第355堀:初心を忘れるべからず
初心を忘れるべからず
Side:モーブ
冒険者
それは死と隣り合わせの職業である。
だが、冒険者になろうとするものは後を絶たない。
それは、冒険者にそれだけの可能性があるからだ。
財宝を見つけたり、大いなる魔物を倒したり、刺激的な人生を送りたいと思うのであれば、これ以上に刺激のある職種はないだろう。
しかし、それを成しえるのはほんの一握りである。
今日は、その一握りのある冒険者の話をしよう。
プロジェクトΩ 挑戦者たち 冒険者ランク8への軌跡
剣の国と言われるノゴーシュ、剣にまつわることが発展している片田舎で一つの命が生まれた。
その名はモーブ。
特に裕福でもないが、片田舎であっても特に食うに困るようなことはなく、幸せと呼べる場所に生を受けた。
彼は3男で、上に姉と兄がいて、両親、兄妹、に暖かく見守られて、すくすくと成長してゆく。
そしてある日、モーブ少年の運命を変える出来事が起こる。
「……みんな何してるの?」
その日モーブは珍しく朝早くに目を覚まして、1人で起きられたことを自慢しようと、家族を探したのだが、誰も家にはいなかった。
なら、外だろうとドアを開けると、予想通りに皆はいたのだが、その光景に思わず朝の挨拶をしないで声をかける。
「あ、モーブ。もう起きたのかい? おはよう」
「うん。おはよう。で、兄ちゃん。それ何持っているの?」
「あー。父さん、どうしよう?」
「ふむ。これもこの国に生まれた運命という奴だろう。母さん、子供用のがあるだろう?」
「まだちょっと早いと思うけど……。はい」
そう言って、母から手渡されたのは、子供用の木剣。
「うわっ」
だが、まだ小さいモーブには重く取り落としてしまう。
「あはは。まだモーブには重かったか。ほらこう持つんだよ」
兄に手ほどきを受けて、その日初めてモーブは剣を握った。
それが、モーブと剣の出会いであった。
それから、モーブは家族と一緒に、生活の一環のように、剣の訓練を始める。
強いられることもなく、嫌がることもなく、ただそれを普通にこなしていたモーブの剣の腕はみるみる上がっていた。
そんな日々を過ごしていたある日、魔物が村にやってきたのだ。
父や母も、姉も兄も、剣を持って戦いにでる。
モーブは家にいるように言われたが、自分も何かできるのではと、木剣を持って家を飛び出した。
「にいちゃ……」
「モーブ!? なんで出てきた!!」
「一匹抜けたぞ!!」
「モーブ!! 逃げなさい!!」
「え」
気が付けば、モーブの目の前には狼の魔物が大口を開けて……。
「って、なんだよこれ!?」
咄嗟に、この映像を流しているであろう機械のコンセントを抜く。
こういう機械は全て電源がいるからな。
ウィードの生活に慣れてなかったら、こんな的確な動きはできなかっただろう。
「あーあ、止めちゃったか」
「誰だって止めるわ!! なんだよ、さっきのは!!」
「えーっと……、確か……」
ユキが悩んでいると、会議室のドアが開かれて、そこからエリスが書類を持って現れる。
「モーブさんの反応を見るに、やはり事実に近いとみていいでしょうか?」
「いや、事実というか、妙な再現するなよ。で、なんでこんな物を」
「はい。実は、冒険者ギルドの方から、高ランクの人物の物語は後人の勉強になるだろうということで、ウィードが全面的に協力して、モーブさんの過去を洗ってあのような映像を作ってみました」
「ギルドからの要請ね……。その協力者はお前等か?」
そう言って、一緒に会議室へ来た仲間二人を見る。
確かに、俺よりは動揺は少ない。
「いや、特に悪気があったわけじゃない。後人の為にというのはよくわかる話だったしな」
「ええ。まあ、このような映画風の映像にするとは思いませんでしたが」
「ま、そんな理由だ。ちゃんと、お前が街を襲ったとか、エルジュを奴隷にしたとかはなかったことにしてるから心配するな」
「そこまで既に作ってんのかよ!!」
本当にユキは油断ならねぇな。
「反応を見るに上々だ。あとはギルドの面々の判断でいいだろう」
