第1036堀:地元の人に聞きましょう
地元の人に聞きましょう
Side:フィーリア
「おー、雪なのです!」
「雪だねー」
「そうね。一面雪ね」
フィーリアたちは今、大山脈の中腹の森は飛び越えて、山頂近くの雪が積もってる所に降り立ったのです。
そこは見渡す限り一面の銀と岩の世界。
「フィーリア。あまり大きな声を出すのはやめなさい。いつ雪崩が起きるかわからないわよ」
「ごめんなさいなのです」
ミリー姉様に叱られたのですぐに謝るのです。
確かに雪山で大きな声を出すのはだめなのです。
雪崩が起きて一巻の終わりなのです。
注意が足らないのです。
「えーと、魔力測定に異常なし。魔術の発動も問題なし。みんなどうだい?」
「はい。問題ありません」
「問題ないよー」
「普通ね。異常なしだわ」
「ええ。問題ないわ」
おっといけないのです。
新環境、新たな場所ではまずは魔術や科学がちゃんと運用できるかの確認が必要なのです。
いざという時になって使えないのを知らなかったなんてダメダメなのです。
ということでフィーリアもモニターを点検して……。
「フィーリアも大丈夫なのです。魔力、魔術放出、科学の方も全部無事に動いているのです」
「うん。フィーリアのほうも問題なしだね。よし、全員問題なし。まずは……ベースキャンプの場所を確保しよう。あたりは一面雪だ。ゲーエンの調査も、ヒュドラの調査もまずは拠点を確保しないとできない。いいかな?」
エージル姉様の言う通りなので、誰も異議はありません。
拠点がないとおちついて調べるも何もないのです。
「よし。じゃあ、さっそく拠点作りだけど。まあ、昨日泊まったコンテナを置くだけだから設置には時間はかからない。問題は場所だね。今後の調査に便利そうなところを探さないと拠点からの移動に苦労することになる」
「とはいえ、どこに拠点を構えればいいのか私にはわからないのですが?」
「そうね。私にもわからないわ。アスリン、フィーリアはわかるかしら?」
どこが便利かと聞かれても、フィーリアもそういう拠点に関しては素人なのでさっぱりなのです。
アスリンだっておなじだから二人で一緒に首を横にふります。
「となると、エージル、ミリーはわかっているのかしら?」
「そうねぇ。まあ、冒険者としての経験だけど」
「僕も将軍としての経験ではあるけどね」
「それはどこでしょうか?」
「「まずは平らで広さ、空間がある場所」」
そう姉様たちは同時にいいます。
「冒険者の仕事でもよくあることなんだけど、魔物の動きの調査とか森の調査っていうのはどうしても長期戦になることが多いわ。最低一週間から一か月近く。そうなると大事なるのは……」
「そう物資さ。一週間分でもかなりの量だ。私たちはアイテムボックスのおかげで物資の移動にも保管場所にも困らないけど、この後私たち以外の人たちが調査するときや、魔物の解体場所なんかのためにも、それなりの広さがいるのさ。洞窟内なら空間だね。というか、物資なんかに関してはショーウ殿もよくわかってるんじゃないかい?」
「確かにその通りですね。軍の移動で一番気を遣うのはやはり物資ですから。下手なところにおいて奇襲をかけられ燃やされでもしたら、軍が食べていけなくなりますからね。それなりの場所を選びます。広さがあって守りやすい場所を」
あー、ショーウ姉様の説明はわかりやすいのです。
うん、物資っていうのは軍が動くのに一番大事なものって兄様がよく言っているのです。
ご飯が食べられなかったら人は動けないのです。
単純なことなのです。
だから、その食べ物を置く場所は広さがあって守りやすいところなのが理想なのです。
「でも、この辺りでそんなに広いところってどこにあるのかな?」
「そうね。ここって山だし…、そんなに広い場所なんて確保できそうにないけど?」
「むぅ、難しいのです」
「ま、そこらへんは辺りを調べて候補地を幾つか探すしかないね」
