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第三話

更新が遅くなってすみません。

二〇三一年六月十日

日本 神奈川県横須賀市

日本国海軍 太平洋艦隊 旗艦:戦艦「磐城」



 海幕長から「太平洋艦隊計画」の事が知らされてから一年が経過し、太平洋艦隊の所属艦も次々と就役していた。太平洋艦隊旗艦である戦艦「磐城」も如月重工から引き渡され、完熟運転も終了し、今日の練習航海を終えた後、実戦配備されることになっていた。


―――コンコン


「……どうぞ」


 地平用艦隊旗艦、戦艦「磐城」の長官室で太平洋艦隊の訓練状況や如月重工と国防省から送られて来た海兵師団の装備の納入状況について書かれた報告書に目を通していた刹那は、誰かが扉をノックした事に気づき、報告書から顔を上げて、入室を許可すると、太平洋艦隊参謀長である小夜が長官室に入室した。


「失礼します。長官、『磐城』の練習航海の準備が完了したので、お呼びに参りました」

「ご苦労様。それでは、行くとしましょうか」


 小夜の言葉に頷いた刹那は、座っていた椅子から立ち上がり、服掛けに掛けていた自分の制服の上着を手に取ると、小夜を伴ってSMCへと向かった。




「長官が入室されます!」


 士官の一人がそう告げると、SMC要員が一斉に立ち上がり、SMCに入室した刹那に対して敬礼を行う。


「直れ。各員、そのまま作業を続けてください」


 敬礼する兵士達に対して答礼をした後、刹那は兵士達にそう言うと、再び自分の作業に移る兵士達の姿を見ながら、自分の席に腰を下ろした。


「葉山艦長、出航の準備は?」

「はっ、各部からの報告を確認。出航準備完了しています」

「そうですか……艦長、出航用意!舫い放てー!」

「了解。出航用意!舫い放てー!」


 刹那の言葉を琴葉が復唱すると、各部が素早く動き、出航用意が整った事が艦内電話を通じてSMCに報告が寄せられる。


「両舷前進微速!」

「両舷前進微速!」


 各部からの報告を受け取った琴葉がそう命じ、副長が復唱してから数秒後には、艦底からこれまでの艦の機関音とは違う軽快な機関音が響き、「磐城」はゆっくりとした船足で横須賀を出港した。


「艦長、民間船舶との衝突には十分注意しなさい」

「了解しました。電測員、対水上見張りを厳とせよ!」

「了解。対水上見張りを厳とします」

「副長、艦橋からの光景に異常はないか?」

『はっ。異常は見られません』

「分かった。そのまま警戒を維持」

『了解』


 艦橋から送られた外の映像を映し出しているモニターを見た琴葉が、艦橋を任せている副長からの報告に一瞬だけ安堵の息を漏らし、再び厳しい目で正面の大型ディスプレイを眺めた。


「本艦、横須賀港を出ます!」


 電測員のその報告で、SMC内の張り詰めていた空気が少し和らぎ、各レーダー画面を注視していた兵士達からは、安堵の声が漏れた。


「艦長、艦の性能はどうですか?」

「はっ。これだけの巨体なのに扱いやすいですね。『高雄』と似た感覚で指揮する事が出来ます」

「砲術参謀、火器管制システムの具合はどうですか?」

「システムに異常はありません。国産と言うだけあって扱いやすいです」


 兵士に指示を出す琴葉と、砲雷長と共に火器管制システムのチェックを行っていた一真に対して刹那が声を掛け、二人の返事に頷いた刹那は、隣に控えていた小夜とアイコンタクトを交わすと、長官席から立ち上がった。


