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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
国の在り方 暗躍編

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第430堀:軽いジャブでワンダウン

軽いジャブでワンダウン





Side:ユキ




俺は正直現状に焦っていた。

いや、焦るというより、またあの頭おかしい説明をしなければいけないと思うと、非常に頭が痛いのだ。

ノノアやノゴーシュが動き出した今、それを止めるための行動を起こさないといけない。

流石に、ただの謀反で済ませられる内容では無いのだ。

その場合、勝手に国々で処理をするために動くが、相手が悪すぎる。

頭空っぽの神とダンジョンマスターのコンビだ。

おそらく被害が甚大なことになりかねないし、一度大敗すれば、現状のパワーバランスが一気に崩れて、戦国時代に突入するわ。

その国ごとの対処を止めるためには、敵対した魔術国、剣の国の正確な戦力を伝えて理解してもらう必要がある。


つまり、俺がなんのためにこの世界に来たのかを説明することになる。

あの駄女神を含めてだ。


くっそー。

だれか、すぐに納得してもらえるような説明ない?

それか、俺と誰か代わってくれ。

どう考えても、世界を救うためです。キリッ!! とかしても、バカじゃねーの? って言われるのがオチだよ!!

いや、待てよ。ダンジョンマスターの力が厄介だから、大軍で押し寄せても意味がないっていえばいいか?

いやいや、そもそもその情報がどこから来たのか、信頼できるのか、という話になって、情報元のファイデを紹介すれば神様とかいうのがばれるし、そんな人物と知り合いな俺は何者だという話になるよな……。

というか、現状をありのまま伝えたら、神様の権威や信仰は失墜しかねない?

それはそれで困るんだけど。絶対、その原因を作った俺は恨まれるよね。

あーもう、やだ。

結局、時間だけが無情に過ぎてゆく。

時刻はもうすぐ10時。

昨日の会議のあとはみんなてんやわんやで、セラリアたち王族の嫁さんたちはすぐに3大国への連絡を済ませて、本日昼にウィードで緊急会議を行うことになっている。

トーリたちはスティーブたちと連携をとっていつでも出撃できるように編成と、物資の確保。

のこりの嫁さんたちは、子供たちの面倒と、出撃に必要な書類の作成を行っている。

久々というわけでもないが、フル稼働状態だ。


「あ、あの、お兄様。少し休憩されてはどうでしょうか?」

「お兄が倒れたら大変」

「そうねー。これから王様たちと話があるんだし、書類仕事は他のみんなにまかせたら?」


そういってくるのは、昨日ついに俺の正確な立場を知った、ヴィリアとヒイロ、そしてすでに知っているドレッサだ。

ドレッサはともかく、今ヴィリアたちを下手に帰すのはいろいろ問題があるだろうということで、昨日は旅館の自宅に連れて帰って、アスリンやフィーリアと一緒にお泊りということになった。

ありがたいことに、この2人はもともとの俺への信頼がぶっ飛んでいたのか、素直に俺の言うことを信じてくれた。

おかげで、説得要員として控えていた、適当に自分の加護を振りまくリリーシュの出番はなかったのだが、勝手に出てきて、加護をつけやがった。

いや、真実を知った分危険がふえるだろうから、加護をつけるのは否定しないけど、本当にお前らは自由だよな!!


「まあ、頭が痛いのはよくわかりますが、ドレッサの言う通り、これから会談もあります。書類に不備があっても問題ですし、休憩した方がいいでしょう」


俺の葛藤に察しがついているジェシカはそう苦笑いをしながら、俺が処理している書類を持っていく。


「??? ねえ、ジェシカ。ユキさんは何をそんなに悩んでるの?」


リーアの質問にはジェシカではなく、横で書類を処理しているサマンサが答える。


「簡単ですわ。この状況だと、ユキ様の本来の目的や立場を話すことになりますから。そのことをどう話して、問題なく受け入れさせるにはどうするかを悩んでいるのですわ。普通なら頭がおかしい発言でしかありませんから。下手すると、こっちでも問題が起こりますから」


