落とし穴78堀:中秋の名月
中秋の名月
中秋の名月とは、簡単に言えば月を愛でる風習である。
現代の言葉でわかりやすく言うとお月見である。
まあ、いろいろ調べるといろいろな起源があるわけだが、まあお空に浮かぶお月様を崇めたり、忌諱したりみたいなお約束のよくある話だ。
今では、科学的な解明が進み、信仰の対象という見方は少なくなり、ただの秋の風物詩となっている。
それも当然、月は地球の周りをまわる衛星であり、人の住めぬ不毛の地である。
うさぎが餅をついていることもなく、かぐや姫もいなかった。
身も蓋もない、夢もないような現実が突き付けられたわけだが、それでもお月見というのはなくなっていない。
いいじゃないか、実際にいなくても。
そういうのは夢があるだろう?
side:ユキ
季節は秋。
ということで、お月見のことを思い出して、アロウリトにも似た行事があればそちらのやり方をした方がいいだろうと思って、アスリンたちにお月見のことを聞いてみたんだが……。
「おつきみ? お兄ちゃん、それなに?」
「よくわからないのです」
アスリンとフィーリアはそういって首を傾げるばかりだ。
まあ、この二人は小さい頃から奴隷だったし、そういう文化に詳しいわけがないか。
そう思って、沈黙しているラビリスの方へ視線を向ける。
ラビリスは結構博識なのでそういうことには詳しいかもしれないし、考え込んでいるようだから、何か知ってるのかもしれない。
「うーん。……どこかでそんな話を聞いた気がするわ。月が綺麗に映る夜は魔力が上がるとか、強くなるだとか……」
やっぱりそういう話はあるのか、地球でもそういった話は多いよな。
まあ、あれだけわかりやすくて、基本毎日見るものだから、信仰の対象にはなりやすいよな。
「そっか、なら詳しいことを知っていそうな人を訪ねるか。俺の知ってるお月見とは意味合いが違いすぎて問題になるのもあれだしな」
「……そうね。それがいいと思うわ」
ということで、お月見に似た習慣とか信仰があるかを聞きにでるのであった。
「ねえ。お兄ちゃんのいうお月見ってどんなのなの?」
その途中でアスリンからお月見に関しての質問が飛ぶ。
「そうだなー。昔はいろいろとあったみたいだけど、今じゃ、ただ秋の長い夜の暇つぶしみたいなもんだな」
「暇つぶしなのです?」
「そうそう。夜になると真っ暗で外で仕事も遊びもできないだろう?」
「うん」
「でも、夜は長いから、寝られない人が思いついた。きれいな月を皆で見ながら、のんびり食べ物やお酒でも飲めばいいじゃないかってな」
「えー、それじゃ、毎日お月見だよ? お金なくなっちゃうよ?」
「そうだな。だからある程度条件を決めたんだ。秋の満月のきれいな夜ってな」
「なるほどーなのです」
「満月になる日は少ないものね。それならお財布にも優しいわね」
なんて、アスリンたちにわかりやすく説明をしながらついた先は……。
「はい。ユキさんなんでしょうか?」
庁舎にいるエリスのところだった。
俺の嫁さんの中で、物知りといえばエリスというのは、他の嫁さんたちも認めている。
もともと、エルフの故郷を出て見識を深めるための物見遊山でいろいろなところを回っていたのがエリスなのだ。
王族などの上流階級のみという知識の偏りもないし、まず何かをやるにしても、文化的に問題がないかとかを聞くのはエリスだったりする。
ということで、お月見のことを話す。
「お月見ですかー」
「そう。今年は身内だけでやるけど、来年はウィード全体でやれればと思ってな。ほら、ウィードは農業従事者は少ないし、収穫祭は基本的には農家が主役だろう?」
「ああ、そう考えると不満が出てきそうですね」
「ということで、何か問題とかありそうか?」
「そうですねー。月を信仰している所はそこまで多くはないです。実際神様がいますから」
ああ、いたな。
駄がつく自称神様たちが。
「正直な話、その神様たちの信仰の一環として軽く月について記述があるぐらいで、一般的には月の満ち欠けで魔力が上がるなんていう迷信があるぐらいですね。月を見て楽しもうという祭り、行事は聞いたことがないですが、それに文句をつけるような人はいないと思いますよ。そもそも、月は夜の闇に光をもたらす神聖なものという認識もありますし、むしろ喜ばれるかと」
月を邪悪とか忌諱の対象とするのは毎日夜に浮かんでいるし、どうしようもないからなー。
あ、確か新月とかは昔はよくないことが起こる前触れとか聞いたことがあるな。
まあ、聞きたいことは聞けたし、問題はなさそうだな。
「じゃ、今日はお月見をするから、楽しみにしててな」
「はい。楽しみにしてます」
そんなことを言って、エリスと別れてスーパーにやってきた。
無論、お月見のための食材を買うためだ。
「ねえ、お兄ちゃん。お月見は何食べるの?」
「どんなものをつくるんです?」
「そうねー。一体何を食べるのかしら?」
わくわくしながら、どんな食べ物が出てくるのか聞いてきた3人だったが、残念な返事をしなくてはいけない。
「実はな、それほどお月見の時の食べ物って決まってないんだ」
「ふえ? 決まってないの?」
「どういうことなのです?」
「でも、それほどって言ってるし、多少は決まってるのね?」
「ああ、まずはお団子だな。中身はあんこでもいいし、そのままでもいい。基本的に一口サイズの小さい丸いお団子でな。この時に食べるお団子は月見団子、月見餅ともいうね」
「なんか、かわいいねー」
「ちっちゃいお団子をたくさんつくるのです!!」
「なるほどね。お月様に見立てるって感じかしら?」
「そうそう。ラビリスのいう通り、お月様に見立てた料理やお菓子を食べるってのがこのお月見のルールかな。まあ、最初にお月見料理を食べたあとは、好きなものをパクパク食べるのが普通かな」
基本的に、こういう行事は飲み食いして騒ぐ口実だ。
春の花見とかがわかりやすいかな?
