第445堀:我儘姫今までと始まり
我儘姫今までと始まり
Side:ビッツ・ランクス ビッツねビッチじゃなく
「ふふふ……」
思わず、笑いがこみあげてしまいます。
ようやく、ようやくこの時が来たのですから。
……長かったですわ。
クソ勇者タイキから国を逐われて、早3年近く。
あの、屈辱を晴らす時が来ましたわ。
まずは、私を見捨てたランクスなどという国と恩知らずのタイキを血祭りにあげて、世界に対して、声高々と宣言いたしましょう。
「この私、勇者を呼び出した、聖なる姫君を粗略に扱った、国々への宣戦布告という恐怖を届け、真なる正義を謳いましょう!!」
タイキへ協力した属国の愚か者ども、支援を打ち切ったガルツの能無しども、そしてぇー、神々に敵対する大悪であるウィードの異世界人ユキ!!
ほかの愚か者どもは騙せても、私の心眼はごまかせません。
あのウィードはどう見ても、上級神の力を借りてやっているのは明々白々。
そのような、蛮行もダンジョンマスターの力を引き継いだ私にかかれば簡単に見破れるのです。
「まて、ビッツ。そんないきなり魔物に蹂躙されたなどおかしく思われないか?」
そんなことを言って、私のいい気分を邪魔するのは、私の協力者であり、神であるノゴーシュ様だ。
彼は確かに剣の腕前は神の領域にあり、私の愛人の騎士とは比べ物にならないが、いかんせん頭が足りていない。
「大丈夫ですわ。ランクスは不幸な災害で亡ぶのです。偶然、国内にダンジョンが開き、そこから無数の魔物があふれ出る大氾濫によって。そこから、私たちが裏にいるなどと思わないでしょう。というか、ウィードの悪行と思われるでしょうね。あちらは名が売れていますから」
「……なるほど。それなら、確かに。しかし、このようなことをしてよいものか?」
「あら、闇討ちなどではありませんわ。これはお返しです。私を逐いやったランクスとタイキに対して。礼には礼を、こぶしにはこぶしを、剣には剣をですわ」
「うむぅ」
そんなことで悩むからいまだに小国なのよ。
力はあれど、それが国を治めるのに適しているかというと違うというわかりやすい証明ですわね。
本来ならば、罵倒するところですが、剣の腕は私が呼び出せる最上級の魔物でさえ、簡単に両断されてしまいます。
彼を倒すのであれば、さらにランクが上の魔物を複数体でやっとというところでしょう。
なので、今は適当に説明してごまかさなければいけません。
「仕方ないのですわ。すでにランクスの背後にはユキという大悪人が付いています。彼者は上級神をたぶらかし、食い物にしています。それを食い止めるためには、軍備を整える必要がありますわ。そこで、まずは対抗するために周辺国に悪へ加担した罰として、魔物による誅殺をすすめ、DPを得るのですわ。逃げ込んできた民は篤く保護すれば信仰もさらに集まりますし、一石二鳥ですわ。それに……」
「それに?」
「ノゴーシュ様の所望していた、カタナ?という最上級の逸品も次のランクス攻めで手に入れられるでしょう」
「本当か!!」
「ええ。これがあれば、さらなる高みを目指せるのでしょう?」
「ああ!! これで、二度とあんな奴に負けることはない!! カミイズミノブツナめ、覚悟しておけ!!」
ふう、何とかごまかせたようですわね。
しかし、ノゴーシュ様がいうカミイズミノブツナという人物ですが、30年ほど前に、ノゴーシュ様をカタナという武器で理不尽に叩きのめしたとか。
そのような、得体のしれない者もいるのです。
今はまだ、この手駒を手放すには早いので、適当に飼い殺しにするのがいいですわ。
「では、私は準備があるので、失礼いたしますわ」
「ああ。十分に気をつけてな。戦場では何が起こるかわからん」
「ええ。ご忠告ありがとう存じます」
私はそういって、ノゴーシュ様と別れて、私のダンジョンへと戻る。
「おお、お帰り」
「ただいま戻りましたわ。これでようやくランクスを取り戻すことができます」
「それはよかった。でも、私が剣を振るうことはまだなさそうだ」
「あなたはすでにランクスの継承者、剣を振るう時は簒奪者タイキの首をはねるときですわ」
「そうか、王自ら先頭に立つのはそのときか」
「ええ。そのために、このようなダンジョンを得ることができたのでしょう。神が正義を成せと」
「そうだな。私たちの命運が尽きていなかったのは、神がまだ生きろとおっしゃられたからに違いない」
そう、これこそ神のお導き。
あの日、城を追われ、当てもなく逃げていた時に、ぽっかりと口を開ける、洞窟を見つけた。
そこにとりあえず、逃げこんだときは、まさかそこがダンジョンだとは思わなかった。
数日、屈辱にまみれた生活をダンジョンの入り口近くでしていた私たちはふいに、ダンジョンの奥からくるゴーレムに声をかけられた。
岩で構成された魔法生物のストーンゴーレム。
これを倒すのは至難の業だ。
普通は攻城兵器などを使って倒す魔物で、何も持たず逃亡していた私たちにとって倒せる相手ではなかった。
だが、その相手が声をかけてくるので、話し合いの余地は残っていると判断して、このまま殺されるよりは、その話に乗ってみた。
そして、話を聞くうちに、ここはダンジョンだということ、話している相手はダンジョンマスターだということがわかった。
