落とし穴39堀:そこに女湯があるから 漢解除と結果
はい、落とし穴、女湯へん、先延ばしにして申し訳ない。
で、これにて終了。
そこに女湯があるから 漢解除と結果
side:ユキ
爆音が響き、空から人が降ってくる。
……もう、何度も聞きなれた音だ。
ドサッ。
人が地面に落下し、土煙が舞う。
地球なら即死だろう。
ここが異世界アロウリトというレベルの概念により、身体能力があるから死なずにすむ。
いや、一般人は死ぬと思うけどな。
「……くっ、まだだ、まだ……」
俺の目の前には、名も知らぬ冒険者が1人、必死に立ち上がろうとしている。
なんというバイタリティ、タフネス。
そこまでして女湯を覗きたいのか?
俺は幾度となくその雄姿を見てそう思う。
しかし、立ち上がろうとしている冒険者は、再び膝をつく。
恐らく、というか、体力が限界なのだろう。
俺は腕時計を見る。
「……23分」
そう、現在は第1回女湯覗きが開始されている。
初戦はガルツ、これはウィードと友好を持った順を逆で国割りを決めている。
即ち、ガルツ>リテア>ロシュール>ウィードと言うわけだ。
これは、トラップが後半になるにつれ、見極めができてきて、ウィードの技術に慣れていない国が不利になるだろうという配慮だ。
つまり、後半に残った国が女湯を覗かれる可能性が高いというわけだ。
嫁さんの裸が覗かれる可能性が高い……、妊娠もしているのに、普通に参加するって言ってるし、最悪ウィード覗きの参加者は全員潰すかスティーブもろとも?
「大将、どうするんですか? このままじゃ達成できないっすよ? ほら、もう残り5分」
「あ、そうだな」
「あ、そうだなって……」
「とりあえず、予定通りだろ? 覗きは達成できないし、トラップの性能も見れたし、国の代表参加者の面目も保たれると」
「いや、そうっすけど……」
スティーブはそっと目をそらし、必死に立ち上がろうとしている冒険者を見る。
俺も、つられて再びその冒険を見ると……。
「お、俺は、なんとしても、シャール様の、裸を……見るんだー!!」
そう叫んで、力を振り絞り再び2本の足で立ち上がり、駆け出した。
真っ直ぐに、そう、3キロ先の桃源をめざし、本当に真っ直ぐに。
ドーン。
そして再び、冒険者は空を舞い、再び俺たちに近くに落ち……動かなくなる。
「失格です」
「ですね。体力が危険です、すぐに運び出してください」
リーアとジェシカがそう言って、冒険者の搬送をはじめるが、冒険者は必死に手を伸ばす。
「女湯、シャールさ、まの裸を合法で……見れる。俺は、まだ、やれる。下ろしてくれ……」
まだ、冒険者の心は折れていなかった。
そう、体が例え動かなくても、心がまだあきらめていない。
なんて漢なんだ。
そこまでして……。
「黙ってください変態」
「ええ、動けなくなった時点で失格です変態」
「ぐっ、お、俺は、変態なのか?」
「「ええ」」
「ぐふっ!?」
そして1人の勇者は力尽きた。
俺はその姿に、かつての下着を食った魔王を思い出す。
あの下着を食った変態の中の変態、ある一定の男たちからは勇者と称えられてもおかしくないが、どこの世界も変態には厳しいようだ。
「じゃ、失礼しますね」
「スティーブ、ユキをよろしくたのみますよ」
そう言って、2人は勇者を担いで消えて行く。
「……大将、確かに色々都合がいいかもしれないっすけど、漢解除で次々とおいらたちの同士が消えていくっす」
「いや、そこは俺の関与するところじゃないしな……」
そう、スティーブの言う通り、俺たち国の代表たちは、覗きを達成せず、トラップの効果を見て、国の面目を保つ方法を思いついた。
それが、漢解除である。
漢解除とは何か?
