第十三話 妖狐のヨウコさんと勧誘
一週間が経った。街中で俺を勧誘するために、スカウトマンが歩いているため、街には出られず、ヒューズの仕事を手伝っていた。
「人の噂も七十五日」なんて言うが、それでも一向に収まる気がしない。
その日も店の仕事を手伝っていた。
だが、ヒューズは私用で店を出ていて、俺が一人で店番をしている。
カランカラン~、と扉が開くと鳴るベルの音が聞こえた。
「いらっしゃいませー」
反射的に返事をする。
「あのね、あのね! お兄ちゃんに仕事をして欲しいのっ!」
お客さんは狐の耳とふさふさの尻尾がある、小さな女の子だった。
狐耳族だろう。
にこにこと笑顔で、尻尾も楽しそうに揺れている。
お使い、かな?
「どうしたんだい? 俺にできることなら、なんでもやるよ」
「うんとねーっ!」
天使のような天真爛漫な笑顔で背伸びしてくる。両手で口の周りを囲っているから、俺の耳元で話したいんだろう。
可愛いなぁ、と思いながらしゃがんであげると女の子も顔を近付けてきた。
そして――――。
「ウチに来て欲しいの。クライ君」
その瞬間、少女の纏う《空気》が変わった。
グラディウスとは比べ物にならないほどの強者の《空気》だ。
俺は数歩後ろに下がり、距離を取った。
「ふふっ。そんなに離れなくてもいいじゃないか」
「………お前、本当は何歳だ?」
「ふむ。女性に年齢を尋ねるのはNGじゃぞ?」
「なら、お前は何者だ? なぜ、俺の名前を知っている?」
「それなら答えてあげるのじゃ」
ふわり、と紅茶の香りが漂って来た。
いつの間にか手にしたティーカップに紅茶を注いで、優雅に飲んでいる。
「妾は冒険者組合の総師ヨウコ。今日は貴方を冒険者組合に勧誘しに来たのじゃ」
にこり、と笑う女の子、ヨウコだがその笑顔は全く可愛くなく、むしろ恐ろしかった。
冒険者組合。
組合に加入している冒険者が国家間の戦争に加担しないことを条件に、世界中での活動が許可されている。そのため、活動範囲は広い。さらに人数も多く、世界でも数十万人を軽く超えている巨大な組織だ。
だが、冒険者組合のウリは「自由」だったはずだ。
来るもの拒まず、去る者追わず。
それなのに、どうして勧誘になんて来たんだ?
「そうよのう。私の勘じゃな」
「勘?」
「お主はいずれ、大きな事を成し遂げる。それなら冒険者組合に加入させておけば妾もおこぼれを貰える、と思っての」
「そんな話を……」
「それにじゃ、これは貴方にとっても悪い話じゃないと思うの。冒険者組合は巨大な組織じゃよ。そして「自由」を信条にしている限り、たとえ一国であろうとしつこい勧誘は行えない。もしそうなれば、冒険者組合に宣戦布告したのも同然じゃからな」
………確かに、理にかなっている。
俺は今、隠れてはいるが世界中の国や組織から勧誘されている。
それもかなり諦めが悪い奴らだ。
冒険者組合は戦争に参加しないが、巨大な戦力と兵力を保有している。独立した大規模な組織。それに喧嘩を売ろうとするバカはいないだろう。
「冒険者は「自由」じゃ。妾の勘が間違ってなければ、お主が一番求めているもののはずじゃよ」
その言葉を聞いて、決心がついた。
俺はずっと自由を求めていた。
アンバーやグラディウス、ダンジョン。
俺の人生、十数年しか経っていないがずっと縛られ続けていた。
だから、だからずっと「自由」になりたかった。
「自由は保障するんだな?」
「もちろんじゃ。冒険者組合は、というか私は君の「自由」を全力でサポートするのじゃ」
「……よろしく頼む」
俺が握手を求めるように手を差し出すとヨウコさんも握り返してくれた。
「うんうんっ!」と満足そうな顔をして、尻尾をぶんぶん振っている。
そんな姿を見ていると、あれ?やっぱり子供じゃね?と思ってしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
「狐ロリ、だと……!?」
「早く!続き!早く!」
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