第285堀:どこかで見たことがある日常
どこかで見たことがある日常
Side:スティーブ
ゴブリン、スティーブこと、おいらの1日は朝7時から始まる。
目覚まし時計が鳴り響き、それに反応して、ベッドから手を伸ばし、止める。
しばし、いやこのまどろみの中の時間を正確には伝えられないが、おいらにとってはしばしの時間、ベッドの中で起きるか、あと少し寝るか葛藤する。
別に、おいらは大将みたいに養う家族もいないし、こういう1人の時間は基本的に自由である。
大将も大変っすよねー。
毎朝6時に起きて嫁さんたちの朝食作りとか、メイドだったキルエ姐さんの話を聞いても正気の沙汰じゃないっすね。
メイドさんたちとかもっと早い時間に起きて仕事してるっすから。
おいらにメイドさんはいらねっす。
自分が寝てるのに、周りがせかせか働いているとか、ゆっくり寝れないっすから。
あ、朝ごはん何かあったかな?
んー、昨日余分に弁当買ってたっけ?
ジョンの奴から、野菜の差し入れもあったような?
そんな、とりとめのないことを考えて、ようやくベッドからもそもそとはい出る。
「……ねむ」
とりあえず、眠気を取るために、顔を洗いに行く。
洗面所に行って、蛇口をひねり、水を出して、それを手にすくって、顔にぶっかける。
それを数度くりかえし、水を止めて、用意していたタオルで顔を拭く。
「うん。……まあ、すっきりしたっす」
顔を拭いたタオルは洗濯機に入れて、リビングに戻る。
そして、ハンガーにかけてある、仕事着に着替える。
この仕事着だけは大将に感謝っすね。
こっちの世界に合わせていたら、もう大変なのなんのって、装飾から勲章、徽章やら邪魔。
大将は仕事着、軍服っすが、これは大将の故郷に合わせて、実用性重視の服になっているっす。
装飾過多などではなく、必要最低限。
その服でも、即座に戦闘装備をするのに何も問題がない。
階級を示すものは襟と肩についているだけだし、勲章などは、式典ぐらいでしかつけなくていい。
だって勲章邪魔だし。
ま、おいらは、立場上魔物軍の大将であり、警察での警備部の魔物部隊長を務めているっす。
あ、無論。人の方はトーリ姐さん、リエル姐さん、カヤ姐さんが握っているっす。向こうが警察のトップっすからね。まあ、業務提携といいましょうか、人手が足らない時の臨時役職名っすね警備部は。
と、そんな関係で、大将ではあるので、多少勲章、徽章をつけていく必要があるっす。
最低限っすね。
「……あ、勲章が付いてない。ああ、洗ったから外したんだった」
今日着る予定の軍服には、その大将につける勲章がなかった。
ま、ただ単に昨日着たのとは別の、予備の軍服なので、ついていないだけ。
「はぁ、めんどい」
何で昨日やってなかったんだろう。
そんなことを思いつつ、机の引き出しを開けて、勲章を取り出し、いそいそとつける。
しかし、つける必要のある勲章、徽章は少ないとはいえ、おいらの勲章入れの引き出しには、ケースに入ったままの勲章が沢山存在している。
「……大将も悪のりが好きなんすから」
いや、別に悪のりというわけでもないっすが、故郷に合わせて、訓練課程をクリアしたということで渡される徽章があるのだ。
で、おいらはその大将が思いついた訓練は全部受けている。
即ち、ほぼ全部の徽章を持っていることになる。
空挺徽章、銃器徽章、あげく魔力によるノーバンジー降下訓練というこの世界でしか実行できない訓練課程を修了し、魔力降下徽章なんていうのもある。
勲章は無論、今までの作戦成功による勲功に対する証明っすね。
前日のグラウンド・ゼロと聖剣使い戦。ま、戦いにはなっていないっすけど、おいらたちはしっかり働いたということで、後日勲章が貰える予定っす。
あと色々細々したことで勲章を貰っているっす。
でも、おいらたちだけじゃなく、セラリア姐さんの直属人の軍部も色々勲章貰っているっす。
クアルさんとかっすね。
おいらたちより活躍したというわけでもないっすけど、新興の国としては、こういう箔がいるって話っす。
まあ、クアルさんに限っては、あのセラリアの姐さんが直属の上司だし、それだけでおいらは勲章ものだと思うっすよ?
