表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜  作者: ゲスト047562


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

第16話 宿題も仕事も期限が迫ってようやく焦り始めるのは止めろ

「行くぞー」


「うん!」


 元気良く答える天外が剣を構える。

 俺は言葉とは裏腹に、彼女の周りをユラユラと不規則に回り隙を伺う。


「……っ」


「はっ! あ!?」


 前のめりになって行く、と見せかける。それに反応してガラ空きになった天外の横に飛び、するりと下をくぐる。

 背後に回って、彼女の背中を斬りつけ……。


「っとと!」


 甲高い金属音が響く。咄嗟に振り向いた天外が、剣の腹辺りを支える独特な構えで、俺の剣を受け止めていた。

 続けて2、3撃。フェイントを入れて4撃。いずれも全て十字に受け、反撃しようと剣を持つ手に力を込める。

 うん、動きに固さも無くなってきたな。


「あたぁ!?」


「まあ、まだまだ未熟だが」


 手にばかり意識が集中している彼女の足を刈り、接触している剣から力の流れを変えてやる。すると、天外はすってんころりんと面白いように地面に落下した。


「いったぁ〜……!」


「何度も言ってんだろ。お前の剣の本質は防御。銃という文明の利器があんだから、剣は敵に接近された時の非常用として使えって」


「うう〜……中々師匠みたいにいかないなぁ」


「まあ攻撃、特に斬るってのはコツがいるからな。お前の才能がズバ抜けているのは認める。その上で、まずは鳥居受けをちゃんと出来るようになってから、だな」


「……私、師匠が鳥居受けで守ってるの見た事ないんだけど」


「なら俺に守らせてみなー」


 揶揄いながら、息抜きに煙草(やくそう)をキメる。

 くぅ〜! 人をおちょくって吸うモクは最高だぜぇ! 後はこれが本物ならなぁ……ニコチンが恋しいぜ。

 前世ヘビースモーカーだった影響で、学生なのに煙草が欠かせなくなってしまった。試練の祠の外では流石に吸えないから、普段は飴で何とか我慢してるが。

 ブラックコーヒーに煙草、そしてメロンパン。これぞ王道にして最強コンボ、俺の相棒。再会が待ち遠しいなぁ。


「ねえ師匠。私この前も試練の祠を1人で頑張ったんだよ?」


 俺が一服していると、天外が起き上がって俺に話しかけてきた。

 その目は楽しそうに輝き、何かを期待している様に見える。


「あー? 知ってる知ってる。負けて死に戻ったんだろ?」


 どうやら、俺が師範と試練の祠を挑んだその日、彼女は妖魔に負けてしまったらしい。

 落としてしまった神力と霊力は妖魔に喰われ、24時間で消化されてしまう。なので彼女はその後、再び同じ試練の祠に潜って自分の神力を回収だけして撤退したという所まで聞いた。


「まあ、意固地にならず逃げたのは正しかったな。無理に突貫して死ぬよりマシだ」


「うん。私結構頑張ったと思うんだ?」


「そうだな」


「はい」


「うん」


「……」


「……?」


 いや、手の平見せられましても。手相でも見ろってか?


「ご褒美は?」


「……あっ」


 そういや何か言ってましたわね。ソロで試練の祠に行ったらご褒美が欲しい的な。

 え〜でもなー。別に渡せる物も無いし出来る事も無いしなー。それに君、負けたんだよね? いやいやそんなフンスフンス鼻息荒げんでもろて。


「一生面倒見てくれるって言ったのに」


「言ってない。捏造止めてね」


 うーむ、ここまでグイグイ来るってどういう事だ? 何か欲しい物でも……。

 はっ! ま、まさかパパ活!? 俺でパパ活しようってか!? おのれそうはいかんぞ小娘が……! こっちはお小遣いがカツカツなんじゃ! 

 とはいえ、俺は確かに、「何とかする」とは言った。それは彼女の成長を見込んでの事だったし、彼女は1人で試練の祠に入る力と勇気を手に入れた。それは素晴らしい、褒めるべき内容だ。


「そうだなぁ……」


 名ばかりの師匠として、彼女の門出を祝うぐらいはした方が良いだろうか。だが、負けてるんだよなぁ……あ、そうだ。


「そういや、もうすぐ入学式か」


「え? うん……そうだけど」


 暦はもう3月末。学生である俺達は春休みであり、来週から天外は神霊学園の守護科へ、俺は一般科に入学する。つまり、原作が始まるわけだ。

 賢い俺は閃いた。バトルのチュートリアル的な奴があると思うし、その時でいんじゃね?

