第1924堀:ナイトマンの活躍と敵の発生源は?
ナイトマンの活躍と敵の発生源は?
Side:ユキ
映像の向こうには、ヴィリアことナイトマンがバッタバッタと敵をなぎ倒していく。
まあ、地球では見せられないスプラッタだけど。
いや、相手は魔物だからいいのか?
それでも人型だしな。
生首のオークやオーガとかはダメな気がする。
まあ、それでも当初の特撮ヒーローとかは、人を溶かしてしまう怪人とかいたし、行けそうな気もするような気が……。
と、いやそこはどうでもいいか。
いま大事なのは。
「報告します。冒険者部隊、領主軍、ともに接敵まであと10分の距離まで迫りました」
霧華の報告を聞いてわかるように、ようやくウエサの町の主力が到着したのだ。
いや、ようやくというのは違うか。
「意外と早いか?」
「はい。町で招集をかけてから約4時間でこの現場に到着しているので十分早いでしょう」
「敵の足止めは十分に成功していたってことか」
「はい。とはいえ、ヴィリア様、いえ、ナイトマンがいなければすでに先行していた冒険者30名は瓦解して、もっと敵は町に迫っていたかと」
「まあな~」
確かに、ヴィリアの加勢は大きい。
冒険者たちが全滅と言わないのは、霧華もあの冒険者たちが見極めて潰走すると思っているんだろうな。
まあ、数人は死ぬとは思っているだろうが。
特に突っ込んできたお嬢さんとか。
「そういえば投げたギルド長のお嬢さんは?」
「無事に回収されています。ダメージも回復したあとは冷静にオークを削ることに集中していますが……」
「なんか問題があったか?」
「意外とオークが強かったようです。オーガほどとは言わずともレベルは30後半で、倒すのに苦労していますね」
「へぇ。って言いたいが、オークの平均レベルを知らないからなぁ……」
しかも、環境によってレベルなんて上下するからなぁ。
「一概にこれというわけではありませんが、ロガリ、イフ、ズラブルでのオークのレベルは基本的に20後半です。30まで来ると上位個体の場合もありますので、オークのまま30後半というのは珍しですね」
「なるほど。確かにそれは高いな。環境のせいか?」
「それはなんとも。それにオーガが引き連れているのか、オークが付いてきたのかはわかりませんが、私たちの知識では大氾濫での指揮官でもいない限り群れる相手ではありません。むしろお互い縄張り争いをするタイプです」
「確かにそうだな。これは裏にやっぱなにかあるな」
「確実に何か潜んでいるかと」
うん、北部にヴィリアたちを向かわせた成果はあったな。
どう考えても、北部の魔物の攻勢は意図的だ。
下手すると南の荒野よりも魔王の存在とかがいてもおかしくない。
というか、同業者の可能性も高いな。
「そういえば、ダンジョンの有無は?」
「ヴィリア様たちからの報告はありません。それに中部、オーエでもダンジョンの存在はかなり珍しいもののようです」
「なんかそんな話を聞いたな。そこまで多い物ではないと」
この新大陸にダンジョンは多く存在していないらしい。
まあ、何をもって多く存在しているのかって話もなるが、一国に複数個というのが、まず珍しいらしい。
基本的に一国につき一個あればよい方らしい。
しかも大国レベルでだ。
小国では所有できないというか、攻め滅ぼされるレベルだと。
いや、無限の資源回収場所としては破格の場所だから、国としては確保しておきたいよな。
……そのダンジョンの実情を知らなければだが。
「やっぱり、どこかのダンジョンを押さえて調べることは必須か」
「外からではわからないことが多いので、いずれは……。ですが、今ダンジョンに踏み込むのは得策ではないかと」
「まあな。というか、今まで全然意識を向けていなかったからな」
