始計(2)
足の裏に加えられる連撃。
そうだ、僕とプルネは裸足だ。
指の間から伝わってくる、気味の悪い感触。
飼い慣らされていない、生の自然との近接。
草むらの中の虫けら、そして動物の糞、死骸——
生のままの自然に、現代人が、それも自ら望んで隔離され、
仮想のものたちとの豊かな10年を過ごしてきた
現代人にとって、適応するのは、なかなか骨が折れる。
「それで、あとどれくらい歩けばいいの、姉さん?」
昔の人たちは、裸足でこんな険しい道をよく歩けたものだ。
僕は一歩、また一歩踏み出すたびに、嫌な既視感を覚えていた。一つは何を踏むか分からないという恐怖であり、
もう一つは——
「ん?」
プルネの、理由のない笑みだ。それも、毎分続く。
「ふふふっ」
——そんなふうにボケないでよ。恥ずかしいから。
初めて会った時は、ただただ優しい姉さんだとしか思っていなかった。
まあ、それに変わりはない。実際、優しいのだから。
問題は、この人が一体何を考えているのか、見当もつかないことだ。
10年に及ぶニート修行。おかげで僕は、道行く人々と目を合わせなくても、彼らの動きを完璧に予測できるようになった。だって、知らない人と目を合わせるなんて、気まずいじゃないか。
——なのに、この人だけは分からない。うん、「分からない」。
「疲れたでしょ? もうすぐ着くよ」
「右のほう、見える? あの炎」
彼女は宙に握手でもするかのように、手を振った。
「炎?」
見えないけど。いや、普通に見えないんだけど。
「プルネ姉さん、見えないよ?」
「ほら、よく見て。あそこ」
プルネが僕の指をつまんで、指し示してくれた。
その先が向かう先は、遥か向こうの丘の上の空き地——
僕はもっとよく見ようと、石垣によじ登った。
そこには、黒いブローチをつけた者たちが円を作っていた。
ざっと見積もって20人ほどだったが、
山の斜面の下から、人々が絶え間なく登ってきていた。
登ってくる人々の数も、優に数十人はいるようだった。
「あれが、あのゴランセ、っていうやつ?」
「そう」
彼らは互いに腕を組み、両手で松明を握り合わせていた。
握り合わされた松明は、合図に合わせて上げられ、下ろされることを繰り返していた。松明に鈴でもついているのか、鈴のヴィーン、ヴィーン
という音がこだまして、心地よく響いていた。
遠くてよくは見えないが、ひどくオカルティックだった。
想像していた姿とは違う。確かに宗教的な儀式のようだが——
登ってくる人々も松明を手にしていて、
子供の頃、名古屋の博物館で見た巨大な恐竜の背骨のように見えた。ブラキオサウルスだっただろうか。数百キロはありそうな巨大な骨が、細い糸のような線に頼って吊るされているのを見た時、今にも外れて僕を押し潰すのではないかと——怖かった。
「うわあ、ずいぶん遠いけど、あそこまで行かなきゃいけないの?」
僕は感嘆の声を上げた——彼らへの感嘆と畏怖を込めて。
「違うよ」
プルネは首を振りながら言った。
「家に帰るって言ったでしょ?」
確かに、そうだった。あの時はこんなサイコネティックなイベントがあるなんて知る由もなかったから。彼女には申し訳ないけれど、自称歴史オタクの僕としては、どうしても執着せずにはいられない。
「でも……」
少しずつ、彼女の顔色を窺いながら。
「お祭り、見たかったんだけど、ダメかな?」
僕はできる限り哀れっぽく振る舞ってみた。えくぼをきゅっとへこませて、無邪気な子供の顔を思い出しながら——
「ダメだって、もう遅いでしょ?」
隠していたゲーム機を見つかった子供のように、彼女はぎょっとして叱りつけた。僕(精神年齢)よりずっと若い彼女が怒る姿を見ると、時々可愛らしさを感じてしまう。小動物が愛情表現として飼い主を軽く噛むように。
だが結局のところ、お叱りを受けてしまった。
「そもそも、あんたが横になったりしてなければよかったのに~」
つい先ほど異世界に来た男です、何か問題でも?
