第1004堀:各国の交易状況ラスト
各国の交易状況ラスト
Side:ラッツ
「じゃ、ついでだし。私から説明させてもらうわ」
と、報告を続ける我がウィードの女王であるセラリア。
いやー、昔はただの脳筋武闘派だと思っていたんですけど、変われば変わるもんで、今じゃすっかり女王が板についてますねー。
まぁ、それを言うならみんななんですけどね。
私はそう思いながら、会議場でテーブルを囲んでいるみんなを見廻します。
王女に公爵令嬢、魔術師まではまあわかりますけど、果ては奴隷など、経歴を見ればなんで今の地位にいるのか?って感じですよねー。
あ、そう考えるとこの地位に上り詰めている私たち奴隷メンバーが何と言っても一番の出世頭。
うん。お兄さんについてきてよかったと心から思いますとも。
それに、かわいい子供もできて順風満帆といっていいでしょう。
うん、世界で一番の幸せ者!
……魔力枯渇現象解決とかなければなんですけどねぇ~。
おかげで今でも危険なことと隣り合わせ。
まあでも、それがなければ私たちはお兄さんと出会うこともなかったのですが。
と、いけない。
ちゃんと話を聞いておかないと。
まあ、ロシュール、ガルツの近況なんて特に問題があるという話はなかったんですけどね。
そう思いながら配られた資料に目を通しつつ、セラリアの説明に耳を傾ける。
「……ということで、どちらもウィードからの輸出物資の増加を要請してるわね。この件はエリスやラッツとの協議が必要かしら?」
「私というより、ティファニーとの協議が必要ですね」
「私も同じくノンに話を通さないといけませんねー。私もエリスも今や副代表ですし」
さらに言うなら、今期で副代表も終わりですし、いまさらあまり重たい仕事を任されると引継ぎが面倒ですからねー。
「ああ、そういえばそうだったわね。ま、要望の書類は正式には外務省の方に回ってくるでしょうし、その時はソウタ、エノル頼むわ」
「はい。お任せください」
「うむ。万事うまくやって見せよう。しかし、交易品を増やしてほしいというのは、うまくいっている国からすれば当然のことじゃ。で、トラブルの方はないのかのう?」
確かに今の話はいい話だけであって、トラブル関係はありませんでしたね。
「トラブルってことでは、我がウィードとロシュール、ガルツの間にはないわね」
「その言い方だと、各国各々では問題を抱えているって言っているようなもんだぞ」
お兄さんの言う通りですね。
さて、その問題ってどんなものなのでしょうか?
「問題がない国なんて有るわけないじゃない。クソ親父はともかくお姉さまの方からも同じ問題が上がっているわ」
ほう。セラリアのお姉さんというと、アーリア様ですね。
何度か貿易品の交渉の席でお会いしましたが、セラリアに似ず? いえ、今の女王として振舞っているセラリアをさらに物静かにしたような感じで、さすがに成熟しているといった感じの方です。
そのアーリア様までも同じように問題と言っているのですから相当なものでしょう。
最近ロシュール王はしょっちゅうガルツ王と一緒にウィードで遊んでいる姿が目撃されていて、しっかり為政者として振舞っている次期女王であるアーリア様の方が信頼されているという図式になっています。
まあ、あの王様自身がそういう評価になるようにうごいているのでしょうけどー。
ガルツ王も次期国王となる王太子殿下に後を継がせるために動いているようですし、やることが似てますよねこの王様たち。
と、大事なのはそこではなく。
「で、セラリア。問題というのは何なんです?」
と私が聞くと、セラリアはそれはすごくめんどくさそーな顔で……。
「別になんの面白味もない話よ。ロシュール内部ではウィードは属国であるがゆえに搾り取れって派閥ができて騒いでいるのよ。ガルツも同じ」