まあ、絶対口にはできないっすけど。
あ、この勲章の制作は、もちろん、ウィード鍛冶組合が担っているっす。
ナールジアさんを筆頭に、鍛冶職人連中が、大将から勲章や徽章の内容を聞いてそれに合わせてデザインしているらしいっす。
「さーて、冷蔵庫に何かあったかなー」
そんな勲章の取り付けも終わって、上着は放置し、朝ごはんの確認をするっす。
パンは昨日の朝、食べつくしたし、夜は弁当だった。
「ん。何もないっすね」
昨日は忙しかったから、買い出しに行くの忘れたっす。
壁掛け時計に視線を向ける。
現在の時刻7時17分。
仕事は9時から。
まあ、大将という建前、8時半ぐらいには仕事場にいないといけないっすけどね。
「時間はあるっすね。仕方ない。スーパーラッツにでも行って朝飯を確保するっすか」
食えなくてもいいのだが、急に戦闘へ駆り出されて、次いつ飯が食えるかわからない状況になるから、食えるうちに食っておくのが軍人の基本っす。
ということで、勲章や徽章を付けた上着を着て、玄関へ向かう。
この玄関への廊下を歩くたびに思う。
おいら1人に3LDKは広いと思うっす。
一応、おいらたち魔物もこのウィードでは人権?を与えられているので、普通に家を借りて自炊することができるっす。
あ、無論、人とちゃんとコミュニケーションをとれることが前提っすよ。
言葉が話せないタイプの、動物系はほぼアスリン姫がよく遊んでいる森でのんびり自然の生活しているっす。
森自体は、居住区の階層と一緒に置いてあって、そこで一般人の警備も兼ねているっす。
特に、学校の子供たちの遊び相手っすかね。
あとは、冒険者区での模擬戦相手とか、ダンジョン区の巡回とか、結構動物系の魔物は喋れないけど便利なんす。
で、おいらのように喋れて人の社会で暮らす以上、居住場所がいるのは当然なんすが、おいらの場合は、立場が立場なので、ほかの軍の寮住まいとは違って、ちゃんと居住場所を与えられているわけっす。
無論、ジョンとか、ミノちゃんもっす。
スラきちさんは、自然の中で過ごすのが好きらしく、家は持っていないっす。
主な生息地は学校。
はぁ、正直ご近所付き合いがあるから、おいらとしては寮住まいがよかったんすけどね。
そう思いつつ、玄関を出て、鍵をかけて、マンションを出る。
「おはよう。スティーブさん。お仕事頑張ってな」
「ういっす。おじいさんも気を付けて」
「あら、スティーブちゃん。おはよう」
「おはようっす」
「あ、すてぃーぶしょうぐんだー」
「こら、様をつけないさい!! すみません」
「いえいえ。気にしてないっすよ。坊主もちゃんと学校で勉強するっすよ」
「はーい」
そんな朝の挨拶をしながら、ウィードを歩いていく。
さて、そろそろスーパーラッツが見えてくるはずっす。
このウィードで唯一、朝6時から開店しているお店スーパーラッツ。
朝の集客を見込んで、ラッツの姉さんがつい3か月前ぐらいに居住区にかぎり実施した。
将来的には24時間営業を目指しているとかなんとか。
深夜であることや、警備の観点上、危険が多いと、トーリ姐さんたちとは会議が紛糾している。
因みにおいらは賛成派。
深夜に仕事がもつれるのは多々あるし、大将たちと違ってDPでポンと出せないから、いつでも買える場所があるのはありがたいっす。
まあ、深夜営業の警備となると、どう考えてもおいらたち魔物から派遣する必要があるっすよね。
人よりも、夜目が効くのは沢山いるし。
「お、開いてる、開いてる」
目の前に広がるは、ウィード最大の商店、スーパーラッツ。
品揃えは豊富、接客も丁寧、頼れる主婦の味方。
勿論、1人暮らしの男どもにも、弁当という飯を手軽に買える便利な場所。
人はそれなり。
まあ、夕方の混み具合に比べれば少ない。
でも、ラッツ姐さんの読みどおり、人は来ているから、朝の開店を早めたのは正解だとおもうっす。
さっそく、スーパーラッツに入って、弁当コーナーへと足を向ける。
朝飯はおにぎりかサンドイッチ系にして、昼は弁当にして、今日の分の飯は買ってしまおう。
どうせ、執務室には、お茶しか入っていないし、買い置きしていた弁当を持ってきて、冷やしているのはいつものこと。
「うし、あとは飲み物っすね」
朝ご飯と昼ご飯を選んだあとは飲み物。
独り暮らしにとって、わざわざ飲み物を用意していく気力なんてないっす。
養う家族なんていないっすから、財布には余裕があるっすし、飲料は買っていくのがおいらの基本っす。
無論、節約というか、すぐなくなるのもあれなんで、リットルのお茶とかがメインすね。
それを買って数日で飲みつくす。
まあ、ペットボトルに飲み物を入れて持っていくこともたまーにはあるっす。
「おや。スティーブじゃないですか」
「はい?」
飲料コーナーで選んでいると、不意にそんな声をかけられる。
そして、その声の方向に顔を向ければ、スーパーラッツのオーナーにして、商業代表で、大将の嫁さん、そして一児の母という肩書を持つ、ラッツの姐さんが立っていた。
「なんでこんな朝早くにいるっすか?」
そう、この時間は大将たちとのんびり朝ごはんを食べている頃だ。
「ああ、ちょっと新商品を出そうと思っていまして、私はさっさと朝ごはんを済ませてこっちにきたんですよ。無論、お兄さんとはラブラブですよ。シャンスにもちゃんと行ってきますをしてきました」
「……左様っすか」
ラッツ姐さんは計算とか商売には強いっすけど、大将にベタ惚れなんすよね。
子供ができてもそれは変わらず。
いや、シャンスちゃんは可愛いと思うっすよ?
