第336堀:ローデイの日常
ローデイの日常
Side:ユキ
「おや、誰かと思えば田舎領主のヒュージ家ではないか。一体、王城に何のようだ?」
……世の中、テンプレと言いますか、急いでいるときに限ってこういうのが出てくるな。
幸い、俺ではなく、サマンサの親父さんに絡んでいるのだが。
「ドクセン、今はお前とそんな言い争いをしている暇ない。陛下に謁見しに来たのだ」
ド・ク・セ・ン!! なに? 狙ってる? もうさ、アーデスとかさ、ジャーマとか、ヒッキーとか、狙ってる名前多いよな。
いや、アーデスは俺が勝手にアホデスって変換したから違うか。
「で、あのアホはなに?」
とりあえず、親父さんとおバカ貴族の間に入ることはできないので、こっそりビデオカメラを回しながら、隣にいるサマンサにあのおバカのことを聞いてみる。
「えーっと、王都に本拠を構える、所領無しの公爵家の1人でして、ドクセン家ですわ。見ての通り我がヒュージ家によくケンカを売ってきますの」
「所領無しって、それってそっちの才能ないからじゃ……」
「はい。流石は旦那様。まさにその通りでございます。あちらの方は領地経営の才能が皆無でどこをどうすればよいか分からない、というほどのマイナスを出しました。そのため、領民に重税をかける羽目になり、当時、助けを求められた大旦那様が、ドクセン家の領地経営を調査し陛下へ暴露……、いえ、直訴いたしまして、所領を没収、王都での謹慎処分というのが、正しい認識です」
サーサリは流石というべきか、仕える家のことは淀みなく言えるのね。
「サーサリ。私怨があるとはいえ、ちゃんとドクセン家の評価できる部分も言わなくては駄目ですわよ?」
「はっ、お嬢様。ご冗談を。多少、ミジンコ一匹分ぐらい、指揮の才能と武力があるだけではないですか。どこをどう見ても、旦那様には及びませんので、無視して結構です。ええ、私怨なんてございませんとも。でもご命令があれば、今日一日でドクセン家の連中を全員潰してごらんにいれます。旦那様こそが最強であると証明しましょう」
「いや、私怨バリバリじゃねーか。何があったんだ?」
「まあ、簡単に言えば、サーサリは元騎士。これだけでユキ様には伝わるのでは?」
「ああ、騎士の頃、ドクセン家の連中に邪魔でもされたのか」
「邪魔どころではありません。あの連中は自分の地位を守るために、騎士学校や現場で自分たちより腕が立つ、使える相手は、引き込むか潰しにかかるかしかできない屑です」
どこでもそんなのはあるねー。
社会の中身は中世だろうが現代だろうがあまり変わらなくて悲しいわ。
「ということで、怒り心頭のサーサリは、腰巾着の上官、ドクセン家の馬鹿をまとめてぼっこぼこにした。綺麗にはめられて、騎士職を解任。危うく奴隷にされかけたところを、お父様が庇って引き取ったというわけですわ」
「大旦那様には感謝ばかりでございます。世間的には暴力女と言われた私を囲ったのですから、周りの目は非常に冷たいものだったでしょう。あのままでは、再起不能にした二人の介護にあてられそうでしたから」
「あ、そっちの目的もあったわけか」
「サーサリは見ての通り顔よし、スタイルよし、器量よしですから。たぶんそこら辺でドクセン家に目をつけられたのでしょう。で、その騒動のおかげで未だに独身と……」
「うきゃー!? 違います、違いますよ旦那様!! 言っての通り、私の理想の男性がいないだけでありまして……」
「あー、それは分かってるって。ウィードではサーサリの悪評なんてないからな。きっといい人が見つかるって」
「ですよね!! ですよね!!」
「ユキ様以上の相手なんているわけないと思いますけど」
「はいはい。惚気はよそでやってくださいね。私がユキ様の妾を遠慮してるのは、お嬢様より私にメロメロになることを避けるためなんですから。たく、乳だけ大きくなって」
「……いい度胸じゃない。サーサリ?」
「前回はこちらに非がありましたが、今回、独身という誹謗中傷を受ける言われはありません」
なんかこっちもお互いに傷つけあうの好きやね。
セラリアとクアルもやってたっけ?
何? こっちの世界の主従関係って、お互いノーガード戦法で殴り合う間柄?
「……3人ともそこまでにして。サマンサのお父様と馬鹿貴族の話が変な方向に行ってる」
「「「へ?」」」
一緒に来ているクリーナの呼びかけで、親父さんと馬鹿貴族の方に意識を戻すと……。
「謁見申請の無い者を通すわけにはいかんなぁ。私はこれでも陛下直轄部隊の隊長の一人だからな」
「バカなことを言うな。非常事態による、公爵権限だ。そこをどけ」
「聞いているぞ。見たこともない乗り物で、王城に乗り付けたそうだな。おかげで王城は軽い騒ぎだ。今、お前には国家反逆罪の疑いがかけられている。分かっているのか?」
……はい?
