第259堀:動き出す欠片たち
さて、外伝は挟みましたが、アレはほぼ全く関係ないので、こっちはこっちで普通に進みます。
外伝を読んだ人はわかると思いますが、アレらは必勝ダンジョンに関わってはいけないと分かると思います。
あくまで、この舞台はユキが主人公なのです。
アレらが来れば喰われるからな。
さあ、前置きはここまでで、こっから加速するぞ。
動き出す欠片たち
Side:ニーナ 聖剣使い
深夜。
誰もいない廊下を1人で歩く。
あの場所と違って、窓からは月が覗き、廊下をはかなく照らし道を教えてくれる。
もう、この場所に訪れるのは何度目だろうか?
此度訪れるのは何年ぶりだろうか?
そう、ここは彼女が作った孤児院だった。
気が付けば、大陸随一の魔術学府など呼ばれていたが……。
すでに、増改築を何度も行い、孤児院だったころの面影はまるでない。
いや、既に孤児院だった頃の大きさを10倍以上、上回っているから別物というべきなのだろう。
でも、ここの学府は所々あの日の孤児院を思わせるつくりをしている。
ああ、歩くたびに思い出す。
彼女は頻繁にここを訪れては、引き取った子供たちが不自由をしていないか確認していた。
彼女自身になにかあれば、それこそ、孤児院存続の危機なのに、それがわかっていても頻繁に訪れていた。
私たちも慌てて、彼女の護衛について、孤児院の子供たちと遊んだのだ。
孤児院を任せたシスターも私たちの素性を知ろうともせず、ただただ、よき友人としてやってきた。
「貴女様でしたか……」
私が廊下の窓越しに月を眺めていると、そんな声をかけられる。
特に殺気も感じないので、ゆっくり其方を向くと、副学長のララが佇んでいる。
「やあ、お久しぶり」
「ええ、ニーナ様も息災で何よりです」
彼女は私たち、聖剣使いのことを今でも知っている数少ない人だ。
エルフなのが幸いだね。
私たちと同じ不老とまではいかないけど、彼女も少しずつしか老いない。
同じ人だった知り合いは当の昔に亡くなってしまったけど、彼女を見ると、私たちが生きてきたあの時はあったのだと、思わせてくれる。
「また美人になっちゃって」
ララの姿を見て素直にそう思う。
私たち聖剣使いは彼女よりも年上だ。
だから、彼女の成長はとても嬉しく思う。
これが、母親の気持ちなのかな? こんな気持ちを彼女も抱いていたのだろうか?
「ありがとうございます」
ララはそう言って丁寧に頭を下げる。
そのよそよそしさを少し、寂しいと感じてしまう。
まあ、殆どほったらかしだし、仕方ないか。
用事はララの様子見に来たわけではないし、本題をさっさと済ませよう。
再び事態は大きく動き出すのだから。
「学長、ポープリに用事があってきたんだ。いるかい?」
私がそう聞くと、ララは頷いて、背を向けて歩き出す。
その後を私はついていく。
もう前に来たのは何年前だっけ?
