第1934堀:ここで必要になるのはなんでしょう?
ここで必要になるのはなんでしょう?
Side:アスリン
「うわ~、なんか歴史ドラマみたいなことになっているよね~」
私がお兄ちゃんたちが調べている時系列整理の報告書を読んで、素直に感想を漏らすと、同じように読んでいるフィーリアちゃんも頷きつつ。
「そうなのです。大きな事件の香りがするのです。ハヴィアもそう思うのですよね?」
そうハヴィアちゃんに同意を促すと……。
『いや、一応私は南端の森を調査始めているんだけどね?』
ハヴィアちゃんたちは、モニターの向こう側にいてその背景には森が広がっている。
渓谷、谷底とは違う環境。
荒野とは全く別世界ではあるけれど、オーエの森とどことなく似ている。
やっぱり魔物はこの環境から北上してきたんじゃないかって思うほどに。
まあ、ほかにも森はあるんだけど。
『とはいえ、なかなか興味深いよね~。漫画や小説を読み込んでいる私から見ても、アスリンの言う通り、歴史ドラマとか大きな物語を感じるよね。まあ、現実はそこまでないことも多いけど』
「まあ、漫画や小説みたいなことが毎回あったら世界の危機が幾度あるか」
「そこは言わないのがお約束なのです。でも、ウィードが関わっているならある意味で、世界の危機なのです。兄様を怒らせてブレーキを壊せば、真面目に大陸一つなんて簡単に消し炭に変わるのです」
うん、フィーリアちゃんの言う通り、お兄ちゃんが遠慮とか配慮をしなければ、本当に大陸一つどうにでもなると思う。
でも、あの優しいお兄ちゃんがそんな手段に出るってよほどだけど。
逆にそうなる状況を説明してほしいぐらいかな?
『うん。そこは同意だね~。お兄さんならその程度はできるだろう。と、そこはいいとして、この報告書を見てって話だよね?』
「あ、うん。一応私たちにもなにか繋がりがないかって話になっているんだけど……」
「1000年前となると、調査しているところには痕跡も何もないのですよ。ですよね、ハヴィア?」
『だね~。何の遺跡も……。ああ、そういうことか。アスリンは、何か意識して探してみるようにって言っているんだね?』
「そうだね~。でも、元々探しているでしょ? なのにオーエから荒野に出た人は一切見つからないし、どうなっているのかなって不思議だけど」
そう、荒野は未開の地ではあるけれど、オーエの王様が言うには新天地を求めて荒野に出て行ったっていうのはあったみたいなんだよね。
これが気のせいっていうのはありえないし。
「ふ~む?」
なんかそこでフィーリアちゃんが首をかしげます。
「どうしたの? 何かひっかかった?」
「そうなのです。荒野に新天地を求めたというのはオーエの王様から聞いているのです。つまり、情報があるのでは? そちらをまずは調べるのが大事じゃないです?」
『「あ」』
その指摘に私たちは思わず声を上げる。
確かに、荒野に出たとしか聞いていないよね。
でも、どんな人たちが、どれぐらいの人数で、どの時期に出てったとかはわかるはず。
『オーエ王が覚えているというから、1000年ほど前じゃないだろうけど、それでもその人たちの痕跡を見つけるのは大事だよね』
「うん。そういう人たちがいれば今後の指針になると思う。でも、南端の調査もあるしな~」
今から人探しっていうのは、ちょっと方針が違いすぎるし。
私たちはあくまでも、魔物がどうして北上してくるのかっていうのがあるし。
「確かにフィーリアたちも陸上戦艦を制作する必要もあるのです」
『あ~、マジで作るの? ホバートラック?』
「それよりも大きいのです。ビッグ〇レーを目指すのです」
『それってモビル〇ーツもつくるの!?』
「いつかは作りたいのですが、今は陸上戦艦が先なのです。あると便利なのです」
『まあね~。アレは動く要塞だし。キャンピングカーが大きくなったものだし、あれ1つあれば、移動手段は事足りるし、家も安全だよね~。荒野とか走りやすいだろうし』
「むむむ!?」
ハヴィアちゃんの言葉になぜかフィーリアちゃんが反応する。
あ、いや、ビックト〇ーのこととかはそうだけど、なんか別のことで反応した気がする。
「そうなのです。新大陸の荒野は……陸上戦艦を走らせるのにちょうどいいのです。一応開発拠点の近くに土地を広くとってはいるのですが、実戦に近く、広くデータが取れる場所ってなると……」
『ああ、荒野がぴったりだ。今ならだれもいないし』
「あ、なるほど~」
確かに陸上戦艦って大きいから試運転とか、実戦する場所ってどこでしようかって悩んでたよね。
荒野ならそれがピッタリなんだ。
それで、私も思いついた。
「ねえ、フィーリアちゃん」
「なんなのです?」
「その陸上戦艦ってデータ取りのついでに、荒野に旅立った人たちの痕跡はもちろん、魔物の群れの捜索拠点に使えない?」
『使えるね。さっきも言ったけど、陸上戦艦はそのままキャンプ、拠点として使えるし、防衛の要塞としても運用できるんだ。それが投入できれば、荒野の調査はかなり便利だよ。とはいえ……完成が間に合うのかな?』
そこが問題だよね~。
「フィーリアちゃん。陸上戦艦はどれぐらいで出来そう?」
