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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第953堀:本当の狙い

本当の狙い



Side:ユーピア・ズラブル



「ひー、腹がよじれる。いやはや、笑いすぎでここまでとなるなぞ、滅多にないことじゃ」


ワシは先程の大皇望ショーウの姿を思い出しては笑い転げておった。

いやぁ、あの天才をあのような呆けた顔に出来るなぞとは微塵も思っておらんかったからな。

痛快極まりない!


「……陛下。あまり大皇望様をからかっては、後で痛い目を見ますよ?」

「よいよい。たまには良い薬じゃ。確かに、あやつの頭は他人に比べてはるかに出来がいい。しかしながら、それだけで全てを予測できるわけではない。それをしかと実体験したじゃろう」

「確かに、それはそうですが……。ユキ様に整地してもらった費用を給金から差し引くなど、大丈夫でしょうか?」

「端からその費用は己が負担すると申しておったのじゃ。この程度で済んで何よりと思うじゃろう。それでじゃ。失敗の責任というのであれば、そもそもオーレリア港の略奪作戦を立案したのは大皇望じゃぞ。」


ワシは笑うのをやめて真剣に言う。

そうじゃ、ここで笑い話にしなければ、オーレリア港攻略作戦を立てたショーウをも処罰しなくてはいけなくなる。


「なるほど。今回のことで、オーレリア港攻略の失敗を無しとするつもりですか」

「うむ。あのように、大皇望ですら予測出来ぬモノを相手にしたのだということが明らかとなり、周知されたわけじゃ。これで、ヴォルを責めるものも少なくなるじゃろう」


国が大きくなるとどうしても周りを押し退け、踏みつけてでも昇進、名誉を求める連中が増えてくる。

上を目指すその精神はいいが、味方を傷つけては意味がない。

それを押さえる為に利用させてもらう。


「まあ、それによってウィード、シーサイフォとの繋がりが出来たのは不幸中の幸いじゃった。これで二人には巻き返してもらう」

「あの戦闘が無ければ、そのままグスド王国にウィード、シーサイフォが取り込まれていた可能性は高いですからね」

「うむ。そうなっておった場合の被害を考えるとぞっとするわ。その最悪の事態を避けられ、縁をもてたのじゃから僥倖じゃった。何事も無くただ訪問されておったら、門前払いしておったじゃろうからのう。大皇望の言う通り、あのような荒唐無稽な話、誰も相手にせんわ」

「当然ですね」


ワシの言葉に同意する副官。

そう、今回の戦闘は正直なことを言えば不幸中の幸いなどという後ろ向きなものではなく、正しく幸運じゃった。

普通なら、ウィード、シーサイフォが訪問してきても門前払い。

そして、グスド側、つまり旧王家側につかれて、甚大な被害を被ったに違いない。

だれが、あのような魔術道具の実在を信じるものか。


「8万が瓦解しただけで済んで良かったという日が来る。近いうちにな。それを大皇望もしかと理解したじゃろう。これでなお、妙なことを言うようであれば、国のためにやつを罷免せねばならぬ。文句はないな?」

「ありません」


ま、そこまで馬鹿ではないのは分かり切っておるがな。

などと考えていると、ノックもなしにドアがバンッっと開かれて、大皇望ショーウの奴が鼻息荒く入ってきた。

衛兵には、たとえ誰であろうと止めるべしと命令書を出すべきじゃな。と、心の中で思う。


「で、今度は何事じゃ? というか、ショーウ、お前は礼儀すら忘れてしまったか? 上に立つものがルールを無視しては他の者たちに示しがつかん。それはお前自身が良く分かっているじゃろう?」

「すみませんでした。ですが、火急の際には省略されるという法がございますので、この度はそれを適用ということでお願いいたします」


そんな法あったかのう? と、副官に視線を向けると、頷いて……。


「戦時報告においては緊急の場合認められております。伝令役の一般兵であっても可と」

「あー、あったのう。で、そこまで火急の用事ということか?」

「その通りです。ウィード、シーサイフォの件です。まさか、このお話の優先度が低いなどとは言わないですよね?」

「言わんが、礼儀を無視していい程かは疑問じゃな。まぁ、よい。常日頃はきちんとわきまえるという事でいいのじゃな?」

「はい。礼儀を無視するようでは、上に立つ者として失格ですからね。では、話を進めさせて頂いてよろしいでしょうか?」


ふむ、とにかく話をすることを急いでおるな。

ここは揚げ足を取るのはやめて聞いた方が良かろう。


「よかろう、ショーウ。お主はウィード、シーサイフォと話し合い、それに関し何かをワシに報告と認可を求めて来たということでよいか?」

「はい。間違いございません」


半日にも満たぬ間にしたことで、一体どんなことを報告をしてくるつもじゃ?