でも、ラッツ姐さんの会話を聞くと、おいら砂糖生産機になれそうな気がするっす。
……ん? なんか変な事いってなかったすか?
「新商品?」
「はい。新商品です!!」
そう言って抱えていた箱を下ろして、その中身を取り出し、おいらの目の前に突き出す。
ペットボトルこそ、DPでの取り寄せだが、パッケージはどことなくぎこちない。
「これって、もしかして、自分たちで作ったっすか?」
「その通り!! お兄さんの故郷の技術を借りはしましたが、ペットボトル以外は自分たちで生産した、完全新作商品です!!」
「おおー」
それはすごい。
このぎこちない紙のパッケージもウィードの誰かがパソコンでデザインしたということだろう。
しかし、おいらの洞察力は留まることを知らない。
完全の新商品。それはいい、でも中身が透明の緑だ。
おいらの危険センサーがビンビン鳴り響いているっす!!
「……その中身、なに味なんすか?」
恐る恐るそれを聞いてみる。
「えーっと、これは緑色ですから、キュウリ味ですね。しかも炭酸ですよ?」
「……そ、そうっすか」
おいらはそう答えるしかできなかった。
どう考えても地雷商品である。
キュウリ味の炭酸飲料。
それは、黙示録。
「ほら、レモンを少し混ぜただけで、お水も様変わりするじゃないですか。それを参考に、ジョンが作っている野菜をもらい受けて、色々作ったんですよ。ヘルシー飲料ですね」
あんのベジタリアンが原因か!!
これはなんとかしないといけない。
こんな地雷商品を並べては、スーパーラッツの名声は地に落ちるっす。
「いやー、一昨日から発売したんですが、人気がすごくてですね。生産が追い付かないんですよ。とりあえず、私が自ら生産できた分を運んでいるわけです」
「はい?」
今なんと?
売れている?
聞き間違いだな、うん。
「いま、売れているって……」
「ええ。売れていますよ。まあ、物珍しさもあるでしょうが、普通に中身は野菜ですからね、しかも、野菜の種類に分けていますから、健康や美容を気にする女性に特に人気ですね」
「ああ、なるほどっすね」
こっちの場合は味を似せているのではなく、そのまま本物の果汁を使っているから、そういう面では本物でそっち方面に人気があるということっすね。
恐るべし、女性。
「ということで、買っていきませんか? すぐなくなっちゃいますから」
「え? ああ、そう言うことなら」
適当に、ラッツの姐さんに渡されたキュウリ味はあのベジタリアンにでもくれてやって、トマトや、あ、普通にレモン水も売り出したんすね。じゃ、おいらはこれだわ。
最後に、リットルのお茶を手に取って、清算をして、執務室へ向かう。
時刻は8時20分というところ。
もうすぐ、幹部は集まるからさっさと冷蔵庫に入れるっすかね。
朝飯は幹部と話しながらっすね。
そうやって、冷蔵庫に物を詰め込んでいると執務室に幹部が入ってくる。
「うーいす」
そんなことをいいながら入ってきたのは、スラきちさん。
もう慣れたっすけど、器用にその軟体の体使ってドア開けるっすよね。
あと、毎度どこからその声出てるのかわかんねーっす。
「いやー、朝の畑仕事の後のシャワーは気持ちいいわ」
次にタオルを首にかけたベジタリアン。
こいつのことはどうでもいいや。
ベジタリアンだけで全て通じるオークの風上にもおけないやつっす。
「今日も1日がんばるべ」
最後にブラッドミノタウロスのミノちゃん。
クロちゃんたちと同様、体格操作で人大のサイズになっている。
本来は3mから5mぐらいあるから、執務室に入らないっす。
エナーリアとの交渉の際はわざとあの元のサイズのままで交渉してるっすけどね。
戦略というやつっす。
「みんなそろったっすね。じゃ、朝会でも始めますか」
朝会というのは、昨日の報告や、今日1日の予定を伝えるのだ。
お互いが幹部なので、お互いの動きは事前に知っておくのは色々な意味で大事。
「俺は昨日と同じで学校でガキの世話だな」
「こっちは、ミノちゃんの補佐だ」
「おらはエナーリアでの友好関係を築くってやつだべ」