それは、トラップにわざと引っかかってトラップを解除する荒業である。
わざとトラップを誘発し、解除するというのはあるが、それは又別である。
誘発するのではなく、引っかかる、そう、身をもってそのトラップを解除するのだ。
死なぬ気合い、恐れぬ勇気、倒れぬ屈強さ。
この漢解除を行えば、覗けなくとも非難されることなく、トラップの効果をその身をもって証明し、国の代表としての強さを見せられる。
そう、国の代表としてはとてもありがたい選択肢であったが……。
『おおーっと、これで冒険者の退場が12人目となりました!! なぜ彼らは避けず真っ直ぐくるのでしょうか!! 同様に、国の代表も同じように、何度も何度も引っかかっては戻ってきます!! 残り時間もあと5分!! しかし彼らはそれをやめようとしません!! これはどう思われるでしょうか、セラリア様?』
『そうね……、恐らくは、国の代表は真っ向から突っ込むことによって、屈強さと退かぬ勇気を示した。ガルツの代表であり、次期国王のティーク王子も臆することなくその手段をとった。つまり……』
『つまり?』
『他の一般参加者がトラップを回避して、覗けたとしても、それは賞賛されるかしら?』
『あー、なるほど。国の代表たちが突っ込むことによって、他の参観者もそうせざる得なくなったのですね?』
『そういうこと、トラップの効果も確認できて素晴らしいとは思うわ。そして、一般参加者も勇気と屈強さも示される。これは国がスカウトするかもしれないわね。どうかしら、先ほど覗きたいと言われたシャールさま』
『え、わ、私ですか!? そ、その覗かれるのは嫌ですが、ああいう真っ直ぐな人は兵としては相応しいと思います……』
『だ、そうよ。覗けなくても十分に評価されるわ。頑張ってね参加者の皆。ちなみにシャールは、裸よ』
セラリアがそう、放送で覗き参加者に告げると……。
「「「うおぉぉぉぉぉぉお!!」」」
一般参加者たちは雄叫びを上げて、傷ついた体を気にもとめず、女湯へ走り出す。
『おおっ、最後の3分でこの雄叫び、彼らはまだあきらめていなかった!! しかし、勇戦虚しくトラップに引っかかる……いや、回避しようともしていない!! これが参加者たちの強さだ!!』
ラッツ、そんなに掻き立てるな。
もうトラップ回避しようとすれば大ブーイング決定じゃねーか。
「って、スティーブもかよ!!」
雄叫びを上げて向かっていったのは、俺の護衛役のスティーブも含まれていた。
だが、能力制限をしているので、体力的にはともかく、トラップを喰らって空を飛んでいる。
馬鹿だ。
『さあ、残り2分です。どの参加者も届きそうにはない、ですがあきらめた様子はありません。各国の強さを見せつけています』
エリスは淡々と実況するが、多分白い眼してるよな。
性格的に夫以外の男に肌とか見せるとか凄く嫌がるんだよ。
スティーブたちでも書類の受け渡しとかはいいんだが、仕事でのボディタッチですら睨むもんな。
俺にはベタベタなんだが……。
「はぁ、最後の突撃行きますかね……」
全員が走っているのに、俺がいかないわけにはいかないだろう。
身体能力は制限されて昔の学生時代と同様。
どう考えても、レベルがあるこの世界には劣る。
でもさ、思い出す。
こんな風に馬鹿騒ぎして、走り回った。
親友たちと、意味もなく、笑い合って、泥だらけになって。
結局、4回にもわたる漢解除で国の代表はボロボロ、女湯にたどり着いた人はいなかった。
でも、結果としては大成功。
全員が健闘を称え、覗かれる側の女性も自分たちを守ってくれる人たちの実直さと強さを見れて満足、国としてもトラップの有効性をこれでもかと見せて貰えた。
一般参加者の人も、俺たちに巻き込まれて漢解除をすることになったが、それに対しての恨みごとも無く、現在一緒に貸しきりにした酒屋で祝杯を挙げている。
「いやー、クラック殿、楽しいな!!」
「まったくですな!! 最初はどうなるかと思っていましたが、ここまで熱くなれるとは!!」
「ああ、ただ純粋に前に進む!! なにがあろうと真っ直ぐだ!! 戦場では味わえない気持ちのいいことだ!! おおっ、君は私の妹シャールの裸をみたいと言って冒険者だね」
「あ、はい!! も、申し訳ありません……」
「何を言っている!! 見事な心と勇気、そして諦めぬ気概!! どれをとっても素晴らしかったぞ!! どうだ、私の部下にならないか? あの奮闘を見て誰も否定などしないだろう!!」
「よ、よろしいのですか!?」
「無論だ!! 君の様な勇者はいくらいても困らないからな。あと、いき遅れているシャールとよき関係を築いてくれると嬉しい」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、まったく一番下のシェーラはユキに嫁いだというのに、エルフで若さが続くといってな……」
なんか、ティークの兄はシャールの裸を覗こうとしてた冒険者を部下に勧誘している。
いいのか? シャールさん怒るぞ?