「艦長、砲術参謀、相談したいことがあるので、長官室に来てもらえますか……?」

「了解しました。副長、留守中の指揮は副長に任せます」

『はっ。承りました』

「了解。砲雷長、後は頼む」

「分かりました」


 刹那の言葉に頷くと、職務の引継ぎをしてSMCを後にすると、刹那の後を追って長官室へと向かった。




「それで、相談って何かしら?」

「その話は少し置いときます。一真、SMCにいる時も聞いたけど、火器管制システムはもう使用できるのかしら?」

「あぁ。今日中にメンテナンスは完了するから明日には使用可能になるぞ」

「そう……小夜どう思う?」

「火器管制システムが使用可能なのなら、実施すべきだと思います」


 一真の報告を受けて、刹那が小夜に尋ねると、いつもと変わらない落ち着いた声音で小夜が答え、刹那もその言葉に頷いた。


「では、本題に入るとしましょう。明日、一〇三〇に対空戦闘演習を行いたいと思っています。その事について、二人の意見を求めます」

「異論はないわ。艦の調子もいいから頃合いだと思うし。一真はどうなの?」

「俺も異論はないな。早めに訓練を行った方が、システムを調整する事が出来る」

「それでは、異論は無いという事で、明日の一〇三〇に対空戦闘訓練を行います。琴葉は、乗員への通達をお願いしますね」

「はっ。了解しました」


 刹那の言葉に琴葉と一真は頷くと、長官室を後にし、艦内放送を使用して明日の一〇三〇から対空戦闘訓練が行われることが乗員に通達された。




六月十一日 午前十時三十分

南西諸島沖

戦艦「磐城」



『教練対空ぅ戦闘用ぉー意!』


 艦内に戦闘用意を知らせる警報と、同時に対空戦闘用意を告げるアナウンスが鳴り響き、兵士達が自分の持ち場へ足早に向かう。


「レーダーに感あり!高速で本艦に近づく。数二十、方位二百七十度。対艦ミサイルだと思われる!」


 レーダー画面を注視する電測員から情報を告げられ、訓練だが、SMCにいる兵士達の表情に緊張の色が浮かんだ。


「対空戦闘!電子戦用意!」

「ECM照射準備よし!」

「ECM照射始め!」


 刹那と小夜に見守られながら、琴葉は冷静に部下に対して対空戦闘の命令を出し、命令を受けた兵士達もその命令を忠実にこなしていく。


「ECM照射!対艦ミサイル十二発が軌道を逸れました。残り八発、軌道変わらずまっすぐ突っ込んでくる!」

「SM-2発射用意!」

「SM-2発射用意よし!」

「VLS解放!SM-2発射!」

「SM-2発射!」


 砲雷長がインカムを通して射撃員に命じ、射撃員がパネルを操作してVLSから補足した目標に向けてSM-2を発射した。


「目標命中まで五秒前……スタンバイ…マークインターセプト!」

「目標七発を撃墜!残り一発が突っ込んでくる!」

「速射砲砲撃用意!」

「砲撃用意よし!」

「目標まで一万四千!撃ちぃ方始め!」


 砲雷長がさらに命令を下すと、砲術員がピストル型の引き金を連続で引き、連装方舷六基十二門の127ミリ速射砲が火を吹いた。


「目標に命中!他に残存目標なし!」


 レーダー画面を注視していた電測員が琴葉に報告を行うと、琴葉は頷いて訓練を静かに見守っていた刹那へ視線を向けると、刹那は静かに頷いた。


「教練対空戦闘終了。対空戦闘用具収め!」


 琴葉が訓練の終了を艦内放送で告げると、先程まで張り詰めていた空気だったSMCも和やかな空気になり、訓練が無事に終了した事を喜んでいた。


「砲術参謀、火器管制システムに何か不備は見つけられましたか?」

「いえ、不備と思われるものはありませんでした」

「そうですか。参謀長、対空戦闘も及第点と言ったところでしょうか?」

「だと思います。各システムにも異常は無かった様ですし、兵士達も訓練を重ねれば大丈夫でしょう」


 訓練の終了を喜ぶ兵士達を見ながら、刹那と小夜が今回の対空戦闘の様子を見てこれからの行動予定を立てていると、琴葉が近づいてきた。


「長官、今回の対空戦闘の評価はどうでしょうか?」

「及第点と言ったところです。葉山艦長、艦隊が正式に始動するまでは、訓練を怠ってはなりませんよ」

「了解です。怠る事無く精進します。各員、通常業務も怠るな!」


 刹那の言葉を受けて琴葉は頷き、兵士達に声を掛けると、訓練の終了を喜んでいた兵士達も気を引き締め直し、再び業務へと戻った。


 その後、五日間にも及ぶ練習航海で、対空戦闘演習だけではなく対水上戦闘演習を行うと、大したトラブルも無く横須賀軍港へと帰投し、太平洋艦隊が本格始動するまで訓練に明け暮れる毎日を過ごすのだった。


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