「そうね。慌てて一発でベースキャンプ地を見つけようとしなくてもいいわ。とりあえず、今日の日暮れまでに…、ううん、まあ準備もあるからお昼までには見つけるって感じで良いと思うわ」
「それって意外と時間がないわね」
そうなのです。
今はまだ朝ですけど、ちょっと歩きまわってたらあっという間にお昼になっちゃうのです。
「そうね。だからとりあえず山頂目指しながら探しましょう。一応魔術による防寒は働いているし、ふぶいてきても視界がゼロにならない限りは進めるから。問題はこの辺りの魔物だけれど……」
「見た限りはいないよね。上空から見た時もそれらしい魔物は見えなかったからね。まったくどこに身を隠しているんだか。クリーナの話だとヒュドラ以外にもワイバーン、ロックアイスゴーレム、サラマンダーってけっこう豪華な顔ぶれがいるはずなんだけどね」
「あぁ、それならわかるよー。ワイバーンさんもサラマンダーさんも火口のところにいるよ。そうじゃないと寒くて動けないもん。だから、この辺りの雪の中にいるのはロックアイスゴーレムさんだけ。でも、雪で埋もれているからなかなか見つけられないんだと思う」
おー、アスリンすごいのです。
「なるほど。確かにそうね。ワイバーンは寒い時期は動きが鈍りますからね。空に昇るときも上に行くにつれ寒いのであまり高いところには行きません」
うん。確かにそうなのです。
ワイバーンたちは温かいところが好きでよく浜辺とかで日向ぼっこしているのです。
「そうだね。普通野生のワイバーンは精々上空2000メートルまでがいいところだね。この大山脈は4000メートル級だし、ここにいる連中は通常のワイバーンよりも性能は高いんだろうね」
なるほど。この大山脈にいるワイバーンさんは強いってことなのですね。
「じゃ、とりあえず気を付けるべきはロックアイスゴーレムだけね。ということで、早速拠点になりそうな場所を探しましょう。いつふぶいてくるかわからないし」
「あ、そうだね。早速探そう」
「「おー」」
ということで、フィーリアたちは登山用道具を取り出して背中に背負ってさっそく雪山を歩くのです。
サクサク サクサクっと雪山を進むのは新鮮なのです。
いつもの訓練の雪山だと猛吹雪だからこうして雪を踏む感覚はないのです。
すぐに足を踏み外して転げ落ちたり、遭難して死亡判定を何度ももらったのです。
「ねえ。フィーリアちゃん。私たちってあっちから来たんだよねー」
「そうなのです。今日はよく晴れていて遠くまで見えるのです」
「そうねー。町は……流石に遠くて確認できないわね」
「これだけ高い場所からだから確認できてもおかしくないけど、まぁ、距離があるからねー」
「えーと、雄大な自然に感動するのはいいですが、とにかく拠点となる場所を探しましょう。というか、ミリー殿。私たちは飛べるのですから上空から探すというのはだめなのですか?」
あ、そうなのです。
ここまで飛翔魔術で飛んできたんだから、拠点になりそうな場所を探すのにも空からで問題ないはずなのです。
「それは最終手段ね。ゲーエンの調査も兼ねているんだから、ワイバーンとかを刺激するようなことはしたくないわ。下手すれば戦闘で一面荒らされるわよ」
「ふむ。確かにそうですね。ああ、そういうことですか、中腹の森では梢の合間を縫って飛び、抜けた地点で降りたのはワイバーンを刺激しないためですか」
「そうだよ。ワイバーンって自分の縄張りで空を飛ぶものを許さないからね。戦うことになっても勝てなくはないだろうけど、それで調査対象のヒントがなくなるのは避けたいからね。中腹はもう仕方がなかった。あの森を壊すことなく地上を歩いてなんてさすがに無理」
確かにあの森を切り開かずに進むのは無理なのです。
出来たとしても時間がかかりすぎるのです。
「ということで、面倒かもしれないけど歩いていくわよ」
「「はーい」」
みんなミリー姉様の言葉になっとくして、また元気よく雪山を登っていくのです。
