第911堀:お店はあれからどうなった?
お店はあれからどうなった?
Side:ジェシカ
「おー、美味いな。香辛料もしっかり効いている」
「本当ですねー」
「確か、香辛料を入れるようになったのは、ユキから提供してもらってからのようですよ。というか、香辛料はウィードでもなければ、そうそう手に入りませんでしたし」
私はそう言いながら、ミーンさんから頂いた料理を口にします。
うん、美味しいですね。
ミリーがあまり料理は得意でないというのが不思議なほどの美味しさです。
いえ、親が料理上手だったせいで、あまりしなかったというのでしょうか?
と、そんなことを考えていると、ミヤビ女王が口を開きます。
「うむ! ウィードが誇る日本のB級グルメもいいが、やはりこうした馴染みのある懐かしの味もいいものじゃな」
「ええ。私は好きですね。ミーンさんのお店が流行る理由がよくわかります」
どうやら、先ほどミーンさんに言ったのはお世辞ではないようで、2人とも、いえ、ほかの竜人族も含めて美味しそうに料理を食べています。
しかし、さっきからの様子といい、完全に馴染んでいますね。
ミヤビ女王はともかく、ガウル殿はこの街に来てまだ一月と経っていないのですが……。
ま、それを言えば私も似たようなものでしたが。
どうやら敵対することもなく済みそうで、喜ぶべきことですね。
私がそう納得していると、ユキは既に食べ終えてたようで、ミヤビ女王たちに話しかけています。
「で、話は変わりますが、本番はもうすぐですが、準備の方はどうですか?」
「ん? ああ、ドラゴンの姿で飛行して来て人化しながらピンポイントに着地する練習か。それなら、まず問題はなかろう。もともとそういうことはしておったしな」
「はい。ちゃんと場所を選んで着陸できないと、自分の家や仲間の家を潰してしまいますからね」
なるほど、確かに、着地地点を上手く調整できなければ、あの巨体だ。自分や仲間の家を潰しかねませんね。
それなら、会議の際の演出は問題なさそうですね。
「それならよかったです。まあ、万が一の時はこちらもフォローに入りますが、あくまでも紹介としてなので、過剰な演出、自己表現はやめてくださいね」
「わかっておる。今回はあくまで顔見せじゃからな。ガウルも心得ておる」
「ええ。それで下手を打てば討伐されかねませんからね。そして何より、こんなおいしいものがある国から出入り禁止なんてのは勘弁願いたいですなぁ」
そうガウル殿がそう言うと付き添いの者たちもうんうんと頷く。
流石、ウィードの誇るべき食文化、日本の食べ物だけでなく、ロガリ大陸の種々の田舎料理まで網羅しているので、こうして地元の人たちの口に合うものも多い。
そんな場所を出入り禁止にされるようなことはガウル殿達もしないということですね。
食は全てに通ずるという事でしょう。
と、そんなことを話しているうちに、ミヤビ女王たちも食事が終わったようで。
「うむ。くったくった。相変わらずいい腕をしておる。で、妾たちの方はいいが、ユキ殿たちはどうなのじゃ? 結婚式の準備もあるんじゃろう?」
「リハーサルは全て終わりましたよ。あとは、ガウル殿たちと同じように本番を待つばかりですね」
ユキの言う通り、私たちの結婚式のリハーサルは既に終了している。
もう会議場と結婚式場となる大聖堂はその最終準備、飾りつけに追われているので、私たちが練習するスペースはなくなっています。
まあ、会議場、結婚式場の飾りつけや準備もウィードの評価につながるので当然の話ではあるのですが、こっちとしては間際に練習ができなくなるのが痛いですね。
本番で思わぬミスをしないかと心配です。
……特に、マーリィ様とか。
あぁ、考えただけで胃が痛くなってきた。
ヒヴィーアやオリーヴ、ミスト姉妹に何とか抑えてもらえるように、また連絡をしておくとしましょう。
そんなことを考えていると、ミヤビ女王が何か思いついたようで……。
「ふむ。ならこれから暫くは暇というわけじゃな? この辺りを見て回ってもおるようじゃし」
「暇と言われると語弊がありますが、まあある程度余裕はありますね」
「なら、一緒に見て回らぬか? これからいくショッピングモールなるものについて、ユキ殿の意見も聞きたいからのう」
「まだ行ってなかったのですか?」
「ええ。今まで、商業区のほうを廻るだけで精いっぱいで、こちらの方はまだ来てなかったんですよ。温泉とかいろいろ楽しんでいましたんで」
ああ、なるほど。
温泉、スーパー銭湯なんか寄ったら、数日抜け出せなくなりますね。
温泉に入って、ご飯を食べて、マッサージを受ける。
この世のものとは思えぬ天国がそこには広がっていると言っていいでしょう。
それに、ちょっと商業区に出ればいろんな物も見て買うことができますからなおのことで、なかなかあの一帯から抜け出せなくなります。
金持ちたちはそこで充分にお金を落としてくれるというわけです。
まあ、一般人でも十分に楽しめるような手頃な値段のコースもありますので、誰でも楽しめる素晴らしい所なわけです。
で、そんなうらやましい過ごし方をしていたので、まだショッピングモールには顔を出していなかったということですね。
「なるほど。それじゃ一緒に行きますか。とはいえ、別にそんな珍しい物じゃないんですがね」
「何が珍しい物じゃないなどとほざきおるのか。あんな巨大な家屋を建てて、しかも中には大小の店舗など様々なものが入り混じっておるようなところはウィード以外にはありえないぞ。そのように、ロシュール王たちや、イフ大陸のローデイ王、アグウスト王、新大陸のカグラ殿たちから聞いておる」
「ああ、いえ。私がいた日本では珍しい物じゃないんですよ」
ユキ、それはこちらの世界ではすごく珍しいものなのです。
「しかし、なぜそのようなショッピングモールを作ろうと? 既にあるこちらの商店街だけでも十分だと思いますが?」
「あー、そういうところは説明していませんでしたね。今回はいよいよ大陸間交流会議本番ということで、その祝いと言うのもあれですが、これから大陸間交流が盛んになるようにということで、各国、各大陸の出店を一堂に取り入れて、一般に広く世界がつながったと喧伝する場所なんですよ」
そう、ただ新たな売り場を作りたかったというわけではないのです。
そういえば私たちや大国の方々には説明をしていましたが、今回ここに出店しないミヤビ女王やガウル殿にはそういう説明はしていませんでした。
そういう何も知らない人から見ると、このショッピングモールという物はなんとも不思議に見えるでしょう。
「なるほど。ここは各大陸の各国がお店を出す専用の場所というわけか」
「ええ。いくら、大陸間交流同盟が結ばれ世界会議が始まったといっても、それだけでは単に上の人々にとって意味があることにすぎませんからね」
「ほほう。だからこそ、多くの国々からの店を一堂に会して、一般の者たちにも広く世界の交流が始まったと伝えるわけですな」
その通りです、ガウル殿は意外と頭の回転が速いようです。
隔絶された竜人の里とはいえ長として長く過ごしていたからでしょうか?
