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この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜  作者: ゲスト047562


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第15話 強くなる道

「いやいや、そうじゃない。確かにそれだけだったなら、今頃お前は剣の錆になっていたが」


 オイオイオイ、死んでたわ俺。

 アカンガチで覚えてねえ。そんな最低な事口走ってるなら、師範は養豚場の豚を見る目で見てくる筈だよな? え、俺ライン越えから入れる保険に入ってたの?

 恥を偲んでというより、恐怖を飲み込んで恐る恐る聞いてみることにする。


「こ、好感度マイナスの状況を挽回出来る発言しましたっけ」


「……本当に覚えてないのか? その後、私をあれだけ辱めたのに」


「あれだけ辱めたのに!?」


 オイオイオイ、(社会的に)死んでたわ俺(今日ぶり2度目)。

 や、やべえよ……年頃の乙女を辱めたって、そんなドグサレ外道ムーブいつかましたんだ俺!? それを覚えてねえのはやべえって!!

 アカンホンマ吐きそう。二日酔いより酷い眩暈が俺を襲うが、ここまで来たら最後まで聞かない訳にはいかない。

 教会で罪を懺悔する罪人の如く、師範の言葉を待つ。


「そう、お前は私に……如何に道場経営が下手なのかを説いてきたのだ」


「はぁ…………は?」


「献魂護身術を学ぶ上で、生活上のメリットを具体的に示さない。五行家と比べて知名度が圧倒的に低い。周辺地域の理解度などなど……張り紙や広告などの、地道に知名度を上げていく事を教えてくれたじゃないか。私が名を上げる為に試練の祠を練り歩こうと、凄いのは神霊と私であって護身術ではないと見られてしまう。その事にすら気付けず、一足飛ばしで名を売ろうとしていた私が愚かだったと、お前は教えてくれたじゃないか」


「……ま」


「私の恥ずかしい思い違いを……ん? どうした?」


「紛らわしいんじゃあァァァァァァァァ!!!」


 ガチで焦ったじゃねえか!! 唯当たり前の経営戦略話しただけでここまで言う!? どんだけ恩を感じてんだよ! 俺何も特別な事してねえよこのポンコツ娘がぁ!!


「何を言う。お陰でウチは、ヒッソリと避けられていたご近所付き合いも良くなったんだぞ。お前には感謝しているんだ」


「もっと言い方あるでしょうが! 無駄に重い責任を背負わされてた俺の身になれ!」


「勿論責任は取ってもらうが」


「脅迫じゃねえか!!」


 嫌だよそんな降って湧いた責任。

 今時の若い子ってのは視野が狭過ぎる……いや、この世界も加護持ちいなきゃ割と詰んでる世界だし、早い内から子孫を残す的な意味でもあるのか? 結構ヤバい世界なの? 乙女ゲームなのに?


「はぁ……もう良いや。このポンコツはいつもの事だし」


「今私を馬鹿と言ったか」


「言ってない。丁度いいから聞くんすけど師範、修行は分かるんですけど、何で《《木属性の妖魔と戦ってるんですか?》》」


「ん? どういう意味だ?」


「いや、師範の神霊は土属性でしょ」


「ああ、彼の名は吉備津彦(きびつひこ)という。そういえば、まだ紹介してなかったな」

 

 ききき吉備津彦!? 桃太郎の元ネタやん! そんな凄いお方が神霊なの!?

 え、ちょっとそれは気になる。お、お話とかさせて……駄目? 時間ある時で良いんで……。


「安心してくれ。私は彼にそんな気は無い」


「どうした急に。そうじゃなくて、強くなる為なら何で火属性の妖魔がいる祠の行かないんすか?」


「……?」


「……相生(そうじょう)って知ってます?」


 首を横に振られた。マジかコイツ。

 相生とは、五行思想における重要な要素だ。

 簡単におさらいしておくと、五行思想は『互いに影響を与え合う』のだ。

 それは弱点相性以外にも、輪廻転生の様なシステムとしても機能している。それが相生。1つの属性を討ち滅ぼし、新たな属性を生み出すという仕組みだ。

 ゲームだと、加護持ちはその相生の法則に則って妖魔を倒す事で、自分の属性を強化するのが普通だった。そうじゃなくとも、他の属性への適性を上げる事も出来るから、一概に無駄とは言えないが。

