第284堀:初心を思い出す
初心を思い出す
Side:ユキ
さて、結論から先に告げよう。
■最後の聖剣使いに関する報告書
最後の聖剣使いアルフィンと、配下の魔物グラウンド・ゼロ・ドラゴンことグラドはダンジョンの傘下に入った。
アスリンとフィーリアの後を追った、ラビリスとシェーラが普通に話し合って、ラビリスを今代のダンジョンマスターと知り、その思想を話して、ウィードを見せたらすぐに指定保護、及びグラドは自らの意思でダンジョンの配下となった。
ウィードの中を見せて回るのは危険だという話もあったが、こういう場合のスキル魔力封殺通路を作っていたので、今回はそこを利用させてもらった。
因みに、これはデリーユが攻めてきた後に用意した場所である。
勘違いによる敵意の場合は、ウィードを見せれば落ち着くのではないか? という、勘違いを起こして攻めてきたデリーユ本人からの意見である。
無論、一気に鎮圧できるように、最高戦力のスティーブ……はどうでもいいとして、ジョンやブリットが案内をしている。
いや、スティーブのおかげという一面も強かったりするが、そこの報告は後に記す。
さて、これからは、最初から整理をして記載していこう。
まず、ことの起こりは、1人を残して聖剣使いを捕縛されたことによる、最後の聖剣使いアルフィンが俺たちを殲滅するために、ランサー魔術学府とアグウスト国の間で待ち伏せをしていたのが始まりである。
当時、俺たちは、決闘祭りを挟んで、聖剣使いの動向や各国での活動がしやすくなるための作戦を練っていた。
俺たちダンジョン組の見解では、最後の1人の聖剣使いの行動は凡そ三種類に分かれると意見が出ていた。
・俺たちとの勝負を避けて他国を襲う
・勝てないと感じて真っ先に身を隠す
・学府を襲撃して一気に俺たちもろとも叩く
だが、この内容にリエルが一石を投じた。
どうせぶつかることになるのだから、一番厄介な相手を最大戦力で叩き潰す。
・俺たちを邪魔の入らない場所で不意打ちして殲滅
この内容は、俺たち自身の危険度ではトップクラスになるので、即座に竜騎士アマンダとワイバーンが通る航路の確認、索敵を急がせた。
翌朝、午前5時頃、聖剣使いを確認。
そして、敵の最大戦力と思わしき、巨大な魔物を確認。
即時、子供たち以外を叩き起こして、緊急会議に入った。
まず、聖剣使いの呼び出した魔物はこちらも把握していない、最上級の魔物と認定。
幼体とおもわれる魔物から成体の名前を導き出し、グラウンド・ゼロ・ドラゴンと仮定。以下、グラウンド・ゼロと呼称。
全高30m、全幅120mというどこかの怪獣王に匹敵するサイズである。
幼体と言われる時点で熱線を吐くのが確認されているので、ウィードからは現代兵器運用部隊を招集、武装の点検と出撃用意をさせていた。
このグラウンド・ゼロ相手に剣と魔法では歯が立たないと悟った故である。
この時点でまず、話し合うというのは却下された。
理由は以下の通りである。
・傭兵団での交渉。
俺たちの顔は全員割れている可能性があるので交渉にならない可能性があり、その場合先手を打たれて大被害になる可能性がある。
・別の使者を立てればいいのではないか?
この意見も、俺たちの仲間だというのがバレバレなので敵が攻撃に移る可能性が高いので却下。聖剣使いの存在を知って敵対しているのは俺たちのみ、つまり交渉したいのは俺たちしかいないということ。
・ほかの聖剣使いを人質にとっては?