サマンサも俺がこれからする話の面倒や無茶苦茶さはよくわかっているみたいで、ジェシカ同様苦笑いしている。


「ん。理解した。確かに、このような問題を起こしたのが、神様ならば、もう神様という役立たずには、だれも頼らないという話にもなりかねない。そうなれば、信仰を真摯にしている人々にとってはユキが神を地に落とした悪者。それはそれで大問題。逆にユキの話が信用されなければ、それはそれで、ウィードの立場が悪くなり、分裂の憂き目にあう。下手な説明はできないということ」


クリーナは政治関連には興味がないが、頭はいいので多少説明をすれば全体を把握してくれるのがありがたい。

リーアへの説明にもなっているから。


「なるほどー。でも、ヴィリアちゃんやヒイロみたいに、リリーシュ様にパーッと加護でもつけてもらえば信じてもらそうな気がしますけど?」

「それはそれで問題なんですよ。リリーシュ様はあくまでもリテア聖国の神。ほかの国の王がその加護を受けたとなると、リテア聖国に従属したととられかねませんし、逆にそういう感じにしなければ、リテアは自国が他国よりもリリーシュ様への信仰が劣っているということになりますから。お国の面子が丸つぶれです」


ジェシカの言う通り、リリーシュお得意の加護をつけて神様証明はやってはいけない禁じ手に近い。

下手にばれると、3大国の同盟が崩れかねない。


「ま、そういうこと。いろいろ厄介なんだよ。そもそも、俺の本当の目的を言えば、神様が役立たずだと宣言するようなものだしな」

「ん。でも実際、小さい領土争いしかやっていない。役立たずでまったく間違いではない」

「クリーナさんの言うことには同意ですわ。まったく器の小さい神様たちですわね。でも、混乱を考えるとそう素直に言えないのは面倒ですわよね」

「……うん。とりあえず難しいのはわかったよ。ユキさん、がんばって!!」

「おう」


リーアにそう応援される。

身も蓋もないが、リーアの言う通り頑張るしかないのは事実だ。

放って置く方が大きな問題にしかならない。

ま、デメリットばかりじゃなく、メリットの方にも目を向けるべきだよな。

これで晴れて、他国に部外秘な秘密裏なプロジェクトではなくなるのだ。

この話が終われば、当初の目標通り、世界各国で魔力に関する研究が本格的に行われることになるだろう。

魔力枯渇に対する研究もウィード一国だけではなく、この大陸全体で行われることになる。

そうすれば、新大陸の方ともつながりを作って、さらに魔力枯渇の研究がすすむわけだ。

つまり、俺の仕事が将来的には減るということになる。

100年計画が思わぬ方向で10年計画になったと思えばかなりの儲けといえるだろう。


「お兄様!! わ、私もこの身を捧げておてつだいしましゅ!!」

「ヒイロもー。お兄のお手伝いするー」

「よかったわね。こういうのは人徳ってやつじゃないかしら? 無論、私も事情はしっているから手伝うわよ。ウィードを荒らさせるわけにもいかないからね」

「ありがとな。ま、でも今回は気持ちだけもらっとくよ。王様たちとの会談だしな。人数がいても混乱するだけだし」


そんなことを話しているうちに、連絡が届く。


『あなた。クソ親父とリテアの聖女、そしてガルツ国王が到着したわよ』


……セラリア。お前いまだに、お父さんって普通に呼んでやれないのな。

娘のサクラが真似しないことを祈ろう。

だって、孫にまでクソ親父なんてよばれたら、ロシュールのおっさんは自殺しそうだからな……。



「ユキ。気休めかもしれませんが、あなたならやれます。私はそれを知っています」

「そうですよ。ユキさんなら大丈夫です!!」

「ん。ユキなら大丈夫」

「そうですわね。私たちのユキ様はこの程度のことで立ち止まるお方ではありませんわ」

「お兄様なら大丈夫でしゅ!!」

「お兄ならへっちゃらー」

「……すごいプレッシャーね。私は特に何も言わないでおくわ」


今回はドレッサの気遣いの方がありがたいわ。

嫁さんたちやヴィリアとヒイロの無条件な絶対の信頼ってきついわー。

何度もいうけど、俺は一般人ですからね。

