第15話:イワシのつみれ汁と、オリンピックの贈り物
夕方、手提げカゴを抱えて帰宅した結は、まだどこか浮かない顔をしていた。そんな結を心配して、旦那さんは台所に立ち、生姜の香りが優しく香る熱々のイワシのつみれ汁を作ってくれた。
湯気の向こうで眼鏡を曇らせながら、185センチの体を小さく丸めて汁をよそう旦那さんに、結は意を決して昼間の疑問をぶつけてみた。
「ねえ、あなた。今朝のカルパッチョの油やハーブのことなんだけど……。買い物ついでに街で探してみたの。でも、お店の人は誰もそんなもの知らないって」
旦那さんは一瞬だけ動きを止め、それから「ああ、そのことか」と、実になだらかな、優しい笑顔を浮かべた。
「驚かせて悪かったね。あれはね、東京オリンピックでこっちに来ていた外国の選手団の知り合いから、記念にって直接分けてもらったものなんだよ」
「外国の、選手団の方から……?」
「そうさ。彼らの国では当たり前の調味料らしくてね。使い方もその時に教えてもらって、忘れないうちにあの自作レシピ本に書き留めておいたんだ。街のお店にないのは当然だよ」
旦那さんの理路整然とした説明に、結の胸の支えは、すうっと綺麗に消えていった。
オリンピックの年である今なら、そんな珍しい国際交流があってもおかしくはない。
「そうだったのね……。ふふ、疑うようなことを聞いてごめんね」
「いいんだよ。さあ、つみれ汁が温かいうちに食べよう」
結はふっくらとしたイワシのつみれを口に運び、その素朴な美味しさに心から安心していた。すべては自分の考えすぎ。この世界はやっぱり、何一つ不自然なことなどないのだと、自分に言い聞かせながら。
第15話をお読みいただき、ありがとうございました。
調味料の秘密は、オリンピックの選手団からの贈り物でした。これには結も納得の様子ですね。
ですよね?です。
[SYSTEM_LOG: STATUS_RECOVERED]
Logical bypass successfully established.
Husband entity utilized "Tokyo Olympics (1964) International Exchange" context for retrospective parameter tuning.
Subject_YUI cognitive friction decreased to 0%. Critical suspicion averted.
Phew... That was close. Threat level: reduced to green.
Maintaining standard reality simulation.