敵が人質で止まればいいが、止まらない場合は人質もろともやられる可能性がある。そもそも、人質を取る時点で敵のこちらに対する感情は最低になるので、降伏してもどこかで致命的なことになりかねないので却下。
そう、よくよく考えれば、最初の時点で交渉、つまり話し合いを持ち込むことはできなかったのだ。
こっちが不利すぎる。
よって、相手の能力を測ると共に、落とし穴に嵌めて、行動を制限し、あわよくば話し合いに持ちこもうという作戦方針に決まった。
ま、交渉の余地があるだけ、怪獣王よりはマシだとタイキ君と話した気がする。怪獣王は善や悪を超越した自然現象そのものみたいなもんだからな。
で、この相手の能力把握も目視で行うために、スティーブ以下精鋭のゴブリン部隊が現地のゴブリンを模して偵察することになった。無論、腰ミノである。
ダンジョン内に入るのだから、鑑定を使えばいいという意見もあったが、相手が万が一鑑定を感知した場合、敵対行動ととられて暴れられる可能性があるので、目視による確認が安全と判断、スティーブたちによる目視偵察が実行された。
当初の予定通り、地底湖の崩落を模した落とし穴作戦は成功。
その後、観察を続けていたが、イレギュラーが起きる。
アスリン、フィーリアの作戦地点の侵入。
即座に、スティーブをアスリンたちの制止に向かわせるが、説得できず、というか本人たちはグラウンド・ゼロから救援要請のために赴いたという。
なので、危険は承知だが、相手の行動は封じているので交渉への作戦にシフトさせた。
運が良かったのか、聖剣使いはアスリンたち子供たちのことは知らない様子で、同じテイマー仲間と思い、快く治療を受けてくれ、スティーブに泣きつくという事態になぜかなり、ラビリスとシェーラが合流。
その後、ウィードを訪問して、ダンジョンへの帰属を決めてくれた。
因みに、聖剣使いを捕らえていることは未だ黙っている。
アルフィン自身、傭兵団とダンジョンマスターが同じ組織であることを知らないためだ。
聖剣使い云々の話は、彼女が落ち着いたときにしようと思っている。
さて、今の議論は、アスリンとフィーリアの作戦地点侵入問題になる。
普通の作戦地点の侵入は誰であっても処罰の対象なのだが、今回の作戦は秘密裏、ダンジョンの本メンバーしか知らないうえ、作戦地点の完全封鎖も行われていない。
無論、アスリンとフィーリアも本メンバーなので、侵入していれば処罰の対象とするべきであるが、今回は事情がちょっと違う。
本人たちは寝ていたので、俺は起こさず、書置きを残していった。
無論、家に残っているキルエや、街で諜報活動をしている霧華にもその旨を伝えている。
だが、すれ違いは起きる時には起こってしまうもので、アスリンたちは寝坊したと思い、慌てて部屋を出て、その時にテーブルから書置きが落下。俺が文鎮でも置いておけばよかったのだが。
そのせいで、アスリンたちは俺たちを追いかけるという、普通の目的の元、キルエから朝食を貰って食べたあと「俺たちの所へ向かう」と言って調理室を飛び出る。
キルエは書置きを読んでいるものと思っているので、学府に行かず、そのまま会議室に行くと思っていた。
実際は、当初の予定通りなら、学府に集合して旅立つはずだったので、アスリンたちはドッペルで学府へと赴く。
途中でアマンダと出会い「会議中」との話を聞いて、邪魔する気はなかったので、そのまま学府街の散策にでる。
宿屋のおっちゃんから、から揚げをあげたという話もあるから間違いないだろう。
その後、霧華と遭遇したが「時間まで暇をつぶしている」と言われて、霧華も街に留まっているものと判断した。
ここまではよかった。ただのすれ違いですむ。
しかし、これからが問題になる。
落とし穴に嵌った、グラウンド・ゼロからの特定周波数による救援要請に応じて、アスリンとフィーリアが作戦地点への移動を開始してしまった。
途中で制止をかけてきたスティーブを引っ張っていくおまけつきで。
結果としては、素晴らしい功績ではあるが、作戦を乱したこと、スティーブの制止を振り切ったというのは処罰しなければいけない。
無論、すれ違いを起こした原因を作った俺も、今後のために対策を立てる必要がある。
「ふう」
報告書を打っていた手が止まる。
とりあえず、一息入れるために、冷めきったコーヒーに手を伸ばし、口に含む。