 ルールは一見複雑に見えるが複雑だぜ。覚えると面白いんだけどな。


「吉備津彦が土属性なら、火生土(かしょうど)……つまり火属性の妖魔を倒せば、より強くなれるっつー事っすね」


「……」


「大丈夫ですか? 俺の言葉分かりますか?」


「何故そんな事を知ってるんだ?」


「はい?」


 気付けば、師範の目が鋭く俺を見つめていた。

 何故そんな目で見てくるか分からないが、まるで今にも剣を抜いてきそうな剣呑な雰囲気に、思わず押し黙る。


「神霊と言葉を交わし、神霊学園に通っている私ですら、その話は初耳だ。なのに何故、加護無しであるお前がそこまで知っている」


 ……そんな馬鹿な。

 五行思想が根底にある世界で、相生を知らない筈が無いだろう。あるのに無いとはこれ如何に。

 いや待て。五行思想を知らない人に対して、ゲームではチュートリアルが設けられている筈だ。相生も然り。ならば、相生はまだ見つかっていない要素なのでは?

 もし本来ある要素なのに、主人公の成長によって相生というシステムが説明される場合、どの様に補填するのか。

 ……まだ研究されていなかった分野、とか。ヒロインは、全ての神霊から加護を受け取れる完璧で究極なアイドル。彼女が成長する過程で、自分に必要な属性を鍛えるにはどうすれば良いか。そうやって、相生というシステムが見つかる予定だったのかもしれない。

 ……どうしよ。何でこんな基礎すら知らねえんだよこの世界。よく今まで妖魔の家畜になってないな人類。

 あっいかん。師範を無視して考え込んでたわ。そろそろ相手してあげないと拗ねるな、直感で分かる。


「どうしたんだ? 弟子」


「大丈夫です。ちょっとどう言おうか悩んでて。俺だって、強くなる為に色々調べたんですよ。中でも相生は重要な要素ですから、加護持ちは全員知ってると思ったんすけど」


「……なるほど、確かに。加護無しが強くなれる方法は限られているからな。だがなぁ……弟子、何故お前はそこまで強さに拘るんだ?」


「拘ってる訳じゃないんすけどね」


 別に俺は、強くなりたい訳じゃない。唯、目的を達成する為に必要だったのが強さだっただけで。

 2度目の人生もままならないものよ。はぁ、本当に……。


「俺だって、好き好んでこんな場所で戦ってる訳じゃないんすけどねぇ……」


「……だが、私は楽しいよ」


「んぇ?」


「私が護身術を身に付けていると知っている皆は、普段から私を避けていてな。だから、誰かと試練の祠に挑むのは初めてだったんだ」


「え、そうだったんですか」


 言われてみれば道理で、動きに協調性が無いと思った。パーティを組んだ事が無かったのか。

 良く今まで無事でいられたなこの人。加護持ちでも《《本当に死ぬトラップ》》とかあった筈だが、それをソロで突破出来る程度には実力がある……のか?


「しかも初めての相手が、同じ道を進む弟子なのだから、楽しくない訳がない」


「言い方気を付けてね? 誤解招くから」


「護身術は戦う術ではなく、身を守る術。そう言い聞かせてきたが、やはり同じ道で共に戦ってくれる仲間がいると思うと高揚するな」


「はいはいそうですね。言い方」


「なあ、これからも一緒に試練の祠に行かないか? 弟子、もっとお前を知りたいんだ」


「わざとやってる?」


 さっきから語弊のある言い方ばっかやぞ。やめようね、おじさん誑かすの。

 だが、その提案は魅力的だ。加護持ちの戦い方を生で見れるチャンスでもあるし、もっとレベルの高い試練の祠の事を聞けるかもしれない。結に聞いても、はぐらかすばかりで何も教えてくれないからなぁ……。


「まあ、俺で良ければ是非。師範の神技ももっと見たいですしね」


「ああ! 良いぞ!」


「とりあえず、ここは師範と相性悪いんでまた別の……」


「私の吉備津彦は土属性なのは話したが、実は私の神技は防御系が殆どなんだ。剣は盾の役割も兼ね備えていて、神力を更に込める事で巨大な盾に変形するんだ。それと最近は火属性の神技も使える様になったぞ。これはお前の言う相生の効果の影響か? 後──」


「うるせェェェェェ!! 話は後で聞くからまずは帰らせろや!」


 やっぱこの人距離感バグってるよ。自分の事全部言うじゃん。

 うーむ、性格が道場経営に向いてなさすぎる。そっち方面の才能が無いと、献魂護身術の再興は難しいと思うが……そこは追々、成長してもろて。人生は色々あるやで、頑張ってな。















「……そうか。弟子は押しの強い女性は苦手か……」

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