第210掘:騒ぐ人たち
騒ぐ人たち
side:ウィード在住の一般人 スーパーラッツ2号店副店長
今日も朝から普通に働いていた。
時間はもうすぐ閉店と言ったところ。
「うーん、今日ももうすぐ店じまいだ。皆、頑張ってくれ」
「「「はーい」」」
そんな風に、お店にいる店員に声をかけていく。
私は店内の様子を見ては、足りない商品を確認してはメモ帳に書き込んでいく。
店が閉まってから、スーパーラッツの事務所へと届け、明日には品物を届けてもらうためだ。
そろそろウィードができて一年そこそこ、また年末の様な騒ぎでもするのだろうか?
あの時は代表のラッツさんが、祭りだ、稼ぎ時だと言って、全店の10%割引など行ってかなり忙しかった。
しかし、その割引率を引いても黒字となる程の売り上げを記録した。
まあ、働いている私たちはとてつもなく忙しかったが。ボーナスをもらえたので良しとしよう。
そんな感じで、今日も一日が終わろうとしていたとき、お客さんが飛び込んできた。
これもよくある話だ。
時間ぎりぎりにきて閉店時間を過ぎても居座る客。
非常に迷惑なのでラッツ代表直々に追い出すよう言われている。
ルールは守るべきであり、お客様も当然それに含まれる。商売は、ただお客様を優先にすればいいだけの話でないと。
「時間内に帰るなら問題ないんだがな」
そう思って、飛び込んできた客を確認するために入口付近を覗いてみる。
「すまぬが、セラリアが好きなものをもってきてくれ!! 急ぎでだ!! 金ならある!!」
「は? あ、あの……どちら様で?」
そこには店員に詰め寄る貴族のご老人……ってあれロシュールの王様じゃないか!?
私は、数か月前の魔王大征伐出陣式を見学してたのでロシュール王の顔を遠目ではあるが見ている。
いま詰め寄られてる店員はその日、軍への物資供給で仕事に出ていたので知らないはずだ。
いったい何があったのだろうか?
とにかく、あの店員では荷が重い相手なので私が変わるべきだろう。
「君、品出しを頼む。そのお客様の対応は私が行うから」
「あっ、副店長。ありがとうございます」
そう言って、店員と入れ替わり自分がロシュール王と対面する。
……あれ? 早まった?
流石にここまで身分の高い方と話した経験は……セラリア様とならあるけど、他所の王様だしな……。
「と、慌てていた。済まぬ。私はロシュール6世である。今日、娘のセラリアが産気付いたと聞いてな慌てて来たのだが、何も見舞いの品をもっておらぬだ。何か見繕ってくれぬか?」
「セ、セラリア様がご出産ですか!?」
「ぬ? 知らぬのか? 庁舎からラジオ放送をするとかいっておったが?」
私が王様の発言に驚いていると、庁舎からのラジオ放送がウィード全体へ響く。
「お、今からか」
王様がそう言って、店内のお客も店員たちも静かになる。
『こんばんは。ウィード公共放送です。夜遅くにごめんなさい。臨時放送です』
臨時放送と聞いて、事情を知らないお客や店員は少し緊張した面持ちになる。
ウィードで行われているラジオ放送は毎日行われており、常にウィードの情報や、隣国の情報を発信しているのだ。
そこで常に言われている事だが臨時放送は緊急の事態に流されることだと、一日一回は放送で伝えられている。
だから、臨時放送と聞いて緊張しないわけがない。
なにせ今回が初めてのことだからだ。
『臨時放送です。落ち着いて聞いてください。本日午後にセラリア様が病院に緊急搬送された模様です』
ザワッ……。
その言葉でウィード全体が揺れた様な感じがする。
『落ち着いて聞いてください。情報によりますと、セラリア様のご出産のようです。それでこの臨時放送ですが、事前にセラリア様のご出産の話を伝えることによって病院に関係の無い人が押し寄せることないようにするためです』
「なるほどな。こういう使い方をするのか」
王様は感心したとように頷いている。
『病院は現在も通常通りに営業しております。ですので、セラリア様へのご心配や関心は分かりますが、他の病人や病院に勤める人への邪魔になりますので、用の無い方は病院へ集まらないでください。ラジオで経過報告を行いますので、どうかセラリア様や病院の方々にご迷惑をおかけしないようご協力をお願いします』
なるほど、そういう事なのか。
そう言った感じで放送を聞いていた人たちは頷いている。
「というわけだ。何か見舞いに良い品はないか? 娘がここによく顔を出しているのは聞いておるからな」
「なるほど。少々お待ちください」
王様の言う通り、この二号店は軍事施設から一番近いので、お昼の弁当屋や軽食をよく軍の人たちが買いにくるのだ。
勿論、セラリア様もだ。
最近はご懐妊の関連で顔をあまり出さなくなったが、それでもたまにこの店に訪れてはお菓子の材料などを買っていかれる。
確か、クッキーを作るとかなんとかいってた。
なら、色々なクッキーをもっていけば喜ばれるのではないか?
