第227掘:細かい今後と……
細かい今後と……
side:セラリア
これは確かに、一々暴露する話でもないわね。
ジェシカとヒヴィーアって子の友情話を聞いて、大体流れは分かった。
「なるほどねぇ。そういうわけで、基本的にこっちの意見は簡単に通る状態なのね?」
「ああ、エナーリア軍はミノちゃん軍の出現によって退却せざるを得なくなった。しかし、それはジルバ帝国にとっても脅威なわけだ」
「ミノちゃんを悪くいうつもりはないけど、向こうで伝説って呼ばれる魔物なのは助かったわ」
「別にいいだよ。セラリア様とか、ウィードの皆から好かれてたらいいだ」
「まったく、素晴らしい忠臣ね。どこかで女に振られまくっている上司に見習わせたいわ」
そういって、簀巻きにされているスティーブを見ると、床を涙で濡らしていた。
……しかし、自分で言ってなんだが、流石に可哀想ね。
あとで、何かフォローしておきましょう。
ま、それより、会議を進めないと……。
「と言うわけで、ミノちゃんはジルバ相手に交渉をすることになっているってわけだ。それを俺たちが伝える役だな。エナーリア軍を追い返した実績に加えて、伝説の魔物、さらに知恵をもち軍を運用する。この魔物たちを無視して、エナーリア軍の追撃なんてしようとは思わんだろ」
「でも、ジルバ帝国は領土を奪って万々歳だけど、エナーリア軍の方は引くわけにはいかないんじゃない? 領土奪われているのよ? 一旦引いたとはいえ、すぐに準備整えて、ミノちゃん軍とは不可侵の条約でも結んで、攻めてくるんじゃないかしら?」
「可能性はあるけど、殆どないな」
「なぜかしら?」
「捕虜も取っているのが1つ、ついでにその捕虜が魔剣使いだということ。そして、ミノちゃんから敵意がないと言う事を示す為、適当にナールジアさんの御眼鏡に叶わなかった3流品を献上品ということで、あずけている」
「ちょっ、ナールジアさんのって!?」
ナールジアさんが作る武器は、剣から鎧、果てはユキたちの故郷の武器、銃火器まで多種多様だ。
そして、厄介なのは、エンチャントという特殊なスキルで、魔術を組み込んだ武器を作れるのだ。
ユキの知識を織り交ぜて、最近はトンデモ武器が生まれている。
「ああ、大丈夫ですよ、セラリア様。私が作ったものじゃなくて、鍛冶協会の皆がダンジョンに置く物ってことで、選別から外れた奴ですから」
ふう、それはよかった。
流石に、あの兵器と呼んでいい武具をばらまくようなことはしないか。
「なるほど……、で、どの程度の物なのですか?」
「そうですねー。前見せてもらった、マーリィさんや、オリーヴさん、ミストさんの魔剣を少し性能あげた様なかんじですかねー」
「……それって、新大陸からすればトンデモない品じゃない?」
「だからだよ。相手さんはそんなモノを軽く渡す相手をどう判断すると思う?」
「……価値が分からないって馬鹿にするにしても、無視できるような状態じゃないわね。魔剣が大量に手に入るかもしれないっていうなら、ジルバとはさっさと停戦結んで、ミノちゃんたちとお近づきになりたいと思うはず……。奪うにしても、ジルバが横やりを入れれば、迷惑極まりないし、必ず停戦を行うわね」
なるほど、停戦する意味をそこにつけるか。
エナーリアはもっと魔剣が欲しいし、ミノちゃん軍がいれば、ある種のジルバへの盾としても使える。
「逆に、これを無視して侵攻するようならどうにでも料理できるわ」
そこまで、馬鹿なら交渉相手として失格だし、時間をかけるだけ無駄ってことを証明するようなもの。
ふむ、見定めもするいい機会ってことね。
「そういうこと。まあ、お互い大国だし利益をしっかりとってくるだろうがな」
「そうね。一応侵略されてる側だから、抗議をいれるだろうけど、表向きよね。その間にミノちゃんたちと仲良くすればいいんだし。ジルバ側はエナーリアを退けてもらったっていう恩があるし、ミノちゃんたちと会話をして、ミノちゃんたちの持つ物資の価値を知るのはエナーリアの後よね」
「その時には、既にエナーリアとミノちゃんが何かしら協定でも結んでるだろうな。で、ジルバは攻めることもできずに、交渉をするしかないわけだ」
「そうよね。その時にはミノちゃんとエナーリアは組んでいるようなものだし、手を出されれば、大義名分で、ミノちゃんたちを味方として引き入れて、停戦協定を破ったと言えるものね」
まともに考えられる相手なら、ここで停戦しかありえないと言う状況ね。
「まあ、そんな感じだな。で、停戦を結ぶにあたって、ミフィー王女がエナーリアに赴く可能性は高い」
「確かに、停戦を結ぶにしても、国の代表が赴かなくてはいけない。なら、運よく最前線にいるミフィー王女に停戦条約を結ばせる代表にするのが手っ取り早い」
「本来なら、王と王が顔を突き合わせてやるべきだろうが……」
「今回はお互い下手に顔を合わせたくないってわけね?」
「ああ、ジルバとしては侵攻して領土を奪っているから、停戦を受け入れたとはいえ警戒したいし、他所とケンカをしてるから、余った軍は即座に他にばらまきたい」
「エナーリアとしては、領土は失ったけど、ミノちゃんたちと繋がりを得たわけだし、秘密裏に先んじて、ミノちゃんたちと取引や交渉をして色々強化したいわけね?」
「そういうことだな。だから、ミフィー王女がジルバ王から停戦関係の命令をもらえば、その関係で俺たちが停戦の話を伝えるか、護衛って形で行くことになるだろうよ」