桜餅とか春ならではのものを食べたりもするけど、基本的には好きなものを食べて騒ぐって感じだ。
ま、お月見は静かに楽しむみたいな感覚が俺は強いかな?
これは、家庭でそれぞれだろうな。
「お菓子は月見団子でいいとして、普通に食事として食べる分はなにかあるのかしら?」
「そうだなー。主食として食べるものはあるにはあるんだが、結構適当だな。卵を使ったのが多いけど。まあ、こじつけだな」
「こじつけ?」
「なんで、卵を使うのがこじつけなの?」
「よくわかんないのです」
タイキ君とかは月見料理といって今からいうのを見せると、あー、なるほど。って言って苦笑いしそうだよな。
「そうだな。例えば、うどんの真ん中に卵あるいは、半熟の卵を落とすと、それは月に見えないか?」
「あ、見えるよ!!」
「おー、お月様なのです!! 月見料理なのです!!」
「……なるほど。そういうことね」
ラビリスはわかったみたいだ。
そう、大概の月見料理は卵の黄色や丸なのを利用して、ただ月見とつけているだけだ。
うどんが一番わかりやすいだろう。卵を落としたうどんの名を月見うどんというくらいだ。
これが、こじつけでなくてなんという。
「つまり、なんでもありってわけね?」
「そこまでなんでもじゃないが、基本的に卵は料理には欠かせないものだから、どんなものでもよく合うことが多い。例えばハンバーグに半熟目玉焼きとか……」
「あ、それも月見料理なんだね!! おいしーから好きー!!」
「今日は月見ハンバーグなのです!!」
「よし、なら今日のメインは月見ハンバーグにしよう。あとは月見焼きそばとか、月見ラーメンとかもいろいろ作ろう」
「「わーい!!」」
アスリンとフィーリアは喜んで、すぐに材料を取りに走る。
「こらー、走ったらあぶないわよ。……やっぱり、なんでもありじゃない」
その二人に注意をししつ、ボソッと俺につぶやく。
「……そうかもな」
否定できないよな。
ま、いろいろ料理を用意する口実になるのが、こういう行事のお約束だろう。
「まあいいわ。楽しいことはいいことだし。さっさと食材を買って、準備しましょう」
「そうだな。我が家は大家族だから早めに準備しないと間に合わないからな」
そんな感じで、家にいるキルエやサーサリに冷蔵庫の中身とかを確認してもらって、下ごしらえをしてもらいつつ、足りないものををスーパーで買って帰り、わいわいしながら料理を作って、晩御飯を迎えた。
「おおー、これがお月見というやつじゃな。うむうむ、卵の黄身がお月様に見立ててあるわけか」
「いろいろな料理がお月見風にしてあるのですね。どれも美味しそうです」
デリーユとルルアがそんな感想を言っている間に横では、アスリンとフィーリア、ヒイロがすでにがっついていた。
「ハンバーグおいしいねー」
「美味しいのです」
「んぐっ、んぐっ」
「こらヒイロ!! もっと丁寧に行儀よくしないさい!!」
「でも、ヴィリお姉、これ美味しい」
「そんなのはわかっています!! いいですか、お兄様のごめ……」
「まあまあ、それぐらいにしときなさいよ。お月見?っていう行事みたいなものって言ってるし、堅苦しいのはなしっていってたじゃない」
「ドレッサもそんなことを……」
「でも、料理さめちゃうわよ? いいの?」
「むう。仕方がないですね」
ヴィリアやヒイロもそれなりに楽しんでいるようだ。
2人は最近の事情から無理にこっちに来てもらってるからな、こういうところで不満とか発散できればと思う。
他のみんなも、それぞれ楽しんでいるみたいで、俺が説明したとおりに、軽くお酒を飲みながら、ご飯を食べて、縁側で空に映るお月様を眺めていたり、月見団子をたらふく口に放り込んでいたりする。
俺はそんなみんなを見ながら、窓越しに見えるまん丸の月を眺める。
「今日はきれいな満月ね」
そういいながらセラリアが横に座る。
「ああ、満月だな。こんなふうに落ち着いて月を見るってのもなかなかないよな」
「そうね。こういうのもアリね」
夜の空に浮かぶは夜を優しく照らしだす満月。
そして、その月を酒で満たした、杯に映して……。
「あら、月がお酒の中に入ったわね」
「これぞ月見酒ってね」
それをゆっくりと飲み干す。
これぞ、風流ってやつなんだろうな。
お月見が結構多かったので、お月見で。
しかし、お月見料理は調べてみると、結構いい加減なもんで、お月さまに見立てればいいぐらいな感じですね。
無論、地域によってこれだというのはありますが、基本お月見団子ぐらいでした。
あとは絶対無理やりお月見にしただろって感じのが多かった。
さて、それとは別に本日はついに12日。
明日は13日。
つまりVR元年が始まります。
プレイステーションよりバーチャルリアリティが一般発売!!
無論予約と休みはねじ込んでいるので、明日一番でゲットして遊びます。
まあいつかSAOみたいに「これはゲームではあっても遊びではない」とかなりそうですよねー。
ということで、14日の更新がなければきっとおれはVR世界にとらわれているのだろう。
でも、攻略組とか簡便。フリーダム遊び組でお願いします。