おかげで、どこが学長室かわからなくて、深夜の学府を歩き回っていたのだが。
そんなことを考えているうちに、学長室についたのか、ララが私の前でドアを開ける準備をしている。
その姿をみて、本当に大人になったよなーと思ってしまう。
まあ、エルフのララを子供の頃から知っているという、私が可笑しいのだけれど。
「学長。お客様がお見えです」
「は? こんな時間に?」
懐かしい声が扉の向こうから聞こえてくる。
ララは返事を待たず、扉を開け、私に入るように促す。
ま、お互い知らない顔じゃないし、こういうのは略してもいいと思ったんだろう。
「げ、ニーナ」
「げ、とは失礼だな」
学長室にはいれば、あの頃のままのちっこいポープリが書類仕事をしながら、飴玉を入れる瓶から飴玉を放りだしてなめていた。
「まったく久々に来てみれば、ポープリは変わらないな」
「はっ、地下でネチネチ根暗な作戦を考えているお前たちよりましだよ」
「言ってくれる。いい加減、飴玉舐めるのをやめなよ。もう、子供じゃないんだからさ。ああ、姿も中身も未だ子供だっけ? いや、ごめんよ」
「こっの、お前たちだって中身はすっかり婆じゃないか。外身だけは若いが、中身はよぼよぼだね。あーいやだ。会えばどいつもこいつも、飴玉舐めるのをやめろから始まって、学長に相応しい行動をしろって言うんだよ。これなんて言うか知ってるかい? 年寄りの冷や水って言うんだよ。この老害が!!」
「ああ!? 実際ポープリは学長に相応しい行動をしてないよね!!」
「相変わらず、直情型な上に目が節穴だね。私が今までこの学府を維持してきたという実績が、私がどれだけ学長に相応しいかを証明しているんだよ。私が相応しくないなら、既に学長を下ろされているっていうの。お前らみたいに、国とうまく付き合えなかったわけじゃないんだからな!!」
「……」
ポープリにそういわれて、私は沈黙する。
沈黙した私の姿を見て、ポープリも自分が言ったことに気が付いたのか、少し気まずそうな顔をする。
「……すまない。言い過ぎた」
「……私も言い過ぎた」
私もポープリも互いに謝る。
でも、これだけは言っておかなければいけない。
「国とうまく付き合えなかったのは確かに事実だ。だが、あれは国が、人が、愚かだからだ!!」
そう、私たちの願いを踏みにじり、平和への兆しをぶち壊し、更なる戦乱を引き起こした。
そればかりか、私たちを幽閉し、魔剣を作らせ、自国の利益ばかり追求する下種しかいないと、わからせてくれた。
……国は、人は滅ぶべきだ。
それだけは絶対に譲れなかった。
でも、その言葉を聞いたポープリは冷めた目でこちらを見てくる。
「またその話か。……はぁ。確かに、君たちが受けた扱いは、憤慨して当然だと思う。でも、君たちも無茶苦茶だったんだよ。何度も言うけどね」
「なぜ戦争をやめ、平和になることが無茶苦茶だというんだよ」
「……その手段だよ。君たちの手段は徐々に平和に持っていく方向じゃなかった。聖剣の力を存分に使って、力ずくで、超短期で平和へ導こうとした」
「それの何がいけないんだ? 一刻も早く平和になればそれだけ多くの人が救われるんだ」
「違うよ。君たちの齎した力ずくの平和では、君たちが一番幸せになってほしいと望む人たちは、絶対に幸せになれない。それは平和じゃない。力ずくで確かに平和になった。だが、結果、今の状況だろ? いくら君たちが平和を望んでいても、各国の憎しみがすぐに消えるわけでもない。徐々にそういう流れを作っていって本当の平和になるんだ。君たちという強者に従って手を取り合ったが、国の芯まで平和になるわけじゃない。むしろ、無理やりな停戦は、憎しみや悲しみを募らせた人にとっては、壊すべき悪だ。そんな状態じゃ、国としても内戦が勃発しかねない。それで割を食うのは一般人さ。だから国々は君たちを幽閉した。徐々に平和へと導く形を望んで。……あの時で考えうる、最善の策だと私は思うよ」
この話もポープリとは何度も話した。
でもポープリは、結局今まで私たちの考えを受け入れたことはない。
「でも、奴らは、私たちを道具にしたんだ」
「……ああ。それは私も間違っていると思う」
「なら、どこが最善の策だ!! 今の今まで400年。争いがやんだことはないぞ!! わかりきっているだろう!! 答えは出ているはずだ、人を救う価値はない!!」
