第914堀:お店サミット
お店サミット
Side:ユキ
なんだか、ステージが進むごとに同行者が増えている気がする。
いや、実際増えているんだけどな。
そんなことを思っている俺の視線の先では……。
「……ということで、あそこのラーメンが意外といけるんだよ」
「ほう、味噌ラーメンがか。不思議じゃな。妾には味噌とラーメンを組み合わせるなどとても想像できんな」
「ええ。お味噌汁というのは飲むものでしょう? それでラーメンを食べるというのは、どんな味わいになるのか気になりますな」
「いや、味はまあ、そのまま味噌なんだよ。だがな、それが麺と絡むことによって、また違う味わいが出るんだ。ほら、とんこつラーメンは麺がとんこつスープと絡んで美味いだろ。その味噌バージョンって感じだな」
「「ふむふむ」」
と、ローデイ王ことブレードとのラーメン談義に花を咲かせている、ハイエルフの女王ミヤビ、そして竜人里の長であるガウル。
「……ま、険悪になるよりいいか」
「そうですね。たしかにそれよりは遥かにましですね。ですが、サマンサの精神的負担は途轍もなく大きそうですが」
ジェシカの言葉にサマンサの方へ視線をやると……。
「まったく、陛下はいつもいつもいつもいつも減らず口を……。毎度毎度駆り出される私たちの……」
あー、なんかブツブツと呪詛を吐いてるよ。
しかも今はミヤビ女王、ガウル殿と話をしているから、下手に止められないときたもんだ。
なんて厄介な。
ローエルのやつは、シェーラとシャールが連行して行ってくれたおかけで、この場に絡んでない分まだ助かったと思うべきか?
と、そんなことより、サマンサのフォローをしないとな。
「サマンサ、あまり気に病むな。ブレード王が気さくに話しかけている相手を、他の王も無下にはできないさ」
「ええ。そうですわね。陛下に絡まれるなどという不幸に見舞われていれば、哀れみの視線が向けられること間違いなしですわ。そして、ローデイの評判は……もうこれ以上下がりっこありませんわね」
「……ん。どんまいサマンサ」
いや、これが意外とローデイの評判自体は悪くないぞ。
ブレード王が王にはあるまじき自由奔放な人だというのは広く知れ渡っているが……。
とそんな感じで雑談をしながら、フロアーを横切ってはエスカレーターで登りを繰り返し、やっと3階へと到着した。
「ほう。なんとわざわざ最上階に大国の店を据えたのか」
そう、ミヤビ女王の言うように、わざと3階に大国の店舗を配置している。
本来のショッピングモールでは映画館とかなんだけどな。
映画という概念すらまだないから、いつかできるといいなーとは思う。
で、先程通ってきた2階は何かというと、俺が答える前に、ブレード王が答える。
「おう。2階が基本的に小国の店だ」
「そして1階がさっきヴィリアたちがやっていた、ショッピングモール運営国が許可を出した個人店舗って感じになる」
「なるほど。大国の売り場を見に行く途中で、開催国の店舗や小国の店舗も必ず通る構造なのですな」
「なるほどのう。そういう意図か」
ガウル殿の言う通りだ。
この店舗の配置は、大国の店舗だけ見て帰らないようにするためのものだ。
まあ、必ずというわけではないが。
階段が一か所だけということではないので、必ず全店舗の前を通るなどという必要はない。
とはいえ、こうしたほうがより集客には向いているだろう。
「しかし、先程通ってきた2階は寂しい限りじゃったな。テーブルとイスを設置しただけの、ただの休憩所じゃったしな」
「それは今のところどうしようもないですね。知り合いの小国ということで先に入れるわけにも行きませんから」
「ああ、優遇とかの問題になるわけか」
「その通りです」
出店に値する小国ならロガリ大陸でも数国知っている。例えば、タイキ君のランクスとか、ノゴーシュの剣の国、ノノアの魔術の国、この3国とも独自技術で楽しめる店舗を用意できるだろう。
だが、そんなことをすれば他の小国からこの3国が白い目で見られるのは必至だろう。
まあ、ウィードとのコネがあったと言えばそれまでだが、それで今後この3国が要らぬトラブルの原因になるのだけは避けたいわけだ。
