第452堀:鬼退治の準備と新しい研究
鬼退治の準備と新しい研究
Side:タイキ
えーっと、確か、レイの奴の処刑が確定したんだけど……。
「タイゾウ殿。警備の手配の確認をお願いいたします」
「すまない。ルース殿」
なぜか、タイゾウさんがルースと処刑のことで警備の打ち合わせをしている気がする。
そう思っていたら、キーノグまでタイゾウさんに走り寄ってきて話しかける。
「タイゾウ殿。処刑の喧伝は終わりましたぞ。これで10日後には剣の国まで、話は届いて、処刑当日の一か月後には何らかの動きを見せるでしょう」
「キーノグ殿。ありがとうございます」
あるぇー?
キーノグもなんか、日程の話し合いをしている気がするぞ?
君たち、2人ともランクスの重鎮だよね?
俺の部下だよね?
キビキビと指示をだすタイゾウさんを見ると、なんかランクスの王様だっていう自信がなくなってきた。
そんなことを考えていると、タイゾウさんが書類をまとめてこちらに持ってくる。
「タイキ君。この書類の確認をお願いしたい」
「あ、はい」
受け取った書類に目を通す前に、タイゾウさんが口を開いて書類の内容の説明を始める。
「知っての通り、主な内容はレイの処刑に関することで。詳細な内容を決めたものだ」
「……みたいですね」
話は遠くからも聞いてたから。
ユキさんの方は、童子切の対策で調べ物があるとか言って戻っちゃったし、ユキさんの確認は後に回すしかない。
そんなことを思いながら、書類に目を通す。
簡単な内容は以下の通りだ。
・主な目的
元ランクス近衛副隊長レイの処刑。
罪状は国家反逆罪、及びその他諸々。情状酌量の余地はなし。
これを大々的に処刑することにより、ランクス国内の旧ランクス王家勢力および、他国へ対するタイキ陛下の統治を強く示す。
・副次的な狙い
元ランクス姫、ビッツの側近。ビッツの姦通相手でもあり、ビッツの恋人というのが知られている。
そこを狙い、大々的に宣伝し、ビッツやその一味を匿っているであろうノゴーシュを誘い出し、この争いの終結の機会を狙う。
・以上の目的達成の為に必要な場所、物資、人員、費用など
まず場所だが、あえて、剣の国近くの村を選び、相手がこちらに来やすい状況を作る。
物資については、処刑場所の村での、施設建設、及び村人たちの一時避難場所を確保。
人員は、レイを逃がさないための警備増強及び、処刑場となる村の住民を全員兵士と入れ替える予定。
なお、ユキ君の所からも、魔物たちが伏兵として待機予定。
相手が相手なので、警備、処刑場は練度の高いランクス兵士で固めることを推奨する。
費用については、レイのいる牢屋の強化をユキ君に頼んである。技術費用というやつだ。それと、村人へ扮装するための服など、それに合わせた武器の調達。最後に、一時避難するための村人への補填費用。
とまあ、こんな感じだ。
実に理にかなっているといえばそうだけど……。
「タイゾウさん」
「なんだい? 何か不明な点でも?」
「刀のことが載ってないですけど……」
あれだけ怒っていたのに、この書類に刀のかの字もないのが不気味だった。
「ああ、流石にランクス国に関係のない話は持ち込まない。これは、あくまでも、レイの処刑とその関係者をつり出すための作戦立案だ」
ほっ。
どうやら、そこまで暴走しているわけではなさそうだった。
「で、こっちが、本命だ」
あ、いや、暴走してた。
別紙でちゃんと刀のことを用意してた。
・島津一文字、及び童子切安綱の奪還について
常にユキ君のコール画面からの監視がなされているので、ビッツ、ノゴーシュが処刑場を訪れた時点で所持しているかわかる。
所持していた場合は殺してでも奪い返し、所持していない場合、拷問をして所在を吐かせる。
刀が無事であれば、打ち首ではなく、自刃にする予定。
あ、うん。良くて自殺ね。
「えーっと、申し訳ないですけど。一応、ビッツやノゴーシュの処刑は俺一人では決められないんですが……」
恐る恐る聞いてみる。
「……一応、希望というものだ。大丈夫だよ。流石にここまでできるとは思っていない。いろいろな状況から鑑みて、勝手に処刑してしまうのはいろいろ問題があるのは理解している」
よかった。
こういう理性もほんの少しは残っていたらしい。
「だが、ことは我が主家の、島津一文字、国宝にも等しい童子切安綱を盗まれた。これは日本としての対応をちゃんと求めるべきだろう。私たちがこの異世界にいる日本人として、日本を背負っているのだから」
