第363堀:ちょっとした情報整理
ちょっとした情報整理
Side:ユキ
「さーて、なかなか面白くなってきたな」
「……どういうこと?」
俺が呟いた言葉にクリーナが反応して、なぜか目つきが鋭くなる。
「……もしかして、お姫様を手籠めにするつもり?」
「ユキさん。私たちがいるじゃないですか!!」
「そうですね。得体がしれませんが、不潔ですね」
「ユキ様。欲求不満なら私が受け止めてあげますわ!!」
クリーナの言葉に護衛の3人の嫁さんたちが揃って抗議の声をあげる。
「まてまて、そっちの意味じゃないから。まだ姿も見てないのに、そう言う気持ちになれませんから」
「……見た目が好みだったら、あり得るということ?」
「その発想から離れろ。クリーナ、俺は嫁さんたち以外に手を出すつもりはない」
ここで、しっかりと言って、俺がどれだけ嫁さんたち一筋かをアピールしておこう。
でもなぜか、白けた目でこっちを見てくる。
「……やっぱり。あのー、奥さんの私たちが言うのもなんですけど、あまり他の女性に無関心なのはどうかと思いますよ?」
「ですね。ユキの妻としては嬉しい限りですが、その淡泊な反応は色々問題があるのではないでしょうか?」
「別に、他の女性に手を出せと言うわけではないのですが、もうちょっと褒めるとか、見惚れるぐらいはしないと、貴族の社交界では、あらぬ噂を立てられますわ」
「……ん。ホモーの疑惑が上がりかねない」
「お前等、俺に一体どうして欲しいんだよ!?」
浮気は駄目だけど、他の女性には興味もてとか、わけわかんねー。
「だって、ユキさん。私たちにリクエストしないじゃないですか」
「ええ。できうる限り、ユキの好む姿になりたいと、妻として、いえ、女の務めかと」
「そうですわ。ユキ様はこんなに頑張っていらっしゃるのに、私たちに今のままでよいと言うばかり。そんなユキ様の優しさに甘えてばかりでは、妻として、女としてのプライドが許しませんわ!!」
「……仕事ではなく、プライベートのこと。もっと、私たちに要求してほしい。がんばる」
あー、なるほど。
俺にとっては、彼女たちはファンタジー世界の住人で、そのままの姿で既にご褒美なのだが、彼女たちにとっては、それは普通であって、俺好みの女性になったわけではないのだ。
なので、俺の護衛をしつつ、他の女性に目をやったりしないか観察して、好きそうな服装や髪形、仕草を実践しようと思ったわけか。
「わかった。今度、着てほしい服とか、アクセサリーを用意してみるよ」
「ほ、本当ですか!! やったー!! 聞いた、ジェシカ!!」
「聞きましたとも、これで、ユキの好みがわかりますね!!」
「今までは、いくらDPで取り寄せた服を着ても、全然ユキ様の視線は動きませんでしたから、これでいけますわね、クリーナさん!!」
「……ん。これでユキを悩殺できる」
あ、そういうことか。
嫁さんたちには好きな服をDPで取り出せるようにしている。
だから、毎日の如く、ウィードの自宅では服が変わる。
なぜ自宅で着る服がコロコロ変わるんだよ。と思っていたが、これが原因か。
てっきり、女性の服は沢山がいいって趣味かと思ってたわ。
ま、ウィードの自宅以外は、専用装備をつけないといけないって義務付けているし、そう言うところで、不満というか、不安だったんだろう。
服を着替えても、俺の反応が皆無だったから。
でもさ、毎日変わる服装褒めてたらきりがないよな?
あ、そういうことじゃない?
女心は複雑というやつか。
あ、そうだ。……ナールジアさんに言って、もう3、4種類、デザインの違う専用装備用意してもらうか。
外に出る服の種類が少ないのは、女性的には辛いはずだ。
というか、護衛の嫁さんたちは、他の嫁さんたちに比べて比較的大人しい。
つまり、セラリアとかは結構イライラしてるはずだ。
なんとか機嫌をとらないと、夜がひどい。
でもさ、どんな服が俺の好みかよくしらん。
……学生服とかがベタか?
あとはバニーさんとか? いやラッツやシェーラがリアルバニーさんだしな。
バニースーツだけでいくか? というか、あれバニースーツって名前なのか?正式名称しらねー。
あとは童貞を殺す服装とかあったよな? なんか、胸を強調するようなタイプのメイド服。ってリアルでメイドのキルエいるし、これは却下か?