「はい。わかりました。冒険者ギルドに送っておきます」
「おいこら!? って俺を弄るために、呼んだとか言わねーだろうな!!」
「いや、流石にそう言うつもりはない。いつもの前座みたいなものだよ」
前座にしては大掛かりすぎだろう。
というか絶対あれは本当に冒険者ギルドに回すつもりだな。
あとで、冒険者ギルドに行って差し止めてもらおう。
あんな恥ずかしい映像を流されれば、今後ウィードで表を歩けなくなる。
「俺たちの動きはどこまで知っている?」
「は? どういう意味だ?」
「新大陸の状況だよ」
「あー、どこから言えばいいんだ?」
「ま、とりあえず長話になるから、座ろうぜ」
「ああ」
そう言われ、俺たちは座って、お茶が配られるのを待ってユキが再び口を開く。
「で、どこまで話は知っている?」
「進行状況っていうなら、お前等はホワイトフォレストでの用事が終わったところだろう?」
「そうだ。で、残るはエクス王国だ」
「敵の本丸の可能性があるって言ってたよな」
「そう。で、ちょっと動きにくくなった」
「動きにくく?」
「今までは、各国の名借りが非常に有効だったけど、敵の本拠点の場合は逆に狙われる可能性もあるし、行動が監視される。こっそり行こうにも、俺たちの名前や面は割れている可能性が高い」
「ああ、そりゃ動きにくいだろうな」
俺も一躍有名になった時は、なんでか知らないが、他所の街に行っても名前や顔を知られていることがよくあった。
それで変に飲み屋に行けなくなったんだよな。
嫁さんに情報が行って折檻されるんだ。
ありゃ面倒だった。
俺が当時を思い出していると、横に座っているライヤは納得がいったのか頷いて口を開く。
「ああ、それで俺たちにエクス王国へ行って欲しいわけだ。文字通り無名の俺たちに」
「そういうこと」
「そういうことですか。確かに、私たちがエクス王国に行く分にはなにも問題はないですね。亜人の村で過ごしていますし、新大陸でユキたちと行動を共にしたのは最初の最初だけ。これなら疑われる要素は少ないでしょう」
「ああ。なるほどな」
納得がいった。
確かに俺たちは、新大陸では亜人の村のまとめ役でしかない。
カースの言う通り無名の冒険者は、ウィードのほうだから、新大陸では傭兵か。
「で、頼めるか? 報告書を見る限り、亜人の村はそこまで問題があるようには見えないが」
「ん? ああ、まあ血の気の多い奴はいるが、それだけだ。俺たちも新大陸は歩いて回ったことがないから、願いかなったりだな」
「だな」
「問題ありません」
「よし、じゃあ、エクス王国の調査を頼みたい。亜人の村の方は代わりを入れるから心配しなくていい」
「わかった。で、俺たちはエクス王国に行って、何をすればいいんだ? 王城でも制圧すればいいのか?」
「お前等が王様やりたいなら止めない」
「断る」
「嫌です」
「即答かよ。お前等」
なぜか、ライヤとカースが即答で断る。
「一国一城の主だぞ? 少しは悩まないか?」
「なら、モーブがやってもいいぞ」
「ですね」
「いや。俺も断る」
クソ面倒なのはカースの話や、ユキの忙しさを見ればわかるしな。
暴君なら楽なんだろうが、そんなことすれば暗殺とか、そもそも、ユキにやられるわ。
「というか、ダンジョンマスターみたいなのもいるから、王様を倒しても終わりとは限らないけどな」
「ああ、そう言えば、そんなのがいるって話だな」
「だから。警戒されていなくて、ダンジョンについての知識もあって、その攻略もしていて、世間慣れしている3人が最適だと思ったわけだ」
「いや、世間といっても、ウィードの方の大陸であって、新大陸は未経験だけどな」
「そこまで変わらんよ。俺が嫁さんたちを連れてゾロゾロ歩いているよりは遥かにましだ」
「そりゃな。で、具体的には何を調べればいい?」
そこを聞いておかないと、何もできない。
「あー、そういうのはいるよな。正直俺も悩んでいるんだよな」
「ユキにしちゃ珍しいな」
「いや、俺なら徹底的に隠すか、山ほどそれらしいものを置いて隠蔽するからな」
「……そういうことか」