「それは仕方がないかと。魔物襲撃もダンジョンではなく南から北上してきたものですし、それと同時にクリアストリーム教会の一派がオーエへと攻めてきていたこともあります。なにより、いまだにウィードはこの新大陸ではほぼ無名です。ダンジョンの価値が相応に高いこの大陸で簡単に侵入もできません」
「だよな~」
悲しきかな。無名の立場。
まあ、冒険者として入り込んでもいいが、それはダンジョンのマスターという存在と、その目的を知っているこちら側としては避けたいんだよな。
そんなことを考えていると、不意にセラリアが口を開く。
「それで、あなたとしては裏にダンジョンマスターがいると考えているわけ?」
「なんとも。この段階では何も言えないが、徒党を組んでいる現場を見るとな。荒野からの連中は同士討ちっぽいというか、逃げてきたって感じがあったからよくわからんかったが、こっちはほぼ指揮官がいるのは間違いない」
「それはそうね。とはいえ、姿かたちは見えないけれど」
「俺としては、根っこ、頂点が同じだったら楽だといいんだけどな~」
「前も言っていたわね。荒野、中央部、クリアストリーム教会、北部の裏にいるのが同じだといいなって」
「それだと、頭を潰せばあとは沈静化できるかな~って」
楽天的なことを言っているのは俺でもわかる。
とはいえ、混迷を極めるこの土地のことを考えると……どうしてもな。
それをセラリアも察したのか、痛ましげというか、優しい目つきになって。
「一網打尽となれば確かに楽かもしれないけど、世の中そう上手くはいかないわよ」
「だよな~」
そんな簡単なことはそうそうない。
というか、大本が一緒でも頭を潰せば即座に死に絶えるわけじゃない。
ロガリの闇ギルドと同じように、各々が勝手に動き出して面倒になるだけだ。
「でも、バラバラでもそれはそれで面倒なのよね」
「だよね~」
そういって話に入ってくるのは、カグラとミコスだ。
最近は色々本国の方で面倒があったと聞いているが……。
「二人もお疲れさん。キャリー姫からというか、ほかの派閥から色々言われているんだろう? 聞いた。ほかの連中を入れたいとか」
「あ、うん」
「そ、そうだね」
二人は俺が知っていることが意外だったのか少し動揺している。
まあ、二人の代わりをって話だしな。
「大丈夫だ。二人の代わりはいない。まあ、向こうは俺たちの中に入りたいからこそ言っているんだろうがな」
まったく、どこも同じことを考える。
同じ女性であれば、代わりが務まると思っているのか。
政治としてのやり取りは既に大使館を通じた窓口があるんだから、そっちから正式にやればいいものを。
俺の隣にっていうのは、俺が抱えているアロウリトの魔力循環及び魔力枯渇の情報を調べて解決するってことも含まれる。
これを身内でもないのに知られるわけにはいかないんだよな。
非合法な活動もするときはするし、下手な人物は入れられない。
各大陸の大国の長たちにもある程度は、クソ女神からの依頼で魔力枯渇現象を調べているとは伝えているが、詳細は教えていない。
何せ、下手をするとウィードの弱みを握られることになるからな。
マジで無暗に人を増やせないんだよ。
だからこその嫁さんが連絡要員という役割を果たしているんだ。
通常の業務だけをするなら、勝手に増員してくれって言っているけどな。
まあ、だからこそ、権力とかを握りたい連中はカグラやミコスの代わりを送り込みたいんだろうな。
俺と近いっていうのはそれだけ魅力的だというのは間違いないだろう。
が、特大の地雷でもある。
「ああ、その件なんだけど、別にあなたの側ってわけじゃなく、カグラたちの一つ下の部下って扱いでもいいじゃないって話が出ているけどどう思う?」
「もう一つ下? カグラたちの小回りの仕事ってことか?」
「まあ、そうね。でも、今回の新大陸の時のような動きの時はどうしても手が足りないでしょう? カグラたちがいつも行っている業務を担ってくれるのであれば、多少はマシになるんじゃないかって」
「そっちか……」
