落とし穴18掘:不正経費?
不正経費?
side:エリス
すこし、前のお話、お祭りの時の彼とのお話です。
「ふむふむ、では、ここに警備の人を、はい、魔物では駄目です。人でお願いします」
コールでトーリやリエル、警備部とお話をつけつつ、手元の書類を確認していきます。
現在はお祭りで代表は全員は忙しくしています。
「え、貴族用の旅館で問題? 其方はナールジアさんが対応を……、鍛冶の方の見学案内に出ているのでいない? 他の人員で対応はできない? 代表を呼べと?」
まったく、お祭りも4日目これがあと3日。
大きな問題は起きてはいないとはいえ、小さな問題は山ほど。
書類をテーブルに置いて、横で対応をしているラッツに目をやる。
「はい? 又窃盗? 4号店ですか? なるほど、じゃ問題はなさそうですね。ん、別の方で問題ですか、アイスの在庫が切れてそう? 種類は? 書類を纏めておいてください、3号店、2号店のを持っていきましょう。こちらから話通しておきますんで、2時間で来ないなら直接連絡をとばして……」
私よりも色々忙しそうです。
仕方がないので、声をかけるのをあきらめて、テーブルをペンでコンコンと叩く。
その音でラッツの視線がこちらに向く。
『貴族用旅館でトラブル。代表呼び出し私が行ってくる』
そう、コピー用紙に書いたのを見せる。
ラッツもそれを見て頷いて親指と人差し指で丸を作る。
それを確認してから、私は執務室を出ていく。
「あのエリス代表」
「どうしたの?」
私が廊下を歩いていると、会計部署での部下が話しかけてくる。
私と同じエルフ種族で、リテアの難民移動で来た一人だ。
彼女はエルフの里をでて、冒険者をやっていたが、怪我をして稼ぎがなくなり戻るにも戻れなくなって、そのままリテアで難民としてくらしていたらしい。
よく、奴隷に落とされなかったと聞いたら、なんと種族同士で難民が固まって自己防衛をしていたらしいのだ。
だから、思いのほか一万人の中には人族以外の種族が多くいました。
と、話がそれました。
その中で会計部署に来たのがティファニーというエルフ。
女性で私よりは年下。
会計に入れるほど学も算術もできる。
これほどの技能があって、リテアでなんで難民をやっていたか不思議なぐらいだった。
ユキさんに聞けば、クラック曰く、リテアは難民を雇うところが少ないそうで、難民の中で働ける人間はごく少数。
コネも何もないティファニーは働くことができなかったようだ。
「今回のお祭りの経費ですけど、不明な所がありまして」
「不明な所?」
「はい、一応名義はユキ参謀が使っているのですが、何を何処に、何時、という情報がさっぱり」
「どれ、持ってる書類にあるんでしょう?」
「こちらです」
直ぐに書類を渡してくる。
うん、ティファニーはやっぱり優秀だ。
「ごめんなさい。今から貴族用旅館にいかないといけないの。代わりにラッツと一緒に書類よろしくね。こっちの問題はユキさんに私から聞いておくから」
「あ、はい。お忙しい中すいませんでした」
とりあえず、問題点には赤ペンでチェックを付けている。
歩きながらだし、とりあえず、旅館の方を終わらせてからね。
さっさと、商業区の旅館に行かないと。
こういう時は指輪を使えば簡単なんだけど、ちゃんとした交通機関があるのだから、それを使うようにって言われている。
この指輪は代表の特権でなく、ユキさんは妻としての特権として使ってくれといいました。
つまり、代表でのお仕事では使わないようにってこと。
逆に私達に危険があれば存分に使っていいということ。
うん、嬉しい。
そんな事を考えながら、お祭り騒ぎの中心、商業区を抜け、貴族用旅館にたどり着きました。
「あ、エリス代表」
「お待たせしました。で、問題とは?」
「はい、それがですね」
そうやって、話を聞きだそうとフロントで会話をしようとしたら……。
「君が代表か?」
一人の貴族がこちらに向かって歩いてきていました。
「はい、代表のエリスです。なにかご用でしょうか?」
「ふむ」
