第451堀:天下五剣と島津一文字
天下五剣と島津一文字
Side:ユキ
はぁ、なんか騒がしかったわー。
レイとかいう、しんのゆうしゃは兵士に簀巻きのまま連れていかれた。
勿論、うるさい口を再び封印されて。
「で、マジで処刑するのか?」
「あれを内にも外にも置いとけないでしょう?」
「そりゃなー。ティーク兄はどう思う?」
「僕も、タイキ君に賛成かな。さっさとああいうのは処分する方がいい。タイキ君の言う通り、どう扱っても毒にしかならないからね。捕まえたままにしておいても、私たちに不満をもつ者たちにいらぬことを吹き込んで、不安定にするだろうし、敵方からの救出工作とかの対応も面倒だ。外についても言わずもがな。敵にこっちの情報を無駄に与えたくはない。ダンジョンマスターである可能性があるならなおさらだ」
まあ、当然な意見だな。
「というか、今回の一件。これ以上下手に拡散すると、ガルツの名が地に落ちる。ランクスのあの姫君をウィードへ招待したのは私たちガルツだからな。これが原因でウィードの流通に滞りがでてみろ。もう、恐ろしいことになるぞ」
「「ああ……」」
そら、そうだ。
むしろこっちが本音か。
流通停止とか、もう各国からかなりの突き上げ食らうだろうな。
だから、ランクスを連れてきたガルツ側としてはさっさと処分してしまいたいと……。
「ユキ殿。どのみちあのレイは、近衛の副隊長という立場を使って、婦女暴行などを繰り返してきたクズです。不当な処罰ではありませんからご安心を」
あ、そこまでのクズだったのか。
近衛隊とか言っていたから、忠義で姫さんに付き従ってると思っていたのに。
よく、これでタイキ君がくるまで国の形をしてたなおい。
俺がそんなことを考えていると、ふいに会議室の扉が開かれる。
そこには、タイゾウさんと、なぜかルナがいた。
「あれ? タイゾウさんはお休みじゃなかったんですか?」
「いや、そのはずだけど。というか、ルナはなんでここにいるんだよ」
「えーっと、話から察するに。タイゾウさんはタイキ君の遠縁の方だよね? で、そちらの女性が……ルナ?」
名前を言って思い出したのか、顔が真っ青になった。
一応、この前の非公式3大国会談で、神様の存在をしって、さらに上の上級神の存在を教えられていたティーク兄は、ルナのことを知っていたんだろうな。
まあ、王様として、神様のさらに上の神様とか、失礼があってはいけないからな。教えてたんだろう。アーリア姉さんもリリーシュとかには挨拶にわざわざ来てたし。
この時代、この世界にとっての神様ってのはそれほど影響力があるんだろうな。
俺にとっては、駄目神で駄女神なんだが。
で、自分の失言?に気が付いたティーク兄はその場で膝をつき、頭を下げる。
「大変ご無礼をいたしました!! 上級神の聖名を呼び捨てにするなど、何たる不敬!! どうか、我が首を捧げますので、わが国に、お咎めなどは……」
仰々しく、盛大に謝るティーク兄だが、ルナは特に気にした様子もなく……。
「あん? 名前を呼ばれたくらいでそんなことはしないわよ。気にしないで。それよりも、ユキ!! あんたに聞きたいことがあるのよ!!」
「はあ? 俺?」
なんでわざわざルナが出張ってきたかと思えば、俺に用?