今回の新大陸の案件は確かに予想外であり、かなりカグラたちはもちろん、ほかの嫁さんたちにも無理をさせているは理解している。
とはいえ、それは異常があった場合だ。
「トラブルが起こっているときは良いが、平時は逆に仕事がなくなるぞ? そこはどうする?」
「それに関しては、別に役割を作ればいいのよ。カグラたちが担っている仕事を分担するとか。今みたいに仕事過多になる方が面倒でしょう?」
「確かにな。ついでにカグラたちへの文句を多少は減らせるか」
「そこが狙いね。キャリー姫もカグラたちに言うぐらいだから、それだけ上が詰めているってことよ」
「キャリー姫の手駒だけでウィード外交官を埋めたことで文句が出ているってことか」
「というか、あなたの隣ね。だからこそなおのことよ」
やっぱりそれが狙いか。
うーん、情報規制をかなりきつくすることになるが……。
「まあ、そこは仕方がないわ。というか向こうも承知の上よ。ウィードの、他国の内部に入り込むんだから」
「それはそうか。よし分かった。なら、カグラ、ミコス、キャリー姫に候補の話を伝えてくれ。今のままだと仕事が過多っていうのは間違いないし」
「そうね。わかったわ」
「は~い。わかりました」
先ほどとは違い、安心した様子だ。
俺がちゃんと対処しないといけない案件だよな~。
面倒ではあるが避けては通れないか。
「そういえば、ほかのところはどうなんだ?」
「他っていうと?」
「外交官メンバーっていうか、俺のところに来ている嫁さんたちはいずれにしろ、母国からの指示が少なくともあるだろう? カグラたちと同じように、ほかにテコ入れしろとか言われてないか?」
「ああ、なくはないでしょうね。とはいえ、カグラとミコスは元々地盤、つまり後ろ盾がキャリー姫だからってのもあるのよ。だから、私たちに報告は上がって来ていないわね」
「あ~、そうか。キャリー姫の方は表向き勢力としては強くないもんな。カミシロ公爵家もハイデンでの権力争いの時はノータッチに近かったからな」
なので、カミシロ公爵が前に出るならともかく、なぜか前王の娘であるキャリー姫がなんで外交官をって思っている連中がいるわけだ。
しかも、ウィードとは、俺という王配を誘拐したとかいう失態付き。
それが縁でと言えば良い意味だが、逆にとらえれば、キャリー姫のせいでウィードとの関係がご破算になりかねないともいえるわけだ。
「状況は分かった。まあ、それでも嫁さんたちの背景が色々あるだろうし、その手の話を俺が直接聞くのは色々問題があるかもしれないし、セラリアからもそれとなく情報は集めておいてくれ」
「ええ、そこは任せて。今更、別の人物がやってくるとか、面倒でしかないのは間違いないもの。できて今の話に出てきたように、カグラたちの下って扱いよね」
「だよな。そこら辺のことも話を詰めておかないとな」
仕事を任せるにしても、どこまでとか詳しいところは俺たちで決めないとな……。
そう思っていると。
「主様。ヴィリア様、ナイトマンが撤退いたします」
「あ、そうだった」
モニターに視線を向けると、大勢が見る前で、残っているオーガ3体をまとめてぶった切るという、所謂見せ場を作り……。
『ナイトマンの出番は終わったようだな』
そういってその場を去る。
まあ、傍からすれば消えたように見えるだろう。
軍や冒険者たちからはどよめきが上がっている。
「わざわざ名乗って実力を見せ付けてから撤退するか。印象的ね」
「ああ、これでヴィリアたちとナイトマンが結び付くことはないだろう。あとは……」
「あとは?」
「ヴィリアのケアを。ヒーローにあこがれてもいない限り、あの振る舞いは精神的なダメージは大きいしな」
「ああ……」
俺の言いたいことが分かったのか、セラリアは撤退しているナイトマンの姿を寂しそうに見つめるのであった。
凄いぞナイトマン! 強いぞナイトマン!
せかいのへいわはきみのてにかかかっている!
棒読み。