その貴族は私を上から下へ舐めるように、胸と下腹部で一旦視線が止まりましたが。
「どうだ? 君は私の妾にならないか? そして、こことの繋ぎもやってほしい」
「意味がわかりません。私に何の得があるのかと?」
「私の妾になれば、貴族ではないがそれなりの生活が保障される。ここの様に、平民が無秩序に代表を務めることもないのだ」
この言葉で私はかなりイラッとしました。
私は望んでここにいるのです。
貴族などが全てだと思わないでいただきたいです。
「はぁ、お断りします。結婚済みですから。あと、ここよりいい生活があると? さらに、最初に申しあげました通り、この様な抜け駆けの交渉はペナルティの対象です」
「既婚か、そんなのは関係ない。君の夫に迷惑はかけたくないだろう? 明日にも仕事が無くならないといいが。おっと、これは交渉ではないよ。そんな心配があるだけさ」
周りの従業員が固まる。
この貴族、私の夫が誰か知らないな。
最初から言ったじゃないですか、得がないと。
「あ? どういうつもりでその言葉言ってるかおわかりですか?」
「おや、わからないかい? 君が私の妾になり、このウィードと繋ぎを自主的にやれば、それで済む問題だ」
他の見学の貴族はしまったという感じでこちらを眺めている。
部下に指示を出しているのもいる。
他の代表にも手出しするつもりですね。
ったく、こういう事も狙って私達を妻としたのですねユキさん。
感謝の念に堪えません。
「わかりました」
「よかった。では、部屋で一旦奉仕でも……」
「テメエの汚い物なんていりません。私の身と心は夫の物です。私の夫と他の妻に報告させていただきまして、厳正な処罰をさせていただきます」
「な、いいのか? 夫がどうなっても」
「どうにかできるならどうぞ。セラリア様の旦那様。ユキ様が私の夫です。頑張ってください」
「は?」
一国の女王の夫にケンカを売るとはいい度胸だ。
いや、女王にもケンカ売ってますけどね。
そのあとは、必死に私に頭を下げて、今回の事をなかったように頼む貴族がいました。
別段脅しだけですので、一々報告してたらセラリアは全員の首を落とさないといけないだろうから、報告はしていません。
ですが、この醜態を他の貴族に見られたので、この後の交渉ではどう見ても弱みで後に回るしかないでしょう。
さて、旅館の問題は片付き、ティファニーにもらった書類に目を通す。
「問題は、ここですね。確かに、少なくはない額が入っているわね」
でも、ここに関しての書類報告が全然ない。
おかしい、一つのイベントをするぐらいの額なのに、どこにも貸しきり申請とか、料理の注文とかの書類が付いていない。
ユキさんがこんなずさんな管理をするのでしょうか?
んー、何か怪しいですね。
ユキさんの名前を利用し不正に経費を使い込んだり、溜めこんだりするつもりじゃないでしょうね?
「あ、でもこのお金を受け取ったのは、教会って書いてありますね」
リテアが祭っているリリーシュ様の教会だ。
ますます変ですね。
現在のアルシュテール様の厳格な統治で不正を教会がやれば、所属者は首が物理的に飛びます。
しかも、他所のお金を巻き上げようとすれば、もう大問題です。
「うーん、これはユキさんに聞くより、教会にさっさと行かないと、お金が消えてしまいそうですね」
どれほど、お金が残っているかも心配ですが、証拠を隠滅される時間を与えてしまうのが一番問題です。
知らぬ存ぜぬでいかれると、調べるのが非常にめんどくさいですから。
私一人でどうにでもなりますし。
私より強い人なんて、ウィードでは身内ぐらいしかいませんから。
そうやって、教会へ忍びこんだのですが、そこで見たものは……。
「どう? 間に合いそう?」
「ええ~、任せてください。全然OKですよ」
楽しそうに会話をするユキさんと、教会の主……本物のリリーシュ様がいました。
「え、なに、浮気!?」
つづきます。
まあ、内容は前の話ででているので察することができると思いますがw
お祭りの時のあるイベントのお話ですw