 その旨を伝えようとすると、さっきまでキラキラしていた天外の顔が、今度は曇っている事に気付く。なして?


「学園に行ったら、試練の祠で修行する時間も減るかもしれないし……」


 あーそういう? そんな顔しなくても大丈夫やで。君はまだ見ぬイケメン達に囲まれて、何やかんやでハッピーエンド迎える予定だから。


「師匠とも、会えなくなっちゃうんじゃない?」


「んー? まあすれ違うぐらいじゃね?」


「そんなの分からないじゃん」


「何で?」


 神霊学園ってそんな広かったっけ? 中高一貫なのは知ってるが、大学みたいに巨大な敷地でもあるのか?


「だって……師匠は加護無しだから、神霊学園には来れないんでしょ?」


「ん? 俺一般科に入るけど?」


「え?」


「あれ? 言ってなかったっけ?」


「……もー! もぉぉぉおお!!」


「アダダダダ!!?」


 おいゴルァ! 胸を叩くな! 可愛らしい反応から繰り出される無呼吸連打やめろ! お前がやると擬音が『ポカポカ』じゃなくて『ゴゴゴゴッッ!!』だから!


「じゃあ学校でも会えるんだ?」


「多分な。守護科と一般科で何が違うか知らんが。まあやる事自体は、今とあんま変わらないんじゃないか?」


 ほら、余所見している隙に襲ってきた赤足を、今じゃ片手間にシバき倒してるじゃん。それを繰り返す作業だよ、未来の世紀末女子様。


「そこで、だ。神霊学園に行って、初めて試練の祠の主を倒せたら、俺からの卒業祝いとして何かプレゼントしてやるよ」


「卒業?」


「おう。あくまで、俺が教えたのは最初の基礎だけだからな」


 ようやくここまで来た。カミカゴの主人公と会って数ヶ月。彼女に戦闘の手解きをし、献魂護身術を教え、属性をコッソリ強化してきたのは、全てこの時の為。

 後は、彼女の旅立ちが少しでも華やぐ様にお膳立てしてやるだけだ。俺が彼女にすべき事は、それで終わる。


「学べ天外。学園にいる加護持ちは、お前の知らない武器や神技を持ってる。そいつらから、自分に合うと思う全てを吸収しろ。それが、『大切な人を守りたい』って願いを叶えられる、お前だけの道になる」


「道……」


「そうだ。お前の目的は、災厄に勝つ事じゃねえだろ? お前が大事にする事は、そんな大層な役目じゃねえだろ?」


「はい! 師匠!」


 うんうん、良い返事。これから頑張ってくれよ、師匠(仮)は草葉の陰でたまに見守っているからな。君の恋路の邪魔をするつもりは無いからね。百合エンドでも逆ハールートでも何でも良いから、好きなだけ攻略キャラ達の心を落としてきなさい。結の推し以外。


「お前の師として、最低限の防御を教えた。それでも負けたって事は、防御がまだ甘い証拠だ。だから、後はずっと防御の練習だけするぞ」


「え、剣での攻撃は……」


「銃を使え。どうしても剣で攻撃したいってんなら、学園の奴に教えてもらえ。五行家とか、妖魔退治のスペシャリストがいるし、そいつらから色々学べば? 献魂護身術と五行家の技術体系。それを学ぶ方が今の100倍良い」


「そ、そんな事ない! 私は──」


「あるんだよ。つかお前には1番必要だから」


「そういう事じゃなくて!」


 そういう事なんだよ! いや、マジで仲良くしてね? ここ乙女ゲーぞ? 愛と絆と友情パワーで何とかするんだよ!

 頑張れ天外! 君の未来は明るいぞ!


「花水鬼!」


「そうそう。神技と銃を織り交ぜて使えば、妖魔も近付きにくくなるからな。ちゃんと身体で覚えろよ」


「もー! もぉぉおおおお!!」


 何故か駄々をこねる天外を相手しながら、感慨に耽る。

 コイツも強くなったなぁ。身体よりも心が、最初より遥かに強くなった。昔の怯えて泣くばかりの悲劇のヒロインじゃない、立派な主人公になったな。

 だから、あの……そろそろ神技乱射してくるのやめてもらって良いすか? いやいやじゃなくて、君もう自立出来ますやん。

 いやちょ、弾幕エグいな。何やってんの? 今良い感じに締めようとしてんだけど。

 あっマズイ! 煙草湿気る! 天外さん! 天外=サン! 辞めて! 煙草が全滅しちゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! 1カートンがあああああああああ!!! 何してくれてんだァァァァァァァァ!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