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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第1061堀:皇帝たちの見解と目指すもの

皇帝たちの見解と目指すもの



Side:ユーピア



「ふむ。やはり何ぞ目的があったようじゃな」


ワシはショーウから受け取った報告書に目を通しながら呟く。


「それは当然でしょう。あのユキ殿たちがただの物見遊山であの女神の教会へ足を運ぶわけがございません。ちなみに、これによって療養していた我が国及びハイーン皇国の兵たちはすべて回収いたしました」

「これであの女神を名乗った者の処には、兵はおろかケガ人も残っておらぬな。しかし、まさか広範囲の回復魔術を行使して癒してしまうとは思わなかった。一体あの若者は何者だ?」

「はっ。それをうかうかと教えてやるか。というか耄碌したか、ウィードの王配というは知っておろうに」


フンと、ワシは鼻で笑いながら爺にそう答えてやる。

そう、ユキ殿は間違いなく王配である。

じゃが、ただの王配なぞではない。ものすごい技術を有する超大国の王配じゃ。


「いや、それは知っておるわ。聞きたいのは……。むう、なんといえば伝わるのか」

「ああ、気持ちはよう分かる。あれは得体も底もしれん。けっして敵に回してはならぬ。それは爺でもわかるようじゃな」


やはりこの爺。さすが、こういう所の危機感知能力は高いようじゃ。

伊達に大国を治めてはおらんか。


「なんと、それほどとは思ってはいなかったが、そこまでか?」

「ま、ルルア殿が起せし奇跡とも呼ぶべきかの回復魔術を見てなお敵に回せるアホがおるようなら、ぜひ見てみたいわ」


あの死にかけていた将兵を、思惑があったとはいえ一気に回復させてしまうほどの超貴重な回復魔術師。

ワシはあれだけの者を他には知らぬし、おそらく世界に5人とおらんじゃろう。

あの聖女とも呼ぶべき彼女と敵対すれば、たちまち一般市民どころか我が兵どもですら敵に回るじゃろう。

ルルア殿があの回復魔術だけであっても、国々をも従えるは易かろう。

なにせ、生死を握られているのと同じじゃからな。死にとうないものは唯々諾々と従うしかない。

まあ、ルルア殿が斯様な真似をせぬは、ショーウの治療を経験したワシが保証するがのう。

で、斯様な突出した人材を幾人も抱えておること自体がウィードの実力の高さを表しておる。


「確かにな。で、狙いというのはあの教会を潰すことか?」

「さあのぅ。じゃが、かの女神を名乗りし者を祀っておるは、この皇都であの教会のみ。更には、ひっとらえた馬鹿どももセラフィーナという女神に唆されたといぅておる。怪しさ満点じゃな。そんなところにワシはいつまでも兵を置いておけるか。これで表向き残っておるは教会の関係者のみということになる。まあどこまで関係があるかはわからんがのう」

「まあな。しかし、あれだけ強力な魔物を多数所持していて、これまで騒ぎどころか噂にすらにならなかったのは不思議だが」

「ああ、そこはマジック・ギアじゃな。あれで魔物を呼び出して使役していたのじゃろう」


そう、あの戦場における魔物の突如の出現。

しかもけた違いに強い魔物ばかりじゃった。

おかげで前線の兵士の被害はかなりあった。まったく、ハイーン皇国軍との戦闘以上の被害が出ていたのが非常に腹立たしい。


「たしか、ズラブルが魔物を従えている道具だったか?」

「そうじゃ。まあ、全く同じ物かまではわからんがのぅ。ま、あれだけ輸出されておったのじゃ。同じ使い方を思い付く輩がいても不思議ではあるまい」


そう、ワシらにも使えたものだ。

他の者に使えようが何ら不思議ではない。

あの宝玉、マジック・ギアの使い方に気付いたは、その存在を知ってより、ずいぶん後じゃった。

以後、能う限り独占を試みたが、他にあれを持って行ったものがおっても何も不思議ではない。

それに、かの者はダンジョンマスターとかいうものと繋がっておった可能性も否定できぬ。

ユキ殿が一番恐れておったことが、ある意味今回的中したのじゃろう。

まあ、幸い準備をしとったから被害は最小限に抑えられたということじゃ。

じゃが、裏を、ダンジョンマスターを押さえねば、再び同じ事が起こる可能性がある。

故に何としても情報収集をする必要がある。

今回のように強力な魔物を突如街中にでも出現させられれば、とんでもないことになるからのう。


「ふむぅ……。とはいえ、あのセラフィーナ教がなぁ」

「ん、信じられんか?」

「そうだな。これまでずっと、そして今回も、けが人を一手に引き受けてくれただろう? それはお前も知っているだろう」

「ああ、それは知っておる。とはいえ、あの決戦で強力な魔物と、そっちの馬鹿どもを手のうちに置いたということがある。ユキ殿が簡単に処理したからと言って油断するわけにもかん」