というか、ローエルの方が先じゃね?
俺がそう思っていると、今度はクラックから声が上がる。
「君こそ、私の後任でリテアの近衛隊長になるに相応しい!!」
「い、いえ、流石にそれはっ!?」
「いや、謙遜するな!! あの時の突撃、トラップに引っかかっても進む力強さ!! あれはそうそう真似できるものではない!!」
お前はさっさとウィードに赴任したいだけだろ!!
でも、皆、楽しそうでなによりだ。
ふう、何も問題なく終れそうだな。
そうやって、酒を飲もうとすると、それを取り上げられる。
咄嗟に持っていかれた方向を見ると……。
「あーら、私たちに後のことは放り出して酒盛りとはいい度胸ね?」
なぜか嫁さんたちがセラリアを先頭に仁王立ちしていた。
いや、なんで全員いるんだよ。
各国の美姫と色々することがあるだろ!?
「あっはっはっは、仕事は明日で、もう皆さんには普通に露天風呂を楽しんだり、食事をしてもらっています。というか、問題はそこじゃねー」
「ラッツさん、俺の考えてることが分かるのでしょうか?」
「いえ、ユキさんの妻なら分かります。そして問題をわかっていないのも分かります」
「あ、あのエリスさん、なにをそんなに皆怒っているのでしょうか?」
「旦那様、私たちは旦那様がたどり着くと信じていました。その為に新作の水着を着込んで待っていました。それなのに……」
ルルアはそう言って、アスリンとフィーリアを前にだす。
「お兄ちゃんを待ってたのに、来なかった。ひっく……」
「兄様、私たちをほったらかしで、遊んでたのです。えぐっ……」
えー、泣くところ間違ってね?
そう、少し呆けていると、泣いてる2人をラビリスとシェーラが抱き寄せる。
「泣かなくて良いのよ。ユキが私たちをほったらかしにするわけがないわ」
「ええ、ラビリスの言う通り、きっと今から旅館で水着を見てくれて、そのまま押し倒してくれるに違いありません」
なにそれ?
水着はまあいいとして、無理、全員の相手なんて絶対無理。
だって、体は1つしかない。
そう考えていると、トーリとリエルに両腕を掴まれ、どっかの宇宙人みたいになる。
「あ、あのー、妊娠もしてる人もいますし……嘘ですよね?」
「大丈夫じゃ。ちゃんと妊娠中に合わせた仕方も学んでおる。なに、ユキは3日程休みにしておるから問題ないわ」
デリーユは嬉しそうに笑っている。
「お、お仕事が……」
「問題ありません。旦那様のお仕事はミノちゃん以下、魔物たちが頑張ってくれるそうです」
キルエさん、今日もお仕事ばっちりですね。
「さて、カヤそっちもって」
「……わかったミリー」
そう言って、仕舞に両足も持たれて抵抗ができなくなる。
「さあ、リーアとジェシカは旅館で準備しているし、さっさと帰るわよ」
「「「はーい」」」
そうやって俺は運ばれていった。
ああ、何か間違ってね?
side:ティーク ガルツの第一王子
「……クラック殿」
「なにか?」
「ウィードは逞しいのだな」
「ですな……」
私とクラック殿は運びさられていくユキを見てつぶやく。
酒場もあの強烈な気迫に押されて静まりかえっていた。
「と、いかんいかん、皆まだまだ酒はある、今日の健闘を祝ってかんぱーい!!」
一瞬きょとんとした顔になるがすぐさま、全員が笑顔になり……。
「「「かんぱーーい!!」」」
ユキには申し訳ないが、ここはしっかり楽しませてもらおう。
ここまではめを外せるのはなかなかないしな。
そうやって、酒を流し込もうと、コップを傾けたとき……。
「お兄様、なにやら、私が行き遅れと仰っていませんでしたか?」
「ぶふぉっ……!!」
その声で、霧のように、飲んだ酒を噴き出してしまった。
「な、なんのことかなシャール?」
「言い訳は、宿で聞きますわ。皆さん、お気になさらず」
「ク、クラック殿!!」
「……」
くそっ、しまったウィードの女性が逞しいのではなかった。
女性はすべからく逞しかった!?
アッーーーー!!
どうだったでしょうか、スケベで始まる友情!!
誰もが、変態でいいんだ!!
ま、嫁さんとか身内にばれないようにな。