とにかく、オルテ、お前は一体なぜあんな所に横たわっていたんだ。
反抗期でも来たのだろうか——腑に落ちない。
---
「それに、私たちはそもそもゴランセに参加できないんだからね」
「僕も行けるなら行ってみたいけど……」
沈んで見える彼女。だが、自分の落ち込んだ感情を僕に伝染させたくない様子だったのか、それとも幼い僕(肉体)をからかいたくなったのかは分からない。
「なんで? 面白そうなのに……」
「そりゃ、高貴なフガトの貴族だけができることだからよ」
祭りにも身分の区別がある——ということか。窮屈だな。
まあ、封建時代なら仕方ないか、と思った。
「フガト?」
ゴランセの炎はますます勢いを増していく。
「うん、お母さんが話してくれたでしょ? 遠い昔、私たちダレノル人は早くから海の向こうのジュティ人と協力して、世界に平和をもたらした帝国を作ったっていう話」
彼女は地面に座り込んで、話を続けた。誇らしげな表情をした彼女の演説を聞かずにはいられなさそうで、僕は彼女の隣にそっと正座した。
「その昔、世界は恐ろしい土地だったの。何百年もの間、戦争が絶えなかった——海には海賊が、陸には山賊が!」
指をひゅん、ひゅんと振り回しながら、彼女は表情を作った。
武器を持ち、欲に満ちた恐ろしい人物の表情を作ろうとするが、無邪気な彼女の表情は、それに、その教訓的な意図には届かないまま終わってしまう。僕は彼女の努力を先読みし、笑わないように、できる限り悲しい話を思い浮かべて堪えていた。
「魔物たちが四方から現れて都市を脅かし、田舎は略奪者たちに焼き払われてしまったの。
そんな混沌の世界に幕を下ろしたのが、私たちの帝国——『バサレス』。
私たちの帝国は、西の海と東の海、どちらも征服していたのよ」
バサレス帝国——か。現実に当てはめれば、アレクサンドロスのマケドニアやローマ帝国といったところになるだろうな。
僕は相槌を打ちながら、彼女の一言一言に、アレクサンドロスの偉大さを重ね合わせていた。
「そうやって千年——帝国の偉大さは世界中を覆い、帝国の言葉、帝国の城、帝国の装束は、あらゆる種族に愛用されていたんだって」
そうだろうとも! 極東の歴史オタクたちが西洋の名将たちをすらすら諳んじているようにね。
「でも、」
彼女は憂いを帯びた口調で続けようとした。
「……」
「結局、崩れたんだよね?」
僕は言葉を遮った。一つには、うっすらと察しがついていたからで、
もう一つは、彼女の悲しい表情を見るのが辛かったからだ——プルネが少しでも不機嫌そうな顔をすると、僕の心のどこかが痛み出して、耐えられなくなってしまうから。
「——そう」
---
「それで、ええと、そのフガトっていう人たちが帝国を滅ぼしたの?」
「ああ、それは違うよ。帝国を滅ぼしたゼベデン族の人たちは、アラス川の向こうの遥か西にいるの。フガト族は、私たちの住むガバネス地方に侵入してきた蛮族よ」
——獅子が死ねば、ハイエナが群がるものなのか。
「フガト族は元々、東で家畜を育てていた蛮人たちだったの。私たちを神のように崇めていた人たちだったのに……」
僕は彼女の顔を見たくなくて、しばらく顔を背けた。
雲が月明かりを遮っていき、闇よりも濃い闇が視線を捕らえていた。
再び顔を戻し、地面の汁——死んだ虫の死骸から滲み出る汁を見つけた僕は、彼女とのシンクロニシティを否定できなくなった。
「でも、帝国の軍が首都を守るために去ると、彼らは豹変したの。国境を越えてきて、私たちの田畑を荒らし、人々の首を刎ねていった——」
「やがて彼らは、去ろうとすることさえやめてしまった! 彼らは——」
彼女の言葉には怒りが滲んでいた。柔らかな優しさはとうに消え失せ——残るのは感情の深い溝の中の憎悪だけ。
「分かった、姉さん。ごめん、早く戻ろう」
言葉を遮って、彼女の背中に手を置いた。
彼女の息遣いは、これまでのどの時よりも荒く、収縮と拡張を繰り返していた。
---
紀元前323年。アレクサンドロスが死んだ後、彼の帝国は軍閥勢力——いわゆる「ディアドコイ」たちによってばらばらに引き裂かれた。
ディアドコイたちは帝国各地で挙兵し、ギリシアのヘレニズム文化を東方に広める一方で、彼らはアレクサンドロスの後継者を自称して絶え間ない戦争を開戦——オリエントを血で染め上げた。
だが、彼らの願いは最後まで叶うことはなかった。
帝国の残骸は、結局のところ、新興帝国であるローマとイランのパルティアによって二分された。
海に囲まれた日本は幸いにも、このような運命を辿ることはなかった。
