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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 神聖国編

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第305堀:残滓

残滓




Side:タイゾウ・モトメ



「戻りましたか」


ヒフィー殿がそう言うと、片腕になったコメット殿が扉から入ってくる。

しかし、その表情はいつもの通り、何も感じさせない無表情。

アンデッド、死人というのはこういうモノなのだと、言われているが、やはり違和感がある。

まあ、私が慣れていないだけなのだろうが。


「へえ、本当にダンジョンマスターでもあるコメットの腕を切り落とすほどの相手がいるのね」


ヒフィー殿はそう言って、コメット殿の腕に手を伸ばし、淡い光がコメット殿を包む。

するとどうだ。気が付けば、無くなっていた腕は最初からあったかのように元通りだ。

この世界には魔術と呼ばれるものがある。それは、如何様にでも変質する魔力を使う術である。

今見たのは、回復魔術と呼ばれるモノの一部であろうが、ただの切り傷を再生するのとは違うのは、少しでも学がある人ならば理解できるだろう。

落とされた腕を持って帰っているわけでもない、完全になくなっている腕を元通りにしたのだ。

いったい、どういう理屈だ?

しかし、この欠損を治すほどの回復魔術はヒフィー殿しか使えないらしく、ヒフィーのトップでありヒフィー神そのものだと言われても、信じてしまう人はいるだろう。


「どう。違和感はないかしら?」

「はい。問題ありません」


私が考え事をしている間に、再生は終わったのか、コメット殿は再生した腕を上下にしたりして、問題がないか確認している。


「しかし、タイゾウ殿が作った無線機は便利ですね。おかげで速やかな連絡伝達、行動ができています。まさか、コメットを圧倒するものがいるとは思いませんでした。すぐに撤退させられたのはタイゾウ殿のおかげですよ」

「はい。その通りです。無線機がなければ、私は最後まで撤退支援に徹していてやられていたでしょう」

「ああ、いえ。無線機に関しては、師の研究の延長線上でして……」

「そうでしたね。ですが、それをゼロから作り上げたタイゾウ殿を称賛するのは当然です。人は、先人の知恵を継いでいき、未来につなげるのですから」

「恐縮です。しかし、それもコメット殿のダンジョンスキルがなければ、どうにもなりませんでした」

「ええ。ですから、なおのこと、コメットがいなくなるのを防いでくれたタイゾウ殿に感謝しているのです。コメットが物資における最大の供給源なのですから」


そう、このコメット殿。

ただの魔術師という肩書だけではなく、ダンジョンマスターという職業?を生前にやっていたらしい。

そのダンジョンマスターの役割とは、世界の均衡を保つために、ヒフィー殿以上の神が直々に選定なさるものらしい。

その関係で、昔は生きていた彼女と共に協力して、世界の均衡を保つために活動していたらしいが、結局は人の世というところか、謀反を起こされ、コメット殿はダンジョン中で落命した。

それから、コメット殿に力を与えられた者たちが、各々旗揚げをして、この大陸は戦乱に包まれたそうだ。

当時のヒフィー殿は神としての力はそこまででもなく、必死に戦乱が通り過ぎるのを待ち、ヒフィーの教えを広げ、信仰心を集めて、ようやく活動できるまでの力を取り戻した後、このヒフィーの大神聖堂の真下に作られていた、ダンジョンの中にあった、コメット殿の遺体を回収して、アンデッドとして復活させたらしい。