合わせて紅茶などもいいのではないか?
本来セラリア様が自分でいれられるようだが、病院では流石に無理だろう。
そんなことを考えながら、スーパーにある、贈り物用の包装紙がまかれてるクッキーと紅茶のセットをいくつか取り出す。
ウィードは現在10以上の国とゲートでつながっており、観光客も山ほど来ている。
その関係で、スーパーラッツでもこういった贈り物商品を多数扱っているのだ。
「お待たせしまし……た?」
色々見繕って、ついでにスーパーラッツからのお祝いの品も合わせて王様へもって来たのだが……。
「お父様!! 護衛もつけずにここまで来るとは何事ですか!!」
「あ、アーリア落ち着け。ここは婿殿のダンジョンだし、セラリアが出産って聞いて……」
「それは私も存じています!! だから、準備をしていきましょうと言いましたよね!! それを部屋に迎えに上がればいなくなってるし!!」
……流石に私でもそれは不味いと分かる。
が、王様の気持ちもわかる。
自分は孫がいるわけではないが、既婚していて、嫁が出産の時なんか仕事場を飛び出して行ったものだ。
「あ、あの、こちらが見繕ったものですが……」
とりあえず、アーリア様に怒られている王様を救うには私が横から声をかけるしかない。
「あら、これは失礼しました。どうもありがとう。代金を支払ってあげて」
首根っこを捕まれて既に白目をむいている気がするが、王様は多分無事だろう。
とりあえず、代金をいただいて、入口まで見送る。
「今日はうちの王が失礼をいたしました」
「いえ。とても素晴らしい王様だと思います。家族のためにそこまでなれるのは素晴らしいことだと思います」
「そう、ありがとう」
アーリア様はとても優しい顔でお礼を言って去って行った。
右手に王様を引きずったまま。
「……ある意味セラリア様の姉君で間違いないな」
そして、仕事の続きをしようと店内の奥に戻ろうとすると、また自動ドアが開いて……。
ドドドドドド……!!
多くの人が入って来た。
「な、なんだ!?」
「副店長!? 先ほどの放送でウィードの住人が祝い準備で色々買いこみに来てるようです!!」
「そういうことか!? でも時間はもうすぐ閉店だぞ、上と連絡してみないと……」
「副店長、ラッツ代表から連絡が来ました!! どうせ騒ぎになって、店の需要もあるだろうから今日は申し訳ないけど全店延長3時間頑張ってくれ。とのことです!!」
「よし!! 上からOKが出たなら構わん!! 皆、残業頑張るぞ!! そして俺たちも仕事が終わればセラリア様の出産祝いやるぞ!!」
「「「おーーー!!」」」
今日のウィードは年末みたいに朝まで騒ぎっぱなしだろうな……。
そんなことを考えつつ、慌てて品出しに戻るのだった。
side:ラッツ
「ふう、お疲れ様です。エリス」
「そっちもお疲れ様。私は放送で病院に人が集まるのは阻止したけど、外はもうお祭り騒ぎね」
「そりゃ、一応ここの領主、女王様の出産ですからね。こんな日に時間通りに店じまいしたんじゃ暴動が起こりますから」
私たちはそうやってお互い身重な癖に、ウィードで問題が起こらないよう対処して再び病院にもどってきました。
「もう、ルルアが産んでちゃったり?」
「どうかしら?」
で、皆が待っている待合室に行くと、そこにはソファーで横になっているお兄さんがいました。
「お兄さんどうしたんですか? って寝てる?」
私がお兄さんの顔を覗き込むと、安らかな寝息を立てています。
うん。
「襲っていいですか?」
「ダメよ。ようやく寝かしたんだから」
「ラビリスがやったんですか?」
「そうよ。ユキが30秒置きにまだかって聞くから、流石にうるさくてね。寝かせたわ、魔術で」
「あー、なるほど。お兄さんにも欠点がありましたか」
私がそういってお兄さんを再び見ると、リーアとジェシカが枕とタオルをお兄さんにあてがっています。
「可愛いんですよ。ユキさんがもう慌てて」
「流石にうるさくて寝かしつけましたが、そのまましておくと風邪をひきそうですからね」
これは、お兄さんの代わりに私たちは起きておかないといけませんね。
いや、眠気なんて全然ありませんが。
「お菓子とかもってきたのです!!」
「みんなたべよー!!」
そう言って、色々準備をしてきたのか、フィーリアとアスリンが待合室に入ってきます。
うん、これだけあれば一夜を過ごすには十分でしょう。
祈ることしかできませんが、セラリア、ルルア頑張ってください。
さあさあ、出産目的はそろそろ察せるかな?
わざと引き延ばしてるのは、ある花が咲くからな!!
子供の性別と名前は予想がついているのではないでしょうか。
あと、PS4のブラッドボーン、魔界戦記ディスガイア5、閃乱カグラ、俺はどうやって全部のゲームを同時に進めればいいんだーーー!!