「……そうだね。そうかもしれない」
「なら、なぜ手を貸してくれない? ポープリは聖剣こそ持っていないが、彼女から魔術を受け継いだ大魔術師だろう!! 私たちと一緒に彼女に育てられてきた!! だから……」
私は言葉を続けようとするが、ポープリから放たれる鋭い眼光で続きを言えなくなる。
「……黙れ。彼女を斬り捨てたお前たちに手を貸すわけないだろうが!! だが、斬り捨てた理由もわかるから、こうやって会うのは我慢できる。しかし、お前たちの人を滅ぼすなんて話には絶対に乗れない」
「なぜ?」
「なぜもクソもあるか……。だから君たちは馬鹿なんだよ。彼女の一国を潰す行為を見逃せなくて、君たちは彼女を斬り捨てた」
「ああ。魔物の群れが迫っているとわかっていて、彼女は傍観するつもりだった。それは、私たちにはできなかったよ」
「だから、君たちの気持ちもわかる。だけど、いや、だからこそ、人を滅ぼす作戦に乗るわけにはいかない。君たちは彼女の行為を否定したんだ!! なら、最後まで人を守って見せろ!! お前たちは斬り捨てた彼女の死を無駄にしたいのか!! 人を減らすという解決策でなく、手を取り合い平和の中に解決策を見いだそうとしたのに、結局彼女と同じ。いや、より効果的に人を滅ぼそうとしている。なあ、彼女の死は意味のないものだったのか? 彼女は最後まで笑っていたよ。君たちの選択を決して恨んではいなかった。なのに……その答えがこんなのなんて、彼女や、ピースたちに対してひどい裏切りだってことに気が付け!!」
「……わかってるよ。そんなことは。でも、400年、400年だ。今までずっと根暗な地下で作戦を練ってきたわけじゃない。国から裏切られても、必死に平和を模索していたんだ。だけど、これが一番いいと思った。これ以上、今の人がいても仕方がない」
「だから滅ぼすか」
「ああ。だけど、ポープリやララは死なない。私たちの孤児院をお願いしたい。世界を一度掃除するだけだ。私たちが選び、君たちが育てた子たちなら、きっと平和な世界になるから。ピースも復活させて、魔物とも争わなくていい世界が生まれるんだ」
「……ピースが君たちを許すとでも?」
「いや、私たちはそこでピースに、ガードワールドに殺されるつもりだよ。それですべて終わる」
「……私たちに全て押し付けてね」
ポープリの言う通り、最後は押し付けて逝くつもりだ。
でも、それぐらいしないと、彼女に申し訳がたたないし、ピースの怒りも収まらないだろう。
だけど、……それで最後なんだ。憎しみも悲しみも。
「だから、どうか協力してほしい」
「断る。私は最後まで人々による平和を目指す。君たちが諦めただけで可能性がないわけじゃない。それが私にできる、彼女への手向けだ」
ポープリ、やっぱり君はその道を選ぶか……。
でも、それは無理なんだよ。私たちが身をもって実感した。
今の人では絶対に無理だと。
「……ララはどうする?」
「私は最後まで学長と共にあります。ニーナ様申し訳ありません」
……はぁ、結局こうなったか。
「で、今更わかりきったことを聞きに来たわけではないんだろう?」
「ああ、今日は宣戦布告にきたんだよ」
「……始めるのか?」
「そうだ。いや、実際は既に始めていたんだけど、エナーリアは失敗しちゃったよ」
「は? そんな話は届いていないぞ?」
「そりゃ、あっという間に鎮圧されたからね」
「誰に!?」
「この学府にいる傭兵たちにだよ。まあ、ポープリが信じる気持ちもわかるよ。まだ世界には彼らのような平和を望む傭兵がいる。だけど、それじゃ止められない。この前のデカいブラックウルフの件でポープリはこの学府を動けそうにないしね」
あの日はポープリの実力を再確認するために、ワイバーンを近場までおびき寄せたんだけど、思わぬ魔物がでてきた。
ブラックウルフの大型種。
あれは流石に私たち全員で臨まないと危ないだろう。
だが、ある意味私たちにとっては僥倖だった。
これで、ポープリは各国に行って、戦うことはできない。
私たちは安全に各国を落とせるわけだ。
「……くそっ。で、どこを攻めるつもりだ?」
「ローデイだよ。あの傭兵たちがいるエナーリア、ジルバは最後だ。でもローデイはあの傭兵も繋ぎが存在しないし、今から繋ぎを用意してれば間に合わない。というか、そこまで国は柔軟じゃないからね」