「うむむむ。今、フィーリアはもちろん、ナールジア姉様やエージル姉様、コメット姉様はもちろん、タイゾウさん、ザーギスとかも手伝っているのです。一応エンジンとか内部構造は出来ているのです。とはいえ、外装、装甲とかは大きすぎて作れていないのです」
『当然だよね~。陸上戦艦だし、大きさも小さな砦並みでしょ? そうなると簡単に用意できないよね。でも、エンジンとかそこらへんはできてるんだね。流石というべきか……』
うん、後は外装とか装甲を作るだけっていうのはすごいよね。
でも、その外装だからこそ、どれだけ時間がかかるかわからないってことだよね。
「ちょっとお兄ちゃんに聞いてみようか」
「兄様に?」
『そうだね。荒野での移動拠点として投入すれば調査隊の安全も図れるし、もし荒野に出た人たちがまだ健在なら接触を図る可能性も高い。というか、陸上戦艦の実働データも取れるんだし、ほかの国の目を気にせずに、だ』
「そこは大きいよね~」
「確かに。荒野への進出は各国は慎重になっているのです。それにロガリのガルツ傘下のランクス近隣の国とズラブルの支配地域の国で蝗害もあるので、そこら辺もあって簡単に動けないのです」
あ~、蝗害のこと忘れてた~。
まあ、何か進展があれば報告書が届くだろうし、そこまで心配はしていないんだけどね。
とはいえ、国としては無視できないことだし、足並みがそろわないっていうのもあるからね~。
『実際、新大陸の人が住んでいる地域は、報告書からでもわかるけど、かなり面倒なことになっているからね。と、そこはいいとして、ということで、陸上戦艦を動かすにはもってこいだろ? ねえ、フィーリア?』
「そうなのです。絶好の機会なのです。だから、それに合わせて開発速度を上げられればってことなのですね?」
『そうそう。お兄さんも今の説明をしてくれれば、速度を上げられるように手配ができるさ』
ハヴィアちゃんの言うように、今の話を言えば多少は開発速度は上がるとは思うけど……。
簡単に陸上戦艦ってできるのかな?
と、これはフィーリアちゃんたち次第か。
そんなことを考えつつ、お兄ちゃんに連絡を取って、今の話をすることにする。
『なるほどな。確かに陸上戦艦を投入すれば、よほどのことがない限りは単独で行動して調査をさせるだけでいいな』
『そうですね。こちらとしては荒野の防衛戦をこれ以上拡大することは人員的にはほぼ無理なので、助かります』
『ですね。いい案だと思うよ。最初聞いたときは驚いたけど、荒野の調査はもちろん防衛を考えるとあるとありがたいです』
私たちの提案を受けたお兄ちゃんはうんうんと頷いて、現場の南砦の防衛を担っているフィオラお姉ちゃんとトーリお姉ちゃんは、陸上戦艦の運用を喜んでくれている。
「で、どうかな?」
「流石に今の状態で開発速度は上げられないのです」
『だね。私たちはあくまでも南端での調査だし、お兄さんが命令変更するなら、ほかに行けるけど……』
うん、今の私たちはあくまでも南端の調査をすることが第一優先だからね。
とはいえ、私たちを動かさなくても、トーリお姉ちゃんたちの南砦の方で人員を捻出することもできる。
何せ、私たちは南端の森だからね。
流石に陸上戦艦は運用できない。
いや、木々を破壊していいならできるけど、流石にそれは最終手段だし。
『……話は分かった。セラリアたちと相談してみる。流石に俺の一存で速度を速めることは出来ないからな』
「行けそうなのです?」
フィーリアちゃんはお兄ちゃんが交渉、話をしてくれる結果がどうなるか気になるみたい。
『正直わからない。だから、フィーリア。開発速度を上げるために必要な人員と時間、物資量とかをナールジアさんたちと話で出してくれないか?』
確かに、そこら辺がわからないと許可も何もあったもんじゃないよね。
一人増やされただけで、どうにかなるわけでもないし。
「分かったのです。時間は……」
『そうだな、ナールジアさんたちを集めて会議をして数量を出すまでどれぐらいかかる?』
「……今の仕事を放棄させて、すぐに会議を始められるのなら、本日中に試算はできるのです」
『わかった。なら、明日の朝までに間に合わせてくれ。今日中にセラリアたちに事情を話して明日に会議ができるように準備を整えておく』
「分かったのです」
『それと、アスリン』
「なに?」
ここで私に話が飛んでくるとは思わなくて首をかしげなら理由を聞く。
『フィーリアたちの陸上戦艦の話はわかったが、南端の調査は継続で頼む。報告書を読んで分かったと思うが、1000年前から続く何かがカギを握っていそうだ。オーエが何をつかんだかは分からないが、何かが関係している。下手すると荒野も関係してくるかもしれん』
「あ~、そういう可能性がゼロだとは言わないけど、そうなったら面倒だよね~」
『だね。そんな漫画みたいな展開……ないよね?』
「今の時点で、漫画のような展開だからな? 現場で調査をしているハヴィアが物語のカギを握っているかもしれない!」
『や~め~て~!』
そんなハヴィアちゃんの叫び声と共に私たちは自分たちの仕事に取り掛かるのでした。
世の中「事実は小説よりも奇なり」という、想像の物語よりも、おかしいことが起こるという言葉があります。
なので、何かが起こっても不思議ではありません。
いや~、大変だ。




