第399堀:新番組
新番組
Side:ユキ
「本番いきまーす!! 5、4……」
3からは、喋らずに、指でカウントダウンして、そしてゼロになる。
軽快なBGMが鳴り、スタジオに設置した大画面にタイトルが現れて、女性が3人ほどスタジオに上がる。
「クイズ オールアロウリト はっじまりまーーーす!!」
「「はじまりまーす!!」」
最初に声を出したのはもちろん、駄目神である。
「さて、略してクイズオア。進行は、司会者である。女神ルナと……」
「司会補佐のウィードのダンジョンマスター、ラビリスと……」
「同じく司会補佐のヒフィーのダンジョンマスター、コメットでお送りいたします!!」
そして、残りの二人はダンジョンマスターのラビリスとコメットである。
ノリは完全に世界ふ○ぎ発見とかそう言ったバラエティー番組の類いだ。
「記念すべき第ゼロ回のゲストは……」
「他の神々をお呼びした豪華なものとなっています」
「あー、私の所の大陸の人たちなので私から紹介いたしますね」
そう言って、2カメから回答席に切り替わり、ヒフィーが映し出されている。
……顔が無表情で死んでいるような感じがするが、どんまい。
「まずは、私とコンビを組んでいた、女神様であり、ヒフィー神聖国の神聖女!! ヒフィー神!!」
「……どうも。ううっ」
言い終わってから顔を手で覆っている。
録画されてるって知ってるからな。先ほどの紹介の仕方は、何もしらない人からすればただの頭のおかしい人だろう。
「恥ずかしがりやのようですね。では次に、大国エクス王国からのゲストです。まずはこの人!! エクスの技術を支えていた、天才ビンゾ王宮魔術師!!」
「は、はぁ。コメット殿にそう言っていただけて、嬉しい限りです……」
「次に、エクス王国に協力していた凄腕傭兵団の団長!! 血戦傭兵団のシュミット!!」
「……よろしく」
「そしてー、エクスの大黒柱といっていい、政治の難題どんとこい!! 敏腕宰相ジョブ!!」
「……よろしくお願いします」
「次は私の同業者!! エクスと手を組んだダンジョンマスター!! サクリ!!」
「……楽しそうでなによりだよ」
「最後はこの人!! エクスの王様であり、かつては軍神と呼ばれた、神!! ノーーーブル!!」
「……コメット殿はこういう性格だったのか?」
「はい。こっちが素ですね。ま、私がなぜ大人しい死体美女を演じていたのかも、後ほど詳細に説明いたしますので、お楽しみに」
「「「はぁ、そうですか……」」」
うん。エクスのメンバーは全然状況に追いついてねーな。
殺されるわけでもなく、上級神との面会のはずが番組の撮影になってるからな。
人間、予想していたことと違うことをされると、頭の処理が追いつかないといういい例だ。
これで、一気に現状の説明をクイズ式でやって、理解してもらう予定だ。
……ついでに、今後、ウィードの娯楽を増やす実験として、番組を作ってみるという話があったので利用したのだ。
前回のヒフィーとコメット、タイゾウさんのクイズを録画してて、嫁さんたちがこれはつかえないか? といわれて、ここでしっかりやってみようと俺が思ったのだ。
相手の攪乱にも最適だからな。
「なんか硬いわねー。ノーブル、もうちょっと笑いなさい。楽しめないわよ?」
「い、いえ。しかし、ルナ様の御前で……」
そら色々な意味で無理難題だ。
相変わらず無茶振りしかしないな、あの駄目神。
「ま、いいわ。さっきコメットが言った通り。これからクイズ式で説明するわ」
「クイズですか?」
「そう、クイズ!! オールアロウリトはこの世界にある、あらゆる謎を解き明かしていく番組なの!! 栄えある第ゼロ回に招かれた回答者として、胸を張ってほしいわ!!」
「わ、分かりました!! このノーブルと臣下一同、ルナ様の期待に応えて見せます!!」
「うんうん。ちゃんと結果を出せば、ご褒美もあるし、間違えれば、ちょっとした罰ゲームもあるから。頑張ってね」
「はい!!」
あーあー、乗せられてるよ。
「へ、陛下、そんな安請け合いを。我々が知っているか分からないのでは……」
「いいところを突いたわね、宰相!! でも、その心配はいらないわ!! ラビリス」
「はい。今回の問題はこちらのジャンルになります」
ラビリスがそう言うと、大型モニターにタイトルが映る。
《魔力枯渇とこの大陸の状況について》
「というわけで、神であり、王であるノーブルやヒフィーはもちろん、臣下であるみんなも、ある程度は知っているでしょう? 間違っていても私が回答を言って修正するし、ここまで出張って来た理由も納得できるわ」
「なるほど。よろしくお願いいたします」
「じゃあ、趣旨は分かったと思うから、さっそくVTRをどうぞ!!」
「「「VTR?」」」
VTRって言っても分からんだろう。
というか、ビデオテープ・レコーダーの略だから、ビデオすらないこの世界では生まれない言葉だと思うぞ?