ただの傭兵ではむりだが、ジルバ王がミフィー王女に咄嗟に言った王族の末裔ってのが効いてくるわね。
私たちがついて行っても十分に理由になる。
正式な国の代表にはなれないが、ジルバ側として参加するのは問題ない。
「……ん? そう言えば、ミノちゃんたちはその話だと、別枠で参加するみたいね」
「その通り。ミノちゃんたちは、現状第3軍だ。迂闊に刺激できない、色々な意味で強力な軍だな。ジルバとエナーリアが停戦する最大の要因だから、表に顔をださんわけにはいかんだろうよ」
「そうね。……ああ、なるほど。ミノちゃんに意識を集めさせるってわけね」
「普通なら俺たち、亜人を連れた傭兵団だけだと悪目立ちするが、伝説の魔物ミノタウロス軍がいればそれも些細な事だろうよ」
エナーリアもミノちゃんたちの対応に手一杯だろうし、さっさと停戦してミノちゃんと交渉をしたいだろうから、私たちが危険に晒される可能性は、真っ向からジルバ対エナーリアで打ち勝ったときよりは確実に低いだろう。
「私たち傭兵団は、ミノちゃん軍とははじめて会うような姿をジルバ、エナーリアに見せて、裏では繋がっている、ね。相変わらず、こういうの好きよねあなた?」
「目立たないのがモットーなんでな。ま、これでエナーリア王都に堂々と潜り込めるわけだ。といっても、まだ停戦もされていないし、色々通さないといけないところがあるから、早くても1か月後だな。それまでは、のんびりしよう」
「あー、結局一度暴れただけね。もう少し羽目を外せばよかったかしら」
私がそう言うと、皆が軽く笑う。
これで、大体会議は終わりだし、サクラの様子でも見に行こうかしらって視線を動かすと、ラッツが具合悪そうにしている。
「ラッツ、大丈夫?」
私がすぐに傍へ駆け寄る。
彼女はいま妊娠してる、私もちょっと前まではあの状態だったのだ。
だから、妊娠仲間として一緒にいたから少しの変化も分かる。
「あ、うん? セラリアですか、すみません。ちょっと、お腹の子が激しく暴れて……ううっ」
「ちょっ、それって、まずっ!! あなた、急いでラッツを病院へ!! って!?」
私がラッツから視線を外し、夫を見つけたのだが……。
「おい、エリス!? デリーユ!? 大丈夫か!!」
「は、い。問題ありま……っつ」
「ユキ、お腹の子が、暴れ……」
うそ、あっちも!?
「キルエ、大丈夫ですか!?」
「……無論ですとも、お腹の子が元気がいいだ、け」
「キルエさん無理はいけません。少し落ち着いたら、病院に行きますよ」
「し、かし、ルルアさ、ま、この場の片付けが……」
「そんなことより、キルエさんとお腹の子が大事です。片付けなら、ミノちゃんやスティーブに任せればいいんですから」
ええー!?
残りの妊娠組全員産気付いてる!?
「あわわっ、どうしよう!?」
「お、落ち着くのですアスリン!?」
「はいはい、2人とも落ち着きましょうね。で、どうするのセラリア?」
ラビリスがアスリンとフィーリアを落ち着かせて、こちらを見てきてる。
うん、落ち着きましょう。
この場で出産の経験があるのは私とルルアだけ、ルルアは医者として、そのまま病院だし、私が指揮を取るべきね。
「あなた、皆を一人ずつ慌てず病院へ運んできて。リーアとジェシカは補佐」
「わかった!!」
「「わかりました」」
「ミリーはお婆様を呼んできて、また出産手伝ってもらうわ。無論ミリーもよ」
「はい、わかりました!!」
「ルルアは先に病院にいって準備を、エルジュも魔王城から呼び戻しなさい」
「わかりました」
「トーリとリエルは関係各所へ連絡を、混乱させないようにして」
「わかったよ」
「任せて!!」
「カヤはエリスの代わりにラジオ放送の準備と放送。大丈夫よ、カヤなら出来るわ」
「え……。うん、わかった」
「モーブたちは、冒険者ギルドへの連絡を、ミリーが完全に動けないことを伝えて」
「おう」
「任せてくれ」
「わかりました」
「シェーラはラッツが動けない分の、輸出管理を」
「はい」
「アスリン、フィーリア、ラビリス、そして私は家に戻って子供の世話よ。一緒にいたいだろうけど、サクラとスミレを残すわけにはいかないわ」
「わかりました!!」
「なのです!!」
「わかったわ」
「スティーブは街の警備を限界まで上げなさい、騒ぎになるのは確実だから」
「わかったっす!!」
「ミノちゃんは即時新大陸のダンジョンに戻って、監視をお願い」
「了解だべ」
「ナールジアさんはトーリたちが連絡したあと、混乱が起きないように二重で監視と抑制をお願いします」
「わかりました」
「ザーギスはジルバに戻って作業を続けて、ピースもミノちゃんについて行って、色々情報をまとめて頂戴」
「わかりましたよ」
「了解した」
よし、全員に指示はだしたわね。
「皆よろしく頼むわ」
「「「おう!!」」」
さあ、正直、戦争より辛い戦いよ。
「サクラちゃん、スミレちゃん、お姉ちゃんたちがいまいくからねー!!」
「そうなのです!! 私たちがちゃんと守るのです!!」
「ふふ……、2人とも必死ね。かわいいわ」
「あのー!! アスリン様!! 頭!! 頭返してー!!」
これで、エナーリアへの準備は整ったも同然!!
しかし、その前に大イベントだ!!
戦争よりも、とてもつらい戦いだ!!
ユキは今度こそ、眠らされずに済むのか!!
そして、発売まであと2日だ!!
みんなよろしくねー。