「そうだ。これは緊急事態だ。ユキ君、正直に答えてくれたまえ」
「は、はあ?」
なんか、タイゾウさんが妙な迫力をもって言ってくる。
「童子切安綱。あんた、持ってるでしょう。あれ、オリジナルだから、返しなさい」
そういって、ちょいちょいと手をクイックイッっと返せよとアピールをする。
「いや。そんなもん注文した覚えはないぞ。天下五剣の中でも一番厄介な曰くつきじゃねーか」
天下五剣とも呼ばれる、日本に存在する刀剣の中で、最上位の五振りと言われる刀だ。
文字通り、天下に5振りだけの、超が付くほどの、そのどれもが国宝レベルの代物。
その天下五剣の一番最初に上がる刀の名前が、今言われた……。
童子切安綱
大江山に住み着く酒呑童子という鬼の大親分を斬った刀として超有名な刀だ。
この話だけを聞くと、ただの鬼退治じゃねーか、と思うだろうが、実はそんな生半可な話ではない。
当時、酒呑童子を退治に行った腕自慢、モノノフたちはいずれも有名どころばかりで、この刀、血吸いとも呼ばれるのを握った、源頼光。
童話にもなっている、力持ち金太郎、改め坂田金時。
大蛇退治の英雄、大鎌の碓井貞光。
神楽「土蜘蛛」「子持山姥」「滝夜叉姫」などあまたの物語に登場する卜部季武。
髭切丸で茨木童子を退治した、もう一人の鬼切り、渡辺綱。
この伝説の5人をして、酒に酔わせて、その隙に首を斬ることでしか勝ちを拾えなかったのだ。
日本における、八岐大蛇、玉藻の前などという大化生に肩を並べる、大妖怪である。
つまるところ、超強い化け物。
まあ、話を聞くにどう考えても、恨み骨髄まで染み込んでいるような刀を取り寄せるか。
「はあ? でも、童子切がこっちの世界にきてるんだから、ユキの関係者しかありえないでしょう?」
「いや、ナールジアさんにそれよりも安全?な刀作ってもらってるからなー。わざわざ取り寄せたりしてないぞ。クソ高いし」
そう、俺も天下五剣は見てみたいのだが、その価格がぶっ飛んでいた。
いや、今の収入からするとそこまでないのだが、50万DPもつぎ込むくらいなら、作った方が安くつく。呪われている可能性もあるから、だれがそんなもん欲しがるかよ。
「そういわれると、そうよねー。じゃ、だれが……」
「いや、この世界に飛んできたのがわかってるなら。誰が取り寄せたのかもわかるだろう」
「ああ、そうね。てっきりユキだとばかり思ってたから。さっさと調べましょう。あれオリジナルだから、さっさと戻さないと、酒呑童子の荒魂に乗っ取られるからねー」
「おいこら。ちょっとまて、さっきから、不穏な言葉が聞こえてるが、オリジナルってどういうことだよ? 荒魂に乗っ取られるってどういう話ですかねー?」
俺が嫌な予感を覚えつつ、調べ始めたルナに聞く。
「そのまんまよ。あの刀。当時の霊験あらたかな場所で、凄腕の刀匠、そして八百万の神々の祝福に、最後に酒呑童子の荒魂も内包して、簡単にコピーできなかったのよ。だから、本物を博物館から転送して、今偽物をおいてるのよ。ばれると、日本の八百万とかうるさいから、やっとできたコピーと交換してほしかったのよーっと、えーっと、いつ注文がはいったっけ?」
「まてや!! 八百万の神どころじゃないわ!! 日本大混乱だよ!! 博物館の関係者クビになるレベルだよ!! あと何!? 荒魂に乗っ取られるって!?」
タイゾウさんが慌ててこっちにきた理由がよくわかった。
やべー、やべーどころじゃねえ。
何かとんでもない爆弾が日本から転がり込んできた!?
しかし、俺の叫びも無視しつつ、ルナは調べて……。
「あ、わかったわ」
「誰だよ!! 早く取り戻すぞ!!」
「えーっと、取り寄せたのはビッツ・ランクスってなってるわね。あはは、なるほど。タイキから刀のことでも聞いたのかな。まあ、正規の手続きは踏んでるし、こっちのコピーを置けば、そうそうばれないから。このままでいいか」
「取りにいけよ!!」
「えー。だって、今の騒動は、あんたたちの問題でしょう? 私が手を出す理由にはならないじゃない」
「ぬぐっ」
そう、今回はあくまでも、ルナのミスではなく、神々とのいざこざを乗り切れと最初から言われていた話だから、ルナの手助けは望めない。
「ぱーっと能力つかって取り戻してもいいけど、それだと、あんたたちがいらなくて、私が頑張れよって話になっちゃうじゃん。別に、ルール違反したわけじゃないし。実力で取り返しなさいな」
「ばれると、八百万がうるさいんじゃなかったか?」
「あー、まあ、そこはビッツのせいにするからいいわよ。てっきりユキが持ってると思ったから、交換できるかなーって思っただけ。正直な話、ユキの関係者以外のダンジョンマスターとかと会話する気はないわよ。あいつら、今まで役立たずだったから、会ったらどうせ泣きついてくるわよ? そんなの勘弁よ」
確かに……。
しかし、まて、元の問題はルナの送り主未確認からだ。
なにかしら、協力は得られるんじゃないか?