「はい。それは……わかっています」
はぁー。
本当に厄介なことしてくれやがったな。
どこの国でも国宝を盗まれるなんてことは、基本あってはいけない。
国の宝と書いて国宝。
国がその物の価値を認めたという、疑いようのないお宝だ。
万が一盗まれたとして、国内外でも大騒ぎになるのは目に見えている。
それが現代の地球でこれだけ影響がでるのだから、この中世ヨーロッパの剣と魔法の世界では、国宝なんてのは文字通り国の象徴というレベルの代物まで存在する。
そういうわけで、俺やユキさんは騒ぎを大きくしたくなかったのだが、国宝の重要性を深く理解している、ルースやキーノグ、ガルツのティークさんは慌てて、その刀についての奪還作戦をタイゾウさんに任せたのだ。
日本人代表として。
俺やユキさんは、ほらランクス国王だったり、ウィードでいろいろ忙しいしもともと表舞台に立つ人間じゃないし、そういうことで、タイゾウさんに白羽の矢が立ち、島津一文字の件もあってやる気満々だというわけだ。
「だが、奪還の書類を見ての通り、今はその盗人どもをおびき寄せる作戦が第一だ。この処刑作戦、予算などは通せそうか?」
「えーっと、ルースやキーノグに使える人員や予算、物資を確認しないといけないんですが……」
俺が、そういってルースとキーノグに視線を向けると……。
「はっ、すでに人員の選定に入っております。不足なく、余剰人員の捻出もしておきます」
「はっ、予算はすでに確保してあります。仕入れる物資はユキ殿の方から融通してもらいますので、滞ることはないでしょう。ことは、ランクスの存亡にかかわりかねない内容ですので。抜かりはないですぞ。無論、今後の国の運営に必要な資金は残してありますので、何も心配ありませんな」
あー、さっきからタイゾウさんと話していたからね。
既に、俺のGOサインまちですか。
はいはい。許可出せばいいんでしょう。
「それならいい。なら、予定通りに準備を開始しろ。間に合いませんでしたとかはないぞ」
「「はっ!!」」
返事をした二人は一気に部屋の外へと飛び出して、関係各所へ連絡をしに行ったんだろうなー。
やる気があるのは、いいことだと思うが。
「でも、タイゾウさん。この作戦は相手が動かないと意味がないですよね? 引きこもる可能性や知らぬ存ぜぬで押し通されたら終わりですけど、そこのところはどう思っているんですか?」
「ははっ。そんなことは織り込み済みだ。まさか、この程度のことで敵の大将と思える2人がのこのこ来るわけないだろう。大事なのは挑発だ」
「挑発ですか?」
「うむ。この挑発で、相手は何らかの動きを見せるだろう。表向きにはわかりづらいが、霧華君やモーブ殿たちなら、ノゴーシュやビッツの動きをとらえられるだろう。流石に、まったく動かずなんていうのはあり得ないからな」
「ああ、この話を流した時に、必ずビッツとノゴーシュが接触するってことですか」
「そうだ。ノゴーシュは国王でもあるから、動きはつかみやすい。そこを追っていけばビッツにたどり着くだろう。そこで、改めて作戦を考える」
「なるほどー」
「まあ、ランクスからも秘密裏に交渉いかんではレイの返却をしてもよいという旨の話をおくるがな」
うわー。
誘惑というか、罠たっぷりですか。
流石にこのどれかには引っ掛かりそうだな。
「さて、準備の方は私たちが直接動くようなことはないだろう」
「はい。そうですね」
立案者が実働にはいるとか、それはかなり厳しい状況だ。
そんなことにはならないように、ちゃんと予算や人員、物資などを確保しておくのが、上に立つ人の責務と言える。
「じゃ、タイゾウさんはこれから休みますか? いままで働き通しでしょう?」
てっきり休む方向の話かと思っていたのだったが、タイゾウさんは俺の言葉を聞いて眉をしかめる。
「何を言っているんだ。確かに休むことは必要だが、今はそれより確認しておくことがまだあるだろう?」
「確認しておくこと?」
もう大抵終わったと思うけどなー?
何か忘れてることあったっけ?
ユキさんへの報告なら明日ってことになっているし、なんだろう?
そんな風に首を傾げていると、タイゾウさんは竹刀を取り出して、こちらに渡してきた。
「えっと、これはどういうことでしょうか?」
「無論、訓練だ。いや、本格的な訓練は明後日以降だな。ユキ君の動きも確認しておかないといけないからな」
どういうことでしょうか?