ワシは内心首をかしげていると、ショーウが話を始める。


「まず、今回のウィード、シーサイフォとの同盟の件ですが、見事な判断だったと存じます」

「ほう。そのこと、素直に認めるか」

「当然です。あれはまこと、敗走したものがでっち上げた荒唐無稽なただの言い訳などではありませんでしたから。むしろ、そもそもよく陛下はウィードとシーサイフォのこと、信じお認めになりましたね」

「ワシらも最初は半信半疑じゃったよ。しかしながら、あのヴォルがこの一身に替えてと強くいいおったからな。多少なりと話を聞いても良いかと思ったわけじゃ。そもそも、ヴォルがたとえ惨敗を喫したからといって、つまらぬ嘘をつくわけがないからのう」


そう、ワシがウィードを無下に扱わなかったのは、ヴォルがおったからじゃ。

ヴォルの功績、そして今までの信頼が無ければそのような判断はしなかったじゃろう。

その答えを聞いたショーウは納得したように頷いて。


「なるほど。忠臣からの命がけの提言だったのですね」

「うむ。下手をすれば、ただ敗残した愚か者の言い訳とその場で切って捨てられかねなかった。そうなっておれば末代までの恥となったじゃろう。だがそれをも覚悟してワシらに直談判した。見事じゃ」

「はい。ヴォル将軍の判断は決して間違っておりませんでした。いえ、一つ間違えていれば、我が国は窮地に立たされていたでしょう。……ウィード、シーサイフォの国力は計り知れません」


どうやら、ショーウもワシたちと同じ結論に至ったようじゃな。


「まず、陛下がウィードのユキ様からお貸出し頂いているこの無線機なる魔道具ですが、ご存知のように我が国でも開発に成功していない小型遠方連絡魔道具です。これだけでかの国々の技術力の高さがうかがい知れます」

「確かにな。しかもその場の風景までも送れる、更に優れたものもある」

「そちらも確認いたしました。……あれが我が国に提供されれば、各戦線の状態把握も容易となりますし、連絡も文字通り密に出来るようになります」


そうじゃな。

流石にあの遠隔地の風景を見られる魔道具までは貸してくれなかったが、無線機は何かあった時の連絡用にと、いとも簡単に預けてくれおった。

いや、先程のショーウの呆け顔は流石に面白かったな。


「何か笑うような点でもございましたか?」

「ん? いや、この無線機だけでも我が国の強さ、団結力は跳ね上がるじゃろうなと思ってな」

「……もっと邪悪な笑みと感じましたが……。まあ、内にも怪しいものがいますし、その摘発にほくそ笑んでいたということにしておきましょう」


おっとまずい。

思い出し笑いを見抜きおった。

まったく、油断ならんな。

とはいえ、ショーウの言う通りである。

この無線機を使えば、ズラブル内部の膿を出すことも可能じゃろう。


「国として健全になるのは喜ばしい事じゃ。特に我がズラブルにとってはな」

「はい。特に外での風評はひどいものですからね。それを利用した旧皇帝派による調略も大々的に行われています。それを撥ね退けるのにこれ以上の物はないでしょう。ということで、無線機の大量貸し出しを頼みたいと思うのですが、いかがでしょうか?」

「構わんぞ。それによってウィードの機嫌を損ねないのであればな」


問題はそこだ。

ウィードが敵になってはなにより困るのだ。

そこを鑑みると、徐々に話を詰めていくしかない。

下手をしてかの技術が敵にわたってしまうことにでもなれば、終わってしまうからのう。


「そこについては私に考えがあります。というか気が付いた点がございます」

「ああ、元よりそういう話だったな。何か、ウィードの技術力と見合う物資でもあったか? 金貨であの技術が得られるなら、多少なりと融通させる。軍団規模の額ならだしてよい」


