。見ているこっちは楽しいですけど」
4人とも……、助けてください……よ。ガクッ。
「……はぁ。何度も言うがな。アマンダ、お主はもうちょっと冷静さを心掛けろ」
「……はい」
「これから、護衛の仕事じゃ。そこのところをしっかり認識するんじゃぞ」
「……はい」
そんな感じで、アマンダはデリーユさんに説教されつつ、出発の時を待っている。
「エオイドさん。今回私たちはユキさまに付き添えません。ですから、よろしくお願いいたしますわ」
「ん。ユキに力をかして」
「わかった。任せて。って言いたいけど、ユキさんたちに僕程度の力が必要かわからないけどね」
「きっと必要になりますわ。これから向かうは愚か者どもの権力争い。お2人にとってはいい経験になるでしょうが、決して気を抜かないようにしてください」
「……ん。やつらは汚いことを平気でするはず。ユキを引き離したり、分断したり、その時は落ち着いて、今までのことを思い出して」
2人の顔は真剣そのものだ。
それだけユキさんたちが大事で、僕たちの心配もしてくれているんだろう。
「ああ、間違っても、護衛対象のお姫様には、私と接するような対応を取らないようアマンダさんに言ってください。あれは気難しいですわ」
「……というか。お姫様の方はただの馬鹿」
「馬鹿って、そんなこと言っちゃ……」
ダメじゃないかと言おうとしたら、凄いドレスをまとったいかにもお姫様って感じの人がこちらに歩いてきた。
後ろに荷物を山ほど積んだ馬車もある。
「さあ、カミシロ公爵領へ向かいましょう!!」
「姫様!! 今回はお忍びです!! そのような格好はダメです!!」
「あら? でも、カミシロ公爵に対して失礼にならないかしら?」
「道中の危険が増すのです。どうかお召し物をお変えください。お荷物も減らさなくていけません」
「……2人がそこまで言うのであれば仕方ありませんわね」
そういって、何やらお姫様はお付きの2人の女性に連れられて戻っていく。
「……えーと、聞いていたより状況は悪くないんですか?」
わずかな希望を持ってそうユキさんに問いかける。
「残念ながら、崖っぷち。ただあのお姫様が状況を把握できていないだけだ」
「だからこそ、ハイデンの王都でなく、カミシロさんの実家を頼ることにしてるんだよ。あのぽわぽわを見れば危機感が伝わるだろう」
「……」
思ったより、凄く大変な旅になりそう。
「アマンダ。あの姫が戻ってくるまで、腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回のあと組手じゃ」
「ふぇ!? そ、そんなことしたら動けなくなりますよ!?」
「ディフェスたちとしっかり訓練しておるかみるだけじゃ。手加減はする。まあ、動けなくなっても担いでいくから気にするな」
「ちょ、エ、エオイド!! 助けて!!」
まってくれ、僕に話を振ると……。
「エオイドの方も確認せねばならんのう。ついでじゃ一緒にやるぞ」
「あ、えーと、僕はユキさんやタイキさんに指導を頼もうかと……」
「いや、俺とタイキ君はこれから打ち合わせだ」
「デリーユさんにしごいてもらうといい」
そして、お姫様が戻ってきたのは2時間後だった。
なんで、そんなに時間がかかるのか……な、ガクッ。
気が付けば300万文字突破。
これ全部本に起こそうとしたら、20冊分はあるな。
まあ、そこまで本が出るとは思えんが。
web版はまだまだ続きます。