こ、こいつの頭の構造どうなってやがる。
「……はぁ。お前は本当に相変わらずだな。次で最後だ。緊急事態だ。そこをどけ。さもなくば……」
パキパキ……。
おお、魔力を拡散して、周りを凍らせている。
素でここまででるってことは、魔術の才能はサマンサより上だったんじゃないか?
今はすっかり計測不能になってるけど、サマンサも。
しかし、馬鹿貴族は親父さんの行動を見てニヤッと笑って、剣を引き抜く。
「王城内での、許可のない魔術の使用を確認!! この距離でお前の魔術攻撃が間に合うわけないだろうが!!」
ああ、なるほど。
殿中でござる!! みたいな方法ね。
でも、こいつは本当に馬鹿だわ。
親父さん周りを凍らせたんだから、無論、廊下も……。
ツルッーーーー!!
「うおっーーーーー!? は、謀ったな。ヒュージ!?」
ガッシャーン!!
廊下の角のデカいツボに消えて行った。
「その考えなしをどうにかしろ。まったく、このことは陛下に報告させてもらうからな」
「だ、だれがそのようなことを証拠も無しに信じると思うのだ!!」
「それがあるのだよ。証拠が。な、息子」
そう視線を向けられるのは、俺が持っていたビデオカメラ。
ちゃんと余すことなく、綺麗に録画していましたとも。
ああ、これを撮ることが目的でわざと挑発に乗ったのか。
うん。この親父切れ者だわ。
「ばっちり撮ってるぞ。親父」
がしっと手を取り合う。
なるほど、親父さんが一番排除したかったのはこいつね。
「……2人ともいい笑顔。でも、お師匠とはこんな関係になってほしくない」
「まあ、正直。お父様と仲良くされるより、私たちに構ってほしいですからね」
「さっすが、大旦那様に、旦那様!! これでドクセン家は必滅ですね!!」
ひゃっはー!! と喜ぶサーサリは流石にどうかと思うけどな。
「さ、先を急ごう。妻もルノウも既に行動を起こしているだろう。これ以上無駄な時間は使えん」
ということで、王城をすたすたと進んで、謁見場ではなく、個室へと向かい、扉に立つ兵士に何かを話す。
「ヒュージ公爵家ご当主様がおみえになられています!!」
『あ? ヒュージか? なんだ、また堅苦しい面倒なことをする。入れ入れ!!』
そんな返事が廊下まで聞こえてきて、扉が開かれる。
……ちょっと待て、なんだあのノリ?
中身はまさか……。
「よう。ヒュージ。またみない内に、お互いおっさんになったな!! でも、まだまだ俺は現役でいけるぞ!!」
そんなことを言って、壁にかけてあった、武骨な剣を鞘から一瞬で引き抜き構えるおっさんと、その脇に羊皮紙を持って頭を抱えるおっさんが1人。
「……陛下。ヒュージ公爵は礼儀を守っているだけです。もうちょっと……」
「お前も堅苦しいな。その羊皮紙おけ。久々に3人が揃ったんだぞ。ぱーっと話そう!! な?」
「「黙れ!! この前はそう言って、書類切り裂いただろうが!!」」
合唱する、親父さんと羊皮紙を持ったおっさん。
「い、いや。それは、お前らが、書類があって遊べないって言うから……」
「「重要書類を切り裂く奴があるか!! おかげで仕事の時間が伸びたわ!!」」
……うん。
認めたくないが、これがローデイの現国王か。
なんというか、今までに見たこの世界の王様で一番血の気が多いな。
「ちぇ。わかったよ。わかりましたよ。で、そっちの娘はサマンサだな?」
「あ、ひゃい!」
「なはは。そこまで堅くならなくていい。お前のオシメも替えたことがあるんだからな。気にせずブレードおじさんと呼んでくれ」
「そ、そんな。陛下に恐れ多いこと……」
すっげ、これはイニス姫さん越えてるな。
「人の娘を弄るな。自分の息子と娘を弄れ」
「ダメダメ。最近、スルーするからな。テンションについて行けねーって。駄目だよな。近頃の若い奴らは。俺たちが、傭兵やってた頃はさ……」
「お前と昔話をする為に来たわけじゃない。口を閉じてさっさとこの手紙を読め」
そう言って親父さんは羊皮紙を持ったおっさんに手紙と魔剣の入った木箱を渡す。
「直接渡せよ。めんどくさいだろ? 手紙に何か仕込まれていても、何とかなるって。これで死ねばそれまでってやつだよ」
「お前の適当に周りを巻き込むクセを治せと、毎日言い聞かせているんだがな……。と、学府の学長からと、……これは魔剣か?」
「何? 問題がないなら手紙をよこせ」
「あっ。まったく……」
直ぐに目の色を変えて、手紙を読んで、木箱を開け、魔剣を躊躇いもなく握り……。
ボッ!!