「そして、管理も考えておるわけか」
「ですね。各国に勝手に出店されると困りますし、財力や、権力如何で出店の条件や環境が変わっては不満がたまりますから、最初に専用の場所を提供し、範囲を決めておくことで、そういったトラブルを減らそうというわけです」
ユキの言う通り、この場所を提供することによって、下手な各国間の争いを減らし、トラブルを避けるために監視、管理するという目的もあります。
今後はこのショッピングモールを参考に、各大陸にも、同じ物ができる予定です。
「……一般の民に向けたものか。妾はトウヤのことを知っておるから、意味は分かるが、理解できぬ者も多々おるのではないか?」
ミヤビ女王の言うように、民にそこまで気を遣う必要はないという者もたくさんいるでしょう。
貴族と平民の差は絶対的なものとして、平民など虐げるだけでよいと考える貴族も少なからずいます。
「いるでしょうね。別にそういったところは最初から出店希望なんか出さないでしょうし、そういった細かいことは、各大陸の大国に管理を任せていますから」
「ふむふむ。つまり、興味のない国はここに出店しないということですか」
「はい。大国の皆さんはこぞって参加しているんで、まぁ、そういうのは少ないとは思いますが」
「確かにのう。ショッピングモールに出店するということはつまり、大国に認められたがゆえに出店できるということでもあるからのう。自国の名を売るには丁度良いし、今まで関係を得られなかった国と知己を得るチャンスでもあるか」
そう、ショッピングモールに出店するということは、それだけ名誉なことであり、今後の国のことを考えるのであれば絶対参加する必要があるものです。
「ま、それを理解してもらうために、今回は特に大国を中心に出店を募って店舗を出してもらっているわけです」
「大国が挙ってやっておるなら、小国も後に続くというわけか」
「よく考えておりますな」
ガウル殿の言うように、ユキは本当によく考えてこのショッピングモール構想を実現させました。
で、その結果を本日見に来たのですが……。
「おおっ、意外とにぎわっておるな」
「ユキ殿の作戦が当たっておりますな。多くの人々が見に来ているようです」
「……そんなに店舗は多くないんですけどね」
2人の言う通り、ショッピングモールの中にも人がかなり入っています。
嬉しい状況だと思うのですが、ユキはあまり嬉しそうでありません。
「ユキ、何か問題でも?」
「あー、今回の出店は大国のみで、商品もある程度絞っているし、店舗としてはまだ大国の分と、ウィードからのサンプル店舗が5つほど、つまり本来の姿から見ればガラガラなんだ。本来なら空いているスペースにはこれから小国の出店を募ることになっている。だから……」
「なるほど。大国しか入っていない状態ですらこの混み具合となると、本来の姿である小国も出店した時にはひどいことになりそうですわね」
サマンサに言われて納得しました。
確かに、まだ店舗がそろっていない状態ですら既にこのありさまと言いうのは、今後店舗が埋まった時は悲惨な気がしますね。
また警備の増員やら何やらでセラリア、エリス、ラッツ、トーリあたりがうんうん頭を悩ませるんでしょうね。
……というか、このショッピングモール構想はユキの発案ですから、おそらく私たちも巻き込まれるのでしょうね。
既に、我が祖国であるジルバからは小国に提供するスペースの一覧を出せとせっつかれていますから……。
「ま、入ってみましょうか、まずは見てみないと何も言えませんからね」
確かに、ユキの言う通りです。
まだ外から眺めただけです。
中に入ればまた違ったものが見えてくるかもしれません。
「「「おお?」」」
ということで中に入ってみると、そこには意外な光景が広がっていました。
なんとまだなにもお店が入っていないスペースにはテーブルとイスが整然と置かれていて、そこに観光客の皆さんが座って休んでいるのです。
こんな予定は聞いていませんでしたが……。
と、思っていると。
「はいはい、キリキリ運びなさい!」
「「「うっす、ミリー代表!」」」
「じゃ、私たちは清掃ですよ。ごみ箱を設置して、案内を徹底してくださいね」
「「「はい! ラッツ代表!」」」
ミリーとラッツが部下を従えながら何やら作業を行っていたのです。
何をやっているのでしょうか?
そしていよいよショッピングモールの中へ。
大国の出店は上手く行っているのか?
そして、ミリーとラッツは一体なにをしているのか?
で、必勝ダンジョンが10月10日をもって3億PV突破しました!
やったね! これからもみんなよろしくお願いいたします。