いや、ルナが言ったから定番になるんだろうが。
ウィードで放送するときは新しい言葉考えないとな……。
俺がそんな今後の調整を考えていると、ウィードで録画した画面が出てくる。
各国の王に、魔力枯渇を説明するために、色々準備していたものだ。
まさか、先に新大陸の連中に説明することになるとは思わなかったけどな。クイズ式で。
『はい。リポーターのラッツです。只今、ウィードの冒険者区に来ております。ここは、ラビリス様のダンジョン内で……』
ラッツがウィード内の紹介をしている所の映像だ。
ここでは、まず世界が広いということ、大陸が1つではないということを認識させる場面だ。
「おお、素晴らしいな。多種族がこのように暮らしている国があるとは……」
「僕と同じ考え……。いや、遥かに先を行ってるね。凄いや」
「ええ。しかし、ここまですさまじい発展を遂げているのに、ついぞウィードという国は聞いたことがありませんな。そこの、ラッツとかいったな。どこにあるのか答えよ」
「宰相。あれは恐らく、あった出来事を記録して流しているだけですので、聞いても答えてくれませんぞ」
「……そうなのか?」
「そうよ。とりあえず、終わるまで見てなさい。そこで問題がでるから」
エクスのメンバーは驚きつつも、ルナの説明で納得して、大人しくVTRを見続ける。
ヒフィーは、もう遠い目をしているな。頑張れ、ふぁい!!
『さて、こういった多種族が一緒に暮らすというのは、この大陸では、よく見る光景ですが、別の大陸では違ったりします』
「別の大陸?」
『近年の研究や探検の成果で、海の向こうに大陸があることが確認できたのです!!』
「なんと!!」
うーん、分かりやすい反応ありがとう。
そして、ラッツがホワイトボードに貼られた地図の方に歩きよる。
『こちらの右側が、私たちが住んでいる大陸。そして、この海を挟んで、左側にあるのを新大陸と呼んでいます。しかし、その新大陸ではある問題が起きています。では、ここで問題です。その、新大陸で起こっているある問題とはいったい何でしょう? 1、魔物の大量発生 2、天候不順 3、魔力の異常事態』
ラッツが可愛らしく、人差し指をピンと立てて、こちらに聞いてくる姿で映像が終わる。
とりあえず、嫁さんのリポーターはやめとこう。
あれ、俺の嫁さんだから、見世物じゃないから。
「さあ、正解と思う番号札を選んでください」
「時間はあと10秒!! 9、8、7、6、5……」
コメットがカウントダウンを始めて、それが終わる。
「さあ、回答は?」
「全員3ですね」
流石に、魔力枯渇ってタイトルに上げてるからな。
これで間違えるなら、怒気!! トリモチプールダイブ!! だった。
そして、回答のVTRが流れる。
『はい。答えは3番です。なぜか、新大陸ではウィードの大陸に比べると、魔力消費量が20倍近くになり、魔術を使える人が極端に減り、魔力溜まりから生まれる魔物の減少、亜人の出生率の低下など、分かっているだけで、これほどの影響が出ています。……さて、ということで、その現場に行ってみましょう。とうっ!!』
ラッツが軽くジャンプすると映像が切り替わり、可愛いウサミミが消える。
「あの城は、ジルバか?」
「はい。隣国のジルバで間違いありません」
「僕は外に出たことがないからなー。こういうのは楽しいね」
「ということは、魔力の異常、枯渇が著しいのは私たちが住む大陸のことのようですな」
「……しかし、なぜあのラッツとかいう兎人族の耳が消えた?」
「恐らくは、魔術による隠蔽だろう。見よ、一瞬で移動する大魔術を使えるのだ。それぐらいできて当然だろう」
「そうですな。すさまじい才能ですな。是非とも我が国に迎えたいですな」
「凄いね。ゲートいらずって」
よし、シュミット。後でお前、トイレな。
ラッツ呼び捨てにしていいのは俺だけだから!!