「いつもの通りっすね。ミノちゃん、ジョンに対しての連絡は部下の方を経由すること。大事な話をしていたり、こっちの能力や繋がりがばれる可能性があるっす」
「「「了解」」」
そう返事があったあと、視線がおいらに集まる。
「で、スティーブの方は? いつものザーギスと本漁りか?」
「いんや、残念ながらおいらは、今日から別任務っすよ」
「別任務?」
ジョンが不思議そうに首を傾げる。
「ああ、あのアルフィンとかいう聖剣使いの世話だべな」
「……そう言う事っす」
ミノちゃんの答えに頷きつつ、サンドイッチを食べるおいら。
「そういえば、スティーブにあの聖剣使いはなついているんだったか。アスリン姫やフィーリア姫も一緒だしまあいいんじゃね?」
「そこら辺は唯一の救いっすね。おいらに女性の世話とか勘弁っす」
「お前な……、それでも彼女が欲しいとか言ってる男のセリフか?」
「なら、お前が代わるっす。1歩踏み外せばおかしくなる可能性がある女性の世話」
「すまん。勘弁願うわ」
「見た目は美人さんだべなんだがな」
「美人さんだから、なおさらってことだろ」
「「「ああ」」」
スラきちさんの言葉に皆納得する。
アルビノと、その容姿も相まって人に追い出されたって口っすかね。
「アスリン嬢ちゃんたちじゃなくて、スティーブだったんだから、相当だろうよ。大将の判断にも納得だ。ま、フォローはしてやるから何かあったら言ってくれ」
「だな。俺も流石に今回はチャカせねえわ。頑張れスティーブ」
「こういうことは根気よく行くしかないべな。と、そう言えば、あんちゃんたちはどう動くべ?」
「ああ、1日ずれたっすけど、予定通りアグウスト国へ今日行くみたいっすよ。聖剣使いたち云々はとりあえず、落ち着かせることっすね」
「なるほどね。まあ、最初に捕まえた2人と最後の1人以外は、敵意丸出しだからな」
「最初の2人の捕縛方法は聞いて、ひどいと思ったが、こうなると、大将のやり方の方がよかったかもな」
「400年の恨みは深いってことだべ。それを霧散させたあんちゃんが凄いってことにしておくべ」
ミノちゃんの言う通り、大将は別格と考えるべきっすね。
さて、時間も9時10分を過ぎようとしている。
もう、各部署は仕事を始めている頃だ。
「さて、そろそろおいらたちも解散してお仕事始めますかね。……っと忘れてた」
冷蔵庫に歩いて行って、ラッツ姐さんからおすすめされた、あのヘルシー飲料を3人の前に置く。
「なんだこれ?」
ジョンは不思議そうにペットボトルを持って眺める。
無論、キュウリ味っす。
「ああ、これってウィードで噂になっているヘルシー飲料だろ? ラッツの姉ちゃんがウィードで独自開発して、生産ラインも作ってるって言ってたぞ」
「聞いたことがあるべ。というか、なんでジョンが知らねえべ。野菜の提供はジョンからって聞いてるべ」
「そういえば、そんなこと言われたような。ま、野菜が有効利用されているようで何よりだわ。で、全員種類が違うようだけど。スティーブは何が何だかわかるのか?」
「ジョンのがキュウリ味、スラきちさんのがトマト味、ミノちゃんのがニンジン味っすね」
「マジか!! キュウリ飲料!! これは俺が飲み尽くす!! 味見は済まんが、今回は我慢してくれ」
「「「いらねーよ」」」
うん。
おいらたちの心は1つになったっす。
さて、本当にこれから1日、お仕事頑張りますかね。
「あ、スティーブだ。おはよー」
「スティーブ。おはようなのです」
「女性を待たせるなんて駄目ね。おはよう。スティーブ」
「おはようございます。スティーブさん」
そう言って学校の前で待っているのは、ちびっこ4人組。
まあ、身長はおいらが少し大きいぐらいっすけど。
……ゴブリンだから小さいのは仕方ないっす。
「おはようっす。で、アルフィンさんは?」
そう、目的のアルフィンさんが見当たらない。
現在、アルフィンさんは指定保護下にあるので、ウィードの一般常識を与えるため、学校の寮に居住を与えられている。
因みに、聖剣使いの中で一番厚遇である。