とはいえ、やはりハンスに実感はわかぬか。

ま、確かにこれまでの献身を知っておればこそ逆に、今回の行動は信じられぬのじゃろう。


「それはわかる。だがな、今回だってけが人病人が完治して出て行ったのに対しても、セラフィーナ教会の方は喜びこそすれ、なんら行動を起こすことはなかった。それはどう思う? もし教会が裏で糸を引いているのであれば、何らかの動きがあってもよいかとは思うが?」

「これまでとて、ずっとおとなしゅうしておったのじゃ。そもそもあの謀反は鎮圧された。それと関係がありました。などといえば、セラフィーナ教は潰れる他あとがない。素直に言うと思うか?」

「確かになぁ。ま、いずれにせよ調べることは決定している。……ああ、なるほど。じゃからユキ殿たちが向かったわけか」

「なんぞ気付いたことがあるか?」

「うむ。調査を自ら行うと名乗り出た理由だ。本来であれば、この地を統べる私たちが調査するものだ。相手の反発を考えてもな。普通、どことも知らぬ国の者がいきなり現れ、調査するなどといっても受け入れぬだろう」

「ああ、たしかのう」


そういわれれば確かに不思議じゃ。

それどころか、調査の手助けをするといぅたはこちらからの提案じゃ。

まあ、ユキ殿であれば確実にこちらが応援を出すと踏んでおった可能性もあるが、斯様な期待をするよりも先に、あの者であればこちらに手を回すじゃろう。

では、なぜワシらに報告だけで済ませた?


「わからんという顔だな」

「うむ。意図がさっぱり読めぬ。ユキ殿はそういう政治的バランスがわからん人物ではない。とならば『わざと』ということになるが……そのメリットがわからぬ」

「なるほど、そういうところは部下任せということか」

「そうじゃな。ワシはワシのなすべきことを為す。ワシが全てをやってしまうと、周りの者は己が力を発揮する場所を失う。適材適所に回す。それが基本じゃろう」

「確かにな。私もかつてはそうだったんだが……。と、そこはいいとして、ユキ殿がとった行動の答えだが。おそらくは、わざと無関係を装うつもりだったんだろう」

「わざと無関係を? ああ、そういうことか」


ここまで言われればワシもわかる。

そこまで鈍いつもりはない。


「つまり、ワシらは逃げ込む場所、ということか」

「そうだ。ユキ殿はあくまで私たちから許可を取って調べている。この、『私たちから許可を取った』ということは、私たちが止めに入れば……」

「ユキ殿は調査を中断するしかないのう。じゃが、そはある意味、やましいことがあると云うに等しい」

「うむ。私たちが許可を出したことを止めに入るとすれば、そういうことだな。なにせセラフィーナ教は私の治療だけでなく、大臣たちへも専属の治癒術師も派遣してくれていたからな。コネには事欠かない。『止める手段』は目の前にある」

「それを使わずにはいられないか。やましいことがあれば特にか」

「そうだ。ユキ殿はそれを狙っているのだろう。しかも今回の訪問は結局、ただ単に患者を治しただけだしな。あれを断る理由はないだろう。で、あとでルルア殿だったか? 彼女を取り込めばいいと考えるはずだ」

「なるほど。確かにルルア殿を取り込めればセラフィーナ教会の名声はさらに高まる。うかつに彼女の邪魔をするより取り込む方がよほど建設的じゃ。ま、そもそも断るだけの実力もないしのう」


加えて言えば、ルルア殿は如何なる条件を出されようがセラフィーナ教会なんぞになびくわけがないがのう。

そもそも、万が一、いや億が一であっても来てくれる可能性があるものであらば、如何様な手を使ってでもすでにワシが部下として迎えておるわ。

なにせ、彼女はワシの知りうる限り世界で一番の治癒術師じゃ。

医学の知識、そして魔術での治療。この二つを兼ね備えておる。


「そうじゃな。広範囲かつ強力な回復魔術師を敵とみなすなど愚かでしかないからな。しかも既に実力を民に見せておる。知っとるか? 今城下では『奇跡を起こした聖女』を称える者たちが数多くおる」