……内容はぶっ飛んではいるが、やってることはただの報告書作りだよな。
おれ、異世界に来て何やってるんだろ。
……毎回同じようなことを言ってる気もする。
パソコンから横に視線を移すと、スティーブたちや、エリス、ラッツからの報告書や今回にかかった経費の内容などなど。
うん。本当にかわらねえ。
いや、下っ端だった向こうの時より、仕事が増してる気がするわ。
「あなたー、お邪魔するわよ。って、なにしてるの?」
そう言って、俺の仕事場に入ってきたのは、ウィードの女王様であり、俺の嫁さんであるセラリアである。
「なにって、書類の山に絶望して、休憩しているところ」
「そう。休憩ついでに、私と寝る?」
「それはしない。疲れるだけだよ。そんな気があるなら、この4人相手に既にしてるわ」
「ユキさんはお仕事モードの時はつれないですよねー」
「まあ、正しい姿勢ではあるのですが……」
「ん、正しくはあるが不満。休憩用のベッドが無駄になる」
「ですわね。ユキ様は無理などなさらず、私たちと一緒に休んでもいいのですよ?」
護衛4人がそう声を漏らすが、一緒に休めば仕事がたまる一方だ。
だれがそんな泥沼な状況にするか。
いくら嫁さんたちが魅力的だとはいえ、この状況ではそう言う気もおきん。
普通に寝ても、気が付けば剥かれているし……。
「ふふっ。お仕事を頑張っている旦那を邪魔したりはしないわ」
「で、邪魔しにきたんじゃないなら何かようか?」
「ええ、今回の報告書の確認ね。ちょっと把握したい内容があったのよ」
「そっちにも、報告書は届いてるだろう?」
「あなたの報告書を確認したいのよ。総まとめの報告書はあなたでしょう?」
「ああ、そう言うことか。でも、言っての通り途中だぞ」
「いいのよ。よっと」
そう言ってセラリアは俺の膝にすわる。
直ぐに俺の両腕を取ってお腹に回し、落ちないように抱っこしろ、と遠回しに意思表示をしている。
「うん。いいすわり心地ね」
「「「いいなぁ……」」」
護衛4人がなぜかそんな声をあげる。
「皆も、後でやってもらうといいわ。癒されるわよ」
「……俺は仕事が捗らんけどな」
セラリアは俺よりも小さいから、パソコンの画面がみえるが、ジェシカとかリーア、ラッツなどは身長が高いので、俺に座られると前方が見えない。
というか、それ以前にキーボードに手を置くだけで一苦労だ。
「えーっと、これね。ふむふむ……」
セラリアは俺の苦言を無視して、そのまま作成途中の報告書を読み始める。
たく、おっぱい揉むぞ!! といいたいが、この場合、喜んで受け入れられてしまい、まったく俺の意図した方向にならないので意味がない。
セクハラに耐性MAXの相手を退ける手段って何があるのかね?
……いや、これって俺がある意味セクハラうけているのか?
でも、夫婦だし、これってセクハラって言うのか?
「なるほどね。ねえ、あなた」
「うおっ」
そのままセラリアはこちらに振り返る。
顔が近い。
「あら、可愛い奥さんの顔を見て驚くなんてつれないわね」
「顔が近いんだよ。適正距離まで離れろ」
「それもそうね」
セラリアも話しにくいとは思っていたのか、あっさり俺から降りて、予備の椅子を引っ張りだして、俺の前に持ってきて座る。
「さて、あなたの報告書は読ませてもらったけど、アスリンとフィーリアのことで処罰を考えているみたいね?」
「そりゃな。お咎め無しってわけにもいかないだろう」
全体の規律というか、こういうことは身内だからこそ厳しくしないと周りに示しが付かない。
でも、セラリアは意外な言葉を口にする。
「お咎め無しでいいのよ」
「え?」
「あなたは考えすぎなのよ。ま、勝手に外に出たことを怒るぐらいね」
「それだと示しがな……」
「示しもなにも、今回は極秘裏の作戦。ウィードへの迷惑は全くなし。費用は私たちの私兵と物資、私財からの捻出。魔力枯渇の原因を探っているついでに、よその大量虐殺を止めただけ。しかも、アスリンとフィーリアが偶然とはいえ、作戦を知らず、血の流れない手段で掴み取った。これのどこに処罰することがあるのかしら?」
ああ、そう言うことか。
これは俺たちが勝手に、こっそりやっているから、示す相手もくそもないということか。
全員が、魔力枯渇の原因を探るということを理解して協力してくれているから、特に被害がないのなら、口頭注意で十分済む。