「もとはと言えば、ルナが送り先の確認を怠ったのが原因だろう。全部手助けをしろなんていわんから、せめてどこに童子切があるかぐらい教えてくれ。荒魂に乗っ取られるっていうぐらいだから、荒魂から復活することもあるんだろう? それはそっちとしても問題だろ?」
「うぐっ。相変わらず痛いところをついてくるわね……。まあー、流石に酒呑童子がこっちで荒魂のまま復活すると面倒よねー。軽くこっちの神々超えてるからねー。荒魂は文字通り荒い心、魂だからね。暴れまわるわね。止めるのは厄介だし、私にも多少の責任はあるか……」
あー、そういうレベルの大妖怪でしたか。
「しゃーない。場所ぐらいは感知できるようにして、万が一復活した際には、私からサポートぐらいはしてあげましょう。異世界の大江山の酒呑童子退治現代版とか面白そうだし。OK」
「面白くねーよ!? クソ、絶対復活前に取り戻すからな!! で、場所はどうすればわかる!!」
「はいはい。いよっと。面倒だから、ユキのコール画面だけね。地図機能に方角と黄色い点が付くからわかるわよ」
そう言われて、慌てて、コールの地図機能を起動して確認する。
「方角は間違いなく、剣の国の方角だな……。あのお姫さんが持ってるのか?」
「さあ。そういうのはわからないけど。剣の国なら、ノゴーシュが持っててもおかしくないわよねー。あいつ、30年ぐらい前に、上泉信綱にボコボコにされてたから、刀に執着してそうよねー。あれは笑ったわー」
そういう情報はさっさと渡せよ!!
「えーっと、ユキさん」
「どうした。タイキ君?」
「その、タイゾウさんが……」
「タイゾウさんが?」
そういわれて、タイゾウさんの方を振り返ると、顔を伏せてわなわなと震えていた。
「あのー、タイゾウさんどうしたんですか?」
「ユキ君。今すぐ、剣の国へ攻めるべきだ」
なんか、目が座った様子でそういわれた。
「国宝を奪われたとあっては、日本の恥!! 魂を盗まれたも同然!!」
「お、おちついてください!!」
「落ち着いていられるか!! 童子切はともかく、島津一文字まで奪われたのだ!!」
「はい!? おい、ルナ!!」
「ん? ああ、島津一文字もあったわね。でもあっちはコピーよ?」
「そんなのは関係ありません!! 我が主家、島津家の宝剣をコピーでも持たれることは、武士としては恥!! 何としても、取り戻すのだ!!」
あ、やべ。
これキレてるわ。
「即刻、レイとか言うものの処刑を宣告して、刀の返却を求めるべし!! それが叶わなくば、全軍をもって剣の国、ノゴーシュから刀を取り戻すのだ!!」
うひゃー。
身内にも鬼がでたよ。
酒呑童子の記述などはwikiなど多数文献から参考にしています。
まあ、結構マジでやばいレベルの鬼さんだというのがわかるかもしれないので独自で調べてみるのも面白いでしょうね。
ゲームしている人にとっては「俺の屍を越えていけ」が印象深いのではないでしょうか?
あと、タイゾウさんの怒りが基本的にごもっともであります。
日本人がこう同じような有名な日本刀とかを手に入れたりして無双の話とかありますけど、普通に考えると大問題ですし、所持するのに届け出が必要なので、もし有名な刀を授かったても税金などの心配もでてくるので、そっと趣味人に売り払うか、交番に届けに行くのが無難でしょう。
博物館に直接返しにいくのは窃盗とかを疑われるのでお勧めしないです。




