第431堀:真実を知る王者たち
真実を知る王者たち
Side:ユキ
さて、予想通りではあるが、このままでは話が進まない。
これがおっさんなら、蹴ったり、水をぶっかけて起こすのだが、女性に対してそうするわけにはいかないので、とりあえず軽く頬をつつく。
「おーい。話が進まないから起きろー」
「うーん……」
やっぱり、この程度では起きないか。
はぁ。まあ、アレを呼んでいるし、そっちに頼んだ方が効果的か。
「どうするのだ? 無理に起こすのか? 自然と気が付くまでまつのか?」
「なんだ? 無理に起こすならまかせておけ。こういうのにはコツがあるんだよ」
「いや、話にでた、司祭に起こしてもらうさ」
「司祭に?」
「なんでまた?」
「それが一番効果的だからだよ。話をつづけるにも、その司祭と情報源には直接話を聞いた方がいいだろう?」
「……そうだな」
「それが手っ取り早い方法があるならそれでいい」
2人の許可も貰ったことだし、さっさと2人を入れるか。
「おーい。入ってきていいぞー」
俺がそういうと、すぐに会議室の扉が開かれて、2人の人物が中に入ってくる。
1人を、リテアから派遣されたウィードの司祭リリシュこと、リテアの崇める愛の女神リリーシュ。
もう1人は、ノノアとノゴーシュの要望で、こちらを探りに来た旅人こと、農耕神ファイデ。
「どうもー、お邪魔いたします」
「失礼いたします」
「とりあえず、挨拶の前に、そこのリテアの聖女様を起こしてくれ」
「あらあら、アルシュテールちゃんったら、どうしたのかしらー?」
「いや、隣の人の察しがついて気絶したんだよ」
「この男のー? そんな大した者じゃないのにー、まったくどこまでも迷惑ねー」
「……俺はどう考えても悪くないと思うんだが。むしろあの態度は自然じゃないか?」
「人様からあがめられるようなことをろくにしてないのに、敬われようなんて片腹いたいですねー。さて、アルシュテールちゃん。起きなさーい」
リリーシュはそういいながら、アルシュテールに軽く声をかける。
「は、はいっ!! なんでしょうか、リリーシュ様!!」
効果はてきめん、あっさりと目を覚ます。
「……とりあえず。聞きたいことはあるが、リテアの聖女が目を覚ましたことだし、自己紹介と行こうか。私はロシュールの国王である」
「同じくガルツの現国王だ」
「どうもー。リテアからウィードに派遣されている司祭のリリシュと申します」
「これは失礼いたしました。旅をしているファイデと申します」
お互い特に問題もなく挨拶を済ませる。
「で、リテアの聖女は先ほど、このリリシュ殿をリリーシュと呼んだ気がするが? お前はどうだ、ガルツの?」
「お、ロシュールのもそう聞こえたか。俺もそう聞こえたぞ」
「ならば、勘違いではあるまい。リテアの、なぜ司祭殿をリリーシュ様と呼んだのか教えてくれるか?」
「あ、あのですね。簡単に言うとその通りなのですが、証明しろと言われても、難しい話でありまして……」
アルシュテールもまさか、神様なんですなんてことは言えない。
だって、その神様を部下扱いしてるんだから、下手をしなくても大問題になりかねない。
「……わかった。みなまで言わなくていい」
「……おう。言わなくていいぞ。ちゃんと聞いてしまったら、俺たちもひどいことになるのはわかった」
「……ありがとうございます」
しかし、流石、大国の長たちというべきか、察してここは非公式だし詳しい話を聞かないことで、面倒な問題を回避した。
「……そして、お隣の男の方は初めてお会いしますが、そのリリシュ様の知り合いということはつまり……」
「……いうな」
「……おいおい。一体何が起こっているんだ」
おっさん2人、とんでもないものを見たという感じで、げんなりしている。
「しかし、あっさり信じたな。明確な言葉もなく」
「信じるさ。リテアの聖女がそのことを認めているんだ」
「だな。それが嘘なら大問題になりかねない。それを俺たちの前で言うんだから、本物かそれに近いなにかなんだろう。わざわざ今の落ち着いている状態を崩す理由はないな」
話が早くてなによりだ。
「ということで、情報源はこのファイデからなんだよ。しかも、リリーシュへの降伏勧告に近いものだったわけだ」
