第423堀:探しもの見つけた
探しもの見つけた
Side:ドレッサ
ファイデのおっさんはリリーシュ様に連れられて宿に向かっていった。
それを見送ったみんなは、ほかに仕事があるのか、それともさっきの話をもっと詰めるためか、すでにいなくなっていて会議室は空っぽになっている。
ユキも最後まで残っていたが、みんなが解散したのをみて、部屋を出ようとする。
「ねえ、ユキ。私、私たちって必要なのかな?」
その背中に自然とそんな言葉をかけていた。
「どうした?」
ユキは不思議そうに、こちらを振り返っていた。
「ほら、私たちって、ウィードの噂を集めて、悪いことをしている奴を見つける仕事しているじゃない」
「そうだな」
「でも、さっきのファイデのおっさんが協力申し出てくれたから、もう私たちが頑張る必要はないんじゃないかなーって」
そう、ファイデのおっさんが来たおかげで、今ウィードで起こっていることは終わりそうな気がする。
そうすると、私たちが頑張っている意味なんてないんじゃないかと思ってしまった。
「あー、なるほどな。確かに、この一件に関してはファイデのおかげで決着がつく可能性は高いな」
「でしょう? なら……」
私たち、私の頑張りなんて意味がないじゃない。と、言葉にすることはなかった。
言ってしまって、肯定されるのが怖かった。
「んー。ここでそんなことない。なんて言うほど夢を与えてやる義理もないからなー」
「そうよね。ユキならそういうと思ったわ」
こいつはそういうやつ。
なにも遠慮なくいって、容赦なくボロボロにするの。
相手がどんな身分かなんて関係ない。
「というか、ドレッサが頑張るのはなんでだ?」
「……なんでだろう?」
はて、そういえばなんで私があんな臭い仕事をしてまで頑張っていたんだっけ?
「えーっと、確か、とりあえずいろいろやってみて経験をしようと思ったのよ」
「それは聞いた。で、俺に新しい仕事を紹介してくれーって話になったよな」
「そうそう。それで、今回の件を聞いて今の仕事をしているのよ」
「なら、頑張りは自分の為であって、周りがどうなろうと関係ないんじゃないか?」
「どういうこと?」
「自分で言っただろうが。そもそも、いろいろな経験をしてみたくてやったんだろう? なら、今回の仕事もドレッサのいろいろな経験の一つなだけだ。ファイデがどうのこうのやろうがお前の頑張ることには何も関係ないだろう?」
「そう、よね。あれ?」
なんでだろう?
なんで、私は自分の頑張りは無駄だと思ったんだろう?
私がそんな風に悩んでいるのを見て、ユキが口を開く。
「まあ、たぶん、自分でこの件をどうにかしたいとか思ってたんだろうさ」
「?」
「ほら、張り切っていただろう? だから、この問題、というか、ウィードでいろいろやっている奴らぐらいは自分で捕まえてやるーって思ってなかったか?」
「あ、うん。そう思ってた」
「でも、ファイデが来たから一気に解決しそうになって、自分の出番がなくなったと思ったわけだ。そうなると頑張りが無駄になるよな」
「そっか……。私は活躍できる場所がなくなって落ち込んでたのか」
「たぶんな」
「合ってる、と思う」
ユキが言った言葉が体に染み込んでくる。
埋めることができなかった隙間をまんべんなく水が染み込む感じ。
しっくりきた、理屈じゃなくて、私の心が、体が正解だといっていた。
だけど、それは……。
「私って最低だ……」
「どうしたいきなり?」
「だって、そうでしょう? 私は自分の活躍の場を欲していたんだから。平和よりも乱がいいと思っていたのよ? ウィードはすごくいいところ。私が知りうる限り、楽園って言葉が一番似合うと思う。私自身もすごくユキたちとか、ウィードの住人にはよくしてもらったわ。なのに、ウィードが困るようなことが起こればいいのにって思ったのよ?」
自分の浅ましさに泣けてきた。
これじゃ、民の幸せをと言ってたお父様に顔向けできない。
ウィードに嫌がらせをしている神々と同じじゃない……。
なにが、自分の手でよ。ただ、名声が、自分が頑張ったという周りの声が欲しかっただけだ。
それは、その分、ウィードの人々に苦しんでくれってことなのに。
そんなことが起こらないようにするために、私たちの仕事ができたっていうのに。
「あー……」
ユキも私の言葉になんて声をかけていいかわからないようだ。
ウィードの本当のトップであるユキは、本当に頑張っている。
今日だって、昨日きたファイデの案内を自らしていたし、ウィードの安全を第一に動いている。
それが、奥さんたちや、ウィードに住んでいる人たちのためになると知っているから。
私みたいに、自分の名声欲しさに他人を利用したりはしない。
そもそも、ユキにとって名声なんてのは邪魔でしかないから。
そして、ユキはようやく私にかける言葉がみつかったのか、口を開く。
出てくるのは罵声かしら? それとも、ウィードから退去かな?
