フレンシアの家
「此処だ」
スラムを暫く歩くと古い地中海風の家の前で彼は止まりそう告げる。
「誰か住んでいるの?」
風雨によって黒く変色した扉をギギギと開け、彼はためらいなく入って行く。
「誰も住んではいないよ。魔法で施錠してあるからな」
「魔法で?」
全くそんな感じはなかったけど。
「フレンシア家の者と心から許された者しかこの家に入る事は出来ない」
と、既に玄関に入ってから言われ。私が心からノワールに許されたと言われたみたいでドキリとした。
「お茶くらい出すから好きな所に座ってくれ」
中は私が地球で住んでいた家くらいの広さで、ちょっとアンティークなソファとテーブル、チェストがあり充分暮らしていけそう。
「全然最下層っぽくないね」
周りの家はどう見てもボロボロのスラム式。なのにこの家は外見こそ古いが中はすごくしっかりしてるし、埃1つ落ちていないほどきれいにしてある。
「シオンがまだ生きていた頃に上から家具を運んで保存の術をかけておいたからな」
「保存の術?」
「掃除しなくてもよくなる魔法だ。もし此処で俺が躓いてお盆のお茶をこぼしても床にはシミ1つ残らない」
とても便利な魔法だ。それにしてもシオンさんが生きていた頃にって事は100年以上も前の話だ。それなのにこんなにも部屋の中が綺麗って事はその魔法はとても長持ちするってことだね。
「私も覚えたいな、そんな魔法」
「……夫婦になればそのうち覚えられるさ」
何かボソッと言った気がするけどあまりよく聞き取れなかった。
「まぁ、飲め。落ち着くぞ」
「あ、有難う。いただきます」
ん?この香りは…ニードがいつも入れてくれるお茶と同じ香り。




