趣味と服装 柊のアレ
「‥‥そういえば、柊さん。隠岐のこの服装、どうにかしてくれませんか?」
「‥‥どうにかって?」
柊は森の中、テントを建てながら、伊予に聞き返す。
「今日一日歩いていてわかったんですが、どうにもこの服装だと動きに支障が出るんです」
どさりと木の根に腰を下ろして、彼女は言う。
「‥‥わかった」
彼はテントを張り終えると、端末を操作して、赤いフーデッドロングコートと、白いワンピースを作り出した。
「これでいい?」
「‥‥つくづく思いますけど、これ絶対に柊さんの趣味丸出しって感じですよね?」
ギクッと肩を震わせる。
(ヤバイ。どうしよう。僕がこういう魔法使いみたいな感じのやつとか好きだってバレたら‥‥)
──きっと、僕の作った光線銃で風穴だろうな‥‥
「い、いやぁ?それは、どうかな?」
結果が目に見えるようだと思いながらも、彼はそう言葉を振り絞った。
「‥‥やっぱり図星なんですね」
が、図星だと中てられて、更にどんよりとする彼である。
「どうせ、僕なんてそういうもんですよ‥‥」
ははっと、自虐の笑みを浮かべながら、彼はそれを手渡した。
「あーっ、もう!そんなに暗くならないでください!こっちまで陰気になってしまいますから!」
伊予はそう言うと、メイド型ホムンクルスを連れて、森の奥に進んでいった。
「‥‥ねぇ、執事さん、僕はどうすればいいと思う?」
彼は落ち込んだ気持ちを治すために、少年ホムンクルスに尋ねる。
「マスターは、もう少し自分を信じて、胸を張っていればいいと思います」
「そんな気力はもう無いよ‥‥」
トホホと、さらに陰気になる彼であった。
「どう‥‥ですか、柊さん」
それから少しして、着替え終えたらしい伊予が、木の陰から現れた。
「‥‥」
──その姿に、正直僕は絶句した。あまりの天使っぷりに、僕は感動を殺しきれなかった。
彼は、思った。
──この世に天使がいるのなら、きっとこのかわいさは彼らには理解できない境地に、彼女はいるのだろう、と。
そう、それほどに彼女のその姿は、九重柊の心の臓を射止めていた。
「‥‥そ、そんなに見ないでください。下着がないから、少しスースーするんです」
(まて、早まるな九重柊童貞17歳!相手は中学生だ。そんなことが許されると思っているのか!?)
彼の心臓は早鐘を打ち、その視線は、彼女の顔から外れ、その両足の間へと向けられていく。
──DTのどうしようもない思考回路である。
しかし、そんな妄想はすぐに、彼女の手から聞こえるカチャリという音で目が覚める。
「変なこと考えているなら、今すぐ撃ち抜きます!」
「か、考えてない!いえ、考えておりません!」
彼はそのまま誤魔化すように、その頭を地につけて土下座の形をとるのだった。
なんともかわいそうな風貌である。
メイド型ホムンクルスは、それを見て失笑した。
同じく執事型ホムンクルスは窃笑する。
(無様なのです。こんなことだから頼れない‥‥)
彼女はため息をつくと、そのままいつの間にか手に取っていた柊の学生証端末を操作して、とりあえず下着を生成して装着するまで、彼をそのままにしておいた。
「──もういいです。でも、次から同じようなことを考えたら、容赦はしませんから」
「‥‥はい」
「返事が遅いです!」
「はいっ!」
(伊予ちゃん、怖いです!)
女性恐怖症になりそうだと思った瞬間であった。