「別にいいんじゃね?」
「え?」
何を言っているのか理解できなかった。
私の言葉を聞いて、そんなことを口に出せるとは思わなかったから、理解に至らなかった。
「なあ、ジェシカ。頑張る場所がなくなったら、普通はがっくりするよな?」
「……はぁ。まあ、そうですね。奮起するべき場所がなくなれば、そのやる気が空回りしますから」
いつの間にか、ジェシカは戻ってきていて、ユキの傍で護衛をしながら私の話を聞いていたみたい。
で、話を振られたジェシカもユキの言動はどうかと思っているのか、こめかみに手を当てて、答えている。
「別に、ドレッサが問題を引き起こして、自作自演をやったわけでもないんだし、その心意気はなにも問題ないだろう?」
「……ユキの言う通りですが、ドレッサ的には、そのような考えで動いたということが許せないんだと思いますよ?」
「……そうよ。ウィードが乱れればいいって思ったのよ。それは駄目なことでしょう?」
ジェシカと私でユキの認識を正すために説明をする。
なんで、こんなことになっているのかわからないけど、とりあえず、説明しないとダメな気がするからする。
「いやー。いちいち思うことまで否定しないわ。心まで縛るとか、どんな暴君だよ。発想の自由いいじゃん。というか無理だし」
「それはそうですが……」
「……」
えーと、なんだろう?
私とジェシカは常識を説いているはずなのに、何も言えなくなっている気がする。
あれ?
「というより、なんで、今回に限ってそんなに頑張ろうと思ったんだよ」
「……それは、言ったじゃない。私の活躍の場が欲しかったっていう、浅ましい願いがあったのよ」
「違う違う。落ち着いて考えろ。そもそも、ほかの仕事ではなんでそんな気持ちにならなかったんだ?」
「そんなの、簡単よ。悪者をやっつけてしまえば、わかりやすく頑張ったって、名声を得られるから……」
「それだろ?」
「なにがよ?」
「ドレッサが、探していたもの」
「どういうことよ?」
「頑張れる仕事を、心からやれることを探していたんだろう?」
「……」
ユキの言葉に私は答えを返せずポカーンとしてしまっていた。
「今回は頑張りが無駄になったかもしれない状況になって、落ち込んだけど、そもそも、なんで頑張ったか、名声を欲したかは、それ自体が目的じゃないだろう? 自分で解決して、自分の手で人々を守りたかったんじゃないか?」
「そ、それは……」
違うとは言えなかった。
私は自分の手で悪者を倒して、ウィードの人たちを守りたかった。
私の頑張りや、名声はその過程や結果に過ぎない。
「でも、私は……」
活躍の場がなくなって、がっくりした。してしまった。
それは、人々を守る者として絶対ダメなことだ。
危険がなくなって喜ばなくてはいけないのに……。
「いや、自分の腕に自信があるなら、それを披露する場所が欲しいのは当然だし、欲のない人なんていないからな。確かに、ドレッサの思ったことは称賛されることじゃないかもしれないけど、それを思っただけで、駄目なら、俺だって駄目だしな」
「ユキも?」
「そりゃな。俺は、基本的に面倒は嫌いだ。だから、嫁さんたちにいろいろ仕事を手伝ってもらっている」
「それは、手が足りないからでしょう?」
「そうだな。でもさ、本当に真剣に取り組むというなら、俺は嫁さんたちとの結婚や子供なんて作るのは駄目だろう? それは目的を達成するのに無駄なことだ」
「無駄なわけないじゃない!! あやまりなさいよ!! ジェシカたちに!! 結婚が無駄だと思っていたわけ!? 愛しているから、助けてくれたんでしょ!! そんなこと口にしていいと思ってるの!!」
あまりな言い方に、私は大声をあげてユキに吼えた。
「だろ? 俺も結婚が無駄なんて思ってないし、子供ができて幸せだからな。そんな余分があって当然なんだよ。ドレッサもそんな当然の思いを駄目だーって言ってるだけだ」
「あぐっ……」