「あー、確かドレッサたちがゴミ掃除で会ったみたいなやつらですか?」
「そうよ。結局あの時に一掃しきれていなかったのよ。あのクソ親父が!」
なるほど、セラリアが怒るのもよくわかります。
ドレッサたちを危険な目にあわせたというのに、完全に排除できなかったみたいですねー。
私たちウィードを出汁にしておいて、この結果はなんとも……。
いえ、普通だったらこんな簡単に敵を排除できないですから、まぁ上手くやってるとはいっていいんでしょうが……。
私たちからすればいい迷惑ですよねー。
「ロシュールの方の状況はわかりましたが、ガルツの方はどのようになっているんですか?」
「ガルツの方は直接こっちに被害がないから勝手にやってって感じね。あぁ、あっちはシェーラを利用しようとしているもんだから、ローエルとかヒギルが怒り心頭で、全力でクソどもを物理的、社会的につぶしているみたいだから、ロシュールよりはるかにまし」
「あー、なるほど。そういえば先日、シャールがクソの片づけが済んでせいせいしたとか言ってましたねー」
「言ってたわね」
私の言葉にエリスが同意する。
シャールはシェーラの姉で外交、交易面でのガルツの代表。
シェーラはホント、みんなから溺愛されていますからねー。
とうか、ガルツって国全体の結束は固いかと思っていましたが、下の方にはやはりそういう勢力がいるものなんですねー。
「で、その問題はこっちには公式には相談がきていないってことか」
「ええ。ま、内部の問題だからね。こっちに泣きついてきたら蹴っ飛ばしていたわよ」
「アーリア姉さんのお願いでもか?」
「アーリアお姉様のお願いなら当然無償でやるわよ」
「「「……」」」
うん、いつものことですが、お父さんであるロシュール王とお姉さまのアーリア様の扱いの差が…。
別に悪い王様とは思えないんですけどねー。
ま、そこは家庭の事情ってやつですから、私たちが口を出すことでもないですが。
みんな苦笑いです。
「なによ? アーリアお姉様が依頼してくるってことはそれだけすごくまずいってことなのよ。クソ親父は単にこちらを利用して楽に片付けようって魂胆なのよ」
「あー、それはあるよな。あの親父は」
「そ、だからみんなもクソ親父から何か頼まれても無視していいからね」
「そんなことがあればまずセラリアに報告しますよ」
そのエリスの言葉に、私も含めて全員が頷く。
確かにロシュール王自身は私たちが断ったって怒るような人じゃないですけど、一国の王様ですからね。
ほかの人がいい顔をしないでしょう。
面子を気にする人も多いですし。
「ま、それでいいわ。で、私のところはこれぐらいね。あとはルーメル、そしてラスト王国だけど……」
「ルーメルの方は、一応同盟に参加してはくれましたけど、まだ本腰を入れてるって感じじゃないのよね。まぁ、あっちは独自にほかの大陸との船の往来があるから、うかつに輸出したくないんでしょうけど」
そう言って面白くなさそうにしているのはミリー。
ミリーは冒険者ギルドを経由してルーメル内部の情報を仕入れているみたいなんですよね。
だから私たちよりもルーメルのことに詳しいんでしょう。
私が知るのはせいぜい、ミリーが言った別の大陸の船が来て交易しているってことぐらいですね。
「ま、そこは仕方がない。ルーメルについては、ラスト王国のリリアーナ女王とミリーの勤めている冒険者ギルドから情報を集めておくしかないな。勇者たちのこともあるし、こちらからはうかつに手を出せない」
「あの方たちは帰るために動いていますし、その勇者をこちらで囲ったとなるとルーメルがいい顔はしないでしょう」
そうそう。ルーメルにも召喚という名の誘拐をされた、勇者と呼ばれる少年少女がいる。
って、もう数年前のことですから、もう皆成人していますかね?