しかし、神という生き物も、信仰心によって力が上下するとか、世知辛い話である。

まあ、友人だからという理由でコメット殿を助けたわけでもない。

先ほど言ったように、ダンジョンマスターとは物質の創造能力があるらしく、魔力をDPというモノに変換して、物質を得る能力があるのだ。

魔力は魔術という術をもって、死者蘇生すら為すのだから、そう言うことが可能でも不思議ではないだろう。

いや、実際は不思議で仕方ないが、魔力という新物質を研究しようにも、今の状況ではそう言うわけにもいかない。


なにせ、私たちは隣国であり、6大国と呼ばれる一国、アグウスト国に対して戦争を仕掛けたからである。

その結果、コメット殿が負傷して戻ってきたというわけだ。


「申し訳ありません。私以外のモノは全て皆殺しにされました」

「そう。でも、貴女が戻ってきてよかったわ。被害も仕方ないわ。だって飛龍が現れるなんて思わないもの」


……この戦い。最初は予定通りに進んでいた。

しかし、飛龍の来襲により我が軍は崩壊し、コメット殿が逃げ出すのでやっとということになったらしい。


「飛龍ですか。そんなに数が多かったのですか? 500名もいたのですから、逃げ出せた者もいるのではないでしょうか?」

「恐らく無理。飛龍は50匹以上いた。それが空中から火炎を吐いて回る。それではどうにもならない」

「なるほど……。飛行機のような航空戦力ですか」


それは予想外だ。

この技術力の低い世界に航空戦力として扱える単位が存在するとは。


「いえ、タイゾウ殿。私も先ほど言ったように、飛龍という魔物は今の大陸では数が少ないどころか全くみません。どこかに隠れ住んでいた飛龍たちが、餌を求め降りてきたとみるべきでしょう」

「しかし、飛龍に騎乗していた者がいたとコメット殿が言っていましたが……」

「それはオーク。人ではない。魔物。つまり、魔物だけの勢力が存在する可能性がでてきた」

「コメットの言う通りね。そもそも元から、飛龍を有しているのなら、大々的に宣伝するはずです。今回のことは不幸な事故と見るべきでしょう」


そういうことか。それなら敵に航空戦力は無いわけだ。

ならば、今回の戦争はそこまで心配することはないが……。


「そこの心配がないのは分かりました。しかし、今後その魔物の勢力とぶつからないとは限りません。対空兵器の用意は必要でしょう」

「対空? なるほど、空に攻撃するための武器ですか。そうですね。後々に絶対必要になると思います。その時はお願いします。タイゾウ殿」

「はい」

「しかし、幸いなのは、目的は達したということですね。これで、アグウストはこの国に攻めてくるでしょう。これを殲滅して、DPを得て、更に国を強くし、まずアグウストを併呑します」


ヒフィー殿はそう言う。

そう、この戦争の目的はDPの回収にある。

残念なことに、この世界の文明レベルは非常に低く、どの国も目先の国境争いに夢中なのだ。

おかげで、私がいるヒフィー神聖国も何度も侵攻を受けては、撃退するということを繰り返していた。

この小さな国が、維持できたのはまさに、このヒフィー殿とコメット殿のおかげと言っていいだろう。

神の御業と思える魔術、そして、魔力から物資を呼び出す能力。

これがなければ、既にヒフィー神聖国は無くなっていた可能性が高い。

だが、それも限界に近付いていた。

DPが徐々に無くなっているのだ。

緩やかにではあるが、確実に減っているらしく、このままでは国を維持できなくなる。

だから、今回、私という異世界人を呼び寄せたのだ。

結果、私の知識が役に立ち、銃器の生産や連絡の手段の劇的な変化により、軍の力がすさまじく上がったのは言うまでもない。

勿論、魔道具といわれる魔剣もコメット殿が作れるので、それも底上げの要因だ。


だが、なぜ同じような小国でなく、大国を相手に戦争を仕掛けたのか? という疑問が残る。

これは簡単だ。

小国を落とすのは、この軍備の充実から容易だと想像がつく。

しかし、結局、最後には大国がでてくるのだ。

勢力が大きくなりすぎると、それを面白く思わないところは必ず出てくる。

だから、小国と侮っている今だからこそ、仕掛けるべきだと言ったのだ。

日本も戦線の拡大ゆえに、手が回らなくなり、どんどん追いやられて、最後には人員、物資枯渇を招き劣勢状態となった。

まあ、あの大戦は仕組まれていたというか、最初から結果が決まっていた気もするのだが。

ともかく、まず大国に宣戦を布告して、負けて戻る。

そうすれば、相手は報復や、面子のためにこちらに攻めてくる。

大国の介入で、周りの小国が攻めてくる可能性もあるが、それはどれもヒフィー神聖国内だ。

つまり、万全の態勢で戦える。

DPの回収にしても、ヒフィー神聖国の国土であれば、わざわざコメット殿が敵を自ら倒さずとも、DPを回収できるので、効率がいい。

そのDPを使って、すぐ物資、軍備の充実が図れる。

私たちが外へ打って出るときは、既に各国は兵力をすり減らし、どうにもならない状況になっているのだ。


「しかし、この戦略、そして、新たなものを作りだす知識。流石、勇者タイゾウ殿ですね」

「いえ。私はただの技術者、研究者でしかありません」

「その受け答えは変わりませんね」

「申し訳ない。私は庶民なもので、誰にでも可能性があると思いたいのです」

「責めているのではありませんよ。しかし、タイゾウ殿の知識を平和のためではなく、戦いに使ってしまって、私としても心苦しく思うのです」

「確かに。私の知識はいま戦いに使われています。それに関しては、自分としても思うところがないわけでもありません。しかし、ただ平和をと声を上げても、力がなければ意味がないのも同じです」