そして3国とも、そんなやっかみはごめんだと言っている。
「何なら、ミヤビ女王が率先して出店してみますか?」
「そんなことはやらん。まだほかの国ときちんと交流がある国ならともかく、我がハイエルフの国がそれらを差し置いて出店なぞすれば、それこそひどいやっかみを受けるのは目に見えておる」
流石のミヤビ女王も店舗を他国に先んじて出すまでの根性はないようだ。
いや、ミヤビ女王のハイエルフの国は今までほとんど他国との国交がなかったから、たとえやっかみを受けても屁でもないのではと思ったが、やっぱりそこらへんは気にするんだな。
さて、まだ始まってもいない小国店舗の話はいいとして……。
「お、ブレード王ではないか。またフラフラと遊び歩いていたのか?」
「違う違う。視察だ視察」
俺たちの姿というか、ブレード王の姿を見て話しかけてきたのは……。
「……マーリィ様、何をやっているんですか」
そう、ジルバ王国が誇る魔剣使いが一人、風姫騎士の通り名で名高い、マーリィがそこにいた。
ジェシカが思わず顔を引きつらせているのは仕方がない。
なにせ、マーリィがジルバ帝国の店舗で採用してる可愛らしい店員用のエプロンを付けているのだ。
うん、ぱっと見は似合っているのに、中身を知っている身としては、違和感しかないという矛盾。
なんでだろうなー。
「なに、見ての通り私は今日の店番を任されてるからな。こうしてお仕着せのエプロンを纏って接客をしているところだ。どうだ、このカワイイエプロン姿もよく似合っているだろう?」
そう言ってくるっと回る姿は確かに普通にかわいい。
笑顔もきれいで、通りかかった人たちが思わず足を止めるほどだ。
だが、やはりすごい違和感しかない。
「はぁ、まあ、確かに似合ってはいますが……」
ジェシカもその絶妙に似合っているというのに、にもかかわらず何故か心の奥底で似合っていないという感覚にとらわれているようで、何とも微妙な表情をしている。
さて、この気持ちどう伝えればいいのかと迷っていると……。
「ぶはは、姿としては確かに似合っているが、その中身を知っている身としては、全然似合わないと思えるから不思議だな!」
と、ブレードのおっさんがさも気持ちよさそうに笑いだす。
いや、たしかにその通りなんだけどさ、もうちょっと言葉、選ぼうか。
マーリィは笑顔のはずなのに、その向こうに怒りが見えるから。
「悪かったな。そちらこそ、身分をわきまえず視察と称してフラフラと食べ歩きとは随分なご身分だな」
ありゃ、マーリィは意外にもそのエプロン姿をすっかり気に入っていたのか。
まあ、たとえそうじゃなくても、あそこまで露骨に哄笑されれば、機嫌も悪くなるか。
しかし、他国の王に対して物凄い物言いだな。
下手をすると処罰されかねないが……。
「はっ、ここでは身分を誇示する方がどうかしているわ。それはマーリィも分かっているから、そんな恰好なんだろう?」
「まあ、そうだな。とはいえ、実際そんなに似合わないか?」
なんと、マーリィのあの格好は、周りの雰囲気に合うようにと意識して選んだようだ。
隣にいるジェシカが驚きの表情を浮かべたまま固まっている。
自由奔放のマーリィがねぇ……。
いや、まあ、本業は将軍なんだから、本来こういうことは出来て当たり前なのだが。
で、このまま驚いてばかりいるというのも確かに失礼だ。
「いや、似合ってないことはない。ただ、いつもの将軍のイメージがあまりに強いからな。ま、あれだ、ジェシカがエプロン姿で料理しているところって言えばマーリィにもわかるんじゃないか?」
「ああ、なるほど」
「マーリィ様!? なんでそれで納得するんですか!? というか、ユキ! 私は結婚して以来、ちゃんと女性らしくしていますよ!」
「そーですよ、ユキさん! そんな言い方してはダメです! ただの丸焼きだけだったのがちゃんと塩コショウ振るようになったんですから!」
「がふっ!?」
リーア、恐ろしい子。フォローが誤射になってとどめを刺してるな。