「大事なのは、本来の目的を見失わないことだな。守りたい人々がいるのに、頑張るため、名声を得るために、守るべき人々を脅かすなら、それは本末転倒。でも、守るべき人たちが笑って安心してくれるなら、頑張るのも、名声を得るのも、間違いじゃない。やる気のない、弱い騎士に守ってもらうより、やる気があって、名声を得るほど強い騎士の方が安心だろう?」
「うぐぐ……」
私がユキの言葉にたじたじになっているのをみて、ジェシカが口をはさんでくる。
「ドレッサ。あなたの言い分はよくわかります。戦いの果てに大義がどこにあったのか? そんなことはよくありました。暴徒鎮圧のために、守るべき民を切り捨てたこともあります。本来であれば、説得して納得してもらうのが最上であったのにです。私もそのたびに騎士とは何かとよく考えました」
「それは、仕方がなかったんでしょう……」
「はい。仕方がないといえばそれまでです。ですが、それで思考停止していいわけではありません。そうなればただの命令を聞くだけの人形です。だから、ユキの言ったように……」
「……本来の目的を見失わないようにするってこと?」
「ええ。ドレッサがそれを見失わない限り、だれに何と言われようと、頑張れるはずです。それは、復讐のためにモーブ殿たちの訓練に必死に食らいついていたのですから、わかるでしょう」
ここでようやく、私は自分なりの答えに思い至った。
……そうか、私は人々の守りになりたかったのか。
守れなかった人々への贖罪か、ただのお父様の真似事か、まだ私に何かできるのではないかと、いろいろ仕事をして模索していた。
そして、この仕事にたどり着いて、ようやく私の心が願う形に近い仕事でやる気がでたのか。
私がそんなことを考えているうちに、ユキに背中を押される。
「急に何よ!?」
「いや、明日も仕事だろ? 問答も終わったし、さっさと休む方がいいぞ。それとも、ほかにやりたいことがあったか?」
そういわれて、時計をみると、もうすぐ夕飯の時間だ。
ヴィリアとヒイロと一緒に食べる約束してたんだった!!
「もう、こんな時間!? 私、帰るわ!!」
急いで会議室からでていこうとすると、後ろからこんな声がかかる。
「うじうじ悩むなよー。馬鹿の考え休むににたりっていうからなー」
「うっさい!! 誰がもう悩むもんですか!! 私は、自分のやりたいようにやるわよ!! ……でも、今日はありがとう。あ、勘違いするんじゃないわよ!! ただ相談に乗ってくれたお礼を言っただけなんだから!!」
そういい捨てて、私は外へ飛び出していった。
Side:ユキ
「なんと見事なツンデレか」
あそこまでのテンプレを見ることになるとは思わなかった。
演じているわけでもなく、素でやられるとは思わなかった。
「いえ、あれはツンデレというより反抗期的でしょう」
「難しい年頃だねー。俺としては、なるべく相手にしたくないね」
「まあ、ヴィリアたちもいますし、そうそうないでしょう。と、第三会議室の準備が整ったようです」
「はぁ。俺たちはこれから残業かー」
「終わったら、みんなでのんびりしたいですね」
「そのために頑張りますかー」
「はい」
残念ながら、俺のお仕事はまだまだ続くようだ……。
目的と手段がわからなくなるよくある話。
みんなも落ち着いてみたら、何か忘れてたモノを思い出すかもね。
遊ぶのは息抜きのためではなく、楽しみたいからとか。
俺も、ゲームは息抜きではなく、生き甲斐だからするのだ。
よって、ゲームの時間を削ることはできない。
現在の生活スタイル
・6:30 起床
・7:00 犬の餌、顔を洗う、テレビでニュース見る
・7:30 仕事へ
・8:00 仕事開始
・17:00 仕事終了
・18:00 帰宅 犬の散歩 風呂
・19:00 執筆 ゲーム
・21:00 執筆終了 投稿予約を入れる ゲーム 読書
・23:00 ゲームやめて 読書
・01:00 寝る