「それはそうだろう。何せあの病室にいた瀕死の病人に加え、教会に治療を求め偶然やってきていただけの病人やけが人、単に祈りに来ていただけの者など、セラフィーナ教会を頼っていた者だけでなく、偶然近くの通りにいただけの者たちまで全て回復したようだからな」


というか、そもそもルルア殿は本物の聖女じゃ。

それが今更、聖女と称えられようが本人は苦笑いじゃろうな。


「ハンスのおかげで狙いはわかった。さて、セラフィーナ教会の連中は一体どんな反応をみせてくれるものかのう?」

「私としてはぜひとも外れてほしいが。なにせ、潰すとなると、ハイーンのみならず各国に数多の支部が存在している分、かなりの混乱をもたらす」

「……うむぅ、そっちが難題じゃな」


うむむ。巨大な宗教はそういうところが厄介じゃな。

ただ単に『敵対したから潰す』というわけにもいかぬ。

下手をすれば、各国でのろしが上がってしまうじゃろう。

収束するのにどれだけ時間がかかるか。

……ハイレ教を相手取ることとなったユキ殿も、こんな気持ちじゃったのだろうか?

いや、かの者はうまくそこを収めておるから、やはり相談すべきか?


「そうか、そういう意味でもユキ殿は自らが出て行ったわけか」

「ああ、何かトラブルになっても『ウィードの責任』と言えるわけか。で、セラフィーナ教会のことを私たちが保護をすることで、そのトラブルを回避する。なるほど、どちらに転んでもどうにかなるというわけか」

「いや、結局、セラフィーナ教が『敵』だった場合、手間取るに何ら変わりはない。じゃで、何もないことを祈りたいのぅ」


そう、ワシらが望むのは何もないことじゃ。

敵が教会を本拠地になぞしてないことを祈る。

しっかし、されば敵の動きがつかめぬこととなる。

……むむむ。難しいのう。


「だな。ま、与しやすい相手の方がこちらにとっては都合がいいが……、なかなかそうも簡単にはいかんだろう。なにしろ、ズラブル大帝国がいた。我が国に不満を持っていたのはユーピアたちだけではあるまい」

「……確かにな。ワシたちが一番の勢力じゃったが、他の者どもがおらぬわけではなかろう」


そう、グスド王国のパルフィル王女とか特にのぅ。

そうじゃった、この引継ぎが終わった後に、王女のことも考えねばならぬな。

ワシが目指したものはその先にある。

……なんじゃ。結局のところワシがやることは何も変わらぬ。


「うむ。単純なことじゃったな。問題があらば対処していく。ワシが目指すは『恒久的な平和』である。そは無理じゃとわかっておろうとも目指さねばならぬ。いや、無理を可能にすることこそ人たるが目指すものじゃ」

「ああ。そうだな。そして、それこそは私ができなかったこと。それを目指してくれるのであれば何も言うことはない。うむぅ、馬鹿者にはそれがわからなかったのが悔やまれるが……。同じ地でユーピアに出会えたことは僥倖だ」

「爺が勝手に終わるな。最後の最後までしっかりこき使ってやるわ」

「ふん。いい死に方はせんな」

「今更じゃ。そは爺も同じじゃろうが。とはいえ、ワシを支えてくれる部下や、良き友人がたくさんおる。いくら反乱勢力がおろうが、このつかんだ『平和』を乱すわけにはいかぬ。ワシは皇帝である。この地に平和と安寧をもたらすために、それが続くようにと立ち上がった。これからがワシたちの夢の始まりである」


そう。ワシらは今やっと目指した戸口に立っただけにすぎぬ。

ここであきらめるなどせぬ。

たとえあのユキ殿が失敗しようが、ワシがフォローすればいい。

なんでも来るがいい。



これがワシの、『ズラブルの覚悟』である。




どちらも目指すのは平和。

平和のために戦い、争う。

矛盾してはいますが、そうやって人は大きくなっていくのです。

人と人、村と村、町と町、国と国、さてその次はどうなるのでしょうね?



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