「なぜ、それをわざわざ伝えに来た?」
「簡単だよ。いつでも私たちに協力してくれると言ってくれば受け入れるよ。って伝えにきた」
「協力など絶対にしない!!」
「うん。わかってるよ。でも、その場合最後はこの学府もろとも、教え子すべて無くなる。ま、ポープリが協力してくれるなら、学府の教え子ぐらいは……なんてね」
「……そこまで腐ったか」
「腐っているのは、この世界の人々さ。まあ、ローデイ滅亡の報告でも気長に待っててくれ。ああ、学長命令で学府の教師や生徒を派遣してみるかい? そうすれば、少しは滅亡が長引くかもね。でも、向かってくるなら、全部殺す。まあ、起こってもいない事態に何をどう説明して派遣するのかも大変だろうけどね」
「……」
ポープリは悔しそうに飴玉を噛み割る。
「所詮、今の世界なんてそんなものさ。……滅ぼすべきなんだ。じゃ、また来るよ」
私はそう言って学長室を去る。
さあ、あとはポープリに通達したことをリーダーに話して、ローデイを潰そう。
キシュアが囚われている今、内側から奇襲はできないけど、前よりも多く魔物をそろえて、押しつぶせばいいだけだ。
エナーリアのような少数で潰すような真似はしない。
対応できないほどの、大群で、全力でローデイを潰す。
いい宣伝になるだろう。
……世界の終わりを告げるには。
Side:ポープリ・ランサー ランサー魔術学府 学長
私と、ララはニーナが学長室から出ていくのを黙って見送る。
それしかできなかった。
ニーナの姿が消えたあと、ララが口を開き……。
「……学長。いえ、ポープリ姉さん。ニーナ様をあのまま送り出してよかったのですか?」
「いや、意味がないよ」
「意味がない?」
「ああ。ニーナを万が一ここで倒しても、ほかは既に動き出している。というか、今ここでニーナとやりあえば、私とララ、そしてニーナが言った傭兵のユキたち以外は死ぬ。巻き添えで。それこそ、ニーナたちの思う壺だろうね」
「……ローデイはどうするのです?」
「悔しいことに、現状ローデイに深入りできる材料がない」
「でも、いつかこの日が来るとわかっていて、準備をしていたのではないですか? ローデイにしても、学長の名前と権限を振るえば、動かせないことはないはずです」
「その通りだ。でも、それをすると。私たちが騒動の原因と思われかねない。そうなれば学府の存続が危うくなる」
「……学府のことをよく思わない連中ですか」
「そうだよ。確かにこの学府は大陸随一の戦力を誇っている。他国が扱いきれなかった麒麟児を集めた、ね。だから、各国の中にはこの学府を解体して、分散管理すればいいという意見もある。今回の聖剣使いたちのローデイ侵略を止めたとしよう。でも聖剣使いたちの歩兵は魔物だ。それを食い止めたとして、補償と責任はどこが負うべきだとおもう?」
「……魔物の森を擁する学府、ですか?」
「ああ。しかも、私たちが事前にローデイに連絡を取れば、この事態は私たちが魔物の森を管理し損ねたのが原因だと言われかねない」
「そんなバカな」
「世の中言ったもの勝ちだからね。魔物を大量に召喚して使役できるなんて知らなければ、当然、原因は私たちしかいない。よって、真実はどうであれ、私たちは窮地に立たされる。だから、今できるのは学府で何事もなく過ごし、魔物の大量発生がなかったという証明をするしかない。ローデイが滅んでしまえば、そんな量の魔物がどこから来たとか考えている事態ではないからね」
くそ、自分で言ってて胸糞が悪くなる。
私の立場が、現状を打破する障害になっている。
覆面でもつけていくか? いや、それでも聖剣使いたちがいるから、敗れる可能性も高い。
1人ではどうにもならない。なら、ローデイと連携を取る必要があるが、それはララに言った通り、学府の責任がとても問題になる。
「なにか、手はないのですか?」
ララが縋るようにこちらを見る。
ローデイはララの故郷でもあるから何とかしてあげたいが、ララ自身も向かうわけにはいかない。
聖剣使いと大量の魔物相手は無理だし、今のララの立場は副学長なのだ。私と同じような結末になる。
「1つだけ、ないことはない」
「では、それを実行すれば……」