金で買えるなら正直安い物じゃ。

とはいえ、我がズラブルの財布にも上限はあるからのう。


「いえ、かの国はお金にはさほど興味はないでしょう。あれほどの技術力です。我が国以外にも取引相手は多いでしょう」

「当然じゃな。では、お金以外となると、いったい何があると気が付いたのじゃ?」

「簡単です。かの国はこの地の情報を求めています。それを対価とすれば応じてくれるものと考えます」

「この地の情報? 軍事にかかわることは流石に教えられんぞ」

「そういう意味ではございません、陛下。今一度よくお考え下さい。なにゆえウィードはズラブル大帝国と交渉に至ったのか?」

「ん? それは、我が国との戦争を回避するためじゃろう? かの国はグスド王国によるバカな拿捕に困っていたシーサイフォを助ける為にきたのじゃからな」


そう、そもそもの始まりはグスド王国がバカをやったせいだ。

使者を船ごと拿捕なぞしおって。我が国との戦争に、関係ないウィードやシーサイフォを巻き込むやつがあるか。

とはいえ、ワシらが追い詰めすぎたことも原因の一つではあるがな。


「そうです。本来彼らは何事も無く使者と船の安全さえ確保できていれば、オーレリア港を領有することも、我が国に訪れることもなかったはずです。違いますか?」

「む。そういえばそうじゃな。戦ったのも、グスド王国を助けるためではなく、オーレリア港に住む人々を助ける為に動いたというのが実情だったようじゃ」

「当然でしょう。善政を敷こうとする為政者であれば、目の前で略奪される民を放っておくというのはあり得ないですから、義憤に駆られるのは当然かと。しかも、何もしなければ自分たちも被害に合うのが目に見えていましたからね」


その通りじゃ。

今回の我がズラブルとウィードは、その偶然によって不本意な戦闘をしただけじゃ。


「ならば、なぜウィードはオーレリア港を欲した? あんな維持の難しい土地を持つのは、本来国としては負担のはずじゃ。命を助けたいのであれば、単にパルフィル王女を伴って帰ればよかったのじゃ」


ここでようやく、ワシはウィード、シーサイフォの行動とその目的に疑問を抱くことが出来た。


「そうです。本来なら、交易を今後ともよろしくだけでよかったのに。普通なら、こんな遠隔地にわざわざ維持の大変な土地をもらう理由などないのです。つまり……」

「なるほどのう。ワシらの知らぬ何かを求めてきたという事か。まあ、マジック・ギアがこちらで使われているということもあるじゃろうが……」


それ以外にも、何か目的があるからこそ、その拠点としてオーレリア港を取ったわけじゃな。


「あれだけのために、飛び地となる土地をわざわざ確保するとは思えません。マジック・ギアは我々が輸入して、勝手に使用しているだけなのです。そしてその回収なぞ容易にできると思いますか?」

「むう。確かにそれは徒労に終わる可能性が高いのう。まあ、普通に考えれば非現実的じゃ。となると、ほかに何か狙いがあるということになるな」


しかし、ワシにはそれが何か、さっぱり分からぬ。


「それらを踏まえて考えると、ウィード、シーサイフォはこの土地に彼らが望む何かを見出しているということです」

「なるほどな。だからこそ、ユキ殿たちが欲するのはまず情報というわけか」

「御意。何をするにしてもまずは情報。すべての基本でございます」

「うむ。話は理解した。王家の禁書、軍事以外の情報開示は自由にせよ。町や村の位置も全て教えてよい」

「はっ」


さてさて、ウィード、シーサイフォは何を狙ってこの大地にやってきたのか。

大皇望ショーウなら見事情報を引き出してみせるじゃろう。

ワシはそう確信を抱きながら、溜まっておる書類仕事を再開するのであった。



「あっ。ショーウよ。ユキ殿に頼んだ整地の料金はお主の給与からさっぴいておくからのう」

「なっ!? くっ、ああいった手前しかたないでしょう……」


ちゃんと適切な料金を支払うのが国として正しいのじゃよ。

間違えた部下には罰も当然な。




こういうことで、ただバカにしたわけではなく、失敗を帳消しにするためのものだった。

そして、これから行われるのはウィードに対する情報収集と超技術を手に入れるための交渉。

オーレリア港でそういうバトルが繰り広げられることになる。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もちろん2回目の砲弾代も差っ引くんですよね。 帝国において信じ難いからと言って皇帝の言葉を信用しないとか反逆同然じゃないですか。
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