そう、平和をと、声をあげても、攻めてくる敵は容赦がない。

この国の、大陸の安定を図らなければ、平和と声を上げることすら叶わないのは私もよくわかる。

というか、調停役であるアグウストが、小国の小競り合いを黙認しているのだ。

介入を一々していられないというのは分かるが、技術的にヒフィー神聖国が通信機能を使ってできるようになるのだから、変わってもらおう。

そうしなければ、私たちが危ないからな。

そして、私が呼び出された理由は、国の存続だけでなく、この世界を守るためとヒフィー殿が言っている。

どのように世界の均衡を守るのかはしらないが、まずは、ヒフィー神聖国が力を蓄えなければ絵に描いた餅でおわるのだ。

私は平和を望んではいるが、周りから武器を突きつけられて、それでも考えなしに平和をと叫ぶつもりはない。

まずは危険をとり除く。

世界大戦などと私の星で起こった愚かなことが起こらないように、調整する必要はあるが……。


「理解していただき、ありがとうございます」

「いえ。お礼は、アグウストの本隊を叩いてからです。予定外のことは往々にして起こりうるのです。そもそも、作戦が予定通りに進むこと自体が稀と言っていいでしょう。今回のことのように」

「そうですね。それを考慮したうえで、色々考えるべきですね。今までは上手く行き過ぎていたと痛感しました」


ある意味、今回の予定外のことは、この2人にとってはいい薬だろう。

なんと、銃器の調練と運用を、この2年間ほどやっていたが、作戦の失敗が存在しないのだ。

この結果は私としても驚いた。

敵が魔物や、盗賊が主だったとはいえ、新しい魔術だということで、銃という認識がされなかったのだ。

新しい物を開発したのではなく、恐ろしく強い魔術ができたのだと思ったらしい。

小国の国境の小競り合いも損害を出すことなく、一方的に遠距離から敵を打ちのめした。

結果、銃などと言う存在は敵に伝わらず今の今まできたのだ。

今回の、予想外の失敗は調子に乗るのを阻止してくれたのだから、それはそれでいいだろう。

犠牲になった兵士には悪いと思うが。


「さて、今回のことで敵国に銃器がばれたと想定するべきでしょう」

「そうでしょうか?」

「ええ。流石に、すぐに相手は生産体制を整えるとは思いませんが、いずれ、戦場で銃器が使われることになるでしょう。それに備えて技術の更新は行うべきです。そして、今回攻め寄せてくるであろう、アグウスト軍もそれなりの対応策を考えてくるはずです」

「確かに、今すぐとは言わなくてもいずれは有りうる話ですね。しかし、アグウスト軍が対応を取れるのでしょうか?」

「完璧とまではいかないでしょうが、それなりの有効策を講じてくるはずです。と考えた方がいい。小銃メインではなく、榴弾砲の配備を多めにするべきですね。近づく前に叩くのです。それに、正面から飛んでくるものより、頭上から降る方が防ぎにくいですからね」

「わかりました。コメット。そのようにできますか?」

「問題ありません。杖を落としてしまったので、多少DPが少ないですが、まだ大丈夫です」


今回の失敗で一番痛いのはコメット殿が回収したDPを使えないことだな。

まあ、もとより、雀の涙でしかないから、期待はしていなかったが。


「あとは、アグウスト軍の動きを監視して、確実に自国内の戦場で仕留めることです。進軍路が変わるのが一番手痛いので、そこはしっかりとするべきです」

「それに関しては大丈夫でしょう。アグウスト軍の中にもヒフィーの信徒はいますし、コメットの配下、鳥が空から監視をしています。進軍路の変更もあり得ないでしょう。ヒフィーへの道は1つしかありませんから」