天災ともいわれるダンジョンマスターとの邂逅に、当時はびくびくしていたのだが、なぜか彼はゴーレムを通じて、部屋の用意や食料などの物資を用意してくれ、いつしか敵意というものがなくなっていた。
そして、私が女だからだろう。私だけという限定で、本物の彼、つまりダンジョンマスターと話す機会を得た。
恋人はいく必要はないといっていたが、これを断れば、ダンジョンから追い出される心配もあったので、半ば強制ともとれた。
私としても、何としても今の住処を失いたくはなかった。
そんな決死の思いで、そのダンジョンマスターに面会してみれば、今までのお礼と言って、ダンジョンの使い方と、剣の国にいるノゴーシュ様を頼るといいという話をして、ダンジョンを去っていった。
本人はそろそろ、普通の人に戻りたかったらしく、ダンジョンを運営する使命に疲れたという。
確かに、何百年も世界の魔力枯渇のために働くのはきつく、彼も、二百年ほど前に先代から譲り受けたそうだ。
だが、これは私にとってこれは存外な幸運だったのだ。
これで、私はダンジョンマスターという力を手に入れたのだ。
そして、それから去っていった彼の言葉通り、ノゴーシュ様と連絡をとり、協力を取り付け、ノゴーシュ様と同じ神である魔術の国の長、ノノア様とも協力を取り付けることが成功した。
これも幸運だったといえるでしょう。
なにせウィードを作ったのは、なんと憎いタイキと同じ異世界人だというではありませんか。
なので、存分にダンジョンと上級神との縁故を悪用していると説明したら、お2人とも快く協力してくれましたわ。
正に、私が世界を導けと言わんばかりに。
それからは地道に、ウィードに協力することなく、力を蓄える日々でしたが、ついにこの日がやってきたのです。
ランクスを壊滅させるだけの十分な戦力が整いました。
これで、一気にことが運べます。
まずは私を追いやったランクスとタイキを血祭りにあげ、そのあとは周辺国。
そのすべての元凶であるとの罪をウィードに押し付け、ノゴーシュ様とノノア様による同盟宣言をしてもらい、私のダンジョンマスターの力ですべての敵を飲み込むのです!!
そして機が熟せば、無能な神々にも退場してもらい……。
そう、世界は私の力によって初の統一を成すのです。
まあ、無辜の民を虐殺してDPを得るのは多少胸が痛みますが、ウィードがある限り大量の無辜の民の命が奪われているのは変わりありません。
ならば、私の統一のために命を投げ出す方が、彼らの為でもあります。
元より、民とは王のためにあるのですから当然と言えましょう。
「どうかしたかい?」
「あ、いえ。今までのことを振り返っていました。これでようやく始まるのかと」
「ああ、今思うと長かった。頼むぞ、未来の世界の女王よ」
「ええ。お任せください。未来の世界の国王陛下。見事、私が初戦を勝利で飾って見せましょう」
私はそう言って、目の前にずらりと並ぶ、凶悪な魔物たちを見つめます。
ブラッドミノタウロスから、オークキング、リッチなど、冒険者ギルドの強者でも苦戦必死の魔物が目の前に千五百体。
これを止めることは、異世界の勇者であるタイキでも不可能でしょう。
ノゴーシュ様でもこれに一斉に襲い掛かられては逃げるしかないと仰っていましたし、ランクスの兵は強いとはいえ、ここまではありませんし、簒奪者などに与する兵などいりません。
これからは、私の言うことを忠実に聞く魔物たちだけでよいですわ。
「進行ルートは予定通りにいくのか?」
「ええ。流石に強いとは言え、バラバラになれば、タイキが各個撃破で奮戦してしまうでしょうし、ダンジョンを広げすぎては、DPを大量に使用してしまい回収もままなりません。ノゴーシュ様が言ったように、一か所から一気に王都を攻め落とすとします。そうすればダンジョンの拡張も一か所で済みます。あとは、タイキの狼狽する顔が楽しみですわ。民を第一になどと言っていた愚か者の目の前でその民たちの首を刎ねてあげましょう」
「ふふ。それはいい。あの貴族の何たるかをわかっていない小僧にはちょうどいい」
唯一不便なのは、ダンジョンを拡張しながら進軍しなければいけないことですが、ある意味補給もDPもたやすく得られるので、一石二鳥でしょう。
新しくダンジョンをその場で構築とかできればよいのですが、そんなことはできませんし、私がわざわざ出向くのも危険がありますから、できたとしても、余程じゃない限りしないでしょう。
「さあ、ランクスへと進軍なさい!!」
「「「GGOAAAAAA……」」」
そんな雄たけびと共に、ランクス方面へと延ばした、地下の道を進んでいきます。
あと、3日もすれば、ランクスは血の海に沈み、だれもかれもが、私に命乞いするでしょう。
ですが、私は王族として、反逆者を生かしておくわけにはいきません。
すべての首を切ってDPに替えた後、ほかの所から民を連れてきて、ランクスを再興しましょう。
民なんて、勝手に増えてくるものですからね。
それを使って、世界の王が住む都として、素晴らしいものを作りましょう。
このダンジョンマスターの力があれば、無敵の軍が作れるのですから。
そして、上級神が与えてくださった世界の救済。
この、ビッツ・ランクスがなしてみましょう。
「これこそ、私の本当の始まりですわ」