「ええい。2人の名前を言うな。どっちも聞き覚えがありすぎる……」
「……農耕神か、久しく聞いていなかったが、やっぱりいたのか……。ってそこはいいんだよ。降伏勧告ってどういうことだ!! なぜ、神々が出張ってくる!?」
「そこを詳しく話すために集まってもらったんだよ。俺の本当の目的も話すことになるからな」
「……そうか、ようやく話す時期が来たわけか、息子よ」
「どういうことだ?」
「……本当の、目的?」
ロシュールのおやじとはいつか時期が来ればって言ってたからな。
ほかの2人は俺が異世界人ってことはウィード建国祭の時に知ってるが、なんで俺がここにいるのか? なんていう疑問は聞かれたことがない。
疑問に思わなかったのか、それとも藪蛇と思ったのか、ロシュールの親父みたいに俺から話すことを待っていたのかは知らないが、その時が来たってことだ。
「さて、話は長くなるけど、最初に言っておくが、今回の問題はただの意地の張り合いというくだらないもんだと思ってくれ」
「意地の張り合い?」
「そう。これからたいそうな人物や話がでてくるけど、根っこはそんな理由ってのを忘れないでくれ」
ということで、ここからは簡潔に、俺が異世界人であること、上級の神様からこのアロウリトの魔力枯渇をどうにかするために連れてこられたこと、その過程で、現在の状況を作ったはいいが、昔からこの地にいるアホ共はようやく危機感をもって、俺の邪魔をし始めたこと。
箇条書きで並べると簡単だが、これを話すには数時間を要した。
で、この話を聞き終えた3人の大国のトップたちは……。
「なるほど。ようやく、息子の意図がわかった」
「ああ、こっちも同じだ。なんであんなことをするのか不思議だったが、これで納得がいった」
「はい。私も納得いたしました。このような崇高な目的があったのですね」
なぜか、思ったより素直に納得していた。
「あっさりこれも信じたな」
「それはな、息子の行動がいままでよくわからなかったが、これが理由なら納得がいくからだ」
「そうそう。ガルツでは俺の息子が大陸を平和に導くためとはいっていたが、それだけでは弱い気がしていた。しかし、この理由なら納得だ」
「すでに、一国家という括りでは対処できないと判断して、あまたの力を集め成長を促していたわけですか」
おお、思ったよりも、この3人はすごい人らしい。
こんな文明レベルで信じられるものかねー?
普通は無理だろう。
「一番信頼できる理由は、息子がこの3国を制圧していないことだな」
「いつでも制圧できる戦力を持っているのにしないのがよくわからなかったからな」
「そうですね。この事情では国を取るということ自体が、面倒でしかないというのはわかります」
ああ、それが一番の理由ね。
確かにこの3人はウィードが保有している実際の戦力を把握している。
だからこそ、信じられるというわけか。
「しかしだ。神々も、言っては何ですが、俗っぽいのですな」
ロシュールのおやじは言いにくそうに、ぼそりという。
「すみませーん。今までまともな成果も出せない愚者なんでー」
「それはこちらも申し訳なく思っています」
「あ、あわわ!? お2人とも、頭をお上げください!! あなた様たちが悪いわけではありませんわ!!」
「そうだな。お2人が悪いわけではないし、息子のやり方を実際体感しなければ、お空の上の人の意見も理解はできるからな」
アルシュテールはフォローをして、ガルツのおやじは特に神々を非難することもなく、その行動は理解できるという。
「話をまとめると、向こうはこちらの実情をまったくしらず、その正体不明のダンジョンマスターの話を鵜呑みにして、我々というか、息子の作ったウィードと連合をどうにかしたいわけだ」
「はは、ロシュールの。息子とウィードそして連合をどうにかしないとではなく。この3つを排除しなければ向こうには勝ち目がないと言えよ」
「そうですね。旧体制での世界統治を目指すのであれば、なにがなんでもこの3つを打倒しなければいけません。それを考えると、今回のやり方はある意味正しいでしょう」
まあ、納得できないといわれて、離反されたり、何日も説明するのに時間をかけるのも大変だからよしとするか。