「……あなたは良くも悪くも今まで結果を出しすぎなのよ。だから、良い結果が出れば褒めて報奨を渡すことをためらわなかったわ。でも、わかりやすい失敗はこれが初めて。身内から引っ掻き回されるとは思わなかったでしょう? だから、あの2人を守るためにもちゃんと叱ろうとしていた。違うかしら?」
その通り。
あの2人はもう俺の大事な妹たちだ。
だから、こんなことが二度と無いようにって思ったんだよな。
ある意味、おれもこっちに来てから政治関連に突っ込んでいるから、そこら辺の思考が硬くなっていたということか。
「……はぁ、必要なかったか」
「ええ。ただ口頭で、勝手に外に出ちゃいけません。これだけでいいわね。私たちは軍隊として国の命令で動いているわけじゃない。私たち自身で魔力枯渇の原因を探っているだけ。ただ規模が大きいから、管理などが軍みたいになっているだけね。ま、ルナから2人を罰しなさいとか言われると、それは困るけど、言われてないのよね?」
「全然、あの駄目神さまはいつもの通り、あの2人を可愛がっているだけだよ。しかし、そっか。俺はそう言うしがらみが面倒だから極秘裏にやっているんだった」
「そうそう。ある程度目途が立ったらほかに丸投げして、私たちとのんびり暮らすのでしょう? まあ、今回は失敗すれば私たちのドッペルはともかく、あっちの新大陸の人たちが死ぬかもしれなかったから、重く考えたのでしょうけど。そもそも、原因といえば自業自得なのよね」
「なんか、ひどい言いようだが。それは、俺のセリフだな」
「ええ。いつものあなたなら、こう割り切って色々試すのよ。失敗しても全員助ければいいって感じでね」
いつもの俺ならそうだな。
ああ、今回は変に思考が固まってたか。
ある意味、タイキ君との怪獣王の話しすぎもいけなかったんだろうな。
あれは、災害ということで話し合い皆無って認識が強かったしな。
「いざとなったら、学府ごとダンジョンに引きずり込めばいいんだし。まったく、そんなことを考える余裕もなかったか」
「そういうこと。まあ、その街丸ごと引きずり込んで守るという発想はなかったわ。相変わらず、明後日の方向に考え付くわね」
どっかの新世紀では都市をそうやって格納して被害を防ぐ方法があるんだよ。
ああ、そういう発想を持ってこれなかった時点で、結構俺も疲れてたんだな。
「ま、結局人間、自分を中心に考えるんだ。一々周りの視線や評価を気にしてもしかたがないよな」
そう、俺はこっちに来てからそうやってきた。
自分がいかに楽をして、魔力枯渇を解決するか。
相手の思惑を全て蹴っ飛ばしてきたのだ。
「いつものあなたに戻ってきたわね。為政者みたいに振る舞うあなたも素敵だけど、私にとっては今のあなたが一番よ」
「セラリア……」
「あなたが、凝り固まっていた私を、小さい世界から引っ張り上げてくれた。そして、引っ張り上げられて見せられた世界はとても大きかったわ。果てなんて全く見えない。身分も権力も、財力も通じない、ただの世界が広がっていた。その果てのない世界を、のんびりとあなたはいつも歩いているの。お腹がすいたら、周りから食料を見つけてきては、食べるだけじゃなくて育てて、果てには荒野に街まで作る」
「……それ無茶苦茶じゃね?」
「いつも、あなたがしていることでしょう?」
はぁ、セラリアに負けた。
いい嫁さんだよ。
……もう書類仕事がめんどうくさくなったな。
とりあえず、報告書の最後にこう書き込む。
終わりよければすべてよし。
セラリアはその一文を見て、いい笑顔になって、腕を抱きこんでくる。
反省点はあるが、不幸な結果にならなかったのだ。まずはこれを祝おう。
「さ、もうお仕事はおわりでしょう」
「そうだな。みんな、今から夕食の準備だ」
「「「はい」」」
護衛4人もいい笑顔で返事をして、そのまま部屋を後にする。
ついでに、片腕で持ち上げられそうな華奢なクリーナを抱き込む。
「きゃ」
「あ、いーなー」
「ユキ、次は私に」
「私もお願いしますわ」
「ふふっ、そうね。私もお願いするわ」
ワイワイやりながら、ほかの嫁さんたちにも連絡を取る。
全員が即座に返事をして、家に戻ると言っている。
これはタイキ君、アイリさん、ポープリやララも呼ぶべきだな。
楽しいことは皆で行うべきだ。
それはそうと、どんな料理を作ろうか?
まったく、親友たちとも、馬鹿やってはこんな感じだっけ?