だが、広大な肥沃な土地を持つヨーロッパや中国の場合には、放蕩な支配者たちと残忍な異民族たちのコラボレーションによって——極めて過酷な結果を生むこととなった。
まるで後漢の滅亡後、魏・蜀・呉の三国を統一した晋が、王家の内紛によって没落した後、黄河の肥沃な土地を狙った異民族たちが中原に侵攻し、五胡十六国のカオスを開いたのと同じように。
ゴランセは——丘の向こうのゴランセは、クライマックスへと向かっているのか、酔いしれたような歓声が丘を越えて轟いていた。まるで僕たちを嘲るかのように、プルネの悲しみを嘲るかのように。
僕は彼女が笑顔を取り戻せるよう、できる限り滑稽な表情を作ってみせた——その効果があったのか、プルネはすぐに本来の明るさを取り戻した。
ぶひひひっ——
僕たち二人はそうやって笑い合った。本当の家族ではないけれど、僕は彼女を本当の家族のように思っていた。
「じゃあ、遠くから見てるだけでもダメなの?」
僕は再び丘を睨みつけた。頂上を赤く照らしていた松明が、一つ、また一つと消え始めていた。ちゃんと見られなかったな、残念——と。
「ダメ」
彼女は慣れない様子で、裏声混じりの厳しい口調で言った。
「私たちみたいな人間が黙って見てるのがバレたら、ひどい目に遭うんだから」
「ひどい目って、どんな?」
それにしても、ただ黙って見てるだけでも許さないのか、貴族様たちは。自分たちだけで陰気にフードをかぶって集まっては——
「ふふっ、こっぴどく殴られるかもしれないし、村を追い出されるかもしれないし——
——首を刎ねられて、城の外に晒されるかも~」
---
「ひぃっ!」
彼女は手刀で首をすっ、すっと切る仕草をしながら、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
僕は一瞬驚いた。斬首なんて、ドラマでもよく出てくるものなのに。
僕は頭と胴体が切り離される——その非現実的な恐怖に晒されている自分を想像し、あまりの驚きに、尻もちをついてしまった。
いたたた……
彼女は僕を再び立たせようとしてくれた。
30を超えたおっさんが十代の少女に支えられるなんて、正直恥ずかしい。
だが、こんな脆弱な体に入ってしまったのだから、どうしようもない——
「ざ、斬首をするの?」
理解できないわけではない。
ゴランセは祭りだが、天に祝福を願う重要な行事なのだろう。
だとすれば貴族や王族も多く参加するだろうし、部外者——それも被支配民が侵入すれば、彼らにとって重大な脅威になるのは間違いない。
——それでも、彼女のフガトに対する敵意を、少しは理解できる気がした——フガトの野蛮な暴挙を。
「うん~ 斬首するんだよ~ ふふふふふ~」
「斬首? 斬首とは、どういう意味だ?」
——風が北へと吹いた。
見上げたその場所には、幼子——いや、女人が立っていた。
僕と同じ年頃、あるいはもっと幼いかもしれない女児。
だが、女児らしさは彼女には見当たらない。
絹に刺繍を施したドレス——プルネを初めて見た時に感じた、
えも言われぬ感情を呼び覚ますような衣装は、女人の体には合わないのか——ずり落ちそうに垂れ下がっていた。
真っ青なドレスの宝石が——夜空の紺青に混ざり合い、
こんな表現が合っているか分からないが、
テレビの旅番組でよく見かけるような——熱帯の青々しさが、
広大な太平洋の青い沿岸のように、染み込んでいた。
「うええええ——!!! 誰!」
プルネと僕は同時に悲鳴を上げた。
僕が彼女の姿から彼女の正体を推測しようとした時、
プルネは石を投げつけられた蛙のように全身が硬直したかのように、
彼女に頭を下げ、また頭を下げていた。
愚かな僕は、しばらく彼女と目を合わせたままでいたが、
彼女の後ろに立つ男の視線——鋭い眼光と筋肉を備えた男が、半月のような形をした片手剣をしっかりと握っている姿を再び思い出し、ようやくプルネと共に頭を垂れた。
「くくく、面白い子たちだね!」
女はそう言いながらも、子供らしい声で不慣れそうに言葉を続けた。
発音がつぶれていて、赤子の喃語のように聞こえた。
プルネの言っていた——フガト族、なのだろう。
どうやらプルネと僕の言葉には慣れていないようだ。
「それじゃ、まず自己紹介をしようか——」
彼女の傍らに並んだ男たちが、彼女の言葉に膝をついた。
嬉しそうにそれに気づいた彼女は、先ほどよりもさらに大きな声で言った——
「我輩は『サラガ・マウレ』の第一王女、『リセバル・マルミラ』だ!」