ま、ジェシカも頑張っているのはわかるが、兵士生活が長かったのか、当初料理を作って貰ったときは早い不味い食えるだけのコンボだった。
いや、巧遅は拙速に如かずって言うから……って意味が違うな。
その場で現地調達したもので、文句なく食って動けるならそれに越したことはないからな。
兵士の士気を保つのに必要なのは美味い食事だ。
それを我慢できるのは兵士としての美徳ではある。
だから、ジェシカは間違いなく、粗食でもちゃんと戦える優秀な兵士だったということだ。
女性としての必要スキルかというと違うが。
「ま、ジェシカもそんな似合わないことをしていたのだな。そうか、私は逆に皆に違和感を与えていたわけだ」
「それで納得しないでくださいよ!」
「「「わははは……」」」
なんとか笑い話でまとまったな。
はぁ、でもジェシカは半目でこちらをにらんでいるから、あとで埋め合わせが必要だな。
「で、見たところ、ミヤビ女王と後ろの御仁は噂の竜人族の方たちのようだが、見学か」
「察しがよくて助かる。しかし、ミヤビ女王のことは知ってたんだな」
「あぁ、街で時々会うからな」
「うむ。妾のことはいちいち紹介せずともよいぞ。ロガリ、イフの出身でウィードに来ている大国の要人たちとは既に顔見知りじゃ」
「いえ、私は皆さまにはまだ会っていないのですが。とりあえず、お知り置き頂いているようですが、私が竜人の里の長、ガウルと申します」
そうガウル殿が頭を下げると……。
「これはご丁寧に。私は新大陸でハイレ教会の大司教を務めております、エノルと申します」
と、なぜかどこからともなくいきなり現れたエノル大司教が深々と頭を下げていた。
そう思っていると、エノル大司教の後ろから、スタシア殿下にキャリー姫、そしてシーサイフォ王国のメノウがこちらに向かって来ていて。
「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。私は新大陸はフィンダール王国の王女スタシアと申します。あ、もうすぐユキ様の元に嫁ぐのでフィンダールの国籍は離れますが」
「同じく、新大陸のハイデン王国王女キャリーと申します」
「あー、私も同じく新大陸、シーサイフォ王国の技術顧問メノウよ。よろしく、ミヤビ女王にガウル殿」
「うむ。よろしくされよう。ま、今日は非公式の訪問じゃからな、そこの所は頼むぞ」
「ええ。ただウィーモールの様子を見に来ただけですので」
普通に挨拶をしているが……。
「当たり前のように各国の重鎮が集まっているな……」
「ま、そりゃ当然だろう。ユキが来ているんだからな。ここ主催国ウィードの王配にして、イフ大陸の実質的なボスであり、さらに新大陸でも幅を利かせているんだからな。挨拶に来ない方がおかしいだろう」
「ブレードのおっさん。俺のイメージが悪くなるからそういう言い方はやめてくれ。というか、エクス王国とかエナーリア聖国とか、その他諸々いないからな」
「「「呼んだ?」」」
「うおっ!?」
俺が言った瞬間、その他大勢も揃って顔を出してきやがった。
その中からエージルが出てきて……。
「いやいや、ユキ。この場は一般人相手の特産品の売り場であるとともに、大国や小国の要人たちの顔合わせ会場でもあるんだよ。揃ってない方がおかしいよ」
「エージル。それは分かるが、連日ここに顔を出す理由がないだろう。話をしたいなら会議室借りればいいんだからな」
「バカだねぇ。こんなお祭りの最中、わざわざ堅苦しい会議室で話をするわけないじゃないか」
エージルがそう言うと、全員が頷く。
なんだよ、お前ら単に騒ぎたいだけかよ!?
楽しんでいるようで何よりだね!
ウィードは今日も平和です。
こうして各国の親交は深まっていきます。
予定通りでなによりです。
ウィーモールを作った意味合いはあったようでなにより。
さてさて、コメントで完全にグダグダというのもありますが、まあ、そこは人それぞれ。
自分は必要だと思っているからね。
こういう積み重ねがあってこそ、ここぞというときが面白いわけよ!
じゃ、そういうことで、皆様これからもよろしく!
まあ、つまり、ここから激しいことがあるかも?




