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隠岐伊予の(其の一)

「今日は、柊さんが足手まといにならないよう、ここでの戦いかたを覚えてもらいます」


 翌日、柊はテントの中で、伊予のその宣言を耳にして、眠気が飛んだ。


「‥‥ごめん、よくわからない」


 言うと、彼女はため息をついてもう一度言った。


「ですから、少しくらい戦えるようになってくださいと言ってるんです。隠岐だって、いつでも柊さんを護れるわけではないんです」


 必死な面持ちでそう伝える彼女に、彼は渋い顔をした。


 確かに、彼女だってまだ中学生だ。そんな重荷があっては、精神崩壊を起こすかもしれない。


 僕だって、足手まといにはならないようにと昨日思ったばかりだし‥‥でも、怖いよな、正直。


 矢だってどこから飛んでくるかわからないし、殴ったら手は痛いだろうし、いくら敵だといっても、人‥‥じゃなかった。エルフを斬るにしても、その感触は‥‥。


 想像しただけで、気持ち悪い。


 ──でも、だからこそ、彼女にそんなことをさせてはいけないだろう。いや、させてはいけない。絶対だ。


 彼は頭を振ると、わかったと頷いた。


「‥‥そうだよね。君にだけそんな辛い思いはさせてはいけないし」


 彼はそう覚悟を決めた。


 しかし、この九重柊。最初からズルをするつもりで算段をたてていた。


 そう、能力をこの物質生成を使って底上げ、もしくは増やすのだ。


 さらに、装備チートで無双して──。


「今、何かズルいことを考えていませんでしたか?」


 そんな計画を建てていると、伊予がジト目でこちらを見つめてきた。


「うっ‥‥や、やっぱり駄目?」


「ダメに決まってます!ダークエルフと相対したからこそわかりますけれど、彼女にはチートみたいな能力が与えられているんです!これがどういうことか──」


 沸騰したように捲し立てる少女に、彼は両手を前につきだして制止をかける。


「あーはいはい。で、その能力の内容を教えてもらえないかな?それ次第では、装備チートでも考えようが──」


 被せかけて言う彼に、怒りをむき出しにして、少女は怒鳴った。


「そんなものは意味がありません!なにしろ彼女の能力は、万物滅却の盾と鉾なんですよ!?」


「でも、君は生き残り、無事討伐を終えた。なら、それは欠陥品だったんじゃないのか?」


 冷静に分析する彼に、再び彼女の怒りはヒートアップする。


「それは‥‥!それは‥‥‥‥隠岐がイレギュラーだったからですよ‥‥」


 悲しい目をして、そっぽを向き、俯く。


(何か不味いことでも言ったかな‥‥)


 柊はそれを見て、何か不味いことをしてしまったと覚り、にしても、何が不味かったのかわからずに、しかし、気になったフレーズに、彼の口は勝手に開く。


「‥‥イレギュラー?」


「‥‥隠岐の能力は、全ての障害、もしくは害意を無力化し、塵へと還すものです。隠岐はこの能力で、彼女の魔王の下僕を無力化して、殺しました──」


 それから、彼女はそれまでの経緯を語り始めた。

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