「って、話が盛大にそれとるわ。俺の好みの件は後日精査して、渡してリクエストするから」
「絶対ですよ?」
「楽しみにしています。あ、でも路上プレイとかはあんまり……」
「さ、流石にそれは、ウィードの国民にし、示しが……」
「……私は構わない。ドンときて」
「いやいや、なんで好みの話が、そっちまで飛ぶんだよ。っていい加減に話を戻すぞ。面白いっていうのは、エクス王都の状況だ」
俺がそう言うと、嫁さんたちは直ぐに真剣な顔になり、話を聞く体勢になる。
「どう言った意味で、エクス王都の状況が面白いかというと、ほぼ絶対と言っていいほど、俺たちに監視が来ていない。俺たちっていうのはモーブの件でなく、本当に俺たちのことな」
いまいちピンと来ていないのか、4人とも首を傾げている。
そこで、ジェシカが皆の代わりに口を開く。
「どういうことでしょうか?」
「まあ、他の地域の監視に出ている嫁さんたちにも、改めて詳しく説明するから簡単に言うぞ。相手は、俺たちがバックにいることに全く気が付いてないってことだ」
「それは、先ほどのヒフィー様に届いた手紙から察せられますが、それは面白い状況なのでしょうか? モーブたちも、実はダンジョンの能力で監視されていないとも限りません」
「いや、その可能性も限りなく低い」
「なぜそう言い切れるのです?」
「モーブたちの推定戦力は、あの新大陸に於いて、3人で王都を落とすことぐらい簡単なのは知っているな?」
「はい。ジルバ王城が実質スティーブ1人に落とされたようなものですし」
そんなことあったなー。
あの時、スティーブだけ馬小屋に寝かせられてたんだよな。
で、その懐かしい思い出に驚きの声をあげたのはサマンサだ。
「ええ!? ちょ、ちょっとお待ちになってください。あの、ゴブリン。スティーブさんはそこまで強いのですか!?」
「……確かに、アルフィンの時には、良い指揮官だとは思ったけど。そこまで強いゴブリンだとは知らなかった」
どうやらクリーナもその事実に驚いているらしい。
ま、この2人はウィードの魔物軍とは挨拶ばかりだしな。
あとは、一緒にトランプしたりゲームしたりと、だらしない姿ばかりだ。
あの姿に、強さを察せと言われても無理だろう。
「あれ? サマンサさんも、クリーナも知らなかったんだ。ゴブリンのスティーブ、副官のブリッツ、なんとかオークのジョン、ブラッドミノタウロスのミノちゃん、スライムのスラきちさん、この5人はヘタすれば私たちよりも戦力は上だよ」
「いえ。私たちはどちらかというと、死なないこと、ユキを守ることに特化していますから、ユキの所の兵器を十全に扱える分、私たちより攻撃力、指揮能力、動かせる部下、総合的には向こうの方が上なはずです」
「そ、そこまでなのですか……」
「驚き」
もっぱら、執務室で書類整理して、畑耕して、子供たちと遊んでいる奴らだからな。
ウィード国民に愛される魔物軍を目指しているんですよ。
自衛隊にも似たようなフレーズがあった気がする。
苦労してんだなー。
「と、話を戻すぞ。その3人に気が付いていながら、接触しないということは、その3人以上の戦力がない、もしくは戦力を割けないということか、本当に気が付いていないとしか言えないんだ」
「モーブさんたちをあっさりやれる戦力を隠し持ってても不思議じゃありませんよ?」
「リーアの懸念は当然だが、ありえないんだよ。そんな戦力が存在するなら、既に他国を落としているからな」
「「「ああ、なるほど」」」
俺の言葉に4人とも納得した顔になる。
「そこまでの戦力があるのなら、わざわざヒフィー様に連絡とって意思の有無を問う必要もない。モーブたちも放っておく意味もないということですね? あるいは、モーブたちに割ける戦力が存在しないということですね? まあ、監視すらついていないのですから、現状から考えて、監視があったとしても、モーブたちのステータス隠蔽を見破ることができないということ。つまり、それに応じた組織体系ということになるのですね?」
「そういうこと。さっきのヒフィーへの手紙とモーブたちの状況で、相手の戦力がある程度割れたってことだな」
「タイゾウが、ヒフィーに何も言わずに送り出した理由がわかった。敵足り得ない」
「でも、それならば、一気に制圧してしまえばよいのではないですか?」
サマンサはそう当然のように提案するのだが、その手段はとれない。
「サマンサ。それだと事後処理が大変です。ベータンはホーストさんがいますからいいですけど、ウィードでも忙しいのに、エクス王国を統治なんて人手が足りません。だから、私たちがやったという事実はあくまでも隠さないといけませんし、今後の統治に於いてよそ者が上に立つのは反発がひどいので避けたいですね」