「でも、それは賭けになる。それこそ学府の存亡にかかわることになる」
「一体どういう作戦なのですか?」
ララが必死の思いでこちらを見てくる。
でも、実現は不可能に近い。
だって……。
「そうですね。普通に考えれば不可能です。私たちジルバ、エナーリアの編入生をローデイに向かわせて、偶発的に排除させるなんて、また私たちにお仕置きされたいですか?」
「え?」
「……やっぱり、聞いていたね」
学長室の隅から、気配を悟らせず、いきなりエリスさんが現れた。
でも納得だ。
彼女たち傭兵団は聖剣使いをすでに2人倒している。
そして、彼女の言う通り、傭兵団に偶然聖剣使いたちと合流して、排除してもらうしかないのだ。
「まあ、そんな捨て駒のようなことをすれば、ジルバ、エナーリアが黙っていないでしょうね」
「はぁ、ということだ。どのみち、私たちはローデイに手出しはできないんだよ」
「そんな。エリスさん、何とかなりませんか? もう、あなたたちに頼るしかないんです。このままでは、ローデイが、多くの人が死んでしまいます」
無理だよララ。
これが国としての在り方なんだ……。
いや、普通に人としても正しい。
なんで、好き好んで死地に向かうものがいるか。
「ええ。助けてあげて構いませんよ。もちろん、学府側の責任を負えなどとも言いません。ですが条件が1つだけあります」
「「え?」」
私もララもその言葉に驚いた。
なぜ私たちを助けてくれる?
「言ってください。どのような条件ですか!? 私の命を差し出せというなら……」
「こら、ララ。滅多なことを言うんじゃない!! で、エリスさん。そちらの条件はなんだい?」
私はララを庇い、エリスさんの前にでる。
「そうですね。それは私から言うべきではないです。任せましたよラビリス」
「ええ、ありがとう。続きは私から言わせてもらうわ」
そして、また学長室の暗がりから、ツインテールをした幼い少女が、後ろに幼い少女を3人も引き連れて現れる。
一体、どれだけの人数が学長室にいるんだ!?
なんでそれに気づけない!?
その少女の顔は、窓から差し込む月灯りに照らされて、ようやく確認できる。
「……君はラビリスかい? そして、アスリン、フィーリア、シェーラだったよね?」
「ええ。名前を覚えてくれてありがとう。学長さん」
「ありがとうございます」
「ありがとうなのです」
「覚えていただき光栄です」
可愛らしい返事が学長室に響く。
でも、この状況は異常。
なぜ、エリスさんが引いて、彼女が前に出てくる?
「さて、エリスにかわって私が条件を言うわ」
「ちょっと待ってくれ。君たちは傭兵団だろ? なぜ団長のユキさんが出てこない? なぜ君が出てくる?」
私は咄嗟に彼女の発言を邪魔して、一番大事なところを聞くことにする。
……どういうことだ? 彼女たちは傭兵団ではなかったのか?
「あら、そういえば私たちが何者か、言ってなかったわね」
ラビリスはそういうと、スカートをつまみ、お人形のような姿で、綺麗なお辞儀をする。
「どうも、前任者の欠片たち」
「ぜんにん……しゃ?」
ぜんにんしゃ、前任? 前任者!?
私がその言葉を理解して驚いたのが、目の前の少女には理解できたのだろう。
ラビリスは綺麗な笑顔で口を開く……。
「私が今代の、この大陸の魔力管理を任されたダンジョンマスターよ」
冷や汗が止まらない。
まさか、そんな大物が出てくるなんて……。
そうか、なら納得できる。
私をあっさりあしらう力、聖剣使いを退ける能力、常軌を逸した情報収集能力……。
「さて、条件を言うわ。あなたたち2人は私の部下になりなさい。それで、知りうる限りの情報を提供しなさい。それでローデイは助けてあげる。なぜと、理由は言わなくてもわかるわね?」
「彼女たち、聖剣使いたちの行動は、ダンジョンマスターの方針と合わないのですね?」
「ええ。合わないというか、今の状態を崩されると、非常に管理が面倒になるの。今まで様子見したけど、ローデイを崩されると、こっちとしても非常にやりづらいの。だから、部下として協力しなさい」
「……」
私は沈黙してしまう。
これは、即座に受け入れてしかるべきなのに……。
「……どうしたのかしら? 不満?」
「い、いえ。そういうわけでは……」
何が引っかかっている?