と、そこはいい、演出で一気にジルバにとんだように見せたのだ。
録画と撮影、編集という概念を知らない人たちから見れば、一瞬で移動したようにしかみえないよな。
『さて、こちらは、新大陸の中で大国と呼ばれる内の1つ、ジルバ帝国です。が、見ての通り、人族しかいません。時折見る獣人族、こちらでは亜人と呼ばれていますが、彼らはあのように奴隷でいることがほとんどです。私の可愛いウサミミはそう言った理由でちょっと隠しています。出したままだと、捕まっちゃいますから。さて、ちょっと散策してみましょう』
そして、ジルバの名所案内が始まり、聖剣の伝説や、魔剣といった情報が次々とだされる。
近年では魔物はすっかり見なくなったとか、魔術師は数が少なく優遇されるとか、そう言ったのをクイズで出しつつ、話を進める。
その映像とクイズ、説明を見ることで、魔力枯渇の問題をありありと見せていくのだ。
まあ、これはウィード側の大陸用に作った物で、こちらの神様たち用ではない。
細かい調整は、ルナをフォローして進めていくが、今はまだこの映像を見て、魔力の枯渇が何を意味するのか? をじっくりと説明していく形になっている。
『……ということで、今後更に魔力が枯渇したらどうなるのか? それを防ぐにはどうしたらよいのか? という研究がおこなわれているようです。その研究成果が出るといいですね。私たちの大陸もこうなる可能性があるのですから。では、スタジオに戻しますー』
そう言ってラッツの映像が終わる。
ここまでで、約二時間弱。日本で言えば初回スペシャルみたいな感じだな。
だが、まだまだオールアロウリトは続く。
今回に限っては、神様とダンジョンマスターへの説得と状況説明も兼ねるから、これで終わりにしてはいけない。
というか、これからが本番である。
「はい。ラッツ、ありがとうねー。さて、今まで見せたのは、まったく魔力に対する知識がない、諸国を説得するための材料よ? どうだったかしら?」
ルナがそう言って、ノーブルたちに意見を聞く。
「「「素晴らしい物だと思います」」」
条件反射のように答えるノーブル一派。
まあ、ルナが魔力とか威圧のスキルも使ってるから頷くしかできないとは思うが。
「うんうん。ならよかったわ。まあ、でもあんたたちはここから先が本番よ? そのために私が自ら命令を下したんだからね」
「はっ、我々神々にその魔力枯渇を止めるようにご指示されました」
「僕たちダンジョンマスターにもですね」
「そうね。その通り。しかし、今までめぼしい結果を出したのはこの大陸では1人だけよ」
「その一人とは?」
ノーブルが期待をしたように聞く。
ああ、自分が褒められると思ったのか?
……それなら哀れな。
で、ルナがすぐに答えると思いきや、ニヤッと笑って……。
「じゃ、ここで問題です。この大陸において魔力枯渇現象に対してめぼしい結果を出したのは以下の誰でしょう? 1、ノーブル 2、サクリ 3、ヒフィー 4、コメット ああ、もちろん間違えても、正解しても、罰ゲームは確定だからね。上記の4人は」
回答者全員が固まった。
いや、コメットも固まっている。
ここでやっちゃいますか。
全員まとめて罰ゲームに突き落とすことで、ヒフィーとコメットのあの発端に対する認識を甘くするつもりだ。
全員悪かったということで。
「な、なぜ罰ゲーム確定なのでしょうか?」
「何言ってるのよ。見えないかしら? ウィードから来たダンジョンマスターの姿が」
そう言って、ポンポンとラビリスの頭を叩く。
「は? はぁ、たしか、彼女は魔力が潤沢にある大陸からのダンジョンマスターでしたな。それが何か?」
「にぶいわねー。めぼしい結果を出したからといって、解決には至っていないの。ノーブルも、サクリも、ヒフィーも、コメットも、あれから何百年経っていると思っているのよ? しかも、音信不通と来たもんだ。ラビリスの報告でどちらもやっと生存の確認がとれたのよ?」
「えーっと、ルナ様。その話から察するに、他の大陸からダンジョンマスターをこちらに連れてきたように聞こえるのですが?」
「当たりよ、サクリ。このラビリス、ダンジョンマスターというか、魔力枯渇に関してもこっちの大陸の一枚も二枚も先に行っててね。なんとかできないかなーって送り出したのが1年そこら前。それでこの結果よ」
ルナの顔が暗に「お前等もっと働けよ」っていう顔になっている。
いや、お前が働けよ。って俺は思うが、ノーブルやヒフィーは申し訳なさそうに顔を下へ向ける。
あと、ルナに仕事ぶりを褒められても、俺は全然嬉しくないからな。
また厄介ごとを押し付けられるに決まってるからな……。
「さーて、これであんたたちが罰ゲームを受けるのは確定しているんだけど。まあ、正解すれば軽減されるかもね?」
そして、罰ゲームが始まる。
勿論、バッチリ録画して、罰ゲームが終わった瞬間にリプレイを流すという悪辣ぶりを発動して、ノーブルたちに精神的にダメージを与えていくのだ……。
うん。俺は悪くねえ。
ルナが悪い。
テレビの影響っていうのは侮れないものがある。
それは私達がよく知っているだろう。
ダイエット方法とか、健康食品とか、いいお店とか、放送があるたびに混雑したり、商品が無かったりするよね。