「なるほど。確かに、私たちの使命を考えると、こんなことで手を煩わせる理由もありませんわね。となると、エクス王国の関係者に統治を任せるというのが一番楽なのでしょうか?」
「そういうこと。それを前提に動くとしても、まず大前提に、大規模な戦争が起こらないようにしないといけないし、この元凶は絶対捕まえないといけない。だから、四方八方から寄せ手を作って完全に封殺を謀る。アルフィンの時のグラウンド・ゼロみたいな大怪獣の準備をされていても困るからな。行動を起こす前に潰す」
「……ん。理解した。面白いと言ったのは敵が無防備すぎるということ。これは、数多の手段を講じられるという意味。いい実地演習。やりたい放題。にも関わらず、相手は準備万端だと思って油断しているということ」
「大体その通りだ。ま、向こうにこっちを越える手札がないとも限らない。それには十分警戒してやる。だから、万が一の為に攪乱できるように、多方面、別角度から味方を潜入させて、情報収集をしている」
「それが、モーブたちとヒフィーたちということですね」
まあ、その攪乱するための手札は攻め手の時にも使えるわけだが。
モーブたちが引き取ったお姫様もいい情報を持っているといいな。
「まあ、他にも沢山寄せ手は増やすけどな。まずは、霧華」
「はい。こちらに」
直ぐに現れるデュラハン・アサシンの霧華。
最近、鎧は着ていなくて、普通の服だから、もう忍者だよな……。
いや、無論、ナールジアさんのお手製だから性能は桁違いなんだが。
「うわっ!? 霧華ちゃん!? び、びっくりしたー」
「私もです。危うく剣を抜くところでした」
「全然気配を感じませんでしたわ。って、あら?」
「……魔力の流れがない?」
お、流石に専門のサマンサとクリーナは気が付いたか。
「嫁さんたちにも気が付かれないなら、完成と言っていいだろうな」
「いえ、まだまだです。ユキ様はお気づきだったのでしょう?」
「そりゃな。魔力だけ遮断しても、熱源感知があるからな。そこは今後の課題ってことだ」
うん。
再度確認しても、魔力感知でのダンジョン監視システムに、霧華は引っかかっていない。
熱感知にははっきりと霧華の反応はある。
ザーギスの研究もここまでくると凄いよなー。
「あのー。よくわからないんですけど……」
「説明してください。あと、霧華。あまり人の夫に近づかないように」
「失礼しました」
そう言って霧華は少し下がって待機する。
「魔力の流れが全く感じられませんわ……」
「……不思議。生き物は多かれ少なかれ魔力を無意識化に空気中に流している。だから、私たちは感知できるのに」
「サマンサとクリーナの言う通り。魔力を完全に遮断するアクセサリーの開発に成功した。これで、ダンジョンの魔力による監視を抜けられる。熱源感知は別だけどな」
「え? それって凄い発明じゃないですか!!」
「確かに。それがあれば敵地に侵入し放題では?」
「いえ、それは違いますわね。魔力の流れを遮断するということは、自然回復が望めませんし……」
「……魔力とは空気中に存在すると仮定されているから、息もできないはず。たぶん霧華。アンデッドだからできること」
「サマンサ、クリーナの言う通り。魔力だけで活動できる生物?に限る。というより、今までは失敗作だったんだよな」
「はい。このアクセサリーは、元々魔力減衰を止めるためのものとして開発されたのですが、それでは、私たち以外につけられませんので」
「ま、これが、ダンジョンの魔力監視に引っかからないと気が付いたのは最近だけどな。試験をウィードで終えて、次はエクス王都ってわけだ」
「……本当に面白いって顔してますね」
「相手が不憫に思えてきました」
「本当に、ユキ様にとっては実験場になりそうですわね」
「……面白そう。私も出番が欲しい」
いやいや、クリーナ。俺たちが出るのは、全部詰みになった後。
多分相手さんは、奥の奥の手まで出そうとするから、それを全て封殺しきってから。
嫁さんたちを危険に晒すことはできない。
さてさて、更にどんな情報が飛び出てくるのやら。
さて、こういう描写があることはほかのお話しだとないでしょうから、分かりやすく、説明しています。
相手の戦力を測るときにはこうやって考えていますって感じ?
ま、そこはいいや。
嫁さんのコスプレは何がええかねー。
バニースーツ? ナース服? 白すく? セーラー服?
うん、ファンタジー系を封じられると、結構コスプレって悩むよな。
メイドもありかもしれないけど、向こうではただの使用人服みたいなもんだし。