俺がさっぱり状況を飲み込めないでいることに気が付いたのか、タイゾウさんがようやく何を目的に訓練をするのか言ってくれた。
「酒呑童子が復活した際には、私たち日本人が先陣で戦わなければならない。かの英雄たちが寝首を掻くしかなかった、あの鬼と戦うのだ。準備はしておかなければならない」
あー、そういえばそんなネタもありましたねー。
いや、ガチだからネタにはならないか。
「とりあえず、訓練したところで勝てる気はしないですが……」
そういいつつも竹刀を受け取り、立ち上がる。
「何もしないよりはいいだろう。ユキ君が合流をしてからは、ユキ君が集めてくれた酒呑童子の話から予想できる動きを分析して、なるべく優位に動けるように研究会を開かなければいけない」
「銃器で片付けられればいいんですけどねー」
「私もそうは思う。しかし、こんな異世界まであったのだ。大江山の鬼の大親分に銃器が効くとは思えなくてな。こういうのは古来から、魂を預けた武器でのみ、傷がつけられると聞く」
「それは同意見ですね。でも、科学の第一人者のタイゾウさんからそんな話が出てくるとは思いませんでしたよ」
こういう、妖怪とか幽霊とか、まったく気にしない立場かと思っていたから。
「何を言うんだい? この妖怪もおそらくは、この異世界と同じように、特殊なルール。すなわち、私たちの知らない法則に従って、使っているに過ぎないだろう。ならば、それを調べて解明するのが科学者の責務だ」
ああ、そういうことか。
そういえば、肝試しの時の分析も喜んでやっていたよな。
「不謹慎かもしれないが、私は内心、心が躍っている。楽しいのだ」
「楽しいですか?」
「ああ。無論、国宝が奪われたということには憤慨するべきものだが、今回のことで、地球にも魔術や呪術があったことの証明になりそうだ」
「ああ、そういわれると確かに……」
「新しい分野の開拓。いや、こういう眉唾な研究は存在していたが、これは日の目をみる研究かもしれないと思ったのだ。いつか、いつの日か、地球に戻るときがくる。その時、私が生きているかはわからないが、私が行っていた通信などの研究はすでに君たちの時代には遥か先に行ってしまっている。それは悔しいじゃないか。だから、私はこの世界で解明すべき新しい謎を追いたいと思っていたのだが、ここにきて地球の過去における、魔術、呪術の使用の可能性だ。これを解明できれば、いつか地球に私の研究だけでも届けば、きっとみんな驚くだろう。そう思わないか?」
「でしょうねー」
きっと、妖怪探しとか、ああいう番組が再発するにきまっている。
「それはきっと楽しいと思うのだ。まさか、この年になって、新しい目標を見つけられるとは思わなかった。だが、そのためにも……」
「酒呑童子に負けるわけにはいかないですか」
「そうだ。可能ならば無傷で確保したい。最高の研究対象ではないか!! 日本原産の魔物といっていい存在だ!! これは、日本の……いや、地球の歴史に新たな一ページを加える事実になる!!」
そういって、笑顔で竹刀を構えてるタイゾウさんを見て、やっぱりこの人は根っからの研究者なんだなーと思った。
ま、そんな大きい夢を知った俺も、きっと笑っているのだろう。
さーて、竹刀をちゃんと握って……。
「いきます!!」
「こい!!」
まずは、大江山の鬼退治の訓練だな!!
Side:ユキ
「あんたねー。もうちょっと、こうやることがあるでしょう? 明確にラスボスみたいなのが出てくるんだから……」
そういって、ぶつぶつ文句を言っているのはルナだ。
大江山の酒呑童子対策とか、今後、地球からの物資輸送は、俺の関係者に限ると制限をつけさせたし、これ以上、この世界の混乱を防ぐためにも、異世界召喚ができないように、星に結界を展開してもらうことにした。
前々から思っていたが、核ミサイルつかえばいーじゃんというバカが地球からやってきたら終わりだからだ。
幸い、転送ゲート、転移魔術の上位版みたいなもので、阻害することは特にルナにとって負担でもなかったらしいので、すぐに展開された。
おかげで今までの貸しがなくなっているけどな。
「うっせー。だれが、酒呑童子の復活を待ってガチ勝負するかよ」
「本当にあんたは主役体質じゃないわね」
「昔から俺は一般人で通ってるんで残念でした」
そう俺はノーマル、ザ・平凡、そんな言葉がふさわしい男だったのだ。
だれが、漫画やアニメの主人公みたいに戦うかよ。
それは俺の役どころじゃないというのは、昔から百も承知だ。
「だから、徹底的に戦わない方向で動く」
「……嫌な性格よねー」
「うっさい。とりあえず、効果のありそうなお札ってどれだよ? 札術とか知らないんだよ」
「知らないの? 習っときなさいよ」
「どこでだよ!!」
俺を何でも屋と思ってないか、この駄目神。
はぁ、なんで異世界に来てまで鬼退治かなー。
この前の肝試しといい。
タイゾウさんは新たなる分野への進出を考えている。
世の中いろいろことに目を向けるのも大事だよねー。
まあ、心霊はどうかしらんが。
さて、そんなことより、明日はポケモンの新作発売!!
さあ、ポケモンゲットだぜ!!