「そうですか。なら、私は準備の指示などを行ってきます」

「はい。よろしくお願いします」


私はそう言って、踵を返して、部屋を出る。

……正直、嫌な予感がする。

飛龍、ヒフィー殿やコメット殿は国に加担することは無いと言っていたが、それが加担していた場合、非常につらい戦いになる。

流石に航空戦力までは整えられなかった。

対空兵器も対空砲ぐらいが精々、開発だけはしてあったので、僥倖というべきか……。

……下手に兵士を減らすわけにはいかない。

こうなれば、飛龍が出た場合は装備を放棄して逃げろと、指示を出しておくべきだな。

そうすれば、飛龍の情報があつまり、有効な対策を得られる。

大事なのは、いつでも情報なのだ。




Side:ヒフィー



タイゾウ殿が部屋から遠ざかるのを確認して、私は再びお人形に話しかける。


「今回は失態でしたね」

「申し訳ありません」


だが、返ってくるのは淡々とした答えだけ。


「これで、DPを稼いで軍備を増強する予定がパーです。わざわざ、餌としての役割を与えたのに、私たちの糧でなく、飛龍の餌になるなんて」


そう、タイゾウ殿に飛龍のせいで全滅したと言ったが、実際に我が軍を皆殺しにしたのはこのお人形、コメットだ。

予定が狂ったが、タイゾウ殿の言う通り今までうまく行き過ぎた。

そのことでお人形に八つ当たりしても仕方がない。


「……まあ、いいでしょう。で、どうですか。魔剣の改良具合は?」

「はい。進軍、攻撃、士気、共に問題ありません。普通ならば恐慌する数の相手ですが、普通に戦っていました。飛龍に対しては、撤退指示を出したのにも関わらず数名が反撃に移ることはありましたが、概ね、魔剣の精神制御は良好です」

「そうね。飛龍相手ならしょうがないか。ま、捕まえた盗賊を使って、アグウストに対して挑発はできたのだから、成功というべきね。これ以上、精神制御を強めると、貴女みたいになっちゃうからね。貴女が連れてきた、行き場のない彼女たちの聖剣にも、精神制御で多少殺人という行為に躊躇いがないように施したけど、あれは失敗だったわ。まさか、貴女を斬り殺すなんてね。甘い制御だと、自分が正しいと思い込むだけだったみたい」

「……わ、わたしは」

「あら? なにかしら?」


珍しい、お人形になったコメットが何か自分の意思を伝えようとしている。


「も、もう、必要、ない」

「ああ、またその話? 貴女自身がそう思っても、私はそうはいかないのよ。貴女みたいに馬鹿な人々に世界を任せるわけにはいかないの。それは貴女にも教えたでしょう? 結局、貴女が拾ってきた彼女たちも追いやられて、幽閉された。その後はどうなったか知らないけど、もう生きてるとは思えないわ。だって彼女たちは人だもの。残されたのは、腐った人たちだけ」

「そ、れでも……」

「残念、私は信じられない。だから、私はいままで頑張ってこの国を作った。そして、勇者も呼んだ。必要なのは貴女自身ではなく、貴女のダンジョンマスターとしての技能と、魔術師としての力だけ。この力で、腐っていない人だけを集めて、世界を救うわ」

「……だめ」

「ダメ? おかしいわ。もう貴女は終わっているのよ、コメット。それを利用してあげているのだから、感謝しなさい。全く、生きているのであればタイゾウ殿と子供でも作ればいい駒になりそうだったのに。ま、死人に何を言っても手遅れね。さ、そろそろお仕事にもどりなさい。DPを使って武器の配備、補充をしなさい」

「わかりました」


私がそう命令すると、すぐに無表情になって、部屋を出ていくコメット。


「まったく、私という神が力を貸して失敗した愚か者共が。しかし、コメットは良い方か、コメットが拾ってきた彼女たちは、わざわざダンジョンコアを移植して生きながらえさせて、各国を潰すように精神制御していたのに、全然成功しないとか……。やっぱり、私自ら人を選別しないとね。タイゾウ殿のように。ゴミはいつまでたってもゴミでしかないということね」


本当に役立たずもいいところだ。

400年も世話してやったのに、命令1つもまともに遂行できない。

ああ、ゴミだから仕方ないのか。


「あ、良いことを思いついたわ。次、くちごたえしたら、彼女たちを使ったけど、失敗したって教えてあげましょう。あのお人形の表情がどう変わるか楽しみだわ。いえ、これは各国に進出した後に、本人を見せつけて説明した方がいいかしら? どうせどこかで、自動再生しているだろうし、そこをもう一回殺して見せるとか」


悩むわね。

ま、どのみちダンジョンコアの回収はしないといけないし、彼女たちは殺さないといけない。

まあ、その時に考えるか。







動き出すのは人に任せることをよしとしなくなった神様。

さあ、ユキ達はこの相手にどう戦うのか!!

タイゾウとは!!

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