ひたすらサクサク……と雪の道を進むのです。
たまに深いところとかにはまっちゃって、アスリンたちに引っ張って貰って脱出するなんてのもあって、吹雪じゃなくても雪山って大変だけど、うん冒険をしてるって感じがしたのです。
そして、そんな感じでみんなで山頂に向けて進んでいると、ついにお天道様が真上に来たのです。
「お昼になったわね」
「そうだね。とりあえず、ご飯食べようか」
ということで、フィーリアたちは近くのむき出しの岩に腰を掛けて、さっそく持ってきたお弁当を広げます。
今日のお弁当は兄様の手作りなのです。
4つあるおにぎりには別々のをふりかけをかけてあってカラフルおにぎりなのです。
「わーい、タコさんウィンナーだね」
「美味しそうなのです」
「ユキってこういうところほんとまめよね」
「んー。卵焼きが美味しい」
「そうだね。絶妙な甘さだよ。あ、ショーウ殿はどうだい?」
「あ、はい。美味しくいただいております。しかし、ユキ様はご自身で料理もなさるんですね」
「お兄ちゃんは料理上手だよ」
「美味しいのです」
「あはは。一国の王配たるかたが料理ですか……」
「それってただの趣味みたいなものだから気にしなくていいわよ」
「そうね。ユキさんのあれは道楽ね。ま、美味しいからいいじゃない」
にぎやかにお昼ご飯を食べていると突然、ちょっとむこうの方にあった岩が動き出して……。
ゴゴゴ……。
おお、ロックアイスゴーレムが出てきたのです。
「「「もぐもぐ」」」
「ちょっと!? 皆さんお昼を食べるのが優先ですか!?」
当然なのです。
あの程度の魔物でフィーリアたちの食事は止められないのです。
食べられるときに食べる。戦場のおきてなのです。
ズン ズン……。
ロックアイスゴーレムはこっちを見つけたみたいでゆっくりとこっちに歩いてくるのです。
だけど、雪が足に埋まってなかなか前に進めないのです。
「なるほど、雪っていうのは魔物にとってもつらいみたいね」
「案外これが大山脈からめったに魔物が下りてこない理由なのかもね」
「ありえるねー」
「皆さん何をのんびり観察しているんですか!? こんな足場の悪いところでは衝撃力の高い魔術や攻撃は行えませんよ! どうするんですか!?」
「えーっと、ちょっとまってね」
アスリンはご飯を食べ終えたようで、ロックアイスゴーレムの方へテクテクと歩いていくのです。
「アスリン殿!? みなさん止めないと!」
「え? 大丈夫なのですよ?」
「ええ。アスリンなら問題ないわね」
「任せましょう。案外何か情報教えてもらえるかもしれないし」
「そうだねー」
私たちがそんなことを話しているうちに、ズボッと雪に埋まっちゃったロックアイスゴーレムをアスリンが引き抜いて、助けてあげてたのです。
「はい!?」
ショーウ姉様がすっごく驚いているのです。
ああ、そういえばアスリンのああいうのを見るのは初めてだったのです。
と、そんなことよりご飯ご飯。
「大丈夫?」
「ゴゴ……」
「そっか。慣れてるんだね。怪我が無くてよかった。で、ちょっと聞きたいんだけど、どこかテントを張れるような広場みたいなのってないかな?」
「ゴ」
「あ、あっちだね。ありがとう」
そのロックアイスゴーレムと和やかにそんな話をしたアスリンがこっちに戻ってきて……。
「あっちにもう少し上ったら広場があるって」
「そう。じゃ、そっちに行きましょう。みんなご飯を食べ終わったらね」
「ええ。で、あのロックアイスゴーレムはおとなしかったけどどうしたの?」
「えーっとね、引っ張り上げたら助かったって言ってくれて、で、お手伝いするって」
「おー、さっそくお友達なのです」
「……力の差を実感したからですか」
こういう時はやっぱり地元の人に手伝ってもらうのが一番なのです。
兄様もいっていました。
さ、おなかも膨れたし冒険の再開なのです!
大事なのは情報収集。
まずは現地の人?に聞くのが一番。
世の中の常識だね。