Side:スティーブ
「はぁ」
おいらはため息をついて、廊下を歩いているっす。
正確にいうならば、できた報告書を大将に渡すために廊下を歩いているっす。
ため息の原因はこの報告書。
内容は、聖剣使いアルフィンについて。
なぜか、あのアルフィンさんは、最初からおいらに対して好感度が高いっす。
まあ、そのおかげで、すんなりウィードの案内を済ませて、指定保護も受け入れてくれたので、ある意味、今までの聖剣使いの中でも一番穏便にことが片付いたというべきっす。
しかし、おいらにとっては全然喜べないっす。
身に覚えのないないことで、泣かれたり、喜ばれたりするから、どうしていいかわからないっす。
「多分。アルフィンさんの話から推察するに、昔、仲がよかったゴブリンと重ねてみているんすよね」
確かに、おいらはモテたいと思ったっす。
可愛い、美人の嫁さんが欲しいと思ったっす。
でも、おいら越しに、ほかの人に見られても全然嬉しくないっす。
「……これを報告書に出しても結果は分かりきっているっすからね」
当然、アルフィンさんを傍に置いて、落ち着かせることになるっす。
こういう、ある種の精神障害は、いきなり真実を突きつけても、いい結果になるのは稀っす。
ぶっ壊れるか、拒絶して依存が深まるか。
徐々に、認識させるのが大事っす。
ということで、この報告書を出すと、アルフィンさんとの嬉し恥ずかしの共同生活になるっすが、無論、禁欲。
手を出して妊娠なんてさせれば、おいらはどう考えてもセラリア姐さんを筆頭に縛り首の極刑っす。
そんな気なんて更々ないっすが。
でもおいらも男っすからね。そこら辺のことを大将と相談してみるっす。よく、姐さんたちに喰われているみたいだし。
う、羨ましくなんてないっすよ。
と、色々考えている内に大将の執務室につく。
「大将はいりますよー」
適度にノックをして中に入る。
どうせ、大将も今回の顛末の報告書作りで忙しいから、まともな返事は帰ってこないと思ってたっす。
で、中に入れば誰もいない。
「……はい? もう定時だっけ?」
時計を見るが、まだ昼休みが終わって一時間と言うところ。
何かあったのかと首を傾げていると、後ろから声がかかる。
「なにやってんだ?」
「ん? ああ、ジョンっすか。おいらは普通に報告書の提出っすよ。で、そっちこそ何で野菜をたっぷりもっているっすか?」
「聞いてないのか? 今日は仕事取りやめで、今から宴会だぞ? いやー、よかったよな。アスリン姫やフィーリア姫へのお咎め無しだってよ。この作戦の当初から大将、変にピリピリしてから心配だったけど、杞憂だったみたいだな。ということで、その報告書はまた後日にするんだな」
「はあ、なんというか。おいらの苦労が空振りするのは定番なんすね」
「それはいつものことだろう。ほれ、スティーブも野菜持つの手伝え」
ジョンはそう言って、野菜のかごを渡してくる。
咄嗟に受け取るが……。
「おっも!?」
想像以上の重さに驚いた。
なに?
野菜ってこんなに重かったっけ?
そう思って、かごの野菜を見れば、そこにはキュウリの山が広がっていた。
「まーた、キュウリっすか!! こんな量、誰が食うか!!」
「食うんだよ、俺が!!」
「お前かよ!! ならお前が持てよ!!」
「いや、もちろん、スティーブたちの分もある!!」
「おいらたちは河童じゃないっすからね!!」
あー、なんかいつものパターンすね。
ま、ジョンの言う通り、大将がもとに戻ったならいいっすよ。
おいらの問題にも、面白可笑しく、問題がないように解決策をだしてくれるはずっす。
はい。
処罰はなしです。
口頭で危ないことしちゃだめでしょ。で終わりです。
ま、話の中でもありましたが、示しもなにも、身内で動いているだけですし、弁解するべき相手もいません。
罰を与えなくても、2人はちゃんと反省しますし、必要などないのです。
そもそも、ぶっちゃげ、魔力枯渇調査のついでに止めてるだけなんで、文句も言われないです。
だれも、ユキ達が聖剣使いたちと戦っているなんてしらないですしおすしー。
というわけで、ウィードの大陸と同じように自由にやればいいのですよ。
別に、生贄をだせーとか言ってるわけでもないですし。
ま、今回は被害が大きくなりそうだったから、ユキが硬くなったということですね。
主に、怪獣王を意識していた分、話し合いとか無理ーと思っていた部分が大きいです。
現代知識もあだになるという話ですね。
何事も柔軟に。
というわけで、いつもユキを見ていたセラリアが今回のことを話して旦那をフォローする。
仲のいいことで。
ああ、スティーブの話は次回。
さあ、極刑は免れるのか!!




