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淫魔と幼女  作者: 南野 雪花
第4章 ロリババア、過去の因縁に決着を付ける
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第25話 華麗にリスタート


 ラシュアーニに連絡を取り、迎えに来てもらう。

 さすがに人猫を十人も乗せて飛べないからね。


 歩いて帰るのは論外。なんか検査着みたいなのを着た猫耳少年少女をぞろぞろと連れ歩いてたら、間違いなく通報されてしまう。

 それ以前の問題として、彼らは自力で歩くことができるかどうかも微妙だったし。


「全部で三十二人。増やしも増やしたりって感じね」


 ストレッチャーに乗せられ、次々に運び出されてゆく人猫たちを眺めながら、ラシュアーニがふるふると首を振った。


 もともとはたった一組の人猫のカップルである。彼らに生ませた兄弟姉妹たちを交配させ、美胡たちの世代が生まれた。

 そしてその細胞や遺伝情報を人間に組み込むことでエセ獣人が生み出されていったのである。


「ラシュ。彼らはどうなるんだ?」

「禁断の仔ではあるけど、それって、まともに教育を与えられず強制されたもんだし、まして絶滅寸前の人猫だし、獅子王も悪いようにはしないと思うわよ。アゾン」


 私も口添えするしね、と付け加える。


 獅子王というのは、獣人たちのトップに君臨してるライカンスロープのモルデナサのことだ。

 俺は面識がないけど、道理の判らない人物ではないという話を、ラシュアーニから聞かされたことがある。


「まあ、近親交配なのに三十人以上を生ませた人間の技術ってのには、呆れるけどね」

「安全な出産って意味では、たぶん人間族は他種族を大きく引き離してるんだろうな」


 頷き合う。

 産科方面に関して、本当に人間たちはすごいのだ。

 日本の場合で考えても、出産の時の事故なんて年に数件しか起きていない。八十七万人ちかくが生まれているのに。


 あ、絶対にゼロにはできないんだ。こういうのは。

 ぶっちゃけ自然淘汰もあるし。


 普通は俺みたいな特異体質は生まれてくることができない。生まれたって生きていけないもの。

 だからこそ、同族たちから守られるんだけどね。


 人間の場合は、けっこう障害を持つ子供も生まれてくる。

 そしてそういう子供が生きていくためのプログラムも作られている。

 この点だけは、人間族が他種族に勝っている部分だろう。


「獣人たちの方で検査して、異常がないと判れば、絶滅危惧種の人猫にとっては光明よね」

「皮肉なことにね」


 三十二名の若き人猫である。

 彼らを中心として、ふたたび数を増やすことも不可能ではないだろう。

 滅び行く人猫を救ったのが人間の鬼畜な実験、というのは、なんとも業腹な話ではあるけどね。


「ところで美胡(みこ)はどうなるのじゃ?」


 不意に美鶴(みつる)が口を挟む。

 小さな身体には、やっぱり小さな人猫がしがみついていた。


「どうもならないわ。ミツルがミコの保護者であることは私も確認しているし。引き離したりしないわよ」

「そうか……」


 うーむと美鶴が眉間に皺を寄せた。


「喜ぶと思ったのに」

「いやの。わしとアゾールトは風祭(かざまつり)の残党を狩ろうと思っておるのじゃ。そんな戦いにこやつを巻き込んで良いものか、と思ってのう」

「美胡もたたかうよ。まま」


 むしろ驚いたような表情の美胡だ。

 そしてそれは、俺とラシュアーニも同じである。


 あー。

 こいつ、自分だけで背負うつもりっていうより、判ってないのか。

 お母さん気質すぎて。


「美鶴。美胡には戦う権利があるぞ。自らの仇を討つための戦いだからね。きみと同様に」


 優しげに言って、俺は美鶴の頭を撫でた。

 はっと見上げる瞳。


「それに美胡は守られるだけの子供じゃない。獣人の六歳は、充分に戦える年齢だよ」

「むぅ……そういうものかのう」


 お母ちゃんは心配性なのである。







 さて、当初予定であるエセ獣人たちを何とかしようってのは達成した。

 人間族の度しがたさと怖ろしさを再確認することにはなってしまったけどね。


「戦略目標を達成したってことで、帰るとしますかね」


 ぐーっと俺は伸びをする。

 まだすべてが解決したわけではないが、一段落なのだ。


