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第十二話 暖かい

 復讐を果たしたその日、俺は死んだように眠った。

 疲れもあったけど、達成感が大きかった。


 朝、起きると部屋まで漂ってくるほど濃厚で美味しそうな香りが漂って来た。

 一階に降りると、ヒューズが御馳走を作っていた。


「お、おはよう……。どうしたんだ、そんなに沢山……?」

「ああァ!? お前、自分が昨日何したか覚えてねえのかァ!?」


 え? 急に怒鳴られたんですけど。


「やっと復讐を果たしたんだろうが! お祝いだ、馬鹿野郎!」


 パァーンッ!とクラッカーから紙吹雪が飛び出す。

 よく見ると「おめでとう クライ」と書かれた紙が飾られていた。


「な、なんで知ってるんだよ」

「俺もあの会場にいたんだよ、一般枠でな!」

「俺、復讐なんて一言も……」

「あの話を聞いてたら、復讐だって誰でもわかるだろ!」


 そ、そうだったのか……。

 結構ばれないように頑張ったんだけど…。


「ええい! そんな事はどうでもいいんだよ! おら、食え!」


 そして大盛りの皿を差し出してくる、ヒューズ。

 どの皿も大盛りだし、超豪華だ。


「い、いただきます……」


 フォークでステーキを刺し、口に放り込んだ。

 肉厚でジューシー、噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる。


 出来立てなんだろう。

 口の中が火傷しそうなくらい、熱かった。


「うま……。うまい……………っつ………うまい……っ!」


 大粒の涙がとめどなく溢れてきた。

 悲しくないのに。痛くもないのに。


 それなのに、涙が止まらない。


 熱いのに、暖かい。


 俺は泣きながら料理を頬張った。

 腹がいっぱいになるまで。涙が止まるまで。


 そんな俺を微笑ましそうに見守ってくれる、ヒューズの視線が一番暖かかった。







「へへっ。ようやく泣き止んだか」

「うるせぇ……っ」


 ぐずっ、と赤くなった目元の袖で拭う。


 あれだけあった、大盛りの料理を食べきって、食後のお茶を出してくれた。


 うま……。


「………それで、これからどうするんだよ」


 ヒューズもお茶を啜りながら言って来た。


「これからの事なんて何も考えてなかったな……」

「おいおい。しっかりしろよ……」


 あきれ顔で、実際に呆れているヒューズ。


 仕方ないじゃないか。

 何年も死に物狂いで、復讐くらいしか頭になかったんだから。


「と言っても、仕事ならこれから嫌ってほど来るだろうけどな」

「どういう事だ?」

「ああ? お前、あの試験がなんで一般公開されてるか知らねえのか?」


 何でって、確か、将来の英雄候補達を視察して、勧誘するため……。って、そうか。


「そういうことだ。お前は英雄の卵をたった一人で圧倒して、希代の天才と呼ばれるグラディウスまで倒しちまったんだ。欲しがる奴らは大量にいるだろうよ」


 それに、と付け加えて、一部の新聞を見せてきた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【王立カガク学園の入学試験で英雄の卵を一掃!? 謎の少年現る。】


 その少年は、突然現れた。

 今年の試験は全受験生で行われる、バトルロイヤル方式だった。


 しかし、なんと、試験開始早々、謎の少年がほぼ全ての受験生を一掃してしまったのです。


 観戦していた宮廷魔術師に聞くと「あれは魔法ではないな。魔力を一切、感じない。となるとスキルだが……。あんなスキルを、私は知らない」とのことでした。


 その後、残っていた優勝候補のグラディウス・デュースとの一騎打ちが開始されます。


 ですが、当時は優勝間違いなしと言われていた、グラディウスを子供のようにあしらい、簡単に優勝を決めました。


 その姿はまさしく、神が吹かす風。《神風》でした。


 彼を欲しがる国や企業も多くあるらしい。


 実際に王国騎士団長はこのように語っている。


「彼のような強い人間を私は見たことがない。正直、私よりも強いだろうね。是非ともウチに欲しいよ」


 今後、謎の《神風》の動向に期待が高まります。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 お、おう……。


 だいぶ脚色されてるし、アンバーとの一見の事も書かれてないけど、こんな文面を見せられたら……。


「こんなのが出回ってるんだ。お前、街に出たらえらいことになるぞ……?」


 た、確かにそうなりそうだな……。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

投稿再開です。


ブックマークや評価、感想などいただけると、作者のモチベーションは凄くあがります。さらに、作者がものすごく喜びます。


是非ともよろしくおねがいします。

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