このままでは、彼女の前任者の願いはあえなく散ってしまうというのに……。
「あ、わかった」
「なのです」
アスリンとフィーリアは何かに気が付いたのか、ダンジョンマスターラビリスと横にいるシェーラを交えて何かを話す。
「ああ、なるほど」
「素晴らしいですね。アスリン、フィーリア」
「「えへへー」」
なぜか2人は頭を撫でられて喜んでいる。
そして、撫で終わったあと、ラビリスがこちらに向き直る。
「そうね。こちらも配慮が足りなかったわ。先ほどの話を聞いていたらまず言うべきね」
私は身構えてしまう。
何を話したかは想像もつかないが、普通なら、処刑されてもおかしくはない。
でも、ラビリスの口から放たれた言葉は、処刑からかけ離れた別のものだった……。
「私は、学長ポープリの方針を是とする。聖剣使いの彼女たちの悲嘆もわかるが、それで、今を生きる関係のない人々を不幸にしてよいわけでない。前任者を斬り捨てたことへの責任は問わぬ。その覚悟を今まで持ち続けたことを称賛する。無論、学府をどうこうするつもりも、学長としての地位を捨てよとも言わない。ただ、今を守りたいのであれば、私の部下となれ。それが前任者へ、あなたが示せる手向けだろう?」
そういわれて、涙があふれてきた。
よかった。私はこの人について行っても、彼女の死を無駄にせずに済む。
なら、何も迷うことはない。
「ランサー魔術学府学長、ポープリ・ランサー。および、副学長、ララ・ツード。今代のダンジョンマスター、ラビリス様に忠誠を誓います!!」
私の宣言を受け、ラビリス様の顔が優しくなる。
「ええ、これからよろしく」
「「はっ」」
「でも、そんなお堅い忠誠は要らないわ。まずは指定保護をして、その後じっくり話しましょう。時間はないけど、ちゃんと相互確認をしておかないと、変なところでミスをするから」
そして、ローデイ救出作戦と今までの情報の提供と照合、色々なことが動き出す。
……聖剣使い、君たちは絶対止めて見せる。
「あ、それと、はい。飴玉。結構食べてしまったみたいだし。ララにはケーキね」
「「ありがとうございます!!」」
決して、食べ物に屈したわけではないよ?
Side:ラビリス
「ユキーー!!」
今の私は止まらないわ。
ユキに向けてダイブするの。
「おっと、どうしたラビリス?」
ダイブした私をしっかりと受け止めてくれる優しい夫。
あー、いい匂い。このために生きてるわ。
「もう、今日は疲れたわ。ユキの代わりを頑張ったのよ。もっとぎゅっとしてちょうだい」
「ああ、ありがとう。ラビリス」
今日の学長との会談は疲れたわ。
こういう役得がないとやってられないわ。
そして、私はユキの腕の中で気を失うように、寝てしまうのだった。
あーあー、エッチも要求すればよかったわ。
とりあえず、こんな面倒を引き起こした聖剣使いは、全員全裸でマツケ○サンバ躍らせてやる。
と言うわけで、聖剣使いたちは、厄介なユキたちを最後に回し、確実に他所の国を落とす作戦に回りました。
そして、学長と聖剣使いの対立も明らかに。
さあ、正にデート・オア・アライブ!!
スムーズにローデイに向かうために、サマンサをデレさせよ!!
さて、ここで外伝の秘密を、実は必勝よりあっちがネタは古かったりします。
しかし、あのぶっ飛びネタをやるには下積みが無いと受け入れられないと思ったので、必勝ダンジョンをぼちぼち書いていました。
では、どっちも次回を待て!!
あ、あっちは、どう見ても魔法少女を警察に突き出すが一位だから。