魔剣の力が発動し、小さな炎が上がる。
「本物だな」
「「いきなり使う奴があるか!!」」
「そう言うな。ほれ、内容を読んでみろ」
「……ふむふむ。これは不味いな」
「だろ? で、そこの男がサマンサのでか乳を物にしたユキで間違いないな?」
「ひゃっ!?」
サマンサの乳に目線をやって、サマンサが俺に隠れてからようやく目を合わせる。
……こ、この野郎。ネタを挟まないと喋れんのか。
「息子。陛下ではあるが、見ての通りただの直感で生きるバカだ。無礼討ちなどはせんから普通に答えていい」
「はい。そうです。とりあえず、嫁さんが嫌がるのでセクハラはやめろ、おっさん」
「ぶっはっはっは!! ポープリ学長を越えると言われるだけはあって肝は据わっているな!! サマンサ、すまん!! 悪のりが過ぎた!!」
がばっと頭を下げるおっさん。
潔いが、これはサマンサにすれば……。
「い、いえ!! 大丈夫ですわ。ですから頭を上げてくださいませ!!」
「ま、頭は一度下げたし、上げるがな。人間過ちを犯したら、しっかり謝ることは大事だぞ?」
「言っていることは正しいが、お前の頭は国その物だから、もちっと考えろや」
「ロンリも大変そうだな……」
「そう思うなら、ヒュージも王城勤務してくれ……」
「断る」
すげー、完全に俺たちが口を挟む暇がない。
なんだこいつら。
よくこれで国が持っているな!?
「さて、馬鹿話は終了だ。俺の方もここ最近、城下で妙な噂があるのは実際聞いてきた」
「おい。いつの間に。はぁ、あとで脱出経路教えろよ。こっちも妙な集団がいるのは捉えている。城下に住むものからの情報提供だが、なぜか兵士から信憑性が高いって言われていて不思議におもっていたが、これはお前の仕業だったか」
「おう。王様が自らの街の治安を守らなくてどうする!!」
「その兵士が、飲み代を押し付けられたと言って、経費でどうにかと言っていたのはそのせいか……」
「さ、さあ。なんのことやら……」
趣味と実益を兼ねて、王様が街巡りね。
……どこの暴れん坊将軍だよ!?
「ブレード。お前、金がないわけじゃないだろう? なんでまたツケに?」
「いや、ロンリは財布を厳しく調べるからさ。そっちから金は出せねーんだよ。息子や娘は借りた金返してからっていって金貸してくれねーし」
「「当然だ」」
「仕方ないからさ。城壁の修繕で日雇いをな……」
「「やめろ!!」」
……王様がレンガ持って、城壁直すのか、この国は。
「ま、その関係で妙な連中がいるってのは聞いている。それがまさかこんな大事に絡んでいるとはな」
「まだ、その集団が魔剣を所持していると決まっていないからな?」
ロンリと言われたおっさんが、当然のことをいうが、ブレードのおっさんは何も言わず、剣を置いて、使い込まれた皮鎧を着て振り返る。
「いや、その集団は絶対魔剣を持っている。俺の直感がそう告げている!! 今までの違和感が学長からの手紙で氷解した!! 今から殴り込むぞ!! 3人そろっているのはそうそうないからな!!」
ドンッ!!
「へ、陛下!?」
廊下の外で、飛び出してきたおっさんに驚いた兵士の声が聞こえる。
「いったい、何事……っておい!?」
「俺につづけー!!」
ドドドドド……!!
そう言って、おっさんは部屋を飛び出して走り去った。
「あんの馬鹿!? ヒュージ、追いかけろ!! 俺は兵を連れていく!!」
「わかった!! 息子たちも行くぞ!! あの馬鹿が先陣を切ると、証拠品もまとめてぶっ壊す!! 急いで追いかけるぞ!!」
え?
なにこれ?
いや、とんとん拍子に、さっきのバカ貴族のロスした時間も取り返す勢いだけど……。
つ、ついていけねー!?
とりあえず走るしかない!!
この3人の若いころだけで、別ストーリーできそうね。
勝手に書いていいのよ。
ああ、あと適当に二次創作していいのよ?
同人とか書きたいならかって書いていいのよ?
そして、俺に一冊献上してくれ(ゲス顔)
じゃ、また次回。