 風祭に関する情報は、捕まえた足立から間違いなく情報を引き出せる。そのあたりはラシュアーニにどーんと任せちゃって大丈夫。

 王族たるあいつの魅了は、俺なんてレベルじゃないからね。


「帰るって。帰れるわけないじゃない」


 そのラシュアーニに、さらっと否定されちゃった。

 僕にはもう帰れる場所はないらしいよ。こんなに悲しいことはないね。


「アゾンのマンションには、相変わらずマスコミ各社が張り付いてて、住人たちに迷惑をかけまくってるわよ」

「……すっかり忘れてたよ。ていうか、まだいるの?」


 そろそろ日も変わろうって時刻である。

 どんだけ粘るんだよ。

 他の住民の迷惑も考えろよ。


「やつらがそんなことを考慮するわけがなかろ。常に自分たちが正義なのだからの」


 ふんと美鶴が吐き捨てた。

 正義、という言葉に悪意を感じないものがいるとすれば、たぶんその人は日本語を解さないのだろう。

 というくらい皮肉な口調だった。


「私有地だから入るなと拒絶したら、嫌がるってことは映されたら困るものがあるんだろうって言ってくるような連中じゃぞ」


 その知識はちょっと古いと思うけどね。

 だいたい昭和の四十年代くらいの話だ。さすがに今のご時世はそこまでの無体は働かないと思う。


 思うよ?

 大丈夫だよね? マスコミ各社さん。


「カメラ越しに見ればヤクザだって怖くない、なんて言葉もあるものね」


 ラシュアーニが肩をすくめる。

 完全に傍観者の気分になれる、ということだろうか。傍観者だからこそ客観的に、あるいは無責任に好きなことを言える、と。

 俺にはあんまり理解できない心理だけど。


「いずれにしても、正義は我にありと思っているからの。他人の迷惑など気にせぬよ。退かぬ媚びぬ省みぬってやつじゃの」


 とあるバイオレンス漫画のセリフをもじってへんなポーズを取る美鶴。格好よくはない。可愛いだけである。


「けど、結局は事務所で夜明かしかあ」

「予定通りじゃな」

「アゾンの事務所に寝るところなんかあったっけ?」


 あるさ。

 ソファもあるし、仮眠用の簡易ベッドだってある。

 充分に雨露をしのげるなだぜ。


「くっそせまい簡易ベッドでミツルやミコと寝るってこと? 通報されるわよ?」

「なんてこといいやがる。そもそも誰が通報するんだよ」


 俺の事務所で、俺が何したっていいじゃない。


「え? 私が通報するに決まってるでしょ」


 ひどい。

 こんな幼なじみ見たことない。


 人間たちの描くラブストーリーに登場する幼なじみって、みんな優しくて可愛くてかいがいしいって相場が決まってるのに。

 なんでラシュアーニは無駄に厳しいのか。


 ツンデレってやつなのかもしれない。

 つまり彼女は俺を愛しているのだが、照れ隠しで、つい裏腹な行動を取ってしまうのである。


 この裸締めだって、きっと愛情の裏返し……。


「いたいたいたい! ごめごめごめ! ギブギブギブ!!」

「ぶっ殺すわよ? アゾン」

「いま殺されかかってたよ……」

「そなたらは仲良しじゃのう」


 みょーにババくさいしぐさで、ふぉふぉふぉと笑う美鶴だった。

 これが仲良しに見えんのかよ。

 もーろくしてんじゃねーか?


 なんてことを考えてたら、ドカッと蹴られました。

 このエスパー女どもめぇ。


「ま。しばらくは私の屋敷に泊まりなさいな。ミスルに言ってミサキも待避させるから」

「それは助かる。俺としてはべつにホテルを転々としても良いんだけど」


 あんまりしょーもない借りを作るのもアレだしね。

 それじゃなくても借り入れ超過なのに。


「幼女二人をひきつれてホテル巡り? それって私じゃなくても通報すると思うわよ」

「うむ。わしでも通報するのう」

「じゃあ、美胡もつうほうするー」


 二人はくすくす笑いながら、一人はノリで宣言する。

 関係者全員に通報されてしまう。俺の命は風前の灯火だ。


「厄介になります。ラシュアーニ姫」


 言葉遣いを改め、俺は頭を下げる。

 同族の心遣いに感謝しながら。


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[一言] 国の秘密組織襲撃してロリ罪で逮捕。
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