「だから……、そうだなー。ひとまずは、魔剣の生産場所だな。ダンジョン内で生産していたとしても、外に出すための出入り口があるわけだ。そこさえ分かれば芋蔓式だとは思う」
「だな」
「あとは、ダンジョンマスターみたいなのが誰なのか? ってところだな」
「それが分かれば苦労しないな」
「というわけで、結構アバウトなんだよ。マジでお前等の経験と勘を頼りにしたいわけだ。最初からエクス王国へのアプローチが違うからな。俺たちはある程度、身分があってだけど、そっちは何もなしの傭兵って感じだ。どう立ち回るのがいいのかさっぱりわからん。ま、ひとまずの方針は、面倒が無いように、こっそり相手を全部調べ上げて、ここ一番の時に大痛手を負ってもらって、こっちの良いように動かしたい」
「お前がいつも通りの腹黒い方針なのはわかった」
「まあ、なんというか、ロシュールにお使いに行ったような感じがいいのかもしれないな」
「そうですね。そんな感じですね」
「ああ、そう言えば、あの時の状況に似ているな。あの時は、エリスたちを迎え入れるのが目的だったんだけど、今回は調べ物が優先って感じだな」
そうそう。
お姫様たちの援護はあくまでもついでみたいなもんだったからな。
「あ、それなら奴隷を数人また引き取ってもいいかもな」
「またどうしてだ?」
「情報収集に一番いいだろう? 下手に聞きまわるより安全だ。他の国ではそこまでする必要がなかったけど、エクス王国はお前等3人だけだからな。となると、孤児とか、奴隷が情報を集めるには、狙い目だろ?」
「たしかになー」
「運が良ければ、元貴族の奴隷とかもいたりして、情報回収できるかもしれない。幸いに、お金はあるからな。奴隷を数人引き取るぐらいは簡単だろうさ。そっちの情報収集はこっちでやるから、奴隷を引き取ったら、一旦エクス王国から連れ出してくれ。相手に察知されない距離でダンジョンを構築しておく」
「わかった」
なんかますます、ロシュールに行ったときのような状態だな。
確かあの時は奴隷を選ぶうえで……。
「あ、今回も女性は最低1人ずつな。お婆さんとかなしな。ちゃんとネタになりやすいので」
「やっぱりかよ!? 情報収集だろ!? 年寄りとか、こう盗賊やってた感じの男の方がいいだろう!!」
「あほ。年寄りを奴隷で売るかよ。働けない奴なんて商売にならんだろう」
「……確かに」
「で、男の奴隷も否定しない。が、女性も必ず入れろっていうのは、多方面からの情報収集がいるからだ。男の方は酒場にでも行って飲み明かして聞いてもいいだろうが、女性相手にはそうはいかんだろう? それともなんだ、口説き落としてみせるってか?」
「それは無理だ。俺はまだ嫁さんだけなんだよ」
俺はそう言って、他の2人も首を横に振る。
簡単に女をひっかけられるわけがない。
「だろ。だから、奴隷から女性を引っ張ってきた方が楽なんだよ」
「真面目な理由があるなら先に言えよ」
「いや、結局はお前等を弄るのは変わらないし、精々俺の弄りが吹き飛ぶほどの相手でも見つけてきてくれ」
「お前ってやつは……」
「真面目にやりすぎてもダメなんだよ。何事も適確で的確に、事に当たることは不可能だ。完璧なんてないしな。どこかで遊びを入れた方が案外どうにかなるもんだ」
「……確かになー。剣も真剣に練習したからって、いいわけでもないからな」
ちゃんと休息をいれて、初心を忘れないようにして、心の余裕もないといけなんだよな。
しかし、ユキにいじられるのは勘弁だ。
なんとかして、こう情報を握っていそうな女を探そう!!
俺はそう、心に固く誓った。
懐かしのモーブたちの奴隷趣味選手権が開催されます!!
ま、ヒロインの予定はないが、どんな奴隷がくるだろうねー?
次回は桜見のネタだし。
どんな奴隷がいいとかあったら言ってくれ。
亜人もOKだが、メインには使いづらいな。
なるべく人で、容姿とか設定をな。
使うかどうかはわからんべ。
ま、いままでこういうキャラクター募集はやってなかったし、やってもいいとおもうんだ。
できるかはわからんがな!!
あと、独断と偏見で俺が選ぶからそこら辺は我慢して。




