幕僚長 兼 朝霞駐屯地司令…
先輩!
ご無沙汰しております。
と緑色の制服を着用しきっちりとネクタイを締めた50代後半の男が私に近寄りピシッと正にこれが見本だ!と言わんばかりの敬礼をしてきた。
望月 幕僚長 兼 朝霞駐屯地司令
これがこの男の名前と現在の役職である。
や,やぁ~
望月、久し振りだな…
車輌やテントの周りで接客している連中に気が付かれない様に…
と思うと自然に声が小さくなってしまう。
先輩の退官式以来ですから、1年振りですか…
ん?
どうかされましたか?
あ、いや…
何気なく
テントを見ると…
宮澤3佐がこちらを見てニヤニヤしている。
コイツ知っていたのか!!
すると、宮澤3佐の動きに千須和2曹が気が付きこちらを見てフリーズしていた。
彼女は知らなかった様だ。
バレているのならまぁ、隠す必要は無いな。
望月、今日はどうした?こんな処に来ている暇があるのか?
何を言っているンですか!!
先輩に会いに来たんですよ!
はぁ~?
どう言う意味だ?
昨日、マル秘案件に巻き込まれたでしょ?
その元陸将補(関係者)とは言え、引退されて民間人である方にご迷惑をお掛けした謝罪に伺ったンですよ。
と望月はニヤリと笑った。
いやいやいや、嘘つくなよ。
いくら元幹部が当事者であっても、現役の幕僚長…って言うか基地司令(陸将補)が謝罪に来るか?普通!
私は苦笑いし乍ら、そう望月に言った。
はははは、流石ですネ?
ったり前だろう。冗談も程々にしろよ!
で…
本当は何しに来たンだ?
あっと…
私を巻き込むなよ。
キミも言った通り私はもう民間人なんだからな。
う〜ん…
察しが良いですな。
実は…
私はそこで口を挟む…
いやいや、話を聞いたら、又巻き込まれてしまうんだろ。
聞かんぞ!何も!
其処に望月の副官(階級章からすると3佐)がそっと耳打ちをする。
ん?そうか…
先輩、出来れば先輩のご自宅に伺いたいのですが…
これを断ったら大変な事になるかな…
判ったよ、でも私は買い物があるので、まだ暫くは帰れないぞ。
そうだな…16時でどうだろうか?
忙しい彼の事だ、5時間後って言うのは流石にスケジュール的に無理だろう。悪く思うなよ。
私は本当に巻き込まれたくないンだ。
副官が2件程何処かに連絡を入れて鞄から小型端末を出して操作をしそれからゆっくりとこちらを見ると…
ボソッと小声で…
大丈夫です。
って…
おいっ!
持つべきは優秀な3佐(副官)ですネ。
と私の策略を見抜いていた満面の笑みの望月⋯
やられたぁ~
と渋い顔の私。
まぁ、先輩とは長い付き合いですから…
と望月はしたり顔。
その後、仕方なく花の苗やら種やらの買い物をし、食材をスーパーマーケットに買いに走り、自宅に帰り着いた。
全くなんなんだ。この罰ゲームは⋯
で、出来る限りの庭弄りをして、昼食を摂り、花の苗等を積んだ為に土で汚れた愛車のラゲッジスペースの掃除機掛けをしていたら時間になった。
望月用にマンデリンを挽いていると、インターフォンが鳴った。
モニターを見ると何故か千須和2曹が映し出されていた。
へ?千須和2曹?
思わず言うと…
私もいます。
と言う声が…
宮澤3佐…
は多分ついてくるだろうなぁと思っていたが(幹部自衛官だし)、千須和2曹までも…
よく幕僚長が許したな。
って言うか、千須和2曹、気が付いてないのかな?
まさかな…
取り敢えず、玄関ドアを開けて中に入って貰う。
リビングルームのソファに着座して貰うが当然乍ら、座ったのは望月だけ。
3佐だと言う副官に宮澤3佐と千須和2曹は直立不動だ。
望月…
と促すと
おお、済まなかったネ。大柴3佐、後、宮澤クンと千須和さんも座ってくれ給え。
で、3人が着座するのと入れ違いに私が立ち上がりカウンターでマンデリンを淹れ始める。
お?
久し振りに先輩の珈琲が飲めるンだ。
いや〜嬉しいなぁ〜
と満面の笑みの望月…
淹れて全員にカップ&ソーサーを配り終わり一口飲ませると⋯
大柴と言う3佐が目を見開いて、
美味い!
と一言。
だろう?諏訪幕僚副長の淹れる珈琲は防衛省内でナンバーワンなんだぞ!
おいおい、
幕僚副長ってそれは現役の頃の役職名。
今はこの集落に越してきたおじいちゃんだよ。
って言ってももう遅いか…
ありゃりゃ…
大柴3佐もだが、千須和2曹なんてひっくり返りそうになって宮澤3佐にサポートされている。
いや…
黙っていて済まなかった。実はそう言う事なんだ。
そう言えば、宮澤3佐は知っていたんだ?
ええ…
この地区に元防衛省の上級職が移住して来る。
と言うのを望月司令から伺って…
宮澤クンは習志野の時の部下なンですよ。で、この状況に対処出来るのは彼だろうなぁ〜と思って耳打ちしておいたんです。
私はため息交じりで嫌味を言った。
世間は狭いなぁ~