「いま起こっている事態は把握した。下手に魔術国、剣の国、獣神国を刺激すると、背景にいるダンジョンマスターの力を使って一気に戦乱が起きるのだな。そのきっかけが最初にあった自称大臣の話か?」
「そういうこと。あいつがファイデからの情報とは別に、自分でノノアとのつながりがあることを言っていて、あからさますぎねー? って話になったんだよ。で、話から総合すると、こりゃわざとだな。ってことになったんだ」
「こんなバカにされた行動をとられれば、動かざるを得ない。それを狙ってDPにしようという判断だったか。……これは、うかつに軍を動かせないわけだな」
「しかも、こんなあからさまな行動を3大国の一角にとるってことは、ほかの小国が参戦してもどうにでもなるって自信があるわけだ」
「ええ。さらに、悪いことに、私たちが止めても、小国が勝手に行動を開始するのは時間の問題でしょう。今話している真実を言うわけもいきませんし、信じてもらえるとも思えません。どうせ、ほかの国にも自分たちの国へ攻めさせるようにわかりやすい工作をしているはずです」
おうおう、やっぱり王様たちってのは冗談でやっているわけじゃないか。
俺ごときが考え付いたことなんて、あっさりたどり着く。
いや、何事にも例外はいるけどね。愚王とか、そういうの。
俺と王様たちの違いは基本的に、基礎の知識が違うだけで、それを補えば、俺なんてあっさり超えていくだろう。
その証拠に、ちょーっと俺がお話ししただけで、俺が予想したこととほぼ同じ内容にたどりついた。
才能のある人はいいねー。まあ、それを手に入れる苦労はとんでもないだろうから、俺は欲しくもないが。俺はせいぜい、友人と肩を並べるまではなくとも、後ろから追いかけておいていかれない程度でいいんだよ。
「で、このままでは時間稼ぎでしかないというリテアの聖女の話には賛成だ。このままでは大陸を真っ二つにして争うことになりかねないぞ。何か手があるんだろう?」
「あるのか?」
「え? この状況ではなんとか小国へ説明をして、離反を防ぐぐらいしか思いつかないんですけど?」
ガルツの親父とアルシュテールはすでにこれから起こる最大規模の戦乱に備えて工作するしかないと思っていたみたいだが、付き合いの長いロシュールの親父は俺がなにか考えていることに予想がついていたらしい。
ま、特に隠す理由もなくなったのであっさり話すとしよう。
「簡単だ。今回の原因を直接乗り込んで叩く」
「は?」
「ちょ、ちょっと待ってください!! それこそ、戦争の引き金に……」
「ならんな」
「え?」
「なるほどな。ダンジョンマスターの力を奪えば、抵抗できる力がなくなる。そこを狙うわけか。本来なら、守りを是とするガルツはそんな無謀はやめろというべきなんだが。ダンジョンマスターである息子が乗り出すなら話は別だな」
「ああ。息子は勝算がないのに出張るような男ではない。むしろ、完勝できる用意をしてから出るタイプだ」
「……ああ、そうでしたね」
あ、アルシュテールが遠い目になった。
いや、あれはリテアの馬鹿共がわるいでしょう?
まあ、あれだけ押しつぶしたらトラウマになるか。
「というわけで、魔術国へ使者としていくから、案内頼むわ」
「……正面から堂々とか。面白いな」
「敵の大将が乗り込んでいくか。相手さんの顔が見ものだな」
「……その、大丈夫なのでしょうか? いえ、使者だからこそ安全は保障されるでしょうけど」
そう、使者だからこそ確実にノノアと会える。
そうなれば、話でもして、説得できるなら説得。
邪魔なら潰す。
なんでそんな簡単にそんなことができると思うのかって?
新大陸で、魔術とスキルキラーを仲間にしたんだよ。
その名も本目泰三。
魔術主体の相手にとっては最悪の切り札である。
ヒフィー相手に能力を発揮したのは見たし、実証実験もあれからいろいろやっている。
ロシュールの親父の言う通り、必勝の策あるからこそ動くのだ。
難点と言えば、本人を連れて行かなければいけないことだが、タイゾウさんはもともとドッペルを使うことがきらいで、その身一つで動いているから、ま、問題はないだろう。