と、それはいいとして、私たちとしては日本人ですしできれば保護してあげたいんですけど、本人たちは帰る方法を探しているので、魔力枯渇現象を探っている私たちとは方向性が違うんですよねー。
ま、私たちの方で帰る方法がわかれば、当然教えてあげますけど。
「勇者たちは向こうから接触がない限りはこちらから動く必要のない話だな。ルルアの言う通りルーメルは面白くないだろう。わざわざ無駄に不和を起こす必要はない」
確かにわざわざルーメルとの仲をこじらせる理由まではないのも事実。
若者たちが助けてと頼ってくれば助けるぐらいがいいでしょう。
あ、あとでお菓子とか送っておきますか。
こうした支援をして、人としては彼女たちとは仲良くなってますからねー。
「じゃ、最後はラスト王国だな。ザーギス」
「いえ、何をしれっと私に振っているんですか? これでも私は今やウィードの研究者でして、ラストの外交官ではありませんよ? というか私よりもリリアーナ女王の補佐をしている聖女エルジュ殿に聞いた方がいいでしょう?」
「そういうわけにもいかないんだよ。今はあの勇者たちと別大陸に出張中だからな。うかつに呼び戻すわけにはいかないんだ」
「はぁ。そういうことでしたら……。私が知りうる限りになりますが。特に問題はないとは聞いていますね。今では広くロガリ大陸のどこでも出稼ぎの魔族はいるようですし、もちろんウィードにも多くの魔族が訪れているのはユキもご存じでしょう」
「まあな」
ええ、そうですとも。
このウィードはホントに多種族が手を取り合って暮らす楽園ですからねー。
魔族だって自由に一緒に暮らせるんです。
まあ、リリアーナ女王と聖女エルジュの威光が強すぎるのか、長期にわたって逗留しても、なかなか引っ越までしてくる人はいませんけどねー。
「しかしながら、やはり魔族ということで各地でどうしても差別を受けたという話も聞くことはあります。そして、それが簡単になくなるとも思っていませんがね。まぁ、許容範囲だとリリアーナ女王陛下とレーイアも言っていましたしね。というか私が知る迫害を受けたのはレーイアなんですが」
「え? レーイアが? あの子なら速攻やり返すタイプじゃない?」
「確かにセラリア女王陛下と似通った部分はありますが……。実は、あの姿格好ですからね、迫害というか服着ろと子連れの母親から言われたそうです」
「「「あー」」」
確かにあの露出の多いのは、どうかと思いますねー。
おっぱいも信じられないほど大きいですし。
それでいてバランスが取れていると。
ルルアより大きくてあれはないと思います。
「服装に関しては今後の議題にあげとくか。レーイアは特殊なケースだが、たしかに露出が多い格好はレーイアだけじゃないだろう。男としても目のやり場に困るからな。ガン見するのはあれだし、目を背けるのもあれだ」
お兄さんがいうと説得力がありますね。
おっぱいごときでは簡単になびきませんから。
まあ、妻であるこのうさぎさんにはメロメロなんですが。
「そうね。共通の礼服なんてのを決めておけば服飾関連も潤うでしょう。グルメ大会に合わせて国際礼服も決めましょう」
あぁ、それはいい考えですねー。
これはいい儲け話ですよー。
材料は取り揃えておく必要がありますね。
で、これにて各国の状況が分かったのですが……。
「よし。みんなありがとう。当面のところ、大陸間交流同盟は大丈夫そうだな。あとはズラブル大帝国とハイーン皇国の戦いだな。どこまで長引くかはわからないが、ユーピア皇帝に助けを求められればそのままズラブル側につく。それでいいな?」
「「「はい」」」
見知らぬ他人より知っている他人ってやつですね。
まあ、ユーピア皇帝はもうこちら側だと思いますけど。
あとは今頑張っているフィーリアたちが成功するかって所ですね。
どの国もまあまあトラブルを抱えつつも何とかやっている模様。
ウィードに火の粉が降りかかる可能性は今はまだなさそう。
さて、グルメフェスティバルとかどうなるのやら。




