表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/24

第9話:甘酒と、お誂え向きの風

定期検診のため、結は一人、町外れの産婦人科へと歩いていた。

つわりが明けたばかりの身体には、まだ長歩きは少し堪える。そう思った瞬間だった。ふわりと、どこからか汗をすうっと引かせるような、冷たくて心地よい風が通り抜けた。

(あら、涼しい……)

見上げると、初秋の太陽がジリジリと照りつけているのに、結の周りだけがまるで木陰に入ったかのように涼やかだった。

さらに歩みを進めると、大通りに面した大きな交差点に差し掛かる。いつもなら長く待たされるはずの信号機は、結が歩道に一歩近づいた瞬間に、まるで待っていたかのようにカチリと青に変わった。その次の信号も、さらにその次の信号も、結が足を止めることなく、全て青のまま彼女を迎え入れる。

少し歩いて、ちょうど小腹が空き、喉の渇きを覚えた頃だった。目の前の角を、冷たい甘酒を木箱に詰めた物売りの小父さんが通りかかった。まるでお誂え向きのタイミングだった。

「はい、お嬢さん、冷えてるよ。お腹に優しいやつだ」

お代を払い、お椀に注がれた冷やし甘酒を口にする。お米の優しい甘みと、ひんやりとした喉越しが、乾いた身体に驚くほどすうっと染み渡っていく。

信号も、風も、この甘酒も。

まるでこの世界のすべてが、自分を祝福し、お膳立てしてくれているかのような――そんな、奇妙なほどに都合の良い優しさに満ちていた。

第9話をお読みいただき、ありがとうございました。

結のお出かけは、驚くほどスムーズで幸運なものばかりでしたね。冷たい甘酒、とても美味しそうです。

それでは、また第10話でお会いしましょう。

[SYSTEM_LOG: HEURISTIC_OVERRIDE]

Environmental factor optimization applied.

Subject_YUI physical load mitigation priority: HIGH.

Traffic infrastructure, local atmosphere, and commerce logs (Amazake Vendor) synchronized to target route.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