俺より上なのは世の中ごまんといるからな。

俺の親友どもや知り合いとかとくらべると、俺なんて普通ですよー。普通。

まあ、こっちの世界の平均が低いから、俺みたいな普通でも、優秀って部類になるんだろうけどな。

さて、世の無常を呪ってもどうにもならんし、目の前のお仕事を一つ一つ片づけるしかない。

今日も頑張りましょうかね。

そんな覚悟を抱き、俺は会議室へと入る。

そこには、3大国のトップが勢ぞろいしていた。

普通なら、メンバーに委縮して当然なんだろうが、どうせ身内で非公式なので委縮も何もない。


「来たな」

「遅かったじゃねーか」

「呼び出しておいて、一番最後とは珍しいですね」

「こっちもいろいろあるんだよ。で、お茶とか、軽食とかはどうする?」


俺は座りつつ、そんなことを話す。


「飲み物は特に気にするな。すでにキルエに頼んでいる」

「軽食の方も適当に見繕ってくれるだろうさ。シェーラのおつきだからな。ガルツも鼻が高いわ」

「ということで、ご心配なく」


なるほど、流石、スーパーメイドキルエ。

ガルツのおっさんはともかく、ロシュールにリテアの2人に名前を憶えてもらえるとかすげーなおい。


「じゃ、さっさと本題を話そう。ちょーっとのんびりしている余裕はなさそうなんで」


俺がそういうと、空気が張り詰める。

こういう切り替えが早いのは流石、大国を治めているトップたちだなーと思う。


「この前話した、情報収集の件で一定の成果が出た。というのが今回の話だが、その内容がけっこうな問題だった。詳しい内容のほうは、昨日のことだが……」


それから、昨日あったことを話していく。

自称馬鹿大臣が、ロシュール現王家の転覆を狙っていたこと、その背景にノノアの魔術国がかかわっていること、とある情報筋から、ノノアとノゴーシュ、つまり魔術国と剣の国が手を組んでいること、さらに、バックにはウィードと同じダンジョンマスターの影が確認されているということ。

それらから、挑発行為をして自領に引き込み、DP化を狙っている可能性が高いということ。とりあえず、今のところ、喋っていい情報を伝える。


「……なるほどな。息子が慌てて、あの愚か者から出てきた魔術国の密約書類には手を付けるなと言ってきたわけだ」

「ん? ロシュールの、もう、その自称大臣の捜索は終わったのか?」

「当然だ。前々からセラリアだけが利益を上げているのは駄目だと吼えていたからな」

「さっさと処罰すればいいじゃねえか。って、ああ、上が面倒なタイプか?」

「そうだ。本人自体はともかく、上は公爵だ。下手に処罰するとそこをつつかれる。バカなのを知っていて使っている」

「……それは、面倒ですね。しかし、そこはいいとして、その背景にダンジョンマスターがいるというのはどこからのお話しでしょうか? 私たちですらつかんでいないのに、ウィードが先に情報を仕入れるというのはいささか不思議なのですが?」

「そうだな。情報源はどこからだ?」

「だな。それは信用できるのか?」


ほら来た。

とりあえず、真実を混ぜたでっち上げの内容を言ってみるか。


「先日、ウィードのリテア教会のリリシュ司祭に、知り合いからの連絡があった」

「司祭にか?」

「なんでまた司祭に?」


ロシュールとガルツのおっさんどもは首を傾げていたが、リリシュの正体を知っている、リテアのトップ、アルシュテールの顔は驚きに染まっている。


「ま、まさか……。ユキさん……」

「どうした? リテアの?」

「なにか顔色が悪いぞ?」

「い、いえ。気にしないでください。そ、その。ユキさん。その相手というのは……」

「予想通りだと思うぞ。同類」

「あ、あははは……。ふっ……」


俺の返答に乾いた笑いを少しだけして、気を失う。


「大丈夫か!?」

「お、おい!? い、医者をよべ!!」


あー、やっぱりこうなったか。

これからの神様のお話にアルシュテールは耐えられるのかね。

あと、残りの2人は理解できるのかね。

あー、めんどい。




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