最初に大将が全裸でファンファンを踊らせた、スィーアとキシュアですら指定保護下になく、セラリアの姐さんとピースが指導をしているところっす。
もっとも、ウィードの人々を傷つけるようなことはなさそうだから、ってのが一番な理由っすけど。
ほかの聖剣使いは敵意丸出しで、何するからわからないから、独房で頭を冷やしてもらっているっす。
そう言った意味で、一番最初のとっかかりになりそうなアルフィンとの友好関係を築くのに慎重になるのは当然っすね。
「アルフィンお姉ちゃんなら。いま、皆と遊んでるよ」
おいらがそんなことを考えていると、アスリン姫はある方向を指さす。
そこには、学校の寮で暮らしている幼い孤児たちと一緒に遊んでいるアルフィンさんの姿があった。
「たのしそうっすね」
「昨日から、アルフィン姉様は人気なのです!!」
「ええ、白くて綺麗だって言われて、顔をほころばせていたわ」
「ユキさんから聞いたのですが、あれは呪いではなくアルビノという病気の一種なのですね。……私ですらそんな考えがよぎったのです。アルフィンさんはきっと、つらい日々を送っていたのでしょう」
「でも、ここの皆は白いとかでいじめないもん!!」
「そうなのです。仲良しなのです!!」
「ここのチョイスはある意味大正解かもね。アルフィンの小さい頃の自分と変わりない子たちの集まりなのだから」
「そうですね。彼女がこれから心安らかでいられるよう。私たちが協力しましょう。もちろん、スティーブがカギです」
「おいらっすか?」
「そうよ。彼女が一番仲良くしていたのは、あなたと同じ喋りかたをするゴブリンさんだった。だから、ゴブリンのスティーブに一番心を許している。ユキほどとはいわないけど、男を見せなさい」
そら、大将と一緒にしないでくださいっす。
「ああ、それにかこつけて、アルフィンを犯そうとしたら、ちょん切るわよ?」
「ちょん切るのです!!」
「無理やりはだめだよ?」
「去勢もいたしかないですね」
「しねーっすよ!!」
そんな会話をしていると、アルフィンさんはこちらに気が付いたようで、子供たちに別れと再会の言葉を交わしながら走り寄ってくる。
「ごめんなさい。待たせちゃったかな?」
「大丈夫だよ。グラドも楽しかった?」
『うん。一杯友達ができたよ』
「それは良かったのです」
クロちゃんたちに、小さくなる方法を教えてもらって、1メートルほどになり一緒にグラドが走ってくるのはいい。どう見てもただのでかいトカゲだ。
しかし、和気あいあいと話す、アルフィンさんとアスリン様たちだが、おいらは無言でただ1点、アルフィンさんの胸を見つめている。
巨乳と言っていい形のいい胸を見ているわけではない。
腕と胸の間にいる、見知った半透明の生物を見ていた。
「なにやってるっすか?」
「……しらん。子供たちと遊んでいたら回収された」
はぁ、まあいいか。
被害はこれで分散されそうだ。
「あ、ゴブリンさん……じゃなくてスティーブ。これ見て、スライムって言う魔物らしいの!! 私もあまり見たことがなかったんだけど、ウィードでは子守りもするのね。すごいわ!! あと、ぷにぷにで気持ちいいの」
「そうっすか。それは良かった。そのスライムも喜んでいるようだし、一緒にウィード見学に連れていきましょう」
「いいの!?」
「ええ。問題ないっす」
ふふ、スラきちさん。おいらと一緒に苦しもうではないか。
助けてくれるって約束っすよね?
「ちょっ、おま!?」
さ、どこからウィードを見せますかねー。
はい、スティーブの回でしたが、誰でも記憶にあるのでは?
朝は眠い、出勤途中でご飯を買う、変な飲み物を買ってみる。
知り合いの人の面倒を見る。なんてのはよくあることでしょう。
そして、ようやくクリーナの国へ。
なにも問題なく、話し合いは終わるのでしょうか!!
あと、外伝ということで「俺たちは自由にやる」をのせていましたが、あれをプロローグに、単独で執筆を開始。
あの4人が暴れるお話しを書いております。
いつできるかなんて期待するなよ?
では、また次回。




